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第 5 章 ゲーミフィケーションを活用した自発的コラボレーション支援の検証

5.2 システム設計と実装

5.2.2 ゲームルールとしての活動設計

次に,具体的なゴール設定と,ゴールに対してどのような活動により課題解決を行うか というプロセスの設計を行う.設計指針に基づき,以下の 2 つのセッションを行う. 

図 5-1 ワークシート 

第 5 章 ゲーミフィケーションを活用した自発的コラボレーション支援の検証 

(3) 課題に関して具体的なゴールと具体的な行動との関係を明らかにし,ゲームの ルール設計を行うセッション 

(4) 実際にゲーム化するために,行動におけるポイント(評価値)などを具体的に実装 するセッション 

具体的なセッションのプロセスは以下の通りである. 

(3) 課題に関して具体的なゴールと具体的な行動との関係を明らかにするセッション  当事者が抱える課題は多種多様であるため,課題の当事者が課題解決に必要な行動を核 とした課題解決プロセスを参加型で設計できる必要がある.また,参加者自身が適切に行 動できているかについての明確な手がかり,すなわちフィードバックを与える仕組みも必 要である.そこで本セッションでは,2 つのワークを実施する.1 つ目は実際に持続させた い行動を明確化すること,2 つ目はそれらをフィードバックと結び付けることより,具体 的にゲーム要素を加味することである. 

1 つ目のワークでは,課題解決のために持続的に行う必要がある行動を明確化すること を目指す.明確化する行動は,目的とする課題解決に効果があり,かつ参加者自身の行動 に意味を与え,適切な難易度とすることが求められる.参加者は行動したことや,行動か ら得られた気づきを他の参加者と共有する.2 つ目のワークでは自分が適切に振る舞って いるかどうかについての明確な手がかりを与えるフィードバックについて設計する.この フィードバックは,社会ネットワークの構築の観点から課題に取り組むユーザ同士で行う.

具体的には,フィードバックを他のユーザに与えることと,他のユーザからフィードバッ クを受けることの 2 つが含まれる.フィードバックの設計のために,どのようなときに共 有された行動を評価しフィードバックするか,共有した行動に対してフィードバックされ たいかを対話によって決める. 

以上のワークによって決められたゲーム作りの要素となる活動には次の 3 つがある. 

1. ユーザ自身が行動し共有すること  2. 他者の行動にフィードバックすること  3. 他者からフィードバックを受けること 

これら 3 つがユーザの持続的な行動を生み出す動機づけとどのような影響関係にあるか,

さらにこれら一連の行動が目的とする課題解決のゴールとどのような影響関係にあるかを 検討し,システム思考 [90] の記法によって記述したものが図 5-2 ゲーム設計のための連関 図である7. 

       

7矩形はアクションや状態を表し,矢印はそれらの影響関係を表す.+の記号は矢印元のアクション や状態が増加すると矢印先の状態を増加させる正の相関があるという関係を表す. 

第 5 章 ゲーミフィケーションを活用した自発的コラボレーション支援の検証 

図  5-2  ゲーム設計のための連関図では,たとえばモチベーションが上がると行動が増え,

行動することで気づきが増え,気づきが増えると共有が増えるという関係を表している.

そして,共有が増えるとフィードバックが増え,それによりモチベーションが上がるとい う循環関係を表している.さらにこの連関図は,後述する設計したゲームをオンラインで 実行することができるゲーミフィケーション・プラットフォームに実装することができる ゲームの制約も表している.この図を用いてゲーム作りを行うことで,ユーザが行動の関 係性を理解し,事前の知識を必要とせずにゲーミフィケーション・プラットフォームに実 装可能な範囲でゲームの設計に関与できる. 

ワークショップでは,この連関図を用いて共通の課題を持つグループの参加者が行動を 共有したとき・フィードバックしたとき・フィードバックされたときのポイントをそれぞ れ設計するプロセスとした.これにより,フィードバックの強さを調整し全体の行動での 優劣をつけることができるようになる.このような一連の行動やフィードバックを通じて ユーザはポイントを獲得し,ポイントによって行動量や行動の質を把握し,他のユーザと 比較することで競争を意識させることを目指す.以上のプロセスにより,共通する課題解 決のための行動を核としたゲームのルールの設計を行った. 

(4) 実際にゲーム化するために,行動におけるポイント(評価値)などを具体的に実装する セッション 

本セッションでは,次節で詳細に説明する設計した行動をオンラインでゲーム化するこ とができるプラットフォーム上への実装を行う.ゲームの実装はウェブ・フォームによっ て 行 う こ と が で き る . グ ル ー プ の 中 か ら ゲ ー ム オ ー ナ を 1 人 決 め , ゲ ー ム オ ー ナ の Twitter アカウントを利用してプラットフォームにログインする.新規ゲーム作成のメ

図 5-2 ゲーム設計のための連関図 

第 5 章 ゲーミフィケーションを活用した自発的コラボレーション支援の検証 

ニューから,ゲームの概要とルールを説明する文章の記入と,Twitter 上でそのツイートが ゲームに関するものかを判断するために決めるハッシュタグと呼ばれる文字列を決める.

次に,(3)  で決定した,各行動に対するポイントの入力を行う.以上の作業からプラット フォーム上への実装が完了し,ゲーム参加のためのユニークな URL がシステムから発行さ れる.他の参加者は,この URL を通じてゲームへ参加する.