第4章 ベトナム
② インスタント麺
1998 年と 2012 年におけるカテゴリー別シェアを比較すると、ベーカリーのシェア は 17.3%から 12.2%に低下する一方で、麺類が 6.5%から 14.4%まで上昇している。
ベトナムではフランスの支配下にあった経験からフランスパンなどのパンをよく食べ るが、インスタント麺もよく食べる習慣があり、麺類の 99%以上をインスタント麺が 占めている。世界インスタント麺協会の統計によると、2011 年のベトナムのインスタ ント麺消費量は 49 億個で、中国・香港、インドネシア、日本に次ぐ第 4 位の規模。1 袋あたり 15 円程度で、袋から器に出し、お湯を注いで数分待つだけで食べられる手軽 さも人気の一因のようだ。
スーパーマーケットなどでは通路を挟んで両脇の棚が全てインスタント麺で占めら れており、棚の上には箱(30 袋入りなど)が並んでいる。数箱まとめ買いしている家 族も多く、国民食となっている様子がうかがえる。地場では Masan や VIFON、外資では エースコック(日本)、味王(台湾)など様々な企業の商品があるが、エースコック がシェアの 50%強を占めている。なお、2012 年には日清食品がノンフライ麺で進出し ている。
図表 4-6: インスタント麺消費量上位国における推移
単位:100万個
2007年 2008年 2009年 2010年 2011年
1 中国・香港 45,810 42,530 40,860 42,300 42,470 2 インドネシア 14,990 13,700 13,930 14,400 14,530
3 日本 5,460 5,100 5,340 5,290 5,510
4 ベトナム 3,910 4,070 4,300 4,820 4,900
5 米国 3,900 3,950 4,080 3,960 4,030
出所:World Instant Noodles Association より大和総研作成
容器のタイプ別でみると、現状は圧倒的に袋タイプのインスタント麺の構成比が高
国民食であるインス
タント麺
カップ麺比率が上昇
ト麺の売上高の半分以上をカップ麺の売上が占めている。器を用意しなくて済むこと から、店内のイートインスペースや自宅以外で手軽に食べられるため、現状の店舗内 の什器をみても、スーパーマーケット等のような他の販売チャネルに比べてカップ麺 の売場が多く用意されていることが分かる。日本でもかつて、コンビニエンスストア の出店増に伴ってカップ麺の売上が増加している。
図表 4-7: 袋麺とカップ麺の比率
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 (年)
カップ麺 袋麺
出所:Euromonitor より大和総研作成
(3) 原材料の調達環境
現地の食品加工企業へのヒアリングによると、砂糖、油、エビやイカをはじめとす るシーフードなどは国内調達している。小麦粉については、海外から輸入した小麦を 国内の製粉業者経由で調達しているケースが多く、品質は特に問題ない。また一部、
供給企業に原材料の品質調整を依頼するなどの工夫をしている食品加工企業も見られ た。
ただし、高品質の原材料については国内調達が難しい。乳製品や調味料、香料、パ ッケージ(容器や蓋用のフィルム)などは海外から輸入している企業が多かった。
原材料を輸入する場合は、申請が必要となる(詳細は本節(6)「規制」参照)。ベト ナムでは政府が国内産業を保護する意向を反映して原材料の国内調達が推奨されてい ることから、申請の際には、その原材料が国内で調達できない旨を説明する必要があ るようだ。
国内調達は容易では
ない
図表 4-8: 主な輸入食品
0 20 40 60 80 100 120
00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 (年)
(10億ドル)
0 200 400 600 800 1,000 1,200
(100万ドル)
輸入額 小麦(右軸)
乳製品(右軸)
植物性油脂(右軸)
出所:ベトナム統計総局より大和総研作成
(4) コールドチェーンの普及状況
全国規模で低温帯を扱える輸送業者は少なく、ベトナムでのコールドチェーンはま だ普及していない。
ベトナムの食品売上高の 96%を占めているトラディショナルトレード、特に街中に ある市場などでは、生肉や切られた魚、貝などが炎天下で販売されている。食品市場 全体では、低温帯で取り扱う商品自体はまだ少なく、売上高でみると要冷凍食品の割 合は 3%程度と僅少である。そのため、食品加工企業や物流企業で冷凍・冷蔵トラック を自社保有している企業は少ない。
一方、スーパーマーケットなどのモダントレードの販売スペースをみると、冷蔵食 品や冷凍食品のスペースが多くとられており、乳製品や食肉加工品、シーフード、春 巻や肉まんなどの惣菜半製品などが並んでいる。冷凍・冷蔵車を保有しているのは、
