[図表 3-4-2]はエディオンの各キャッシュフローの推移を示したものである。ヤマダと同
じくフリー・キャッシュフローがマイナスで推移している。この原因は投資キャッシュフ ローの支出増加である。2007
年の投資キャッシュフローの支出増加は、固定資産、有価証 券の取得による支出との増加に加え、100
満ボルトを展開するサンキューの完全子会社化に かかった費用である。2006
年度の財務キャッシュフローの増加は短期借入金の収入による もので、返済額よりも借入額が多かったことの影響である。[
図表3-4-3]
[図表 3-4-4]
コジマ
-15,000 -10,000 -5,000 0 5,000 10,000 15,000 20,000
(百万円)
営業キャッシュフロー -794 8,961 17,218 2,094 -5,154 -613
投資キャッシュフロー -9,243 -9,013 -9,748 -1,942 -1,343 -3,907
財務キャッシュフロー 11,172 -236 -887 -3,830 1,361 3,678
フリーキャッシュフロー -10,037 -52 7,470 152 -6,497 -4,520
2002年度 2003年度 2004年度 2005年度 2006年度 2007年度
[図表 3-4-4]はコジマの各キャッシュフローの推移を示したものである。 2004
年度営業キ ャッシュフローで172
億18
百万の収入を得ているが、2005
年度以降は赤字となっている。2005
年度以降は投資キャッシュフローの支出も減ってきている。これは、営業活動で現金 を得られていないので投資に回す現金が不足しているということである。現金不足を補う ために2006
年度は長期借入金の借入額を増やしたことで、財務キャッシュフローの収入が 増加した。2007年度には短期借入金も増額している。ここまで
4
社それぞれのキャッシュフローの推移を見てきた。4
社ともにフリー・キャッ シュフローがマイナスで推移している。フリー・キャッシュフローがマイナスで推移する 原因は投資キャッシュフローの支出増加である。コジマを除く3
社は営業キャッシュフロ ーで黒字を出せているのに、その収入を上回る現金投資をしていることがわかる。しかし、投資の方法は2つに分かれる。1つ目は新店舗出店のために、土地や建物を購入するとい う投資方法である。地方に強い基盤を持つヤマダが都市圏でのシェアを拡大するために駅 前の一等地を購入するといったことがその方法に含まれる。
2
つ目はエディオンやケーズの ようにM&A
を目的とした現金投資という方法である。企業規模を効率的に拡大するため に中小の家電量販店を子会社化したり、日本全国に販売網を作るために地方にある家電量 販店を子会社化したりという動きが近年活発である。投資額が増加しフリー・キャッシュフローはマイナスで推移しているが、それは一時的 なものであると考えられる。ヤマダの都市型店出店攻勢が落ち着き、エディオン、ケーズ の
M&A
が減ってくれば3
社とも投資キャッシュフローの支出が減ってくる。そうなった ときに、営業キャッシュフローがどの程度の収入で推移しているかが注目すべき点である。現在の投資が利益となって結果に表れるか、現金収支が増加するかがその後の更なる発展
のための投資力となるからである。
次にキャッシュフローを使用した指標で各社の財務体質を分析する。
[図表 3-4-5]
キャッシュフローマージン
-2.00%
-1.00%
0.00%
1.00%
2.00%
3.00%
4.00%
ヤマダ - 1.4 6 % 3 .64 % 2 .50 % 3 .35 % 1 .52 % エディオン 3 .06 % 1 .40 % 1 .60 % 0 .46 % 1 .90 % ケーズ 3 .02 % - 0.0 3 % 2 .24 % 0 .11 % 0 .93 % コジマ 1 .88 % 3 .51 % 0 .42 % - 1.0 3 % - 0.1 2 %
2 00 3年度 2 00 4年度 2 00 5年度 2 00 6年度 2 00 7年度
[
図表3-4-5]
は4
