第 7 章 負の超らせん状態下での DNA 複製開始反応の直接観察
7.2.5 弛緩状態下での SV40 ラージ T 抗原による
域を染色することよってSV40ori-λDNAの弛緩状態下でのSV40ラージT抗原によ る DNA 鎖巻き戻し反応を直接観察した。ここでは、F-SV40ori-λDNA の弛緩状態 下でのSV40 ラージ T抗原による DNA鎖巻き戻し反応の直接観察の実験操作を述 べる。
1. 上記の「7.2.4 微細流路内での直鎖状DNAのガラス基板表面と磁気ビーズの固 定化」の実験操作と同様な実験操作にて、磁気ビーズを付加した F-SV40ori-λDNA の左端ビオチン化部位はガラス基板表面に固定した後、右端ジゴキシゲ ニン化部位には抗ジゴキシゲニン抗体磁気ビーズを結合させた。一方、磁気ビ ーズを付加しないF-SV40ori-λDNAには、F-SV40ori-λDNAの右端ジゴキシゲ ニン化部位に抗ジゴキシゲニン抗体磁気ビーズを結合させていない。
2. 0.6 mLのマイクロチューブ内にて、255 ngのSV40ラージT抗原を含む緩衝 液 (SV40 TAg Buffer [30 mM HEPES pH 7.5、7 mM MgCl2、50 µg/mL BSA]、
1% 2-Mercaptoethanol、ATP regeneration mixture [4 mM ATP、15 mM creatine-phosphate、10 ng/µL creatine phosphokinase]、Oxygen-Scavenging System) を調製 (全量50 µL) 後、シリンジに充填し、20 µL/hにて流路内に注 入することよって45分間、インキュベートし、SV40ラージT抗原をSV40複 製起点領域に結合させた。
[試薬調製表7-5]
Sample Vol. (µL) Final conc.
1 M HEPES pH 7.5 1.5 30 mM
1 M MgCl2 0.35 7 mM
10 mg/mL BSA 0.25 50 µg/mL
50% 2-Mercaptoethanol 2 2%
85 ng/µL SV40 TAg 3 5.1 ng/µL 100 mM Creatine-phosphate 7.5 15 mM 5 µg/µL Creatine phosphokinase 0.1 10 ng/µL
100 mM ATP 2 4 mM
230 mg/mL glucose 1 2.3 mg/mL 1.8 mg/mL catalase 1 0.018 mg/mL 10 mg/mL glucose oxidase 1 0.1 mg/mL
脱気滅菌水 Up to 50 µL
3. 0.6 mL のマイクロチューブ内にて、15 µg の RPA-YFP を含む緩衝液 (SV40 TAg Buffer、1% 2-Mercaptoethanol、10% glycerol、0.1% Tween 20、ATP regeneration mixture、Oxygen-Scavenging System) を調製 (全量100 µL) 後、
シリンジに充填し、30 µL/h、40分間、流路内に注入した。
[試薬調製表7-6]
Sample Vol. (µL) Final conc.
1 M HEPES pH 7.5 3 30 mM
1 M MgCl2 0.7 7 mM
10 mg/mL BSA 0.5 50 µg/mL
50% 2-Mercaptoethanol 4 2%
50 % glycereol 20 10%
10% Tween 20 1 0.1%
15 µg/µL RPA-YFP 15 0.1 µg/µL 100 mM Creatine-phosphate 15 15 mM 5 µg/µL Creatine phosphokinase 0.2 10 ng/µL
100 mM ATP 4 4 mM
230 mg/mL glucose 1 2.3 mg/mL
1.8 mg/mL catalase 1 0.018 mg/mL 10 mg/mL glucose oxidase 1 0.1 mg/mL
脱気滅菌水 Up to 100 µL
4. 磁気ビーズを付加したF-SV40ori-λDNAの微細流路の真上に磁石を設置し、そ のまま維持した。
5. 0.6 mL のマイクロチューブ内にて、緩衝液 (30 mM HEPES pH 7.5、10%
glycerol、0.1% Tween 20、1% 2-Mercaptoethanol、Oxygen-Scavenging System) を0調製 (全量200 µL) 後、シリンジに充填し、30 µL/h、40分間、流路内に 注入することによって流路内のフリーな RPA-YFP の余剰な蛍光を取り除き、
SV40ラージT抗原によって巻き戻されたDNAのssDNA領域を観察した。
[試薬調製表7-7]
Sample Vol. (µL) Final conc.
