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第 4 章 RF パワーアンプのヒステリシス特性の測定

4.3. シミュレーション

表 4-1 に記載されているように,動作周波数を5.85GHz から6.75 GHzとして

GaN HEMTの入出力整合回路を設計した。また,VDDも表 4-1に合わせてVDD =

24 Vとした。VGGについては,RF信号が無い時のドレイン電流値 IDDsetを表 4-1

と同じ1.75 Aを合わせるために,−2.09 Vにした。設計手順は3.4節で述べた手順

と同じである。入出力整合回路の目標インピーダンスを,fRF = 5.85 GHz,6.3 GHz,

6.75 GHz に対してそれぞれ求めて,それらを実現する回路を設計した。図 4-2と

図 4-3は, fRF = 6.3 GHzにおけるソースプルとロードプルのシミュレーション結 果である。スミスチャート上に示されたインピーダンス点のHBシミュレーショ ンを実施した。ロードプル結果にはEffPRFoutの等高線を示し,ソースプルは利 得合わせに使うために PRFoutのみの等高線を示した。スミスチャートの特性イン ピーダンスは図 4-2が50 Ω,図 4-3が5 Ωとしている。図 4-3の結果から,ソー ス側の設定インピーダンスZST0として0.43 + j2.1 Ωを選んだ。出力回路インピー ダンスの選定に関しては,PRFoutEffの関係も考慮した。図 4-4に,負荷インピ ーダンスを変えた時のPRFoutEffの関係を示す。PRFout = 44.5 dBm付近でEffが高 くなる負荷インピーダンスを選定し,出力回路の設定インピーダンスZLT0は2.95 + j2.74 Ωとした。

図 4-2 ソースプルシミュレーションから得た出力電力の等高線 Fig. 4-2 PRFout contours obtained from source pull simulation.

PRFoutcontours, 2 dB step ZSTpoints

PRFoutmax.

Z0= 50 Ω ZST0=0.43 + j2.1 Ω

VDD= 24 V IDDset= 1.75 A (VGG= − 2.09 V) PRFin= 35 dBm fRF = 6.3 GHz

ZLT=2.95 + j2.74 Ω

図 4-3 ロードプルシミュレーションから得た出力電力と電力効率の等高線 Fig. 4-3 PRFout and Eff contours obtained from load pull simulation.

図 4-4 ロードプルシミュレーションにおいて負荷インピーダンスを変えた場合 の出力電力と電力効率の関係

Fig. 4-4 Load dependency of relationship between PRFout and Eff obtained from load pull simulation.

Effmax.

Effcontours, 2% step PRFoutcontours, 0.5 dB step ZLTpoints

PRFoutmax.

Z0= 5 Ω ZLT0=2.95 + j2.74 Ω

VDD= 24 V IDDset= 1.75 A (VGG= − 2.09 V) PRFin= 35 dBm fRF= 6.3 GHz

ZST= 0.43 + j2.1 Ω

Eff(%)

46 PRFout(dBm)

50

20 30

10

32 34 36 38 40 42 44

ZLT0= 2.95 + j2.74 Ω

40

VDD= 24 V IDDset= 1.75 A (VGG= − 2.09 V) fRF= 6.3 GHz

0

入出力整合回路は図 4-5に示す構成することとし,ソースプルとロードプルシ ミュレーションからそれぞれ選定したインピーダンスZST0ZLT0に合うように定 数を決定した。表 4-2に出力側の目標インピーダンスと入出力整合回路のパラメ ータを示す。

図 4-5 RFパワーアンプの入出力整合回路

Fig. 4-5 Input and output matching circuits of RF power amplifier. (a) Input matching circuit. (b) Output matching circuit.

GaN HEMT RF signal generator Cin2

Lin2

(a)

(b) Cout1 Lout1

GaN HEMT

Cin1 Lin1

Cout2 Lout2

Cout3 Lout3

Lout0 Load Cout0 (Z0= 5 Ω)

(Z0= 50 Ω)

表 4-2 RFパワーアンプの入出力整合回路の定数

Table 4-2 Parameters of input and output matching circuits of RF power amplifier.

図 3-6に示したRF特性シミュレーション回路の入出力整合回路を図 4-5に変 更して,入出力整合回路の設計を確認した。図 4-6はfRF = 5.85 GHz,6.3 GHz,

6.75 GHz において,PRFinを変えた場合のPRFoutEffを示している。また,表 4-1 に記載したTGI5867-25の性能の値も図中に示した。図 4-6(a)では,どの周波数も

PRFoutが 44.0 dBm 以上となっている。また,図 4-6(b)の Effは,カタログ値 44%

typ.に対してどの周波数も39% typ.程度であり,シミュレーションにおけるEff

誤差は5%程度であることが分かる。したがって,本論文で作成したGaN HEMT

の電気モデルの大電力動作時における発熱量はほぼ妥当なものであると考える。

Target load impedance

ZLT0(fRF= 5.85 GHz) 3.73 + j3.25 Ω ZLT0(fRF= 6.30 GHz) 2.95 + j2.74 Ω ZLT0(fRF= 6.75 GHz) 2.36 + j2.95 Ω

Input matching circuit

Lin1 0.052 nH

Cin1 60.0 pF

Lin2 0.03 nH

Cin2 25.0 pF

Output matching circuit

Lout0 15.22 nH

Cout0 0.05 pF

Lout1 0.21 nH

Cout1 6.76 pF

Lout2 0.33 nH

Cout2 2.98 pF

Lout3 0.71 nH

Cout3 0.57 pF

図 4-6 入出力整合回路を設計したRFパワーアンプのRF特性シミュレーション 結果

Fig. 4-6 Simulated RF characteristics of GaN HEMT RF power amplifier with input and output matching circuits. (a) Output power. (b) Power efficiency.

