第 9 章 主要投資インセンティブ
8. 水 道
19 不動産 69 0.5%
20 電気・ガス 62 0.5%
21 治外法権機関・団体 2 0.0%
一次産業 12.6%
二次産業 28.4%
三次産業 59.0%
(出所)Labour Force Survey Report, Malaysia 2012より作成
3.賃金
(1) 最低賃金制度
<最低賃金の額>
2012年7月、最低賃金令(Minimum Wages Order 2012)が公表され、2013年1月1 日から最低賃金制度が導入された。但し、従業員5人以下の企業については、2013年7月 1日から適用となった。最低賃金令が定める最低賃金は以下のとおりである。
なお、ガイドラインによれば、日給の場合は以下のとおり計算される。
日給 = 最低賃金額(月給) × 12ヶ月 / 52週×1週間あたりの勤務日数
なお、1週間あたりの労働時間は48時間となっている。
<適用範囲>
最低賃金制度は、家事使用人を除き、外国人を含めすべての労働者に適用される。なお、
試用期間中の労働者に対しては、6ヵ月を超えない期間、30%までは減額することができる。
図表 19‑4 最低賃金令が定める最低賃金(月給・時給)
月給 時給
半島マレーシア 900 リンギ 4.33 リンギ
サバ、サラワク、ラブアン 800 リンギ 3.85 リンギ 最低賃金
(出所)最低賃金令より作成
図表 19‑5 最低賃金令が定める最低賃金(週間勤務日数別の日給)
日給 月給 日給 月給
6日 34.62 リンギ 34.62 リンギ×26日 30.77 リンギ 30.77 リンギ×26日 5日 41.54 リンギ 41.54 リンギ×21.67日 36.92 リンギ 36.92 リンギ×21.67日 4日 51.92 リンギ 51.92 リンギ×17.33日 46.15 リンギ 46.15 リンギ×17.33日
週間勤務日数 半島マレーシア サバ、サラワク、ラブアン
(注) いずれも、週間勤務日数にかかわらず、月給が最低賃金額になるように計算されている。
(出所)最低賃金令及びガイドラインより作成
ひとくちメモ (26): 最低賃金令の「賃金」とは
最低賃金令における「賃金」は、最低賃金令に明記されていないものの、最低賃金令の根拠規定である 2011 年全国賃金諮問委員会法(National Wages Consultative Council Act 2011)においては、1955 年雇用法の
「賃金」の定義を引用している。
1955 年雇用法によれば、「賃金」とは、「被用者に対して、雇用契約に基づき労働の対価として現金で支 払われる基本給その他のあらゆる手当」としており、住居費、食費、燃料費(ガソリン代)、使用者が支払う 年金等は賃金に含まれないとしている。
最低賃金制度における「賃金」の意味が不明瞭であったところ、2012 年 9 月、全国賃金諮問委員会はガイ ドライン(Guidelines on the Implementation of the Minimum Wages Order)を出し、同ガイドラインにお いて、基本的には、現金支給の手当てが「賃金」に含まれることとなった。
また、同ガイドラインによれば、賃金が出来高制や歩合制の場合において、最低賃金額と同額以上の月 給となっている場合は、最低賃金令に抵触しないとされるが、最低賃金額未満の場合は、最低賃金額との
(1) 雇用関係を規律する法律(雇用法)
使用者と労働者との関係は、主に1955年雇用法が規定している。
雇用法は、同法の適用がある労働者(Employee)を以下のとおり定義している。
・ 職種を問わず、使用者との間で、月給2,000リンギを超えない雇用契約(Contract of Service)を締結した者
・ 賃金にかかわらず、使用者との間で、以下の内容の雇用契約を締結した者
職人や見習いなど肉体労働に従事することを内容とする契約27
乗客もしくは物品の運送目的、又は商業もしくは営利目的で運営され、機械に
27 但し、労働者が、業務の一定部分を肉体労働者として、残りを非肉体労働者として、同一の 使用者と雇用契約を締結している場合、賃金期間(wage period)中、肉体労働の労働時間が 全体の半分を超えなければ、肉体労働者として見做されない。
よって推進する乗り物を操縦又は保守することに従事することを内容とする契 約
同一の使用者に雇用されている肉体労働者及びその作業を監視、監督すること を内容とする契約
マレーシアで登録された船舶における業務に従事することを内容とする契約
(例外あり)
家事使用人
なお、1955年雇用法は、半島マレーシアにおいてのみ適用される法律である。ボルネオ 島のサバ州、サラワク州においては、それぞれ別途サバ州労働条例(Sabah Labour Ordinance)、サラワク州労働条例(Sarawak Labour Ordinance)がある。
