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外乱オブザーバ付き内部モデル制御(DIMC)の設計

第 2 章 スイッチング電源の制御器による知能化

2.3 ディジタル制御によるスイッチング電源のシミュレーションおよび制御実験

2.3.2 外乱オブザーバ付き内部モデル制御(DIMC)の設計

内部モデル(IMC)は、M.Morari によって提唱されたプロセス制御系に対する制御法 である。これは H2制御やスミス予測制御に関連しており、Youla のパラメトリゼーショ ンを基本とした具体的なプロセス制御系の設計法としてまとめられている。

この内部モデル制御系のブロック図を図2.26に示す。P(s)、Pn(s)は制御対象とそのノミナ ルモデルを表す。ここでsはラプラス演算子を表す。F(s)は定常ゲインが1のローパスフィ ルタであり、IMCコントローラF(s)×Pn

-1(s)を物理的に実現させるため、この伝達関数がバ

イプロパーとなるように選択する。例えば、Pn(s)の相対次数をnとすると、

𝐹(𝑠) = 1

(𝜏𝑖𝑠 + 1)𝑛 ⋯ (2.41) となる。この場合、制御対象が既知とすると、IMCの設計パラメータはフィルタの帯域幅

1/𝜏𝑖 [rad/s]のみであり、設計および調整が容易な点が利点である。また、この制御構成から

わかるように、IMCではモデル化誤差がなく、かつ外乱が存在しなければ、目標値rから 出力yまでの伝達特性はF(s)となる。すなわち、フィードバックループが無く直列補償器に よるオープンループ駆動である。これに対して、モデル化誤差や外乱dが存在する場合に のみ、PとPnの出力の差分を利用し、フィードバックにより誤差補償が行われる。

しかし制御対象が積分特性を有する場合、図2.26のIMC制御系のブロック図を等価変換 した図2.27で伝達特性を考えると

𝐹(𝑠)

1 − 𝐹(𝑠)= 1

𝑠{𝑠(𝜏𝑖2𝑠 + 2𝜏𝑖)} ⋯ (2.42) となり、1型の積分特性を持つが、これは制御対象のもつ積分特性に起因しており、𝑃𝑛−1(𝑠)に 現れる1階微分特性により相殺される。その結果IMC制御系には積分特性がなくなってし まい、ステップ外乱に対して追従誤差が常に存在してしまう。そこでIMCに外乱オブザー バを導入することで、上記の問題を解決する。この手法の特徴として、制御対象の逆特性 を利用したオープンループ駆動ベースの制御系で構成され、モデル化誤差と外乱に対して のみフィードバック補償が行われる。これにより、目標値に対してオーバーシュートが皆 無であり、かつ制御対象のノミナルモデルさえ高度に同定できれば制御帯域を極めて広帯 域化でき、安定化、ノイズ特性にも優れるという特徴を有する。

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図2.26 内部モデル制御系のブロック図

図2.27 等価IMC制御系のブロック図

外乱オブザーバは、制御入力と出力情報より制御対象に加わる外乱を推定でき、それを フィードバックすることで外乱補償を行うことが可能となる。

外乱オブザーバのブロック図を図2.28(a)に示す。ここで外乱をd、入力をiref、制御対 象の伝達関数をP、そのノミナルモデルをPn、出力をyとすると

𝑑 = 𝑖𝑟𝑒𝑓− 𝑃𝑛−1𝑦 ⋯ (2.43) となるため、入力と制御対象の逆特性から外乱が計算で求められる。しかし、制御対象に 積分特性を含んでいる場合、出力の積分演算が必要となるためその実現は難しく、また仮 に可能であったとしても高周波でハイゲインとなるため、観測ノイズの影響を非常に受け やすくなる。そこで一例として次式に示すように、外乱dにローパスフィルタFdを通して 得られる出力を外乱の推定値𝑑̂とする。また、nは𝐹 × 𝑃𝑛−1がプロパーになるように決定する。

𝑑̂ = 𝐹𝑑∙ 𝑑 = 1

(𝜏𝑖𝑠 + 1)𝑛𝑑 ⋯ (2.44) これを図示したものが図2.28(b)である。点線で囲まれた部分が、制御対象への入力およ び出力から外乱を推定するため、外乱オブザーバ(disturbance observer)と呼ばれる。この とき、外乱オブザーバの極は(2.44)式のローパスフィルタの極に相当するため、フィルタ の時定数をできるだけ小さくすることで遅れの少ない推定値を得ることができる。しかし、

+

 + 

+

d y

r

P

n

(s) P(s) F (s) ・ P

n1

(s)

+

 + 

+

d y

r

P

n

(s) P(s) F (s) ・ P

n1

(s)

F (s) ・ P

n1

(s)

Plant model Plant Controlle r

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実際には小さくしすぎると観測ノイズの影響を受け、正しい推定が行えなくなるため、そ の決定にトレードオフは避けられない。また本手法では、図2.28(b)の等価ブロック図と

して図2.28(c)を用いる。

ここで外乱オブザーバ付き内部モデル制御(DIMC)法のブロック図を図 2.29 に示す。

DIMCの構造はIMCに極めて類似しており、IMCと同様にモデル化誤差が存在しない場合 にはフィードバック補償は働かない。従ってオープンループ駆動型という特徴を持ってい る。

外乱オブザーバのフィルタをFdとしたときの入出力関係は以下の式で表される。

𝑦 = 𝐹(𝑠)𝑃(𝑠)𝑃𝑛−1(𝑠)

1 − 𝐹𝑑(𝑠) + 𝐹𝑑(𝑠)𝑃(𝑠)𝑃𝑛−1(𝑠)𝑟 + {1 − 𝐹(𝑠)𝑃(𝑠)}

1 − 𝐹𝑑(𝑠) + 𝐹𝑑(𝑠)𝑃(𝑠)𝑃𝑛−1(𝑠)𝑑 ⋯ (2.45) ここでモデル化誤差がなければ(P(s)=Pn(s))

𝑦 = 𝐹(𝑠) ∙ 𝑟 + {1 − 𝐹(𝑠)𝑃(𝑠)}𝑑 ⋯ (2.46) となり、オープンループとなっていることがわかる。

(a) (b) (c)

図2.28 外乱オブザーバのブロック図 P

Pn-1

iref y

d +

+  d

P Pn-1

iref y

d +

+  d

y P

Pn-1 iref d

+

+

Fd dˆ

y

P Pn-1 iref d

+

+

Fd dˆ

y

P Pn-1 iref d

+

+

Fd dˆ

y

P Pn-1 iref d

+

+

Fd dˆ

P Pn

iref y

d +

+

Fd×Pn-1 dˆ

P Pn

iref y

d +

+

Fd×Pn-1 dˆ

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図2.29 外乱オブザーバ付き内部モデル制御系

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