第4章 ARCSモデルからARCS-V モデルへの 拡張とV 要因の下位分類提案
4.3 ケラーのマクロモデルから MVP モデルへの拡張の変遷
然な結果」「肯定的な結果」「公平さ」が下位分類として選択されている.
学校の教師は,自分が担当する科目において,学習者の学習意欲に問題があると感じ る場合,その問題が上述の4要因のいずれの側面に該当するかを分析し,その問題がい ずれの要因の領域に関連するのかを明らかにしたあと,ARCS モデルが提示するヒント を参照して,それに対応する方策の作戦を練る.例えば,学習者がその教科内容に興味 が薄いのであれば,興味関心を引くようにわかりやすくデザインした教材つくりをする ことがひとつの方策となるし,その科目を修了できる自信がないというのであれば,修 了のための要件を明確にして,自分の能力が適合するか確認できる機会を提供するとか,
小テストを何度か受験させて小さな成功体験の機会を与え,自分でもできそうだと思え るような方策を授業設計の中に講じる,といったことがその作戦となる.学習者は,
ARCS のうち,満たされない要因を教師による方策で満たされ,「自分は学べる」「もっ と学びたい」という心理的状況になるのである.なお,ある学習意欲の問題は,いつも ARCSのいずれかひとつの領域に当てはまるとは限らない.例えば,「課題では,自分が 得意な事柄をテーマに選択させる」という方策であれば,R 要因(親しみやすさ)と C 要因(コントロールの個人化)が関連する.よって,方策を練る場合は,ARCS の要因 の別に過度にとらわれる必要はない.ただし,いくら効果がありそうでも,動機づけの 方策はてんこ盛りにしてはいけない.ARCS モデルに基づく方策は,たくさんやればや るほどよいのではない.やりすぎるとかえって学習者の意欲を減退させることがあると いうことをモデル利用者は頭に置いておく必要がある.つまり,内容もタイミングも量 も,丁度よい程度の方策を選択する必要がある.ARCS モデルでは,そんな教師のため に,学習者の心理的状況と外的要因の関係性を示すマクロモデルを提示しており,適切 な学習意欲の作戦立案のための理解を支援しようとしている.
4.3 ケラーのマクロモデルから MVP モデルへの拡張の
るとその変遷が見て取ることができる.まず統合マクロモデルへの変化では,ケラーは,
学習者の心理的環境を概念の中心に据えた.同時に,学習者の心理的環境の工程に volition(意志)に関する概念を加えた.併せて,行動(学習)後の「満足感」に至るプ ロセスの概念が新たに統合された(図 4.2),そして,volition関連の概念のあとに続く 情報処理と精神運動処理の概念がさらに追加されたものがMVPモデルである(図 4.3). これらの変遷から,学習者の心理的状況が焦点化され,また,細分化されていることが 伺える.学習者の心理的状況への焦点化と細分化が.ARCS-VモデルのV要因を顕在化 させたと言えるだろう.
図 4.1 マクロモデル ※Keller(1979)を鈴木(1995)が和訳したもの.
図 4.2 統合マクロモデル (Keller,2010)
図 4.3 MVP モデル (Keller,2010)
MVPモデルについての理解を深めるため,MVPモデル概念図(Keller,2010)を和 訳した(図 4.4).
図 4.4 和訳版 MVP モデル (中嶌ほか,2012)