第5章 ミャンマー
③ コンビニエンスストア
ミャンマーにはまだコンビニエンスストアは非常に少ない。2011 年に、タイの大手 サン 108 が City Mart Holding と協力し、フランチャイズ(FC)方式で「108 ショップ」
を展開しており、2013 年 1 月時点でヤンゴンに 15 店舗ある(図表 5-22)。
2012 年には、ローソン、ミニストップ、ファミリーマートなどが相次ぎ進出検討を 発表している(注)。背景には、日本国内におけるコンビニ市場の飽和と、6,000 万人超 の人口を抱えるミャンマーへの大型消費地として期待があると思われる。
注:ローソンについては日本経済新聞電子版報道(2012 年 4 月 5 日付)、ミニストップについては日本経 済新聞電子版報道(2012 年 5 月 21 日付)、ファミリーマートについては msn 産経ニュース報道(2012 年 12 月 4 日付)。
タイの108がFC展開中
図表 5-22: ミャンマーのコンビニエンスストア(写真)
左:108 ショップ、右:abc 撮影:大和総研
(3) 規制
2012 年 11 月に外国投資法が改正され、外国企業は、一定条件を満たすことで、小売 業への参入が可能となった(本章 5 節(1)「ミャンマー外国投資法」参照)。旧外国投 資法のもとでは、地場の中小零細小売業を保護するため、外国企業の小売業への参入 自体が規制されていた。このため、外国投資法に基づきミャンマー投資委員会(MIC)
よりサービス業が認可された実績はなく、外資企業の認可取得は容易ではなかった。
実際には、外国投資法に基づかず、現地企業と提携しフランチャイズ形式での出店が わずかにみられる程度であった。
外資の小売への参入
規制緩和
4. 外食業
(1) 市場規模と業態の特徴
ミャンマーでは外食文化が一般的ではなく、外食産業はあまり発達していない。
Euromonitor の推計によると、2011 年の飲食店の売上高は 27.7 億ドル。2001 年から 2011 年までの 10 年間では年率+5.6%で拡大している。しかし、その規模は小さく、ベ トナムの 1 割にも満たない。また 2011 年時点の店舗数は 2.6 万店で、同 10 年間では 年率+3.0%で拡大しているが、店舗数はベトナム(55.1 万店)の 5%程度しかない。
売上高の構成比は、フルサービスレストランが最大である(38.1%)。カフェ・居 酒屋は売上高、構成比とも 10 年間で大幅増となる一方、屋台は売上高、構成比とも大 幅減となっている(図表 5-23)。
図表 5-23: 飲食店の売上高および店舗数の推移
構成比 伸び率
(100万ドル) 売上高 構成比 売上高 構成比 (差分) (年率)
外食店 1,608 100.0% 2,771 100.0% 0.0% 5.6%
フルサービスレストラン 595 37.0% 1,057 38.1% 1.2% 5.9%
カフェ・居酒屋 350 21.8% 825 29.8% 8.0% 9.0%
屋台 606 37.7% 800 28.9% -8.8% 2.8%
ファストフード 45 2.8% 75 2.7% -0.1% 5.2%
セルフサービスレストラン 11 0.7% 12 0.4% -0.3% 0.3%
ホームデリバリー・テイクアウト 1 0.1% 2 0.1% 0.0% 5.4%
構成比 伸び率
(店) 店舗数 構成比 店舗数 構成比 (差分) (年率)
外食店 19,621 100.0% 26,461 100.0% 0.0% 3.0%
フルサービスレストラン - 27.0% - 29.5% 2.4% 3.9%
カフェ・居酒屋 - 9.7% - 12.6% 2.8% 5.7%
屋台 - 62.0% - 56.6% -5.4% 2.1%
ファストフード - 1.0% - 1.2% 0.2% 4.9%
セルフサービスレストラン - 0.2% - 0.2% -0.1% 0.2%
ホームデリバリー・テイクアウト - 0.1% - 0.1% 0.0% 3.6%
2001 2011
2001 2011
注 :データは推計値
出所:Euromonitor より大和研作成
(2) 主な外食企業
