第 4 章 ゲル懸濁法による炭素 14 の測定
4.5 クエンチングの補正
4 . 5 . 1 自動効率トレーサー法の原理
クエンチングの補正法としては?外部標準法(externalstanclarcl methocl)や試料チャンネ ル比法(samplechannel ratio method)が従来から用いられてきたが7最近ではマルチチャ ンネノレ波高分析器が液体シンチレーションカウンタに内蔵されるようになったため7その 機能を活用 した自動効率 トレーサー法
[ 1 8
ヲ1 9 ]
を用いることが多い.本研究では、シングルチャンネル方式の波高分析機能しか持たない
L B ‑ l
を改良すること によりマルチチャンネル方式の波高分析が可能となったため クエンチングの補正法とし て自動効率トレーサー法を採用した.自動効率 トレーサー法は,i標準試料が 100%の計数効率でj則定されるならばうrifJ一測定 条件下では測定試料も同様にして計数効率100CX¥における値が得られる.. Jという考えが前 慢となっている.
図4.3に放射能既知の標準試料と放射能未知の測定試料のスベクトルのモデル図を示す.
まず両スペクトルの共通の測定領域を設定するために、マルチチャンネル波日分析器の下 限を九、
R
2....R i
とし?上限を無限大とする各測定領域における標準試料の計数効率(只) をヲ El、E2'… Ei,測定試料の計数率をn1,n.2, ••• niとする計数効率
E
と計数率nの 関 係 は 次 の よ う な2
次回帰式で最もよく表されることが経m
的に見出されている.
17. α
E ? ' + 6E +
c ( ‑‑• l lここで, e b, ,.¥ cは、最小二乗法を用いて決定された定数である.(4.1)式において、 E=1 ()U(,¥
ー13:
における nの値が測定試料の政射能を意味する
実際にクエンチング標準試料を用いて測定を行い 自動効率トレーサー法による 3次[日│ 帰曲線を表したものが図4.4である.クエンチングが大きくなるに従って山線の勾配Ii:l'f! すが、測定試料がどんなにクエンチングを1包こしていても 測定試料中の放射能が̲'定であ
る以上は曲線は一点に収束し、正しい欣射能の値を示す.
標準試料として用いられる試料には?通常次のような条件が求められる.
1.半減期が長く,正確に定量されている.
:2. 90Si(l以上の計数効率で測定されている
:3. ,13放出核種であり?電子捕獲や異性体遷移を起こさない.
以上のような点から?標準試料としては l‑lCが最も適していると考えられている.
自動効率トレーサー法は.従来のクエンチング補正法と比べ一般的に次のような利点を
F
寺っている.1.従来の方法ではす実用上
3H
と1 4 C
の放射能決定に限られていたが、自動効率トレーサー 法では?多種類の純13放出体またはかγ放出体の放射能を得ることができる.2
,従来の方法では、測定対象核種毎に同じ核種の標準試料を用意しなければならなかった が、自動効率トレーサー法ではl個の標準試料ですべての測定対象核磁の放射能を求め ることがで、きる.:3.試料容積が変化しでも?試料中の放射能が一定である限りは同じ値が得られヲ測定値が 容積に依存しない.
4,従来のクエンチング補正法では,色クエンチングを起こしている測定試料には適用で きない場合が多いが?自動効率トレーサー法で、は化学クエンチングと色クエンチング の差が認められない•
.
5.最小二采‑法を用いて数個の測定値より放射能を決定するため、高精度(i)欣射能が得ら れ る
ニl4
4 . 5 . 2 ゲル懸濁試料への自動効率トレーサー法の適用
木研究で用いたゲ、ル懸濁法は、測定試料を固体粉末として測定するため, 一般の液体シン チレーション測定において発生するクエンチングとは月JIの計数効率の低下要因が存布する それは試料自身による
d
線エネノレギーの自己吸収であり, ,3
線エネルギ』ーが試料からシンチレータ溶媒へ伝達される以前にエネルギー損失が生じる(図 3.4).
自動効率トレーサー法ではT標準試料として使用される条件として 9U(/(J以上の測定効主: で測定されていることが必要であるが?ゲル懸濁試料は自己吸収の影響により 90%以上の 測定効率を得ることは困難である.したがって標準試料には自己吸収のない従来の液体シ ンチレーション測定用標準試料を用いる必要がある.その結果 測定効率の補正は.先に述 べた通常のクエンチングについては補正されるが、自己吸収の影響に関しては考慮されな
いものになってしまう.
