の運用実態の解明
4−1 研究の背景
イギリスの中央政府はこれまでも「都市再生」を目指し、様々なメニューを仕掛けて きた。そのなかで、特にコミュニティ指向型である補助メニューが「ニュー・ディール・
フォー・コミュニティズ」(New Deal for Communities) である。ニューキャッスルに おけるニュー・ディール・フォー・コミュニティズは第一回目の応募機会の際に認められ、
約 113 億円(£54,900,000)が10年間のプログラムに対して投入されている。
この補助金の獲得により、市が経理監督となる独立した組織である「ニュー・ディール・
フォー・コミュニティズ」が設立された。事業は健康や教育など分野に分かれているが、
「コミュニティ」に対する事業の一つとして、住民が自由に応募できる提案型まちづくり 助成制度である「コミュニティチェスト(Community Chest)」が設けられた。ニュー・
ディール・フォー・コミュニティズによる、この提案型まちづくり助成制度は、中央政 府の補助メニューの中でも、コミュニティ自身の手による選択型地域改善の余地を残し たものである。
中央政府の補助メニューであるニュー・ディール・フォー・コミュニティとは対照的 に、地域による補助メニューとして、「ワード・サブ・コミッティズ・ファンド」(Ward Sub-committees Fund) がある。ニューキャッスル市は26の選挙区に分かれており、
各区がそれぞれに分配された地域指向型の提案型まちづくり助成制度であるサブ・コミッ ティズ・ファンドを持つ。これは地域住民にとって気軽に応募できる助成金であること から、これまで一件ずつの額は低いが、数多くの助成を行っている。
これまでニュー・ディール・フォー・コミュニティズについては、その制度の国レベ ルから見た枠組みや国による補助金制度の変遷の一部としての研究は行われてきたが、
そこからコミュニティが実際にまちづくり事業としてその使用用途を選び取る仕組みと、
その方法の一つである提案型まちづくり助成制度についての研究は無かった。
また、イングランドに関する研究は中央集権的な補助メニューの変遷についての研究 が多く、グラスルーツの動きに関してはソーシャルエンタープライズなどの民間主導に よる地域改善の研究は行われてきたが、本研究で取り上げる「サブ・コミッティズ・ファ ンド」のように市レベルが主導し、さらに分権型として地域に「ローカライズ」された まちづくりに対する資金的支援についての研究は例がない。
本研究では、これまで枠組みとして語られてきたイングランドのまちづくりに対する 資金的支援を、地域からの視点で運用実態を解明する。
4−2 本章の研究対象と目的
本章ではニューキャッスル市を研究対象地域として、イングランドにおける提案型ま ちづくり助成制度の運用実態を解明する。
イングランドのまちづくりに対する資金的支援の特性は、指標に基づいた「エリア特定型」
であり、特に貧困エリアへの助成が核となっている。
そこで本研究では、イングランドのまちづくり支援の核となる「貧困エリア」として位置 づけられているニュー・ディール・フォー・コミュニティズエリアとそのエリアの一部を占 める区であるエルスウィック区(ElswickWard) におけるワード・サブ・コミッティズ・ファ ンドを研究対象地域とする。
イングランドにおける典型的なまちづくり支援地域である本研究対象地域において、住民 が自らの地域改善を行う上での資金源としての提案型まちづくり助成制度運用実態を解明す ることで、イングランドのまちづくりの資金的支援の特徴を明らかにすることを目的とする。
4−3 ニューキャッスル市におけるコミュニティに対する資金的支援の全体像
図4− 1 にニューキャッスル市における地域への資金的支援とその原資の提供先を示 した1)。これらから、ニューキャッスル市におけるコミュニティ組織への資金的支援の 特徴としてEU,中央政府、市一般会計の3つのレベルからの補助金が地域への資金的 支援として注入されていることが分かる。
4−3−1 EUからの補助金
1)地域開発ファンド
まずEUからの補助金として、地域開発ファンド (Europian Regional Development Fund) がある。これは補助金の目的別に分かれており、ニューキャッスル市に投入され ている補助金は「目的2」(Objective2) である。これは何かしらの「社会構造的難しさ」