1 M HEPES pH 7.5 6 30 mM
50% 2- Mercaptoethanol 8 2%
50 % glycereol 40 10%
10% Tween 20 2 0.1%
230 mg/mL glucose 2 2.3 mg/mL 1.8 mg/mL catalase 2 0.018 mg/mL 10 mg/mL glucose oxidase 2 0.1 mg/mL
脱気滅菌水 Up to 200 µL
6. 流路内の緩衝液の流れを利用することによって磁気ビーズを付加しない F-SV40ori-λDNAを伸張させた。その後、RPA-YFPにより標識したssDNA領域 を観察した。一方、もう一つの磁石を微細流路装置の側面から慎重に設置する ことによって磁気ビーズを付加した F-SV40ori-λDNA を伸張させた。その後、
RPA-YFP により標識したssDNA領域を観察した。
7. 観察後、0.6 mLのマイクロチューブ内にて、0.1 µM YOYO-1を含む緩衝液 (30 mM HEPES pH 7.5、10% glycerol、0.1% Tween 20、1% 2-Mercaptoethanol、 Oxygen-Scavenging System) を調製 (全量200 µL) 後、シリンジに充填し、30 µL/h、40分間、流路内に注入することよってDNAのdsDNA領域を染色した。
その後、実験操作6と同様な伸張操作により伸張させたF-SV40ori-λDNAを観 察した。
[試薬調製表7-8]
Sample Vol. (µL) Final conc.
1 M HEPES pH 7.5 6 30 mM
50% 2- Mercaptoethanol 8 2%
50 % glycereol 40 10%
10% Tween 20 2 0.1%
10 µM YOYO-1 2 0.1 µM
230 mg/mL glucose 2 2.3 mg/mL 1.8 mg/mL catalase 2 0.018 mg/mL 10 mg/mL glucose oxidase 2 0.1 mg/mL
脱気滅菌水 Up to 200 µL
8. 磁気ビーズを付加しない R-SV40ori-λDNA 及び磁気ビーズを付加した R-SV40ori-λDNAに同様な実験操作をすることよってSV40ラージT抗原による DNA鎖巻き戻し反応を観察した。
9. 磁気ビーズを付加しないF-SV40ori-λDNA及びR-SV40ori-λDNA、磁気ビーズ を付加した F-SV40ori-λDNA 及び R-SV40ori-λDNA の弛緩状態下での SV40 ラージ T抗原による DNA 鎖巻き戻し反応は、同一の顕微鏡視野内にてビデオ レート(30 frames/sec)で撮影した後、画像化した。ImageJ を用いて各々の SV40ori-λDNAのdsDNA領域の蛍光領域をもとに各々のSV40ori-λDNAの長 さを計測した。
10. ImageJを用いることによって磁気ビーズを付加しない F-SV40ori-λDNA及び R-SV40ori-λDNA、磁気ビーズを付加した F-SV40ori-λDNA 及び R-SV40ori-λDNA の弛緩状態下での SV40 ラージ T 抗原によって巻き戻された DNA の
ssDNA領域の位置を光学マッピングした。
図7-5. 磁気ビーズを付加した・しないF-SV40ori-λDNA及びR-SV40ori-λDNAの弛緩状態下 でのSV40ラージT抗原 (T抗原) によるDNA鎖巻き戻し反応の直接観察の実験概要図 A 水溶液の流れを利用することよって磁気ビーズを付加しない F-SV40ori-λDNA 及び
R-SV40ori-λDNAを伸張させた。
B 磁石を用いることよって磁気ビーズを付加した F-SV40ori-λDNA 及び R-SV40ori-λDNA を伸張させた。
7.2.6 負の超らせん状態下での SV40 ラージ T 抗原による DNA 鎖巻き戻し反応
の直接観察
本実験ではssDNA領域を標識後、YOYO-1によりdsDNA領域を染色すること よって SV40ori-λDNA の指定した超らせん密度下での SV40 ラージ T 抗原による DNA鎖巻き戻し反応を直接観察した。以下にその実験操作を述べる。
1. 上記の「7.2.4 微細流路内での直鎖状DNAのガラス基板表面と磁気ビーズの固
定化」の実験操作と同様な実験操作にて、F-SV40ori-λDNA の左端ビオチン化 部位はガラス基板表面に固定した後、右端ジゴキシゲニン化部位には抗ジゴキ シゲニン抗体磁気ビーズを結合させた。
水溶液の流れを利用
SV40T抗原 RPA-YFP
YOYO-1
RPA-YFP
YOYO-1
SV40 T抗原による DNA鎖巻き戻し反応
RPA-YFPによる ssDNA領域の標識
YOYO-1による dsDNA領域の染色
磁石を利用
A
SV40T抗原
B
2. 0.6 mLのマイクロチューブ内にて、255 ngのSV40ラージT抗原を含む緩衝 液 (SV40 TAg Buffer [30 mM HEPES (pH 7.5)、7 mM MgCl2、50 µg/mL BSA]、
1% 2-Mercaptoethanol、ATP regeneration mixture、Oxygen-Scavenging System) を調製 (全量50 µL) 後、シリンジに充填し、20 µL/hにて流路内に注 入することよって45分間インキュベートし、SV40ラージT抗原をSV40複製 起点に結合させた。
[試薬調製表7-9]
Sample Vol. (µL) Final conc.