欧米諸国の経済制裁下にあり、マクドナルドやケンタッキーフライドチキン(KFC)
など欧米系ブランドのチェーン展開はまだない。進出例としては、タイの日本食レス トランチェーン「Fuji」を展開するフジグループが、富裕層をターゲットとして 2012 年にヤンゴンに出店した。一方、地場企業では、麺類を提供する YKKO のように、ヤン ゴン、マンダレー、ネピドーで店舗展開している店も少ないながら存在する。
ミャンマーでは、ビルマ料理店(図表 5-24)の他、中国料理やインド料理の店が多 いが、最近は日本食店が徐々に増えつつある。JETRO の調査(2012 年 6 月時点)によ ると、ヤンゴン市内には、日本食レストランが 15 店舗ほどある(図表 5-25)。増加す る日本からの出張者等の口を満足させうる店の数としては十分でなく、需要に対して
外食業の発展も遅れ
ている
外資系チェーンの参 入はほぼなし
日本食レストランが 急増中
屋台の構成比最大
料理をする時間的余裕のない人が増えると予想される。また、所得水準の向上で、以 前よりも気軽に外食する人も増えていくだろう。このようなニーズの高まりにより、
タイやベトナムなどでみられたのと同様に、単価が比較的安いピザなどのファストフ ードチェーンあたりから徐々に普及し始めるのではないだろうか。なお参入形態とし ては、参入しやすいフランチャイズ形式が現実的であろう。
図表 5-24: 地場のビルマ料理店の様子
撮影:大和総研
図表 5-25: ヤンゴンの主な日本食レストラン
名称 設立年 概要
一番館(Ichiban-Kan) n.a. 日本人女性が経営する老舗の日本料理店。お昼時 は、日本人客を中心に満席となることも多い ふるさと n.a. 古くからある日本人オーナーが経営する日本料理
店
天理スタミナラーメン n.a. 奈良県天理市に本店のある天理スタミナラーメン のヤンゴン店
ながさき亭 2003 高級黒毛和牛(長崎牛)の専門店。メニューは、
焼肉、しゃぶしゃぶ、ステーキなど
KOSAN 2009 日本人オーナーが経営する居酒屋風バー。人気メ
ニューはハンバーグ。市内に2店舗を構える M"s Restaurant & Dining Bar 2011 日本のレストランで12年間修行したミャンマー人
シェフがオーナーを務める日本式洋食店
おいしい寿司(Oishii Sushi) 2011 日本のびっくり寿司で修業を積んだシェフらが共 同経営する寿司屋
勝(Katsu) 2012 中国、タイなどへも展開中の日本料理のチェーン 店
フジ(Fuji Japanese Restaurant) 2012 タイの日本食レストランチェーンによるミャン マー1号店。ラオスでも店舗展開中
出所:各種情報より大和総研作成
(3) 規制
飲食店営業を行うためには、店舗を構える地域の市開発委員会(City Development Committee: CDC)へ申請し、「飲食店営業許可証」を取得しなければならない。例え ば、ヤンゴン地域の場合、ヤンゴン市開発委員会(Yangon City Development Committee : YCDC) 、マンダレー地域であればマンダレー市開発委員会(Mandalay City Development Committee: MCDC)となる(図表 5-26)。
現地飲食店へのヒアリングによると、許可証の料金は店舗の規模によって異なる。
飲食店営業許可証の 取得が必須
許可証の料金は、店舗
ローカルレベルのカフェの場合は約 5 万チャット(5,000 円)、酒類も販売できるレス トランの場合は 5~8 万チャット(5,000~8,000 円)で、許可証の有効期限 は 1 年で ある。店舗で酒類を扱う場合は、追加で地域のオフィスへ申請する必要がある。手数 料は扱う酒類により異なり、ビールやワインで 60 万チャット(6 万円)、ウイスキー などのスピリットで 60 万チャット(6 万円)である。なお、調理担当者の調理師免許 の取得は不要である。
申請後は市開発委員会が任意で選んだ周辺住民(10 世帯程度)からの許可も必要と なる。このため、店舗を準備したものの、認可が下りず営業できないケースもある。
