第 3 章 SiC ウエハの加工実験
3.5 SiC 表面状態についての表面分析および考察
3.5.1 スラリーの違いによる表面状態の変化について
まず,コロイダルシリカスラリーに SiCウエハを24時間浸漬した後の元素分 析結果を図 3.17に示す.SiC の測定に関しては Si 面の Si2p,C1s,O1s,につ いて元素分析を行った.基準であるコロイダルシリカスラリーに浸漬させた SiCチップの場合では,Si 2pにおいては100.5 eV付近にピークが存在している.
エッチング時間の経過とともに若干ピークが低エネルギー側へと移動している が,明確な変化ではない.
同様に C 1sにおいてピークは 283 eV付近に存在しているが,エッチング時 間の経過による変化はほとんどない.O1s においては初め 529~534 eV 広い範 囲にかけてピークが存在している.特に532 eV付近に突出したピークが確認で きる.そのピークはエッチング時間の経過とともに減少しており,エッチング 30 s 程度で小さくなっており付近のピークと同程度になっていることがわかる.
その後,O 1s におけるピークの減少はわずかづつしか確認できないことから,
コロイダルシリカスラリーにおける反応層はエッチング時間 30 s程度まで存在 すると考えられる.
今回使用した装置は,SiO2膜のエッチングレートが4 nm/min程度で,このこ とからコロイダルシリカスラリーではSiCの表面における化学変化は2 nm程度 の領域と考えられ,非常にわずかでありごく表層部においてのみ酸化が起きて いると考えられる.
Table 3.7 SiCとSiO2の結合エネルギー
結合エネルギー eV
SiC Si 2p:99.85~100.80
C 1s:281.26~283.80 SiO2 Si 2p:102.00~104.10 O 1s:532.10~534.30
62
(a)Si 2p (b)C 1s
(c)O 1s
Fig.3.17 コロイダルシリカスラリーに 24時間浸漬したSiCチップの元素分析
ここで,SiO2膜(熱酸化膜)について元素分析を行った結果を図 3.18に示す.
SiO2膜についてはSi 2pおよびO 1sについて観察を行った.Si 2pの場合は初め
105 eV 付近にピークが存在しており,エッチング時間の経過とともに低エネル
ギー側へとシフトしている.コロイダルシリカスラリーに浸漬した SiC チップ においては,Si 2pのピークは100.5 eV付近に存在していることから,コロイダ
110 100
Binding energy eV
Intensity cps
Etching time (s) 5 10 15 20 30 40 50 60 120180 300
1000
Si 2p : 98.40~99.80 eV
300 290 280
Binding energy eV
Intensity cps
Etching time (s) 5
10 15 20 30 40 50 60 120180 300
C 1s : 283.80~285.18 eV
540 530
Binding energy eV
Intensity cps
Etching time (s)
5 10 15 20 30 40 50 60 120180 300 O 1s : 531 eV
1000
63
ルシリカスラリーに浸漬した SiC チップと SiO2膜における Si は異なる化学結 合を形成していると考えられる.
O 1sについては初め535 eV付近に存在しており,エッチング時間の経過とと もに低エネルギー側へとシフトしている.コロイダルシリカスラリーに浸漬し たSiCチップにおいては,O 1sのピークは532 eV付近に突出したピークが存在 していることから, SiCチップとSiO2膜におけるOは異なる化学結合を形成し ていると考えられる(表 3.7 参照[12][13]).以上のことからコロイダルシリカ スラリーに浸漬した SiCチップの表面では化学反応に Oが関与はしているが,
SiO2が形成さているのではないと考えられる.
(a)Si 2p (b)O 1s Fig.3.18 SiO2膜の元素分析結果
H2O2を添加したスラリーに 24 時間浸漬した SiC チップの元素分析結果を図 3.19に示す.H2O2を添加したスラリーに浸漬させた SiC チップにおいては,Si 2p,O 1s の結合エネルギーのピーク変化はコロイダルシリカスラリーのみの場 合と同様の傾向を示している.O 1s におけるエッチングに関しては,コロイダ ルシリカスラリーのみの場合と同様に532 eV付近で突出したピークが確認でき る[14].
