第 7 章 エネルギー・環境モデルの構築
3.3 エンボディド・カーボンの計測
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式を整理すると下記のように書き換えることができる。
X𝐶= (𝐼 − 𝐴𝐶𝐶)−1𝐹𝐶𝐶+ (𝐼 − 𝐴𝐶𝐶)−1𝐸𝐶 (55) ただし、(𝐼 − 𝐴𝐶𝐶)−1は中国国内のレオンチェフ逆行列である。以下では、(𝐼 − 𝐴𝐶𝐶)−1を 𝐿𝐶𝐶で表記する。
中国の輸出は中国の対日本輸出𝐸𝐶𝐽及び中国の対その他の国・地域の輸出𝐸𝐶𝑅の合計で ある。中国の対日本輸出𝐸𝐶𝐽は最終財輸出𝑌𝐶𝐽と中間財輸出𝐴𝐶𝐽𝑋𝐽の合計である。中国の対 その他の国・地域の輸出𝐸𝐶𝑅も同じように最終財輸出𝑌𝐶𝑅と中間財輸出𝐴𝐶𝑅𝑋𝑅の合計であ る。
𝐸𝐶= 𝐸𝐶𝐽+ 𝐸𝐶𝑅 = 𝑌𝐶𝐽+ 𝐴𝐶𝐽𝑋𝐽+ 𝑌𝐶𝑅+ 𝐴𝐶𝑅𝑋𝑅 (56) したがって、中国の産業部門の二酸化炭素排出は以下のように分解される。
𝐸𝐶𝑂𝐶 = 𝑒𝑓𝐶𝑋𝐶
= 𝑒𝑓𝐶𝐿𝐶𝐶𝐹𝐶𝐶+ 𝑒𝑓𝐶𝐿𝐶𝐶𝐸𝐶
= 𝑒𝑓𝐶𝐿𝐶𝐶𝐹𝐶𝐶+ 𝑒𝑓𝐶𝐿𝐶𝐶 ∑ 𝐴𝐶𝑟
𝑟=𝐽,𝑅
∑ 𝐵𝑟𝑡𝐹𝑡𝐶
𝑡≠𝑟,𝑡=𝐽,𝑅
+ 𝑒𝑓𝐶 ∑ 𝐵𝐶𝐶𝑌𝐶𝑟
𝑟=𝐽,𝑅
+ 𝑒𝑓𝐶 ∑ 𝐵𝐶𝑟𝑌𝑟𝑟
𝑟=𝐽,𝑅
① ② ③ ④ +𝑒𝑓𝐶 ∑ 𝐵𝐶𝑟
𝑟=𝐽,𝑅
∑ 𝐹𝑟𝑡
𝑡≠𝑟,𝑡=𝐽,𝑅
⑤ (57)
①は中国で最終消費された最終財を生産する際に中国で排出された二酸化炭素である。
②は中国から輸出した以降、輸入国で加工し、また中間財として第三国に再輸出、そして 中国に再輸入される中間財を生産する際に中国で排出された二酸化炭素である。
③は中国から輸出した以降、輸入国で最終消費された最終財を生産する際に中国で排出さ れた二酸化炭素である。
④は中国から輸出した以降、輸入国で加工し、輸入国で最終消費された中間財を生産する 際に中国で排出された二酸化炭素である。
⑤は中国から輸出した以降、輸入国で加工し、また中間財として第三国に輸出し、第三国 で最終消費された中間財を生産する際に中国で排出された二酸化炭素である。
日本の二酸化炭素排出も上述のように分解できる。エンボディド・カーボンの計測によ り、「誰が生産するか、誰が消費するか」を明らかにすることができる。だが、中日モデ ルでは日本と中国しか内生していないため、上述の分解は国レベルにしか応用できない。
ただし、自国で最終消費された最終財を生産する際に排出された二酸化炭素(式57の①)
は部門別に計測することができる。
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4 むすび
以上、中国と日本の経済成長、エネルギー消費及び環境負荷の関係について整理したう えで、GVC の視点から経済成長と環境負荷を分析するための中日多部門計量モデルの構 築に向かって、エネルギーブロックの構造や定式化について検討した。
環境負荷は全世界の問題であり、生産のグローバル化とともに、付加価値が国際間で流 動するだけではなく、環境負荷も国際間で流動するようになった。中国はGVCに参加す ることにより、経済成長を実現しているが、環境負荷も負った。GVC に参加することに より世界各国の二酸化炭素排出について大きな影響がある。中国と日本の経済依存関係を 数量的に解明すると同時に、貿易を通して国際間生産波及に伴う二酸化炭素という環境負 荷の国際移転を解明することも必要である。この問題を解明するために、本章のモデルは まだひな型に過ぎないが、多部門マクロモデルを応用して、GVC の視点で環境問題を分 析する可能性を示した。今後、推計によりモデルの修正および定数化を行い、環境税導入 の効果エネルギー利用効率の改善効果などを考察する必要がある。
