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スポット的細街路整備の現状と課題

ドキュメント内 山 崎 明 子 (ページ 45-57)

3.1 二項道路判定問題の所在とその影響

3.1.1 二項道路判定問題と細街路整備

建築基準法42条2項道路の問題は、高見沢ら(1980)3-1)により、「既成 市街地の狭隘道路問題の縮図」であるとされ、その問題の所在の第一は「2項 道路の存否・位置に関する現状把握が十分でないこと」、第二は「4mへの拡幅 が遅々として進まないこと」、第三は「後退用地の整備・維持管理を、誰が・い つまで・どの程度行うか明確にされていないこと」と指摘されている。

上記の問題のうち、第二と第三の問題に関しては、各区が狭隘道路事業に着 手したことにより、進捗の差こそあるものの解決へ向け着実なスタートを切っ たとみることができる。一方第一の問題点に関しては、建築確認申請や不動産 売買の物件調査等に関わる相談が寄せられたことを契機として、事後的に解決 するケースはあっても、問題箇所の全体的な把握や、現状把握を阻む法手続き のあり方に対する抜本的な解決策は、未だ見当たらないのが実状である。本研 究では、この最も対策が遅れている問題点を、「判定問題」と定義する3-2)

「判定問題」を概括すると次の通りである(図3-1)。「建築敷地は幅員4 m以上の道路に2m以上接道しなければならない」というのが、建築基準法上 の原則であるが、実際には4m未満の道路沿道に、既存建築物が多数実在する 現状があり、そのために「救済事項」として設けられたのが、建築基準法42 条2項である。これにより、「基準時当時一定の要件を満たしていた道で、特定 行政庁の指定したものは、建て替えの際に基準時当時にあった道の中心から2 mセットバックすれば建築可能である」ということになった。しかし、その「指 定」が、東京都の一括告示による「要件のみの指定」にとどまったため、その 結果、道一本ごとの即地的な指定は行われず、個別敷地の建て替え時の建築確 認の度ごとに、その都度基準時の状況を「再現」し、2項道路の存否と位置を

過去の確認申請件数が少ない路線、扱いが異っている路線において、基準時当 時を再現し得る客観的資料の不足や、これら資料・証言の食い違い等の理由に より、トラブルが発生している。こうしたトラブルの発生そのものに加え、判 定作業の結果「道路扱いできない」ケース等、建て替えできない問題、さらに は、4m未満細街路の現況把握が十分でないため、どこに潜在的な問題が存在 するのか把握できていない問題もあわせ、判定問題と定義する。

図3-1 判定問題

この「判定問題」を巡っては、現状幅員が4mに満たない路線の沿道での建 て替えに際し、周辺住民をも巻き込んだ聞き取り調査等が求められている現状 がある。これらの調査の進行が、近隣住民間や住民と行政間のトラブル発生を 左右し、双方の信頼関係にまで影響を及ぼすという意味において、判定問題の 存在は、防災まちづくりの進展に、密接に関わっているといえる。

そこで、本章では、まずこの判定問題の所在と、解決策の実践状況を確認し、

・・・・・建築敷地は、幅4m以上の道路に2m以上 接道しなければならない

・・・・・基準時(

1950

年)当時、一定の要件を満たしていた 道で、特定行政庁の指定したものは、建て替えの際 に基準時当時にあった道の中心から2mセットバック すれば建築可能

・・・・・基準時当時①幅が

1.8

m以上あって②一般通行の用 に供され③2軒以上の建ち並びがあった、以上3条件 を満たしていたものはすべて、2項の指定がなされた ものとみなす

・・・・・個別建て替え時の建築確認の際に、その都度基準 時の状況を「再現」し判定

・・・・・過去の確認申請の実績が少ない、扱いが異なる、道 の現況が不明確といった路線で、基準時当時を再 現するに足る客観的資料の不足、資料や証言の食 い違い等の理由により、トラブルが発生している。

また、判定作業の結果、道路に該当しない場合は、

建て替え不可となる 建築基準法上の原則

「救済事項」としての 2項道路

東京都の一括告示 による2項道路の指定

結果、道ごとの即地的 な指定は行われず

判定問題

次いで、この問題の影響について触れることとする。これにより、「既成市街地 の狭隘道路問題の縮図」とされる2項道路問題のうち、最も対策が遅れている 判定問題の残存が、東京区部の市街地防災性能向上へ向けた細街路整備の取り 組みに、どのような影響をもたらしているのか、明らかにすることとする。

3.1.2 4m未満細街路の現況把握状況

先述したとおり、判定問題には次の3つの問題が含まれる。一点目は、判定 作業を通じたトラブルの発生そのものの問題、二点目は、判定作業の結果道路 扱いできない等のため建て替えできない問題、三点目は、どこに潜在的な問題 が存在するのか把握できていない問題である。本節では、上記三点目に関連し て、東京都23区各区の4m未満道路に関する現況把握状況を、次のとおり概 括する。

表3-1は、幅員4m未満の道路の延長長さと本数とを、各区がどのように 把握しているかを調べるために、それぞれの数値についてアンケート調査票に 記入してもらった結果で、(1)が 2009 調査結果、(2)が 1996 調査結果である。