また、年に一度、市の衛生局担当者による衛生査察が行われる。査察項目は、従業員 の健康診断、水質検査、食物の衛生検査の 3 つである。許可証の申請・更新や衛生査 察に際しては、賄賂も皆無ではないとの話もあり、留意が必要である。
図表 5-26: 外食の営業許可証
申請先 店舗を出す地域のヤンゴン市開発委員会(YCDC)(ヤンゴンの場合)
申請書
経営者の顔写真 パスポートの写し 土地の契約書 など
ローカルレベルのカフェの場合、5万チャット(5,000円)程度
レストランの場合、5~8万チャット(5,000~8,000円)(規模による)
ライセンスの更新 毎年
その他 申請に際し、調理担当者の調理師免許は不要 申請先 酒類を扱う場合は、追加で地域のオフィス(役所)
ビール(生を除く)、ワイン:60万チャット(6万円)
ウイスキーなどのスピリット:60万チャット(6万円)
生ビール:150万チャット(15万円)程度 ライセンスの更新 毎年(ただし生ビールについては、永続)
ライセンス料
ライセンス料
飲食店営業許可証
酒類販売許可証 申請に必要な書類
出所:現地ヒアリングより大和総研作成
年に1度、市の衛生査
察が行われる
5. 外資規制と会社設立
(1) ミャンマー外国投資法
民主化を進める新政権は 2012 年 11 月、旧外国投資法(1988 年制定、旧法)を改正 し、新外国投資法(The Union of Myanmar Foreign Investment Law、新法)を制定し た。これに伴い旧法は廃止され、新外国投資法が今後ミャンマーにおける外国投資受 け入れ政策の根幹となる。さらに 2013 年 1 月には、具体的な手続きや規則を定めた施 行細則が発表された。
新法は、一部の規制が緩和され、恩典等も含めて外国企業にとって若干魅力的な内 容に改善された。租税減免措置としては、進出後の法人税の免税期間が 3 年から 5 年 に延長され、優遇税制が強化された(図表 5-27)。機械や原材料に対する輸入関税の 減免措置も、進出企業にとって魅力的な措置となっている。この他に、土地使用権の 期間が最長 60 年から 70 年に延長され民間企業からのリースも可能になるなども、魅 力が高まった点である。
一方、雇用義務の発生や外資規制(本節(2)「外資規制」参照)については、留意す る必要がある。熟練労働者を雇用する場合は、事業開始後 2 年以内にミャンマー人労 働者を 25%以上、次の 2 年以内に 50%以上、次の 2 年以内に 75%以上雇用するよう定 められている。また未熟練労働者については、ミャンマー人のみが認められる。
図表 5-27: 新外国投資法における租税減免措置
1 事業を開始後、5年間の所得税免除。免除期間終了後、国に利益をもたらす場合は、事 業の成功度合いに応じた期間所得税の減免
2 事業から生じ、1年以内に事業に再投資された利益に対する所得税の減免 3 法人所得税の減免開始後2年以内の損失を、その後3年間にわたり繰越し
4 機械・建物等の固定資産について国が定める比率で利益から当該減価償却額を控除する 権利
5 輸出製品より得られる利益に対する最大50%までの所得税の軽減
6 外国人に対する所得について、国内居住国民に適用される税率により所得税を支払う権 利
7 課税対象所得から、ミャンマー国内で行われた研究開発事業にかかる費用を控除できる 8 輸入された機械・部品・材料に対する関税・その他の内国税の減免措置
9 最初の3年間に輸入された原材料に対する関税・その他の内国税の減免措置 10
MICの認可により当初の投資事業が拡大した場合は、拡大事業に必要となった輸入した 機械、設備、機器、機械部品、取替部品、材料に対する関税・その他の内国税について の減免措置
出所:JETRO 資料「外国投資法(日本語訳)」より大和総研作成
(2) 外資規制
① 食品加工業
新外国投資法では、外国企業による投資が制限または禁止される分野が規定されて いる。国家計画経済開発省が 2013 年 1 月 31 日に発表した通達によると、ミャンマー 企業(個人)にのみ認められる事業分野として、伝統的な食品製造が挙げられている
(図表 5-28)。具体的にどのような食品が含まれるのか現時点では明らかにされてい ないが、伝統食品産業に従事する地場の小規模企業の保護が背景にあると考えられる。