また,エッチング時間に関しては,コローダルシリカスラリーのみの場合で は突出したピークがエッチング経過30 s程度で減少していたが,H2O2を添加し た場合ではエッチング経過60 s程度まで存在していることから,H2O2を添加し た場合における結合エネルギーのピークのシフトはコロイダルシリカスラリー
110 100
Binding energy eV
Intensity cps
Si 2p : 98.40~99.80 eV
Etching time (s)
10 30 60 300 600 1200 1800 3600
500
540 530
Binding energy eV
Intensity cps
O 1s : 531 eV
Etching time (s)
10 3060 300600 12001800 3600
1000
64
のみの場合と同様のものであるが,反応層についてはより厚く形成されている と考えられる.
(a)Si 2p (b) C 1s
(c)O 1s
Fig.3.19 H2O2を添加したスラリーに 24時間浸漬したSiCチップの元素分析
110 100
Binding energy eV
Intensity cps
Si 2p : 98.40~99.80 eV
Etching time (s) 5 10 1520 30 40 50 60 90 120 150 180300
1000
300 290 280
Binding energy eV
Intensity cps
C 1s : 283.80~285.18 eV
Etching time (s) 5
10 15 2030 40 50 60 12090 150180 300
1000
540 530
Binding energy eV
Intensity cps
O 1s : 531 eV
Etching time (s) 510 1520 3040 5060 90120 150180 300
1000
65
KMnO4を添加したスラリーに 24 時間浸漬した SiC チップの元素分析結果を 図3.20に示す.なお,KMnO4を添加したスラリーに関しては追加でMn2pに関 しても測定を行った.KMnO4を添加したスラリーに浸漬させた SiCチップにお いては Si 2p,C 1s,O 1sにおいてコロイダルシリカスラリーや H2O2を添加し た場合とは異なるピークの変化傾向が確認できる.
Si 2pにおいてピークは101 eV付近にて検出されており,エッチング時間150 s頃から徐々に100 eV付近に強く現れてくる.C 1sでも同様に,初め285 eV付 近にてピークが検出され,エッチング時間150 s頃から徐々に283 eV付近に強 く現れてくる.
O 1sについては初め530 eV付近にて強いピークが確認できた.エッチング時 間の経過とともにピークが 532 eV へとシフトし,360 s 程度で消失している.
Si 2p,C 1sにおいても360 s付近にて変化が安定している.
さらに,Mn 2pについても初め 642 eVおよび 654 eV付近にピークが確認で きるが,エッチング時間の経過とともに減少しており,360 s程度でピークが消 失していることが分かる.以上の点からコロイダルシリカスラリーのみの場合 と KMnO4を添加したスラリーの場合とでは SiC の表面における化学反応が異 なっており,反応層が深く形成されていることが確認できる.このことは,過 去の研究において確認されている KMnO4を添加することでの SiCの CMPにお ける加工レートの向上に関与していると考えられる.
また,この結果から,KMnO4を添加したスラリーに浸漬した SiCチップにお いて Mnは KMnO4に由来する表面付着物ではなく,SiCチップとの反応物と考 えられる.
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(a)Si 2p (b) C 1s
(c)O 1s (d) Mn 2p Fig.3.20 KMnO4を添加したスラリーに
24時間浸漬したSiCチップの元素分析
110 100
Binding energy eV
Intensity cps
Si 2p : 98.40~99.80 eV
Etching time (s) 10 3060 90 120 150 180 210 240 270 300 360 420 600
1000
300 290 280
Binding energy eV
Intensity cps
C 1s : 283.80~285.18 eV
Etching time (s) 10 30 6090 120 150 180 210 240 270 300 360 420 600
1000
540 530
Binding energy eV
Intensity cps
O 1s : 531 eV
Etching time (s)
1030 6090 120150 180210 240270 300360 420600
2500
660 650 640
Intensity cps
Binding energy eV
Mn 2p(3/2,1/2) : 638.50~641.00 eV, 649.50~650.20 eV Etching time (s)
10 30 60 90 120 150 180210 240 270 300 360 420600
2500
67