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エルニーニョ / ラニーニャ現象

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第 1 章 世界の海洋

1.2 エルニーニョ / ラニーニャ現象

2009年夏に発生したエルニーニョ現象は2010年春に終息した。その後、2010年夏にラニーニャ 現象が発生した。

エルニーニョ現象は、太平洋赤道域の中央部から南米ペルー沿岸にかけての広い海域で海面水温 が平年より高い状態が半年から一年半程度続く現象である。逆に同じ海域で海面水温が平年より低 い状態が続く現象はラニーニャ現象と呼ばれる。

エルニーニョ/ラニーニャ現象は、太平洋の赤道付近で吹いている持続的な東風(貿易風)と密 接な関係がある。貿易風は、エルニーニョ現象時には弱く、ラニーニャ現象時には強い傾向が見ら れる。貿易風の強さを決める要因は太平洋の東部と西部の間の海面気圧の差だが、この気圧差は大 小を交互に繰り返しており、これを南方振動という。エルニーニョ/ラニーニャ現象と南方振動は、

それぞれが独立に起きているのではなく、大気と海洋が相互に影響を及ぼしあって起きている一つ の現象の異なった側面であり、これらを総合的に捉えて「エルニーニョ・南方振動(El Niño - Southern Oscillation)」、略して「エンソ(ENSO)」という。なお、太平洋赤道域の中部から東部 にかけての海面水温の変化に先立って、海面下(海洋内部)の水温構造に大きな変化が見られるこ とから、その変化の把握がエルニーニョ/ラニーニャ現象の監視には重要である。

西太平洋熱帯域およびインド洋熱帯域における平年の海面水温は、一年を通じてそれぞれ28℃お よび27℃以上(これらを暖水プールと呼ぶ)であり、これらの海域における海面水温の変動は熱帯 の対流活動に大きな影響を及ぼす。西太平洋熱帯域の海面水温は、エルニーニョ現象(ラニーニャ 現象)時に平年よりも低く(高く)なる傾向がある。一方、インド洋熱帯域の海面水温は、エルニ ーニョ現象(ラニーニャ現象)の発生後、1 季節程度遅れて平年より高い(低い)状態になる傾向 がある。

図2.1-3(a)に示すエルニーニョ監視海域(NINO.3:北緯5度~南緯5度、西経150度~西経 90度)で平均した月平均海面水温の基準値(その年の前年までの30年間の各月の平均値)との差 の時間変化が図 2.1-3(b)である。2010 年春から秋にかけてエルニーニョ監視海域の海面水温は 急速に下がり、基準値より低い値で推移した。このことは 2009年夏に発生したエルニーニョ現象 が2010年春に終息し、2010年夏にラニーニャ現象が発生したことを示している。2010年秋には エルニーニョ監視海域の海面水温の基準値との差がさらに広がった。

図2.1-3(c)は、南太平洋のタヒチ(TAHITI)とオーストラリアのダーウィン(DARWIN)の 海面気圧偏差の差を指数化した南方振動指数の時間変化である。南方振動指数は、一般にエルニー ニョ現象時には負、ラニーニャ現象時には正の値を示す。2010年は、3月まで負の値が続いたが、

4月には正の値に転じ、その後は正の値で推移した。図2.1-3(d)、(e)は、それぞれ西太平洋熱帯

域(NINO.WEST)の海面水温の基準値との差およびインド洋熱帯域(IOBW)の海面水温の基準

値との差の時間変化を示している。2010 年は、西太平洋熱帯域の海面水温は 4 月まで負の値が続 いたが、5月以降は正の値で推移した。インド洋熱帯域の海面水温は3月に正の値がピークを迎え たが、その後低下し、11月以降は負の値を示している。図2.1-4(a)~(d)は、太平洋の赤道に 沿った海面から深さ400mまでの水温とその平年値(1979~2004年の26年平均値)からの偏差を 2010年2月、5月、8月、11月について示している。通常の状態では、貿易風により西部に暖かい 海水が吹き寄せられ、また東部では下層の冷たい海水が湧き上がっているため、表層の暖かい海水 と下層の冷たい海水の境である水温躍層(20℃の等温線の深さにほぼ相当する)は、西で深く東で 浅くなっている。2月(図2.1-4(a))は西部で低温偏差(負偏差、水温躍層が浅い)、中部で顕著 な高温偏差(正偏差、水温躍層が深い)が見られたが。5月(図2.1-4(b))には、ラニーニャ現象 の発生に先行して西部にあった低温偏差が東方へ拡大し、中部から東部にかけても低温偏差が見ら れるようになった。8月から11月にかけては(図2.1-4(c)、(d))、中部から東部にかけての低温

(a)

(b)

(c)

(d)

(e)

2.1-3 (a)エルニ-ニョ現象等監視海域、(b)エルニーニョ監視海域の月平均海面水温の基準値(その年の前

年までの30年平均値)との差(℃)(c)南方振動指数の経年変化(2000~2010年)(d)西太平洋熱帯域の海面水 温の基準値との差および(e)インド洋熱帯域の海面水温の基準値との差

b)~(e)における細線は月の値、太線は 5か月移動平均値を示す。また赤色の陰影はエルニ-ニョ現象の期間

(エルニーニョ監視海域での5か月移動平均値が6か月以上続けて+0.5℃以上となった場合)を、青色の陰影はラ ニ-ニャ現象の期間(同じく-0.5℃以下となった場合)をそれぞれ示している。