を持つエリアに対する補助金として、「開発の遅れた地域」に対する補助金プログラムで あり、2)「目的1」(Objective1)に続く額の補助金が支給される補助金である。
「目的1」は主に東ヨーロッパやスペイン、ギリシャなどの地域に対する補助金であり、
イングランドで最も多いのが「目的2」の補助金を受けているエリアであり、かなり広 い地域が対象となっているが、その内の一つとして、ニューキャッスル市を含む「North East」エリアにも支給されている。金額が大きいため、コミュニティ組織への補助金額 も一件当たりの額が大きい。
ニューキャッスル市におけるコミュニティによる地域開発ファンドの用途として、例 えば「プレイセンターの使用者組織」による新しい「プレイセンター」の設計と建設費 用に対する補助金に用いられている例がある。3)
4−3−2 中央政府からの補助金
ニューキャッスル市における地域への資金的支援で、ニュー・ディール・フォー・コミュ ニティズのように中央政府からの補助と結びついている支援は、特定の課題を解決する 性質のものが多い。
中央政府の補助メニューを得るために、地方政府は中央政府が「ターゲット」とする 目的に沿った事業計画を作成することから、コミュニティに対する支援は「ターゲット」
に従って行われる。
資料から、2004年から2005年の一年間で地域への資金的支援として投入され た補助金の中で、ニュー・ディール・フォー・コミュニティズ以外では1)近隣住区再 生 フ ァ ン ド(Neighbourhood Renewal Fund) と 2)「 変 化 へ の 準 備 」(Preparing for Change)がある。
1)近隣住区再生ファンド
88の「荒廃エリア」に対する補助金であり、ニューキャッスル市もそのうちの一つ である。「荒廃」に対しての取り組み活動に対して補助が行われている。ニューキャッス ル市でも、若者への教育やボランタリー組織の運営費用など、ソフト的なプロジェクト に助成されている。
2) 「変化への準備」
単一都市再生予算第6順目(Single Regeneration Budget rounds6 ) による補助金で あり、6年間の計画で行われている補助金である。
目的として「Going for Growth - Preparing for Change, Newcastle」と題し、人口 増加と国際的に重要性の増す都市への変革を目指す計画に補助金が出されている。コミュ ニティに対する補助金としては、ニューキャッスル市では運営費用や職能訓練など、雇 用の創出につながる目的で使用された例が多い。
4−3−3 市による補助金
市レベルから出す補助金は監督する部局(directorete)によって次の三種類に分類さ れる。4)
1)都市再生 (Regeneration)
「 芸 術 事 業(Arts Development)」、「 ホ ー ム レ ス へ の 住 宅 斡 旋(Housing Homelessness)」 及 び「 公 園 コ ミ ュ ニ テ ィ フ ァ ン ド(New Castle Great Park Community Fund)」など、雇用創出や住宅、及び地域改善に関するコミュニティへの提 案型まちづくり助成制度がこれに分類されている。研究対象とする「ニュー・ディール・
フォー・コミュニティズ・チェスト」も都市再生部門の監督の下にある。
この類型の中で特にユニークな制度として、イギリスにおける大規模なコミュニティ に対する提案型まちづくり助成制度である「ナショナル・ロッタリー・ファンド」への 申請を「行うための」ファンド(Funding Development Budget) がある。これは申請 書作成のための費用を補助するファンドであり、市の助成制度をてことして、コミュニ ティにさらなる民間資金を取り入れようとしている。
2)近隣住区サービス (Neighbourhood Services)
この中には「若者のためのサービス(Play and Youth Service)」、「コミュニティのお 祭り(Community Festivals)」、及び「レジャー施設(Leisure LInk)」など、近隣住区 に関する課題を解決するための提案型まちづくり助成制度がある。
研究対象事例とする「ワードサブ・コミッティズ・ファンド」もこの分類の中のひと つである。これは区ごとの助成金である。その金額も区毎に異なり、貧困エリアには手