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終章
本研究のまとめ
本研究では、GVC の視点から中国と日本の現状分析を行った。そして中日モデルを構 築し、中国と日本の 2025 年までの経済予測を行った。さらにGVC の視点を中日モデル と結合し、GVCの視点からエネルギー・環境ブロックの構築を試みた。
第1章では、まずGVCの概念について説明し、国際貿易論におけるGVC 研究の位置 づけについて論じた。また、付加価値貿易の考え方及び計測方法の発展について整理した。
そして、現時点において入手可能な国際産業連関表について整理した。最後に、中日両国 におけるGVC研究の意義を検討した。
GVC は学際性を持っているため、その定義は必ずしも定説ではなく、研究の着目点に より定義も違う。生産工程の細分化・地理的分散化の進展に伴い、貿易は「業務の貿易」
になり、製品は「Made in the world」になった。このような生産の国際分業の下で、GVC 研究が様々な分野で注目されてきた。貿易方式の変化に伴い、貿易の利益はどのように生 ずるかを分析するために、GVC 研究によって国際貿易論をさらに豊富することも期待で きるようになった。
伝統貿易統計を用いて、各国の経済関係を分析する際に、重複計算の問題や川下におけ る国の輸出額が過大評価されるなどの問題点がある。付加価値貿易の考え方で各国の経済 関係を分析することにより、上述の問題を回避し、各国の競争力や国と国の間の経済関係 をより正確に分析することができる。付加価値貿易のデータは主に企業レベルのデータと 国レベルのデータに分けられる。国レベルのデータは国際産業連関表に基づいて計測され る。国際産業連関表の開発・公表に従い、付加価値貿易の計測方法も体系的に発展した。
付加価値貿易データの計測は国際産業連関表に依存しているため、入手可能な国際産業 連関表の質と数量は付加価値貿易に基づいている GVC 研究にとって非常に重要である。
第1章では、現時点において入手可能な国際産業連関表について整理した。各国際産業連 関表はそれぞれの特徴がある。中国と日本の状況を考慮したうえで、OECD-ICIO 表を選 択した。付加価値貿易データを国際産業連関表により自ら計測する以外に、OECD-WTO により公表された付加価値貿易データベース(TiVA)を利用できる。だが、公表された付 加価値貿易指標の数は限られているため、本研究のすべての分析に対応できない。ゆえに、
本文では第4章以外の付加価値貿易データをOECD-ICIO表に基づいて計測した。
第2章では付加価値誘発に基づいて中日付加価値貿易を分析した。まず、付加価値輸出 の計測方法について説明した。また、中国と日本の付加価値輸出額をそれぞれ計測し、両 国の輸出規模と輸出構造を分析した。そして、付加価値貿易額に基づき中日両国の比較優 位を分析した。
日本(中国)の最終需要により直接・間接に誘発された中国(日本)の付加価値をすべ て中国(日本)の日本(中国)に対する付加価値輸出として計上される。中国の対日本貿 易は伝統貿易では黒字であるが、付加価値貿易では赤字である(例えば2015年について)。 伝統貿易だけで中日貿易を見るのは、中国の対日本貿易黒字を過大評価する可能性が高 い。
中日とも付加価値貿易で見る輸出構造は伝統貿易で見る輸出構造と異なっている。製造 業輸出にはサービス業及び第 1 次産業の付加価値が含まれているためである。日本の輸 出に含むサービス業の付加価値が多い。日本の製造業輸出が研究開発、デザイン、販売、
運輸、通信情報など一連のサービス業への波及効果が強い。一方中国の製造業輸出に含む
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第1次産業多いが、製造業輸出に含むサービス業の付加価値が日本と比べてまだ少ない。