一部の日系やその他外資系の輸送業者に加え、低温帯商品を製造する一部の大手食品 加工企業程度である。ベトナム製の冷凍・冷蔵車は構造が日本製などと比べて劣るた め、海外から特注して輸入する必要がある。このため、資金力のない物流企業では冷 凍・冷蔵車の保有は難しい。現状では、発泡スチロールの箱やクーラーボックスの中 に保冷材や氷と冷凍商品、冷蔵商品を混載して運ぶ方法が多い。「比較的涼しい夜間 に運ぶことで低温輸送できている」との考えや、小売店に納品された要冷蔵商品が冷 蔵庫の外で放置されているなど、温度管理への意識はあまり高くないようである。
また、家庭の冷蔵・冷凍庫の普及率が全国では 43%(2011 年)と低い。しかし、冷 蔵・冷凍庫の普及率上昇に加え、モダントレード店舗の増加に伴うコールドチェーン の充実や、食品の安全や衛生を意識する人が増えてきていることから、今後都市部を 中心に、徐々にコールドチェーンが発展していくだろう。
ただしコールドチェーンが普及したとしても、全国規模でのコールドチェーン構築 には相当の時間を要すると思われる。食品加工企業が集中する南部のホーチミンと北 部の首都ハノイの間は約 1,700km もあり、両都市を結ぶ幹線道路の整備も十分ではな
都市部を中心に普及
していく
コールドチェーンは 発達し始めたところ 要冷凍食品は3%程度
モダントレードでは
要冷凍食品が多く見
られる
図表 4-9: コールドチェーンの実態
左:市場で売られている食肉(ホーチミン) 中央:市場で売られているシーフード(ハノイ) 右:Vinamilk の保冷車
左:大型冷蔵トラック(中央)と小型冷蔵トラック(右) 中央:冷蔵販売されている食肉加工品 右:アイスクリーム用の冷凍庫 撮影:大和総研
(5) 成長が期待されるカテゴリー
今後成長が期待されるカテゴリーとして、「安心・安全な食品」と「テイクアウト 商品」を取り上げる。
近年、産地が不明の野菜や、不衛生な売り場、肉の色味を良く見せるために着色料 を使用、鶏などに水を注入して重量を水増しするなど、食の安全を脅かす問題が多く 発生、報道されており、人々は食品の安心・安全について敏感になっている。
特に子どもの食事にかなり気を遣う人々が多く、2008 年に中国産の粉ミルクにメラ ミンが混入されているという報道以降、ワーカークラスでも価格の高い日本製やオー ストラリア製の粉ミルクを購入する家庭が増えているようである。また、ベトナムで は食品から摂取できる栄養は少ないと考えるようで、粉ミルクの栄養価を信頼し、5 歳くらいまでの子どもや妊産婦なども粉ミルクを飲む習慣がある。さらに成人用の健 康促進や滋養強壮の商品まで、多くの種類が販売されている。政府は 6 ヵ月までの乳 児には母乳育児を推奨しているが、ベトナムの母乳育児の割合は 19%に留まっている
(UNICEF、2012 年)。
外食の文化が根強いベトナムでは、屋台やレストランで購入したものを持ち帰って 食べるテイクアウトの習慣もある。冷蔵・冷凍食品が増えてきているように、より手 軽な食事が求められるようになってきている。ファストフードを扱うコンビニエンス ストアや惣菜を販売するスーパーマーケットが増えてきていることや、2015 年以降は 外国企業による飲食店の出店が可能となり店舗数の増加が見込まれることから、テイ クアウトのカテゴリーが拡大する可能性がある(外資企業に対する飲食店出店規制に ついては 4 節(3)「規制」参照)。
低価格を強みとする屋台に対抗できるかという点が課題となるが、中食・外食向け
テイクアウトの習慣
がある
安心、安全を求めるベ
トナム人
の具材加工企業などが進出することで、テイクアウト商品の低価格化が進むと予想さ れる。また、少し高くても「清潔・安心安全・高品質」への志向が増加していること から、屋台からのシフトを促進させると考えられる。
図表 4-10: イートイン、デリバリー、テイクアウトの割合
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
99 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16(年)
イートイン デリバリー テイクアウト
82.6%
16.3%
1.1%
出所:Euromonitor より大和総研作成
(6) 規制
近年、食品に対する不正が多く取り上げられるようになった影響から、2003 年に施 行された食品安全衛生法令に代わって 2011 年に食品安全法が施行され、食品の安全・
衛生について厳しく管理されるようになった。
食品安全法によると、食品安全の管理責任は保健省(Ministry of Health:MOH)、
農業農村開発省(Ministry of Agriculture and Rural Development:MARD)、商工省
(Ministry of Industry and Trade:MOIT)および各地域の人民委員会の保健局が分 担している。
保健省傘下にはベトナム食品局(Vietnam Food Administration:VFA)があり、食 品の衛生、安全性や品質を管理する責任を持つ。食品の品質・安全基準の策定や、食 品安全に関する法律の編纂、規制品目の制定、食品安全検査や食品安全研究に関する 作業を行っている。
図表 4-11: 食品別、項目別の管轄官庁
管轄 対象
保健省 ミネラルウォーター、機能性食品、食品添加物、食品加工助剤、食品包装材、食 品容器など
農業農村開発省 農産物、林産物、海産物、塩、およびそれらの加工品など