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第3章  ビーレフ:[ルト実験学校の実践 第1節 実験学校の概要と組織

第2節 カリキュラム

1 段階(Stufe)

a)概要

 実験学校の0年生から10年生の11学年を、以下のような2,3年つつの4

段階に区分する(注13)。

   第1段階…0,1,2年生    第H段階…3,4年生    第皿段階…5,6,7年生    第IV段階…8,9,10年生

 このように2才ほどの差の異年令グループ(原則的に各段階内の20人で1

中核グループ(Stammgruppe)を構成する。1学年60人が定員なので、段

階あたり6ないし9の中核グループが構成される計算である。)を学校生活の 基本としている理由は、2つ考えられる。

 1つは、他の学校では一般的である同年令集団を基本とした学年制におい ては保障されない多様性を保障することである。こうした異年令グループでは、

物事のできる/できないの差は当然ありうることで、競争意識による圧迫なく、

子どもたち同士の教え合い、学び合いが自然に起こる。

 もう1つは、比較的年令が近い4つの段階を設定することで、あまりにも 年令が違いすぎて身体や感性・思考が異なり、まとまりが形成されない事態を 避けるためである。グループに多様性を持たせつつ、グループがバラバラにな

らないようにしているのである。

b)第1段階

 第1段階は、「生活領域学校」(Lebensbereich Schule)と呼ばれ(注14)、

家庭的雰囲気の中で、学校という新しいかかわりの領域を無理なく経験できる ように組織している。この段階の特徴を列挙してみよう。

 まず、決まった時間割はなく、科目もない。その日その日の出来事によっ て、教師や子どもたちが話し合い、活動が決まる。例えば、個人活動、読み聞 かせ、散歩、集会、私たちのハムスター、今日降った雪、体重比べなどである。

そして、一定時間による授業時間の切れ目は原則的になく、(ただし食事の時

間はある程度決まっている。)子どもたちの内的な時間リズムによって活動が 展開される。様々な活動が自在に行えるように、ローラースケートや自転車、

劇場遊びのためのクロークと小さな舞台、調理器具とレンジ、筆記用具と絵画 用具などが用意してある(注15)。

 また、中核グループの構成は、各段階1グループあたり20人が基本なので あるが、子どもたち年令が小さければ小さいほど、グループの人数も小さくな るようにしている。従って、第1段階では、最大14人が1グループとなって いる(注16)。こうした、小さなグループと異年令の仲間によって、家庭的な 雰囲気を作る。1グループには、1人の教師が担当する。

 さらに、第1段階の180人の子どもたちがハウス1を占有している。これ

は、大きな共同体であるハウスHへ移行するまで、家庭より大きいが、ハウス

Hより小さい自分たちの共同体として、ハウス1での生活を経験するためであ

る。

c)第H段階

 この段階で、ハウスIIに引っ越しする。そして、約20人の新しい中核グル ープが構成される。教師も彼らとともに、ハウスIIに移行してくる。徐々に子 どもたちの属する共同体を拡大するという観点から、これ以上の変化は強要し ない。しかし、ハウス1からハウスHへの引っ越しは、子どもたちにとっては 十分冒険である。

 授業は、英語、スポーツ、宗教のみ独立した科目として行われ、他の領域に ついてはプロジェクトの形式で総合的に行なわれる。プロジェクトの例として、

サーカス興業、自筆童話の公開朗読会、劇場レビュー、製作物展示などである。

第1外国語の英語は、この段階で開始されるが、これはドイツの他の学校より も早期に開始されるものである。こうした早期の開始の目的は、言語教育がた だ知識の教授に終わるのを避けるためである。年令にふさわしい形で、遊んだ

り、動いたり、対話したりというような体を使った言語経験も充分に保障し、

教授・経験・行為のバランスに配慮していこうとするカリキュラムとなってい る(注17)。

d)第皿段階

 授業は、いまだ専門科目ではなく、前述したような実験学校独自の次の5っ

の経験領域(Erfahrungsbereiche)に大きく区分される。これらは、その後 の専門科目につながる内容となっている。(「2 経験領域」参照)

    ①人間と人間のかかわり

    ②事物と人間のかかわり1一一観察し、測定し、実験しながら

    ③   事物と人間のかかわりII 発明し、形作り、演じながら

    ④自分の身体とのかかわり

    ⑤話され、書かれ、考えられたものとのかかわり

 第2外国語が始まり、フランス語かラテン語のどちらかを選択する。また、

12のコースから1年に2つ、3時間/週の選択コース(Wahlkurs)がある(注

18)。

 7年生の時、14日間のスキー旅行に行く。生徒は、他段階であらかじめ、

自給自足を学んでいる(注19)。

e)第IV段階

 この段階では、経験領域は、様々な専門科目に分かれる。例えば、「人間と 人間のかかわり」から、歴史、地理、社会諸科学に分かれ、「事物とのかかわ

り1」から、物理、化学、生物、科学技術に分かれる。

 希望により、3時間/週の選択コースとともに3時間/週の成績コース

(Leis七ungskurs)も設けられている。また、第2外国語では、上級学校のた めの選択制の支援コース(F6rderkurs)も設けられている。授業の全体のう ち、3分の1はこうした生徒自身の選択によるコースとなる(注20)。

