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インストラクショナルデザインのリハビリテーション教育への適用

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3 インストラクショナルデザインの調査・分析とリハビリテーション 教育への適用

3.2 インストラクショナルデザインのリハビリテーション教育への適用

3.1の「各種インストラクショナルデザインの調査」で調査したIDのうちCRI技法につい て、リハビリテーション教育への適用実例を見る。

ここでは、実際にリハビリテーションの業務に適用したサンプルを併用しながら解説をす る。

CRI 技法の各フェーズは、前述した通り、分析・設計・開発・実施・評価・改善の6つの フェーズを踏む。基本的な流れは、いずれのID手法と共通しているが、個々のフェーズで のステップにはCRI独自のものをいくつかみることができる。

CRI技法によるコース開発の全体の流れのイメージは下記の図のようになる。

 

図3  コース開発のイメージ   

分析、設計、開発、実施、評価の手順を踏むが、基本は業務指向であり、現場で実際に期 待される業務を研修目標とする。次に、業務の遂行に不可欠なスキルや知識を抽出し、階

チェック(テスト)がセットになっている。

受講者は、このコースマップに従い、自分のペースで自分が修得していないモジュールの みを学習する。講師はコースマネージャと呼ばれ、個々の受講者へのコーチングを行う。

モジュールの伝達手段は、そのモジュール目標によって決定され、eラーニングや実習、

ロールプレイや個別学習、ビデオ学習など多岐にわたる。このCRI型の研修運営方法をワ ークショップという。詳細については後述する。

なお、分析、設計、開発の大きな流れをイメージしたのが、下記の図 4 である。これは特 に、eラーニングコンテンツに対応したモジュールの例である。

図4  コース開発のイメージ(eラーニングコンテンツの場合)

再度、分析、設計、開発、実施、評価のイメージを図5、6、7、8で紹介する。図を見れば おおよその作業内容が概観できるようになっているが、詳細については、別の節にて解説 する。

スキル階層図

学習順序 業務リスト/タスクリスト

(2) タスク分析

(3) スキル抽出

タスクフローチャート 行動

与件 基準

コースマップ

(5) 学習内容決定

ストーリーボード

(7) プロトタイプ作成 (1) 受講対象者分析

図5  CRI技法による分析フェーズのイメージ

図7  CRI技法による開発フェーズのイメージ

図8  CRI技法による実施フェーズのイメージ

評価については後述する。では、これ以降、各フェーズについて詳述する。

3.2.1 分析フェーズ

先ず、分析フェーズは以下のステップからなる。

① パフォーマンス分析

② 受講対象者分析

③ タスク分析

④ ゴール分析  

その他にも学習環境分析や、特にeラーニングの場合には、ネットワーク環境の分析も行 う。

では、個々のステップの概要を述べる。

 

3.1.2.4 パフォーマンス分析

パフォーマンス分析とは、研修が問題解決の最適な解決策であるか否かを明確にすること である。組織を運営するためのリソースは、「人」、「物」、「金」、「情報」などに分類される が、①組織上の課題がどのリソースによるものか、②更に「人」のリソースに起因したと しても、その課題が生じる原因がスキルギャップ(スキル不足)によるのかを明確にして いく。

もし、スキルが不足しているために期待されるパフォーマンスを実行できないのであれば、

そのスキルギャップを埋めるために何をすればいいのかを検討する。フォーマルな研修の 実施であるかもしれないし、もっと簡単な方法でギャップを埋めることができるかもしれ ない。また、スキルギャップを埋めるための施策にかかるコストが、その課題を放置した 場合の損失コストを大きく上回ることも予想される。解決コストの分析も必要となる。

場合によっては、スキルギャップが無いにもかかわらず、やるべき事を実行していないと いう事実が判明するかもしれない。この場合にはいくら研修(該当するスキルを埋める研

研修は、こうした領域での問題解決方法としてはほとんど無力である。では、どうすれば いいのか。これに対応するには別なパフォーマンス技術が必要となる。

 

3.1.2.5 受講対象者分析

「パフォーマンス分析」により、研修が最適な問題解決であり、コスト的にも見合うこと が判明すれば、いよいよコース開発のステップに着手する。その最初のステップとして受 講対象者の分析を行う。実際には、研修対象となる業務を分析する「タスク分析」を先に 行っても問題ない。

受講対象者を分析する目的はなんであろうか。受講対象者分析をスキップするということ は、相手が誰だか分からずに処方箋を書くようなものである。受講者が事前に保有してい るスキルの調査は当然のことながら、受講者が研修に対して抱くであろう心理的な情報も 必要となる。他にも、受講者の物事に対する考え方や興味なども研修内容の設計に役立つ ことが多い。

 

3.1.2.6 タスク分析

対象となる業務の作業手順を明確にし、研修で扱う範囲を決める。実際の業務にはさまざ まな条件や制約、例外措置、他の組織とのやりとりなどあり分析は何度か慎重に行われる ケースが多い。多くの場合はフローチャートを使うが、時間軸で表現できない場合にはタ スクリスティングという方法で記述する。タスク分析は、そのタスクを実行するために必 要なスキルを抽出する前準備としても機能している。