伝統貿易統計では、GVC の川上の原材料部門や研究開発、デザインなどのサービス部門 および川下の販売、アフターサービスなどの重要性を過小評価している。中国でも、研究 開発やデザインなどの川上工程に一層力を入るなら、製造業の競争力を高める。
さらに、付加価値輸出を部門別にみると、日本の対中付加価値輸出は、主に化学品、金 属、機械類およびその他サービスを中心としている。これに対して、中国の対日本付加価 値輸出は各産業に及んでいるが、まだ第一次産業と労働・資源集約的産業の競争力が相対 的に高く、資本・技術集約的産業には成長する余地が十分ある。
最後に、伝統貿易では、一般的に要素賦存に基づく比較優位の財貨・サービスを輸出す ると利益になるとされるが、付加価値貿易では、収益性の高い生産工程が優位性を持つ。
伝統貿易によると、電気・電子機械の産業では産業内貿易に起因して、中日の比較優位が 中立である(輸出入の均衡状態)が、本研究の付加価値貿易による分析では、日本の比較 優位性が確認できた。ほかに、日本の一般機械、輸送機械の比較優位性は、伝統貿易の場 合と比べて高い。
第3章では、中日間の貿易総額を分解することにより、中日間の付加価値貿易を分析し た。まず、両国間の貿易総額の付加価値分解モデルとしてWWZモデルを説明した。また、
中日貿易の付加価値構造を全産業レベルと部門レベルに分けて分析した。
WWZモデルを用いて、中国(日本)の対日本(中国)輸出総額を源泉国・地域及び最 終消費国・地域によって16つの部分に分けられる。概ねに海外に輸出した国内付加価値
(DVA)、輸出後自国に再輸入した国内付加価値(RDV)、国外付加価値(FVA)と複数計 算された付加価値(PDC)である。
DVAは貿易を通して獲得した付加価値であり、DVA率の上昇が求められる。中日貿易 における中国のDVA率を見ると、日本と比べてまだ低いと言えるが、2005年以降、中国 のDVA率が確かに上昇した。中国が中日貿易を通して、ますます多くの国内付加価値を 輸出することを示した。DVA 構成を見ると、中国の日本に対する付加価値輸出が中間財 と最終財の両方に含まれている。日本の中国に対する付加価値輸出が主に中間財に含まれ ている。特に中国で加工した後再輸出する付加価値の割合が高い。
FVA の構成を源泉国から見ることにより国間の依存関係を分かれる。中国輸出の国外 付加価値の中に日本源泉の付加価値の比重が下がった。一方、日本輸出の国外付加価値の 中に中国源泉の付加価値の比重が増えている。
FVAは中間財と最終財のどちらに含まれているかを分析することにより、国のGVCに おける位置を判断することができる。FVA の多くが最終財に含まれていることは、外国 から輸入した中間財を最終財に加工する生産工程を従事していると考えられ、GVC の川 下に位置する可能性が高い。逆にFVA の多くが中間財に含まれているなら、外国から輸 入した中間財を用いて部品・素材を生産する生産工程を従事していると考えられ、GVCの 川上に位置する可能性が高い。中国の日本に対する輸出の最終財に含まれたFVA の比率 が高く、日本の中国に対する輸出の中間財に含まれた FVA の比率が高い。中国は相対的 に川下に位置し、日本は相対的に川上に位置するのを示した。
最後、部門別中日貿易におけるDVA構造の変化を見れば、労働集約的産業の繊維・衣 服・皮革部門と資本・技術集約的産業の電気・電子機械部門がまったく違う動きを示した。
繊維・衣服・皮革部門において、中国のDVA率の上昇及び日本のDVA率の低下が顕著で ある。これに対して、電気・電子機械部門において、中国のDVA率は2005年~2015年 に上昇したが、まだ1995年と同じ程度の73%であり、まだ低い。日本のDVA率は1995