社のキャッシュフローマージンを比較したものであるキャッシュフロー マージンとは営業キャッシュフローを売上高で除したもので、売上がどれほど効率的に営 業キャッシュフローを稼いでいるかを示す指標である。(*キャッシュフローマージンには営業キャッシュフローの代わりに、フリー・キャッシ ュフローを使用する方法もある。売上高のうち企業が自由に使えるフリー・キャッシュフ ローをどの程度稼げているのかを見る指標である。現在、家電量販店業界は投資の増加で フリー・キャッシュフローがマイナスで推移し、また投資キャッシュフローの支出も安定 したものではないので、本論文では営業キャッシュフローを使用しキャッシュフローマー ジンを分析する。)
4
社ともに安定していないことがわかる。[図表3-4-5]を見ただけでは一概にどの企業が
優れたキャッシュフローマージンであるかを示しているかの判断ができない。そこで、キ ャッシュフローマージンと売上高営業利益率を比較していく。売上高営業利益率は売上高 のうちどの程度の営業利益を稼げているかを図る指標であり、本業での儲けの強さを示す ことができる。キャッシュフローマージンと比較することにより本業で稼いだ利益のうちどの程度が、現金での収入かを分析する。現金での収入が多ければ、負債の支払い能力が 高いという判断ができる、また、新たな投資が行いやすいなどのメリットがある。
[図表 3-4-6]
[図表 3-4-6]でわかるとおり、エディオンのキャッシュフローマージンは多少の振れ幅は
あるものの1%台で安定していて、2007
年度には上昇傾向を示している。ケーズは安定し ていないが2007
年度に上昇傾向を見せての1%に近い数値を示している。エディオンとケ
ーズはこの図でわかるとおり、例年売上高営業利益が1
%台で推移しているので、その営業 利益が現金でとして手元にあるということがわかる。ヤマダは2007
年度キャッシュフロー マージンが約1.5
%まで減少した。しかし2007
年度の売上高営業利益は3.
7%であった。つまり売上高に対する営業利益は他社よりも優れた比率であるが、自由度の高い現金とし ての収入はエディオン、ケーズと近い比率である。コジマは売上高営業利益率では-1%台で あるが、2007年度はキャッシュフローマージンが約
0%であることから、営業利益は赤字
である、現金収支に限って言えばその赤字幅は小さいことがわかる。[図表 3-4-7]
営業キャッシュフロー対設備投資比率
-100.00%
-50.00%
0.00%
50.00%
100.00%
150.00%
200.00%
250.00%
ヤマダ -5 9.9 7 % 12 3.2 5 % 4 2.5 9 % 9 1.4 3 % 2 4.2 6 % エディオン 21 7.7 2 % 6 3.6 5 % 6 3.4 7 % 1 5.5 3 % 4 3.6 6 % ケーズ 11 6.3 4 % - 1.5 6 % 11 0.0 8 % 4 .02 % 2 4.6 2 % コジマ 10 6.8 4 % 17 7.9 5 % 2 1.7 0 % -8 2.5 8 % - 7.0 9 % 2 00 3年度 2 00 4年度 2 00 5年度 2 00 6年度 2 00 7年度
[
図表3-4-7]
は4
社の営業キャッシュフロー対設備投資比率の5
年間の推移をまとめたも のである。営業キャッシュフロー対設備投資比率とは、安全性分析の一指標で、設備投資 額がどの程度、営業キャッシュフローで賄われているかを示す指標である。この指標が大 きいほど借入などの負債に頼らず設備投資を行っているかがわかる。4
社ともここ5
年の推移を見る限り安定していないことがわかる。キャッシュフローの推 移でも述べたように、ヤマダ、エディオン、ケーズは投資が増加している。その費用を借 入金や社債、株式に頼っている。今後もしばらくは投資額が減少することはないと思われ るので、企業はそれを賄うための利益を生み出すことが必要である。特に、投資や負債の 返済などには自由度の高い資産が理想的であるので、現金収入を増やす必要がある。[図表 3-4-8]
営業キャッシュフロー対流動負債比率
-20.00%
-10.00%
0.00%
10.00%
20.00%
30.00%
40.00%
