本節では、本稿が計量分析に用いる二つの世論調査、すなわち
2007
年にシリアで実施さ れた「シリア・アラブ共和国における全国世論調査」と2008
年にエジプトで実施された世 論調査「社会成員の志向に関する社会的研究」の内容を概説する。1. 「シリア・アラブ共和国における全国世論調査」
「シリア・アラブ共和国における全国世論調査」(al-Istiqṣāʼ al-Waṭanī li-l-Jumhūrīya al-ʻArabīya al-Sūrīya)
は文部科学省
2006
年度(平成18年度)世界を対象としたニーズ対応型地域研究推進事業「ア ジアのなかの中東――経済と法を中心に――」1の一環として、シリアのシンクタンク、シ ャルク国際研究センター(Markaz al-Sharq li-l-Dirāsāt al-Duwalīya、英語名 Orient Center for InternationalStudies、略称OCIS、サミール・タキー[Samīr al-Taqī]総合調整役)の協力のもとに実施された。本調
査はシリア国民を含む中東地域の人々が政治面(さらには社会経済面、文化面)において他国を どう見ているのかを把握し、シリアおよび中東諸国の政治、社会経済、文化への貢献のあ りようを提言することを目的として立案された。具体的には筆者と髙岡豊氏(上智大学イス ラーム地域研究機構研究補助員)が中心となって設計し、①質問票作成(2007年6月18日~9月3日)、
②プレテスト(10月6~7日)、③本調査(10月26日~11月3日)、④データ入力(12月1~10日)、
⑤データ処理(2008年1月1日~2月10日)、という
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段階を経て実施された。調査はアラビア語による個別訪問面接聴取法を採用し、シリア全
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県の人口動態学的特 徴ならびに地理的特徴を代表する6
県に在住する18
歳以上のシリア国民男女1,000
人(質1 事 業 の 詳 細 に つ い て は 「 ア ジ ア の な か の 中 東 」 ホ ー ム ペ ー ジ
(
http://www.econ.hit-u.ac.jp/~areastd/
)を参照のこと。第
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章 アラブ諸国の世論調査結果に見る政治的認知地図問票は1,425部配布され、うち425部が回答拒否や記載内容の不備により無効となった)を対象とした。6
県とは①ダマスカス県(南部諸県[ダマスカス県、ダマスカス郊外県、クネイトラ県、ダルアー県、スワ イダー県]を代表)、②ダマスカス郊外県(同じく南部諸県を代表)、③アレッポ県(北部諸県[アレ ッポ県、ラッカ県、イドリブ県]を代表)、④ラタキア県(西部諸県[ラタキア県、タルトゥース県]を代 表)、⑤ハサカ県(東部諸県[ハサカ県、デイル・ゾール県]を代表)、そして⑥ヒムス県(中部諸県[ヒ ムス県、ハマー県]を代表)である。
回答者の選別(サンプル抽出)は、シリア内閣府中央統計局の『2006年国勢調査結果』(Natāʼij
al-Taʻdād al-ʻĀmm li-l-Sukkān li-ʻĀm 2006[2007])に依拠し、層化二段無作為抽出法によって行われ
た。具体的には調査地となった上記
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県の人口比に応じてサンプル数を割り当てたうえで、①都市・農村、②性別、③年齢(層)、④教育水準、⑤宗教、⑥社会経済水準、という六つ の変数を考慮して層化作業を施した2。
質問票は、「I. 外国に対する認識」、「II. 社会的意識」、「III. 基本情報」という
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部40
問 から構成されている。「I. 外国に対する認識」(9問)はさらに「A. 在外滞在経験」(5問)と「B. 国外の政治的諸問題に対する意識」(4問)に分けられている。「A. 在外滞在経験」で はシリア国外での滞在の意思の有無やその理由を問う質問を設定した。「B. 国外の政治的 諸問題に対する意識」では、中東の政治的安定への各国の貢献度や中東諸国の政治問題へ の関心の有無などを問う質問を用意した。「II. 社会的意識」(9問)は、生活水準、社会的関 係、情報収集の経路、思想信条、支持政党などに関する質問によって構成された。「III. 基 本情報」(22問)は性別、年齢、家族構成、所得など質問者の個人情報に関する質問によっ て構成された。質問票全文は「アジアのなかの中東――経済と法を中心に――」ホームペ ージ(http://www.econ.hit-u.ac.jp/~areastd/psme/Questionnaire_Syria_2007_Ar.pdf)を、単純集計結果につい ては青山・髙岡[2008a][2008b]、al-Miṣrī[2008]を参照されたい。