タスク分析での注意点に、対象とするタスクを行う人の選定がある。基本的には、現場で 期待されるパフォーマンスを発揮できる人(SME)に依頼し、そのSMEが実際にタス クを実行している様子を観察し、ビデオで撮影したり、音声を録音したり、作業中にさま ざまな質問をしたりしてできるだけ多くの情報を収集する。一度の分析ですべての情報が 収集できることはまれで、実際には、数回に分けて実施するするケースが多い。

タスク分析と同時に、そのタスクを実行する上での制約事項についても逃さず調査する必 要がある。これは、研修で修得したスキルや知識の現場での発揮を妨げる要因を探し出す ためである。この制約要因は前述したパフォーマンス分析とも関連しており、実際にタス ク分析を進めてみるとパフォーマンス分析では見えてこなかった制約事項が発見されるこ とがあるからである。

また、実際にタスク分析作業を行うと、タスクに関するさまざまな要素(スキル、制約事 項、注意点、コンセプトなど)が浮かんでくる。この例を下記に挙げる。

 

間主観関係

セラピストと患者(クライエント)は、お互い個性を有する平等な「人間関係」

セラピストと患者(クライエント)は、お互い異なった役割を有する「役割関係」

臨床 基本姿勢:「どこが苦しいのですか?」「何かして欲しいことはありませんか?」繰り返し 問いかけ、患者のそばにじっと付き添いつづける姿勢が原点

医療行為 患者が抱える問題の解決を援助すること

病歴聴取、診療、検査、診断、治療(手術、投薬、生活指導、カウンセリングなど)

患者の苦痛を軽減するために真摯に努力すべきこと 患者の不安を取り除き、安心感を与えること

患者の抱える問題に関して情報を集め、分析し、診断を下し、治療方針を決定すること 患者に診断、治療方針、予後の見通しなどについて適切な説明を与えること

治療行為を実際に執り行うこと

患者からの質問に答え、患者の抱く疑問を解決すること セラピスト・患者関係

良好な関係により期待される以上の効果がある―プラシーボ効果 良好でない関係により生じる副作用―医療トラブル

言語的・非言語的コミュニケーションにより関係が発展

良好なセラピスト・患者関係の必要条件「受容」「共感」「臨床能力」

受容 患者が「受け入れてられている」安心感を抱く感覚

(+) 「あなたはわたしの患者です」という態度の明示 傾聴

身体的診察を丁寧に行う 検査・治療の説明を丁寧に行う

(-) よそよそしい言動、冷徹、皮肉っぽい態度 患者のストレス→怒り→恨み

セラピスト自身の「限界」を知り、「無力な自分」を受け入れる

共感 「症状」、「病状」、「苦しみ」(・・・苦しい、痛い、どうしようもない)の理解

「利他の本性」共に、苦しむ 臨床能力 「知識」、「技術」、「態度」

生物学的能力 知識、技術 心理社会的能力

社会的資源をいかに患者のために役立てるか 患者の心理状態を正確に読み取る

的確に心理的な援助を行う 人間性に関わる能力

医療における倫理

一律な教育で養成 できるものではな い

  表2  タスク分析(スキル、その他の混合)の例

 

3.1.2.7 ゴール分析

CRI 技法で使用される「ゴール」は、曖昧・抽象的で、そのままの表現では観察すること が困難な目標を意味する。たとえば、「良い社会人である」、「患者様と良好な関係を育んで いる」とか「ビジネスマインドを常日頃発揮している」といった表現での到達目標である。

これに対して、誰が実行しても同じ結果が期待できる行動表現が「パフォーマンス」であ りパフォーマンス目標として記述することができる。

実際には、人材育成上での目標設定はパフォーマンスのようなはっきりと測定できる表現 が使用されるのは非常に希であり、どちらかというと前述したあいまいな達成目標の表現 をとる場合が多い。しかし、このままのあいまいなお題目で教育活動を続けていても実効 性のある教育効果はあまり期待できない。

たとえば、「安全意識を持った医療活動を行おう!」といった月間目標(スローガン)があ るとする。このゴールをイメージさせるポスターや標語をあちこちに貼っても劇的な改善 効果はあまり期待できないであろう。では、どうすればいいのか。この場合、誰もが納得 する、「安全意識を持った医療活動」の具体的な行動をリストアップする。リストアップさ れた行動表には、「こういう医療現場で、こういうタイプの患者様に、こういうタイプの医 療行為をする場合に、最低限やってはいけない危険な行動は以下の通りである。」或いは、

「○○を施す際には、以下の 3 つの準備を行うこと」などのように明確な行動指針を掲げ る。ここでいう行動指針は観察できるパフォーマンス表現にする。

このようにリストアップされたパフォーマンスの中からすぐに実行できるものやある程度 練習が必要なものを切り分けることができる。練習が必要なパフォーマンスに対しては研 修や OJT などを通して対処することができる。 

さらに、個々のパフォーマンスの実施回数を集計して定量的なゴール到達度を測定するこ とも可能となる。 

なお、ここまで見てきた分析フェーズの要素を別な側面からまとめた形のフォーマットも 使用することがある。下記は、リハビリテーションにおける医療面接に関する例である。

 

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