1 M HEPES pH 7.5 1.5 30 mM
1 M MgCl2 0.35 7 mM
10 mg/mL BSA 0.25 50 µg/mL
50% 2-Mercaptoethanol 2 2%
85 ng/µL SV40 TAg 3 5.1 ng/µL 100 mM Creatine-phosphate 7.5 15 mM 5 µg/µL Creatine phosphokinase 0.1 10 ng/µL
100 mM ATP 2 4 mM
230 mg/mL glucose 1 2.3 mg/mL 1.8 mg/mL catalase 1 0.018 mg/mL 10 mg/mL glucose oxidase 1 0.1 mg/mL
脱気滅菌水 Up to 50 µL
3. インキュベートの前、磁気ピンセット装置を用ることによって F-SV40ori-λDNAに0、−0.02、−0.04、−0.06の超らせん密度の負の超らせんを導入した。
磁石を微細流路の真上に設置し、磁気ビーズを付加した直鎖状 DNA を引きつ けた。負の方向に指定した回転数 (1秒あたり1回転する回転速度) 磁石を回転 させた後、磁石の回転を停止した。これにより、F-SV40ori-λDNA の負の超ら せん状態下でのSV40ラージT抗原によるDNA鎖巻き戻し反応を開始させた。
4. 0.6 mL のマイクロチューブ内にて、15 µg の RPA-YFP を含む緩衝液 (TAg Buffer、1% 2-Mercaptoethanol、ATP regeneration mixture 、 Oxygen-Scavenging System) を調製 (全量100 µL) 後、シリンジに充填し、30 µl/h、 40分間、流路内に注入した。
[試薬調製表7-10]
Sample Vol. (µL) Final conc.
1 M HEPES pH 7.5 3 30 mM
1 M MgCl2 0.7 7 mM
10 mg/ml BSA 0.5 50 µg/mL
50% 2-Mercaptoethanol 4 2%
50 % glycereol 20 10%
10% Tween 20 1 0.1%
1 µg/µL RPA-YFP 15 0.1 µg/µL 100 mM Creatine-phosphate 15 15 mM 5 µg/µL Creatine phosphokinase 0.2 10 ng/µL
100 mM ATP 4 4 mM
230 mg/mL glucose 1 2.3 mg/mL
1.8 mg/mL catalase 1 0.018 mg/mL 10 mg/mL glucose oxidase 1 0.1 mg/mL
脱気滅菌水 Up to 100 µL
5. 0.6 mL のマイクロチューブ内にて、緩衝液 (40 mM HEPES pH 8.0、10%
glycerol、0.1% Tween 20、1% 2-Mercaptoethanol、Oxygen-Scavenging Syste) を調製 (全量200 µL) 後、シリンジに充填し、30 µL/h、40分間、微細流路内 に注入することよって流路内のフリーな RPA-YFP の余剰な蛍光を取り除き、
SV40ラージT抗原により巻き戻されたDNAのssDNA領域を観察した。
[試薬調製表7-11]
Sample Vol. (µL) Final conc.
1 M HEPES pH 7.5 6 30 mM
50% 2-Mercaptoethanol 8 2%
50 % glycereol 40 10%
10% Tween 20 2 0.1%
230 mg/mL glucose 2 2.3 mg/mL 1.8 mg/mL catalase 2 0.018 mg/mL 10 mg/mL glucose oxidase 2 0.1 mg/mL
脱気滅菌水 Up to 200 µL
6. もう一つの磁石を微細流路装置の側面から慎重に設置することよって F-SV40ori-λDNA を伸張させた。その後、RPA-YFP により標識した ssDNA 領 域を観察した。
7. 観察後、0.6 mLのマイクロチューブ内にて、0.1 µM YOYO-1を含む緩衝液 (40 mM HEPES pH 8.0、10% glycerol、0.1% Tween 20、1% 2-Mercaptoethanol、 Oxygen-Scavenging System) を調製 (全量200 µL) 後、シリンジに充填し、30 µl/h、40分間、流路内に注入することによってF-SV40ori-λDNAのdsDNA領 域を染色した。その後、実験操作 6 と同様な伸張操作により伸張させた F-SV40ori-λDNAを観察した。
[試薬調製表7-12]
Sample Vol. (µL) Final conc.
1 M HEPES pH 7.5 6 30 mM
50% 2- Mercaptoethanol 8 2%
50 % glycereol 40 10%
10% Tween 20 2 0.1%
10 µM YOYO-1 2 0.1 µM
230 mg/ml glucose 2 2.3 mg/mL 1.8 mg/ml catalase 2 0.018 mg/mL 10 mg/ml glucose oxidase 2 0.1 mg/mL
脱気滅菌水 Up to 200 µL
8. SV40ori-λDNAの負の超らせん状態下にてSV40ラージT抗原によるDNA鎖 巻き戻し反応は同一の顕微鏡視野内にてビデオレートでの撮影後、画像化した。
ImageJを用いることによって画像化したDNAのdsDNA領域の蛍光領域をも
とにF-SV40ori-λDNAの長さを計測した。
9. ImageJ を用いることによって F-SV40ori-λDNA の負の超らせん状態下での SV40ラージT抗原によって巻き戻されたDNAのssDNA領域を光学マッピン グした。
図 7-6. SV40ori-λDNA の 0、−0.02、−0.04、−0.06の超らせん密度の負の超らせん状態下での SV40ラージT抗原 (TAg) によるDNA鎖巻き戻し反応の観察実験の概要図
§7.3 結果及び考察
7.3.1 弛緩状態下での SV40 ラージ T 抗原による DNA 鎖巻き戻し反応の直接観察