2. 「社会成員の志向に関する社会的研究」
エジプトにおける全国世論調査は正式名称を「社会成員の志向に関する社会的研究」
(Dirāsa Ijtimāʻīya ḥawla Ittijāhāt Afrād al-Mujtamaʻ)と言い、「アジアのなかの中東」のもとに立案さ れ、平成
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年度文部科学省「人文学及び社会科学における共同研究拠点の整備の推進事業」2 このうち、①、②、③、⑤はデータ入力、データ処理の段階で、信頼度
95%水準で母集団
(シリア国民)を代表していることが確認された。しかしながら④、⑥に関しては、質問 票の内容が難解であったことを主な理由として、実査担当チームが大学生の回答者を増や してしまったために誤差が生じた。
委託費による「イスラーム地域研究」にかかわる共同研究「中東における政治変動と政治 的ステレオタイプの変化に関する研究」3が実施を担当した。調査はエジプトのシンクタン ク、エジプト調査訓練センター(The Egyptian Research and Training Center、略称ERTC、アブドゥルハミ ード・ラティーフ[ʻAbd al-Ḥamīd Laṭīf]所長)の全面協力のもと、岩崎えり奈氏(共立女子大学文芸学 部専任講師)が統括し、①質問票作成(2008年1~9月)、②調査員訓練(10月3~15日)、③質問
票の印刷(10月16~20日)、④本調査(10月21日~11月23日)、⑤質問票回答のチェックおよび
コーディング(10月25日~11月25日)、⑥データ入力(10月25日~11月27日)、⑦入力データの 確認(2008年12月~2009年3月)、という
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段階を経て完了した。調査はアラビア語による個別訪問面接聴取法を採用し、エジプトの全
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県のなかから無 作為に抽出された6
県に在住する18
歳以上のエジプト国民男女1,000
人を対象とした。6 県とは①カイロ県、②ポート・サイード県、③カフル・シェイフ県、④メヌフィーヤ県、⑤ベニー・スエフ県、そして⑥ソハーグ県である。
回答者の選別(サンプル抽出)は、①上記
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県の都市部・農村部の規模を考慮しつつ、一次 抽出単位を確率比例抽出法に依拠して選定したうえで、各単位の世帯数を確定し、②一次 抽出単位の人口統計学的特徴を踏まえて、質問票への回答を承諾した世帯のなかから乱数 表を用いて回答者1
人を選定する、という方法で行われた。質問票は
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問(うちフェイス・シート14問)からなっており、「シリア・アラブ共和国にお ける全国世論調査」を基礎とし、それに慶応義塾大学平成18
年度学術振興資金共同研究「エ ジプトの市民意識――世論調査の実施と分析――」が実施した調査で設定された質問やエ ジプト情勢に関する専門家の意見を踏まえた質問(質問 10~17、20-12~20-13、21、22、24~26、28~32)を加えることでまとめられた。質問票の作成には、岩崎氏と筆者の他、髙岡氏、浜
中氏、伊能武次氏(和洋女子大学人間・社会学系教授)、加藤博氏(一橋大学大学院経済学研究科教授)、 黒田安昌氏(ハワイ州立大学マノア校政治学部名誉教授)、鈴木恵美氏(早稲田大学イスラーム地域研究 機構研究院准教授)、富田広士氏(慶應義塾大学法学部教授)があたった。質問票全文は「アジアのな か の 中 東 」 ホ ー ム ペ ー ジ( http://www.econ.hit-u.ac.jp/~areastd/psme/Poll_Egypt_Quest_Ar.pdf 、 http://www.econ.hit-u.ac.jp/~areastd/psme/Poll_Egypt_Quest_En.pdf)を、単純集計結果については青山・浜 中監修[2009]、Administrative Office ed.[2009]を参照されたい。
以上、本節では「シリア・アラブ共和国における全国世論調査」、「社会成員の志向に関
3 事業の詳細については「中東における政治変動と政治的ステレオタイプの変化に関する研 究」ホームページ(
http://www.tufs.ac.jp/ts/personal/aljabal/namatiya.htm
)を参照のこと。第
3
章 アラブ諸国の世論調査結果に見る政治的認知地図する社会的研究」という二つの世論調査の内容を概説した。次に第