第 3 章 リサーチデザイン
4 サンプル企業と上場企業全体の比較
このような流れで取った企業サンプルは、全上場企業の1%ぐらいしかない。
この中では、一つの企業が一回以上出ることがある。経営者が2013~2019年度の間に一 回以上、減価償却方針を変更する場合は、減価償却方針の変更がある年度ごとに、サンプル セットに入れる。減価償却方針の変更を行うには様々な制限があり、コストがかかるにもか かわらず、本研究の203個のサンプルの中では、5社は2回減価償却方針の変更を行って、
それぞれサンプルとして入れた。財務諸表の注記を読んで、それぞれの変更に関する説明を 調べてみたら、会計方針変更の種類はすべて同じく、定率法から定額法に移行するパターン であるが、適用する資産の範囲が異なることが判明した。
このような流れで取った企業サンプルを、日経業種中分類によって分けてみると、業界分布 は下の表7で示している。
30 表7 サンプル企業業種分布
度数 パーセント
化学工業 25 12.3
機械 25 12.3
電気機器 25 12.3
サービス業 24 11.8 自動車・自動車部品 18 8.9
食品 15 7.4
医薬品 11 5.4
商社 8 3.9
非金属及び金属製品 6 3.0 精密機器 6 3.0 その他製造業 6 3.0
小売業 6 3.0
繊維 5 2.5
鉄鉱業 5 2.5
その他 18 8.9
合計 203 100.0
全サンプル203社のうち、化学工業、機械及び電気機器業界はそれぞれ25企業・年度で あり、一番高い割合を占めている。それに続いてサービス業も24企業・年度があり、この 四つの業種は合計で、全サンプル約48.8%の割合を占めている。業種分布は比較的に集中 しているように見える。
一方、日経ニーズFQでデータを入手できる全上場企業(3185社)の中では、業種分布は下 の表8で示している。
31 表8 上場全体業種分布
度数 パーセント
サービス業 815 25.6
商社 260 8.2
小売業 207 6.5
電気機器 205 6.4
機械 190 6.0
化学工業 180 5.7
建設 141 4.4
その他金融業 118 3.7
食品 113 3.5
不動産 113 3.5
非金属及び金属製品 106 3.3
その他 735 23.1
合計 3185 100.0
サービス業の企業の数が極端に多く、全体の25.6%を占めている。続いて、商社、小売 業、電気機器の企業数も200社を超えていて、比較的に多い。この四つの業種の合計で全 体の46.7%の割合を占めている。業種分布について、サンプル企業と同じく、比較的に集 中している傾向がある。
この二つの表を比較してみると、サービス業、電子機器、機械では両方ともに割合が多 い。しかし、減価償却方針の変更を行っている企業では、サービス業、商社及び小売業の ほうが相対的に、全上場企業の場合より低くなる。その代わりに、全上場企業の場合に比 べて、化学工業、機械、電気機器業種の企業の割合は高い。すなわち、広い意味での製造 業の企業は、サービス業の企業よりも、減価償却方針の変更を行う傾向がある。その原因 を追究してみると、製造業において、償却固定資産の割合が比較的に多く、償却方針の変 更による当期純利益への影響額が比較的に高く、変更するか否かの意思決定が他の業種に 比べて、重要であることは一つの原因と考えられる。サービス業の企業では、償却方針の
32 変更が重要でない上、変更しない傾向がある。
また、減価償却方針の変更をしている企業の規模を見てみると、純資産合計の平均値で は327,305百万円であるのに対して、全上場企業2014年度の平均純資産は123,637百万円で ある。このデータから見れば、近年においては、比較的に規模が大きい企業が減価償却方 針の変更を行う傾向がある。これは、規模が大きい企業ほど、財務情報の質に関心を持 ち、規模が小さい企業では、比較的に低コストで財務諸表を作る傾向があり、減価償却方 針の変更による会計・税務上の手続にコストをかける意欲がない可能性がある。
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