そこで本研究では自己吸収の補正因子として自己吸収ファクター(~づ elf-absorptioil fλctor) を導入することとした.自己吸収ファクター(SAF)は次のような式により定義される.
S A. F ( %) = .
‑ t /
Sx
1 00 ( ‑1. : 2)( 4.:2)式において, Aは測定値を自動効率トレーサー法によって補正して得‑られた値(自己 吸収は考慮されていなしつであり,
S
は試料の比放射能である得られた測定値を自動効率トレーサー法により処理した後3その値を自己吸収ブアクター で補正することによって自己吸収による影響が補正され7正しい放射能の値が得られる 図 4.5にその概念図を示す.
本研究では、自動効率トレーサー法と自己吸収ファクターを組み合わせた方法により、測 定効率の補正を行った.
4.6 まとめ
環境中の 14(:測定用の試料調製法としては、従来ベンゼ、ン合成法が最もよくJfJ/ 1¥られて きた.この方法は?考古学試料の年代測定を目的として開発されたため Jrk( こ I~:J'h~: 山 C んる が、試料調製過程は複雑で長時間を要する.環境モニタ リングでは年代i!1IJí.'c:で安求 δ れる fr~.
の高精度を必要とせず?短時間で多数の試料を処理することが求められる したがって従来 の方法は環境モニタリングに対して必ずしも適していない.
本研究では環境モニタ リング用の14C試料調製法と して、ゲル懸濁法を適用した.ゲfレ市;
濁法は液体シンチレータに直接溶解しない試料を測定する方法と して開発された}j訟でI~í) る.従来の方法では 1‑1
C
を測定する際試料の化学形として炭酸バリ ウム ゲル化剤として Cah‑O‑Silなどを用いておか測定に供することのできる試料の匙が少なく成年三試料のiWJ‑Iと にはほとんど用いられなかった.本研究では試料の化学形として炭酸カルシウム7ゲル化剤として
N ‑
ラウロイル‑ L . ‑
グ、ルグ ミン酸‑αη‑ジプチルアミド (G‑1)を用いた.これにより測定試料中に多量の試料を安定に 保 持 す る こ と が で き た測定系としては、 Aloka社の低ノくックグラウンド液体シンチレーションカウンタ LB‑Lを マノレチチャンネル方式の波高分析が行えるよう改良して使用 した.クエンチングの補正法 としては自動効率トレーサー法を適用し?その際試料の自己吸収を補正する係数として臼 己吸収ブアクターを導入した.
﹁ハU
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I口11(川que l口l只訂叩inga liquid scir日1叫tillatiol口1C
∞
ollnterド、,円" Jnt. J. .J..pp .lR
n.dial. 1.刈 top 口 35 (6) 、pp.4(i:j.lYSl ‑
[19]石河寛昭: i最 新 液 体 シ ン チ レ ー シ ョ ン 測 定 法J1南山堂、 pp.lll、]~.) 9 2:
︑︑i
表 ‑L1:一般的測定条件(20mLパイアル使用)における lt‑
C
測定法の諸特性の比較測 定 法 試 料 化 学 形 炭 素 含 有 率 測 定 効 率 炭 素 保 持 量 (%) ( Y o ) ( g ) ベ ン ゼ ン 合 成 法
C~()Hß9 2 . 3
'"'‑190 ‑ { . 5 7 メタノール合成法
C~H:30H3 7 . 5 35 2 . 6 3 二酸化炭素吸収法 CO
22 7 . 3
'"'‑160 0 .
‑‑12
ゲル懸濁法
C~aC~O:31 2 . 0
'"'‑180 0 . 7 2
表 4.2:炭酸カルシウムと炭酸ノくリウムの諸特↑セの比較
化 学 式 溶解度 密度 式 量 炭 素 含 有 率 炭 素 1
f.2:~r-合心量( g j 1 0 0
C n 1 ) :1( g j
C111:3 ) ( S i ( l ) ( g )
BaCO: 3 0 . 0 0 2 2 4 . 4 1 9 7 6 . 1 1 G . J 9
CaCC);~
0 . 0 0 1 5 2 . 7 1 0 0 1 2 8 . 3 3
‑
! ~)
市販のベンゼン合成装置
i 測 定 l
所要時間 約 10 分
ベ ン ゼ ン 合 成 法 メ タ ノ ー ル 合 成 法 二酸化炭素 ゲル懸濁法 吸収法
環境試料
乾留
j
天
寸一
燃焼
刀牛
a点悶川¥
/ 刀
O
c 一 酸
a 一 C 一
ゲル化
図 4.1:14C試料調製法の比較
.)0