1.2 エルニーニョ/ラニーニャ現象

2009年夏に発生したエルニーニョ現象は2010年春に終息した。その後、2010年夏にラニーニャ 現象が発生した。

エルニーニョ現象は、太平洋赤道域の中央部から南米ペルー沿岸にかけての広い海域で海面水温 が平年より高い状態が半年から一年半程度続く現象である。逆に同じ海域で海面水温が平年より低 い状態が続く現象はラニーニャ現象と呼ばれる。

エルニーニョ/ラニーニャ現象は、太平洋の赤道付近で吹いている持続的な東風(貿易風)と密 接な関係がある。貿易風は、エルニーニョ現象時には弱く、ラニーニャ現象時には強い傾向が見ら れる。貿易風の強さを決める要因は太平洋の東部と西部の間の海面気圧の差だが、この気圧差は大 小を交互に繰り返しており、これを南方振動という。エルニーニョ/ラニーニャ現象と南方振動は、

それぞれが独立に起きているのではなく、大気と海洋が相互に影響を及ぼしあって起きている一つ の現象の異なった側面であり、これらを総合的に捉えて「エルニーニョ・南方振動(El Niño - Southern Oscillation)」、略して「エンソ(ENSO)」という。なお、太平洋赤道域の中部から東部 にかけての海面水温の変化に先立って、海面下(海洋内部)の水温構造に大きな変化が見られるこ とから、その変化の把握がエルニーニョ/ラニーニャ現象の監視には重要である。

西太平洋熱帯域およびインド洋熱帯域における平年の海面水温は、一年を通じてそれぞれ28℃お よび27℃以上(これらを暖水プールと呼ぶ)であり、これらの海域における海面水温の変動は熱帯 の対流活動に大きな影響を及ぼす。西太平洋熱帯域の海面水温は、エルニーニョ現象(ラニーニャ 現象)時に平年よりも低く(高く)なる傾向がある。一方、インド洋熱帯域の海面水温は、エルニ ーニョ現象(ラニーニャ現象)の発生後、1 季節程度遅れて平年より高い(低い)状態になる傾向 がある。

図2.1-3(a)に示すエルニーニョ監視海域(NINO.3:北緯5度~南緯5度、西経150度~西経 90度)で平均した月平均海面水温の基準値(その年の前年までの30年間の各月の平均値)との差 の時間変化が図 2.1-3(b)である。2010 年春から秋にかけてエルニーニョ監視海域の海面水温は 急速に下がり、基準値より低い値で推移した。このことは 2009 年夏に発生したエルニーニョ現象 が2010年春に終息し、2010年夏にラニーニャ現象が発生したことを示している。2010年秋には エルニーニョ監視海域の海面水温の基準値との差がさらに広がった。

図2.1-3(c)は、南太平洋のタヒチ(TAHITI)とオーストラリアのダーウィン(DARWIN)の 海面気圧偏差の差を指数化した南方振動指数の時間変化である。南方振動指数は、一般にエルニー ニョ現象時には負、ラニーニャ現象時には正の値を示す。2010年は、3月まで負の値が続いたが、

4月には正の値に転じ、その後は正の値で推移した。図2.1-3(d)、(e)は、それぞれ西太平洋熱帯

域(NINO.WEST)の海面水温の基準値との差およびインド洋熱帯域(IOBW)の海面水温の基準

値との差の時間変化を示している。2010 年は、西太平洋熱帯域の海面水温は 4 月まで負の値が続 いたが、5月以降は正の値で推移した。インド洋熱帯域の海面水温は3月に正の値がピークを迎え たが、その後低下し、11月以降は負の値を示している。図2.1-4(a)~(d)は、太平洋の赤道に 沿った海面から深さ400mまでの水温とその平年値(1979~2004年の26年平均値)からの偏差を 2010年2月、5月、8月、11月について示している。通常の状態では、貿易風により西部に暖かい 海水が吹き寄せられ、また東部では下層の冷たい海水が湧き上がっているため、表層の暖かい海水 と下層の冷たい海水の境である水温躍層(20℃の等温線の深さにほぼ相当する)は、西で深く東で 浅くなっている。2月(図2.1-4(a))は西部で低温偏差(負偏差、水温躍層が浅い)、中部で顕著 な高温偏差(正偏差、水温躍層が深い)が見られたが。5月(図2.1-4(b))には、ラニーニャ現象 の発生に先行して西部にあった低温偏差が東方へ拡大し、中部から東部にかけても低温偏差が見ら れるようになった。8月から11月にかけては(図2.1-4(c)、(d))、中部から東部にかけての低温 偏差が顕著となった。一方、西部では高温偏差が強まった。

ドキュメント内 全文(PDF形式: 19MB) (ページ 49-52)

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