ヤマダ -1 3.3 4 % 3 3.7 5 % 2 4.2 6 % 2 9.2 9 % 1 4.8 4 % エディオン 1 4.3 7 % 7 .66 % 9 .52 % 2 .44 % 9 .80 % ケーズ 1 9.7 6 % - 0.1 9 % 1 4.1 7 % 0 .58 % 4 .11 % コジマ 8 .21 % 1 5.3 8 % 1 .73 % - 4.2 6 % - 0.5 4 %
2 00 3年度 2 00 4年度 2 00 5年度 2 00 6年度 2 00 7年度
営業キャッシュフロー対流動負債比率とは営業活動によるキャッシュフローで、どれだ けの流動負債をまかなっているかを示す指標である。この比率が高いほど安全性が高いと 判断できる。特にキャッシュで賄える流動負債の割合を示すということから、短期的な支 払い能力意を見ることができる。
[図表 3-4-8]は 4
社の営業キャッシュフロー対流動負債比率の推移をまとめたものである。4
社の中ではヤマダが一番高い水準で推移しているが2004
年度から減少傾向にあり、2007
年度は14.84%まで下降した。エディオンとケーズは 10%程度で推移していることがわか
る。ヤマダ、エディオン、ケーズの営業キャッシュフロー対流動負債比率が安全と判断で きる水準にあるのか、それとも危険な水準にあるのかを、財務分析の安全性で示した流動 比率、当座比率と比較し分析する。コジマは
2006
年度以降マイナスで推移している、これは営業キャッシュフローで赤字を 示しているからで、短期的な支払い能力が弱いといえる。[図表 3-4-9]
[図表 3-4-9]は 4
社の流動比率、当座比率、営業キャッシュフロー対流動負債比率の直近5
年の一覧である。ヤマダは流動比率で、高い比率を見せているので安全性に問題はないと 判断できる。しかし、流動資産から棚卸資産などのすぐに現金化できないものを除いた、当座比率では一般的に
100
%以上であれば安全と判断されるのに対し、50
%程度と安全性 とはいえない水準にある。営業キャッシュフローでの収入は当座資産の現金に含まれるの で、営業キャッシュフローの収入が増えれば当座比率も上昇する、ヤマダの2007
年度の営 業キャッシュフローの収入は、当座資産のうちの26.68
%である。またキャッシュフローの 推移で述べたように、フリー・キャッシュフローがマイナスで推移しているので、本業で の現金収支での短期的な負債の支払い能力は低いといえる。エディオンとケーズもヤマダと同じく営業キャッシュフロー対流動負債比率の水準は低 いものである。特にケーズは流動比率でも
100%を下回り、当座比率も低いので危険と判断
できる。ヤマダ、エディオン、ケーズは営業キャッシュフローで黒字を出せているが、それを超 える投資を行っているので、投資や負債の支払いの一部を新たな負債に頼っていることが わかる。
コジマは営業キャッシュフローが赤字で、当座比率も
4
社の中で一番低い。他の3
社と 同様に、負債を増加させることで負債の支払いとS&B
を行っているが、営業利益で毎年赤 字を出しているように、利益に結びついていないため安全性は低下する一方である。キャッシュフロー分析のまとめ
ヤマダ、エディオン、ケーズの
3
社はキャッシュフローの動きが似ている。営業キャッ シュフローで黒字は出せているが、それを大きく超える投資をしている。そのために財務 キャッシュフローで現金を用意している。資金調達能力が高いという評価もできるが、そ の反面、安全性に問題があるという見方もできる。現在の家電量販店業界がスケールメリ ットを狙った企業規模拡大の途中であることから、どの企業も負債を増やしてまで投資を 行っている状況である。今後、家電量販店が飽和状態になり各企業の出店ペース、またはM&A
が落ち着いてくれば、投資額、投資キャッシュフローの支出額も減ってくると予想で きる。その時に営業キャッシュフローをどの程度生み出せているか、フリー・キャッシュ フローがどの程度生み出せているかが、その後に予想されるS&B
等や、新たな事業を行う にあたり大切な資金源となる。安全性を低下させてまで投資を行っている効果が出るのかが今後注目される。