各票の左側半分が、幅員4m未満道路として把握している数値、右側半分が2 項道路扱いを行っている路線として把握している数値を記入してもらった結果 である。これによると、1996 調査時点では延長長さによる回答記入が約半数程 度の区で行われたが、本数による回答記入は2~3区で行われたにすぎなかっ た。対して 2009 調査回答では、延長長さによる回答記入が半数以上の区で行わ れ、本数による回答記入も半数近い区で見られた。このことから、13年前に 比べ、23区全体で「現状把握が進んだ」といえる。これは、国が平成19年 度に通知した、2項道路等の「指定道路に関する情報管理の適正化」を含む技 術的助言注3-1)の普及とも整合する傾向である。

しかし、「未判定路線の絶対数(延長・本数とも)の把握」は、未だ十分には なされていない。これは、「未解決な路線を抱えたまま、指定道路図・調書の作 成、およびその公開(窓口、インターネットを含む)の要請に応えるのは、実 務上困難がある」、「情報の適正化だけでは解決できない路線がある」といった、

自治体行政の現場の声を裏付けるものでもある。

図3-2は、未判定の路線を把握していない理由を聞いた結果であるが、「4 m未満の実態を把握していない」、「実態は把握しているが判定済みかどうかチ ェックしていない」と答えた区が、1996 調査(13 区)と比べ 2009 調査では減少 したものの、まだ7区あった。

それを行わない理由について聞いた設問に対し、「行政需要が無い」と答えた

区は 1996 年も 2009 年も皆無で、「現在調査中」と回答した1区を除く全ての区 が、「行政需要はあるが、現在の体制・人員では無理がある」と回答した(図3

-3)。建築基準法上の道路の扱いが不明である路線の位置や総量を事前に把握 しておくことは、建築確認申請や不動産物件調査等への対応の迅速化につなが るとともに、道路扱いできないケースの対策を事前に講じることが可能となる ため、判定問題等によるトラブル回避につながることが期待できる。しかし、

これを行う体制の不十分が、アンケート調査回答からは示された。このことか ら、未判定路線の実態解明のためには、体制の拡充が不可欠であるといえる。

表3-1 4m未満細街路の現況把握状況の変化

(1)2009 調査の結果

(2)1996 調査の結果

延長 本数 延長 本数 延長 本数 延長 本数 延長 本数

(km) (本) (km) (本) (km) (本) (km) (本) (km) (本)

千代田区 11.005 224 11.911 292 2.543 36 9.254 248

中央区 659 332 3

港区 53.100 1,012 49.400 919 38.400 700 49.400 919

新宿区 99.000 112.000 99.000 95.000

文京区 136.000 2 136.000

台東区 22.350 448 33.380 909 22.230 447 30.960 833 4

墨田区 94.216 94.216

江東区 1,859 1,230

品川区 61.000 144.000 61.000 144.000

目黒区 96.700 92.100 68.700 68.100

大田区 63.000 148.000 63.000 148.000

世田谷区 399.000 4,658 206.000 5,732 239.000 2,892 85.000 1,992

渋谷区 67.100 748 93.000 2,030 67.100 748 73.400 1,463

中野区

杉並区 162.000 170.000 30以上

豊島区 230.000 1,146 230.000 100

北区

荒川区 47.700 56.100 47.700 56.100

板橋区 105.962 1,775

練馬区

足立区 123.000 1,432 57.000 1,190 123.000 1,432 57.000 1,190

葛飾区 58.500 1,162 355.000 5,857 55.000 1,100 50.000 1,300

江戸川区 64.858 762 126.637 3,874 64.858 762 33.769 843

未判定 建築基準法上の扱い

現況幅員 4m未満

公道 私道

2項道路

公道 私道

延長 本数 延長 本数 延長 本数 延長 本数 延長 本数

(km) (本) (km) (本) (km) (本) (km) (本) (km) (本)

千代田区 0.075 2 15.570 280 0.626 37

中央区 7.000

港区 36.600

新宿区 100.000 125.000

文京区 10.966

台東区 41.410 57.848

墨田区 50.660 94.000

江東区 15.000

品川区 69.570 61.000 144.000

目黒区 73.870

大田区 62.320 573 62.317 573 147.500 3,100

世田谷区 356.000 244.000 499.000

渋谷区 65.000 75.000

中野区 179.300 118.000

杉並区 334.500 160.000 170.000

豊島区 89.000 125.570

北区 166.000 150.000 約5000

荒川区 59.584 69.270

板橋区 練馬区

足立区 267.500 170.590 61.870

葛飾区 51.000

江戸川区 125.000

未判定 建築基準法上の扱い

現況幅員 4m未満

公道 私道

2項道路

公道 私道

図3-2 未判定路線を把握していない理由の変化

(左;1996 調査結果 右;2009 調査結果)

図3-3 4m未満の実態調査、判定済みかのチェックを行わない 理由の変化

(左;1996 調査結果。右;2009 調査結果。)

行政需要が 無いため(

0

区)

行政需要は あるが、現 在の体制・

人員では無 理があるた め(

11

区)

その他(2 区)

行政需要が 無いため

(

区)

0%

行政需要は あるが、現 在の体制・

人員では無 理があるた め(6区)

86%

その他

(1区)

14%

4m未満道路の

実態を把握して いないから。(6

区)

判定済みかど うかに関する チェックは行っ ていないから。

7

区)

その他(8区)

無回答(2区) の実態を把握

4m未満道路

していないから

(3区)

13%

判定済かどう かに関する チェックは行っ

ていないから

(4区)

17%

その他(8区)

35%

無回答(8区)

35%

ドキュメント内 山 崎 明 子 (ページ 45-57)

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