第三章 一定振幅・離散時間入力の2自由度 制御への導入
3.3 シミュレーション結果
3.3.1 1自由度制御系と2自由度制御系のシミュレーショ ン比較
本節では、1自由度制御系と2自由度制御系の制御入力と検出出力(位置)についてシミ ュレーションによる比較・検討を行う。
制御対象のモデルは、実機であるSPIDER駆動精密ステージをシステム同定することに より得た以下の2次系モデルを使用する。
) 45 . 257 (
9 . 1498 113699 .
1
s
P s (3.10)
シミュレーション条件としては、制御角周波数c=100rad/s、最大制御入力値 umaxを 10 とした。制御対象P(s)の相対次数が2であることを考慮し、
p
1( s ) F ( s )
がプロパーとなる ようにF(s)を設計する。すなわち、相対次数2の伝達関数となればよい。式(3.11)よりF(s) はそのまま目標値応答特性となるため、ここでは最も簡単な実現とし、2次の伝達関数で 次式とする。
)2
1 / ( ) 1
(
s s
s
F
(3.11)ここで、フィルタの角周波数を
s=150rad/s とする。
sを大きくすることにより目標値 応答特性を広帯域化できる。図 3.5(a)より、1自由度と2自由度制御系による位置決め 制御の結果。図3.5(b)はパルスによる制御入力の結果である。点線は1自由度のシミュ レーション結果、実線は 2 自由度のシミュレーション結果である。2自由度制御に目標値 に対しては、式(3.11)で指定したように広帯域でかつオーバーシュートのない応答を得る。ここでは、目標値r=0.05mmに対する時間応答波形及び、制御入力の応答についてのシ ミュレーション結果を図3.5に示す。また、オーバーシュートと整定時間を表3.1に示す。
得たデータから、1自由度より、2由度のオーバーシュート出てない、整定時間も早くにな ることがわかる。そして、2自由度制御系オーバーシュートが低減可能を確認できる。
44
表3.1:オーバーシュートと整定時間
Overshoot[%] Settling time[s]
1 自由度 7.6 0.23
2自由度 0 0.045
(a) Position
0 0.05 0.1 0.15 0.2 0.25 0.3 0.35 0.4 0.45 0.5
0 0.01 0.02 0.03 0.04 0.05 0.06
Time [s]
P os it io n [m m ]
reference 1自由度 2自由度
45
(b) Control Input 図 3.5: シミュレーション結果
0 0.05 0.1 0.15 0.2 0.25 0.3 0.35 0.4 0.45 0.5
-5 -4 -3 -2 -1 0 1 2 3 4 5
Time [s]
C on tr ol I np ut [ V ]
1自由度 2自由度
46
3.3.2 10 等分割と 2
n分割で DIC シミュレーションの比較
前節までは、1自由度と2自由度の有効性を確認してきたが、本節では、一定振幅・離散 パルス入力手法(DIC)を2自由度制御系に導入し、2自由度システムのみのときと制御入 力と検出出力(位置)についてシミュレーションによる比較・検討する。
制御対象のモデルは、実機であるSPIDER駆動精密ステージを考慮し、3.3.1節の式(3.10)
の2次系モデルを使用する。
シミュレーション条件としては、制御角周波数c=100 rad/s、10等分割と25分割の観測 周期Tmそれぞれを5 ms、8 ms。入力パルス時間間隔の最小値Tpminを0.5ms、最大制御入
力値umaxを10、分割条件は10と25とした。また、DICからの出力は3、0、-3の3値と
した。
ここで、フィルタの角周波数
s=150rad/sをとする。目標値r=0.05mmに対する時間 応答波形及び、制御入力の応答についてのシミュレーション結果を図3.6に示す。また、そ のときの2自由度システム及び、提案手法のオーバーシュートと整定時間を表3.2に示す。表3.2:オーバーシュートと整定時間
Overshoot[%] Settling time[s]
continuous 0 0.045
DIC10 等分割 × ×
DIC2
5分割 4 0.3
図3.6より実線がDICなし、点線がDIC10等分割、一点鎖線がDIC25分割である。図
3.6(a)に振幅条件が10等分割、25分割のとき、目標とする2自由度システムによる位置決
め制御の結果を比較して示す。DIC10 等分割では振動するが、DIC25分割では目標値に収 束できる。しかし、DIC25 分割で位置決めにかかる時間が若干遅くなり、オーバーシュー トが発生するが、位置決め制御は可能であることが確認できる。
図 3.6(b)は2自由度制御系と DIC を使って位置決め制御を行った際に生じたパルス
による制御入力の結果である。図3.6(b)からも、制御入力がパルスで出力される提案手 法でも位置決め制御が可能であることが確認できる。
47 (a)position
(b) control input
図 3.6: シミュレーション結果
0 0.05 0.1 0.15 0.2 0.25 0.3 0.35 0.4 0.45 0.5
0 0.01 0.02 0.03 0.04 0.05 0.06
Time [s]
P os it io n [m m ]
reference without DIC
discrete(DIC 10等分割) discrete(DIC 2n等分割)
0 0.05 0.1 0.15 0.2 0.25 0.3 0.35 0.4 0.45 0.5
-5 -4 -3 -2 -1 0 1 2 3 4 5
Time [s]
C on tr ol I np ut [ V ]
without DIC
discrete(DIC 10等分割) discrete(DIC 2n分割)
48