また、雇用法の適用のない労働者との雇用関係は、使用者と当該労働者との雇用契約に よることとなる。
(2) 募集
労働者の募集について特段の規制はない。
但し、1957年雇用規則に基づき、使用者は、雇用開始以前に、下記に示す雇用契約の基 礎となる一定の事項を、労働者に対して書面で通知する必要がある。
① 労働者の名前及び身分証明書番号
② 業務内容及び役職(occupation and appointment)
③ 賃金(手当を除いた額)
④ 手当の内容及び額
⑤ 残業手当
⑥ 福利厚生事項
⑦ 1日の通常勤務時間
⑧ 解雇通知期間及びこれに代わる賃金
⑨ 休日や有給休暇の日数
⑩ 賃金支払期間
(3) 雇用契約
1955 年雇用法上、1ヵ月を超える特定の雇用期間の定めをおく場合及び特定の仕事の完 成を目的とする場合を除き、書面で雇用契約を締結することは求められていない。但し、
実際は、雇用条件や職務範囲を明確にし、後日の紛争を予防するために、書面で雇用契約 を締結することが多い。
149 (4) 雇用契約の終了
①終了原因
・ 労働者による任意の退職
(なお、任意の退職の場合でも、下記の事前通知の規定が適用される)
・ 定年
・ 労働者の死亡
・ 雇用契約の履行不能
・ 使用者側からの正当な理由のある終了、解雇
②事前通知
通知期間は、雇用法の適用のない労働者の場合は雇用契約の規定による。また、雇用法 の規定のある労働者の場合は雇用法の規定による。なお、通知がなされた日は通知期間に 含まれる。
図表 19‑7 雇用法の定める事前通知期間
勤務期間 通知期間
2年未満 4週間
2年以上5年未満 6週間
5年以上 8週間
(出所)雇用法より作成
③契約終了手当
雇用法が適用される労働者が、12 ヵ月以上雇用されたのちに、使用者により雇用契約を 終了させられた場合及び一定期間一時解雇(レイオフ)された場合、労働者は原則として、
契約終了手当(Termination or Lay-off Benefit)28を受領することができる。
図表 19‑8 雇用法の定める契約終了手当(解雇手当)
勤務期間 契約終了手当(解雇手当) 2年未満 1年あたり10日 2年以上5年未満 1年あたり15日 5年以上 1年あたり20日
(出所)雇用法より作成
28 「解雇手当」と呼ばれることもあるが、規則上は「契約終了手当(一時解雇手当)」(Termination or Lay-off Benefit)であるため、本書では「契約終了手当」と記載している。
但し、以下の場合には、労働者は契約終了手当を受領することができない。
(i) 労働者が雇用契約で定めた定年に達した場合
(ii) 労働者が明示または黙示の労働条件に整合しない不正行為を行ったことを理由に、
使用者が雇用契約を終了させた場合(但し、使用者による適切な調査を行った後 であること)
(iii) 労働者が自主的に雇用契約を終了させた場合
(iv) 雇用契約が更新された場合、または同一の使用者の下、従前の雇用契約より不利
にならない条件で新たに雇用契約を締結した場合で、従前の雇用契約の終了後直 ちに当該更新雇用契約又は新雇用契約が効力を生じる場合
(v) 雇用契約が終了する7日以上前に、使用者が、従前の雇用契約の条件より不利で ない条件で、雇用契約の更新または再契約を申し出て、当該契約が従前の雇用契 約の終了後直ちに効力を生じるとされた場合で、労働者が不合理に拒絶した場合
(vi) 使用者が雇用法 12 条に基づき行った通知の期間満了前に、使用者の同意なく又
は雇用法13条に基づいた金銭を支払うことなく、労働者が退職した場合
(vii) 労働者が従事している事業の全部又は一部の事業主の変更があり、新事業主が、
事業主の変更から7日以内に、従前の条件より不利でない条件での雇用契約の継 続を労働者に申し出たにもかかわらず、当該労働者が不合理に拒絶した場合
なお、契約終了手当は、雇用契約が終了した日から 7 日以内に支払われなければならな い。
④解雇規制
使用者が、労働者を解雇するには、雇用契約の定めに関わりなく、「正当な理由」が必要 になる。これは、労使関係法に基づき、正当な理由なく解雇されたと考える労働者は、労 働組合の構成員であるかどうかにかかわらず、解雇の日から60日以内に、救済(解雇の無 効)を産業省長官(Director General for Industrial Relations)に申し立てることができる ためである29。
産業省長官は、解決のため必要と考える手続きをとることができるが、解決できないと 判断した場合は、人的資源省大臣に通知をしなければならず、通知を受けた大臣は、労働 裁判所(Industrial Court)に当該案件を付託することができる。
解雇が無効とされた場合、使用者は解雇した日以後の給与を支払わなければならない。
但し、2年分が上限となる。
ここでいう「解雇」につき、マレーシアの裁判所は、契約終了と解雇とに区別はなく、い ずれの場合であっても正当な理由が必要と判示している。