 また、半年期に1つ(年間1つでもよい)の題材を選択して、研究・実践す る学期活動(Semes七erarbeiten)が設けられる。どの教師に指導を受けるか も、生徒の希望による(注21)。

 この段階の授業計画で最も特徴があるのは、ヘンティヒが脱学校(Ent−

schulung)と呼ぶ計画が行なわれる8年生である。組織だった専門科目、す なわち外国語やドイツ語などおもに言語の分野で、教室での学びが保留される。

そして、教室での学びの代わりに、プロジェクト(旅行/劇場公演/映画作り)

やエポック授業(別の経験領域の題材が外国語で学ばれる)、外国からのゲス トの世話をすることなどが行なわれる。こうしたことは、思春期の時期の学び は、認識や技能の習得よりも、人との関連や自己発見の方が重要であるという

認識に基づく。学習の意義が見いだせないのに知識ばかりが詰め込まれ、思春 期の生徒たちが感じることの多い学習への嫌悪感を経験することを避け、学ぶ 喜びを維持することが最重要とされるのである。思春期の課題であるアイデン ティティの混乱と形成を、こうした人や自然や事物との豊かな交流の経験を通 して克服した以降の授業による学びは、それまでの経験を豊かにすることが充 分に期待できる。また、そうした時の授業内容の組織だった性格は、考えを整 理するのに役立ち、授業を興味深いものとする。生徒たちは、なぜ学びが必要 かも気づくことができ、その後の授業に熱心に取り組むようになる(注22)。

 さらに、卒業後の社会にむけて、仕事の世界を経験するために3週間とい う比較的長い期間の実習(Praktika)が設けられている。これは、社会科学 的な経験領域(「人と人とのかかわり」)の一部として実施され、8年生では製 造業を、9年生ではサービス業を、10年生では2週は自分が選んだ事業所、

残りの1週は後に通学することになるかもしれない上級学校を経験する(注

23)。

 9年生か10年生の時、14日間、英語を公用語とするヨーロッパの一国に滞 在する外国旅行(Auslandsreisen)が企画され、訪れた外国の文化や生活様 式を経験する。さらに、3週間の予定で、コメニウス財団を通じて提携してい るヨーロッパ内のパートナー校の生徒が実験学校を訪れ、共通のプロジェクト に取り組み、交流する(注24)。

2 経験領域(Erfahrungsbereich)

 経験領域による学習題材の区分は、中等段階1(Sekundars七ufe I)におい て、教育的機能に対して無頓着に、専門諸科学に対応する専門科目が採り入れ

られ、またそれが科目教授学に従って専門科目教師によって教えられているこ とに対置する、もう一つの可能性である。そうした区分は、百科事典や大学で の学問区分に従わず、人がどのようにそれらを経験しそれゆえ自然に学ぶこと ができるかを重視する。

 また、それは、実験学校において、段階の原理を補うものである。厳密に言 えば、経験領域が適用されるのは第皿段階のみである。それ以前の第1,H段 階では、経験領域はいまだ有効ではなく、それ以降の第IV段階では、経験を整

理することや知識の組織だった性格を学ぶことにおいて不都合である。したが って、初等段階の完全に区分されない認識の全体性をふまえた授業から、15 才以降の3年間である中等段階Hの専門科目による区分との間を仲介する手段 であるともいえる。

 しかし、こうした意図は、実際に学校で組織しようとするときにいくつかの 困難に出くわした。

 まず、個々の教師の資格能力は、経験領域よりも狭い専門性しか持ってい ないことである。さらに、こうした限界を埋めるためには、ティームティーチ ングなどを採り入れる必要があるが、そうした方法が可能になるための教師ス タッフの人員が十分でないことである。

 また、「⑤話され、書かれ、考えられたものとのかかわり」の領域では、言 語的教育と数学的教育を統合しようとしたが、自然に学びの連関を見つけるこ

とができず、経験の原理では構成できない事態も生じた。そのため、数学を独 立した経験領域として扱わざるを得なくなった(後述e),f)参照)(注25)。

こうした困難は、実験学校の実践上の工夫として改善が目指され、今もその途 上にある。

 こうしたことを踏まえて、各経験領域の内容を検討してみよう。

a)社会科一一人間と人間のかかわり

 この領域では、歴史、地理、政治・社会知識、職業教育、経済、民族学、社 会学、心理学、教育学、哲学などの伝統的な学校専門科目において教えられ、

学ばれてきたものを統合する。加えて、ドイツでは一般的に行われている宗教 授業もこの領域に分類している。

 5,6年生では、この領域は、自然科学の領域といっしょに5時間/週の授 業がある。その際、原則としてどちらかの科目の資格しか持っていなくとも、

1人の教師が授業を行なう。しかし、授業計画は段階や学年の教師集団全員で 計画する。この領域と自然科学の領域の題材や問いを統合し、プロジェクト授 業の形式で、授業が展開される(注26)。

b)自然科学一一観察し測定し実験しての事物とのかかわり

 この領域では、物理、生物、化学、地球史、自然地理学(地学)などの伝統 的な専門科目に加えて、科学技術、エコロジーなどの専門科目も統合する。

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