40 PRFout(dBm)

PRFin(dBm) 40

30 35

25 30 35

20 50

VDD= 24 V IDDset= 1.75 A (VGG= − 2.09 V)

44 dBm

45 fRF= 5.85 GHz

fRF= 6.75 GHz fRF= 6.30 GHz

(a)

40 Eff(%)

PRFin(dBm) 30

0 20

25 30 35

20 50

VDD = 24 V IDDset= 1.75 A (VGG = − 2.09 V)

44%

40 fRF = 5.85 GHz

fRF = 6.75 GHz

fRF= 6.30 GHz

10

(b)

次に熱電気連成シミュレーションを行う。手順は3.5節と同じであるが,4.1節 で述べたように,VDDは 20 V 固定とし,PRFoutの飽和レベルからバックオフした レベルで動作するようにPRFinを設定する。また,AB級動作するようにVGG = −2.68

VとしてIDDset = 0.53 Aに設定した。入力信号は,fM = 2.5 MHz,M=1の正弦波で

振幅変調とした。fRF は位相変動の影響が現れやすいことを考慮して,表 4-1 の 推奨周波数である5.85 GHzから6.75 GHzまでの範囲外であるが,5.8 GHzを選定 した。図 4-7 はRF パワーアンプの熱電気連成シミュレーション結果を示してい る。横軸は変調周期TMで正規化している。 図 4-7(a) はVRFinのエンベロープを 示している。縦軸はt = −0.25TMの時のVRFinのエンベロープ振幅値で正規化した。

VRFint = −0.5TM からt =0までは増加し,t = 0からt = 0.5TM までは減少する。

図 4-7(b)は VDDを示しており,一定電圧 20 V である。図 4-7(c)と(d)は PRFoutPdisを示している。PRFoutの最大値は16 Wであり,Pdisは10 Wから24 Wの間で 変化している。

図 4-7 RFパワーアンプの入力信号,直流印加電圧,出力電力,消費電力のシミ ュレーション結果

Fig. 4-7 Simulation results of RF power amplifier. (a) VRFin vs. time. (b) VDD vs. time. (c) PRFout vs. time. (d) Pdis vs. time.

図 4-8はt = 0での温度からの温度差を示している。図 4-9はVRFinのエンベロ

ープが増加する時のTCHと減少する時のTCHの差であり,TCHのヒステリシスが発 生している。図 4-9から,t= 0.25 TMにおいてTCHのヒステリシスは2.8 Kである。

0 2 1 Normalized envelope of VRFin

Rise period of VRFin Fall period of VRFin

IDDset= 0.53 A (VGG= − 2.68 V) fRF= 5.8 GHz fM= 2.5 MHz (a)

VDD(V) 0 20 10

(b)

15 20

0 PRFout(W)

(c)

−0.5 0 0.5

30

Pdis(W)

tTM)

−0.25 0.25 10

0

(d) 5

20 10

図 4-8 RFパワーアンプ内のGaN HEMTのチャネル温度変化 Fig. 4-8 TCH variation of GaN HEMT in RF power amplifier.

図 4-9 RFパワーアンプ内のGaN HEMTのチャネル温度ヒステリシス Fig. 4-9 TCH hysteresis of GaN HEMT in RF power amplifier.

図 4-10 はRFパワーアンプのAM‒AM特性と AM‒PM特性のシミュレーショ ン結果である。横軸はVRFinのエンベロープであり,t = −0.25TMでのエンベロープ の振幅値で正規化している。AM‒PM 特性の位相は,時間領域のデータ VRFin

VRFoutを FFT して周波数領域のデータに変換し,基本波の位相差から通過位相を

求めた。AM‒AM 歪にはヒステリシスが現れていないが,AM‒PM 歪にはヒステ

−0.5 0 0.5

0

TCH(t) TCH(0)

tTM)

−0.25 0.25

−10

VDD= 20 V IDDset= 0.53 A (VGG= − 2.68 V) fRF= 5.8 GHz fM= 2.5 MHz Rise period of VRFin Fall period of VRFin

(K) 2

−8

−6

−4

−2

2

0 0.5 0

tTM) 6

10 12

0.25 TCH(t) TCH(-t)

(K)

VDD= 20 V IDDset= 0.53 A (VGG= − 2.68 V) fRF= 5.8 GHz fM= 2.5 MHz

4 8

リシスが発生している。第3章のシミュレーションでは,直流印加電圧が一定の 場合における AM‒PM 歪のヒステリシスは図 3-14(a)に示すように 0.2 度であっ た。3.5度のヒステリシスが図 4-10(b)で発生しているのは,インピーダンス整合 回路の違いのためである。4.1節で述べたように,実測においてはAM‒PM歪に着 目する。

図 4-10 RFパワーアンプのAM‒AM歪とAM‒PM歪

Fig. 4-10 AM‒AM and AM‒PM distortions of RF power amplifier. (a) AM‒AM distortion.

(b) AM‒PM distortion.

0 4

−4 2

0 2 4 6

(dB)

Gain deviation (dB)

Normalized envelope of VRFin Rise period of VRFin

Fall period of VRFin

(a)

−2

−2

IDDset= 0.53 A (VGG= − 2.68 V) fRF= 5.8 GHz fM= 2.5 MHz

Rise period of VRFin

Fall period of VRFin

(b) 3.5 deg

(hysteresis)

Phase deviation (deg)

10

5

0

−10

−5

0 2 4 6

Normalized envelope of VRFin (dB)

−2

IDDset= 0.53 A (VGG= − 2.68 V) fRF= 5.8 GHz fM= 2.5 MHz

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