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アルコール潤滑下での DLC-アルミニウムの摩擦特性

第 4 章 アルミニウム鋳物の切削におけるアルコールのミスト供給の効果

4.2 アルコール潤滑下での DLC-アルミニウムの摩擦特性

摩擦試験機(CSM製TRIBOMETER)を用いて,潤滑下におけるDLC膜とアルミニウム との摩擦時の特性を評価した.図 4.2 に,実験装置の写真と摩擦部の概略図を示す.摩擦 実験の方法はボールオンディスク方式とした.アルミニウム合金切削時の切りくずと工具 すくい面との摩擦を模擬して,ボールに直径10 mm のアルミニウム合金(A5052)球を,

ディスクにすくい面を鏡面研磨した旋削用超硬インサートを用いた.インサートのすくい 面にDLC膜を被覆したものと何も被覆していないものの2種類を比較した.DLC膜は第2 章及び第 3 章で用いたものと同じ T 字状フィルタードアーク蒸着法による水素フリーの ta-Cである.潤滑剤はIPA(化学式(CH3)2CHOH)及び水溶性切削液(ユシローケンFGE234

(エマルション),20倍希釈)とし,測定の直前に潤滑剤を0.01 ml摺動部に滴下してから 実験を開始した.また,比較として潤滑剤を滴下しないドライの測定も行った.室温(23 °C),

大気中の環境下にて,荷重30 Nをボールへ負荷し,すべり速度50 mm/sで60 s摩擦係数 を測定した.

図4.2 摩擦実験装置の写真と摩擦部の概略図

Load (30N)

Lubricant drop before test (0.01ml)

Disk lotation (50mm/s) Ball (A5052)

Disk (Carbide insert)

(a) Friction test apparatus (b) Schematic view of sliding part

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4.2.2 実験結果及び考察

(1) 摩擦係数

図4.3に,摩擦係数の時間変化を示す.ドライでは,60 s経過後の摩擦係数がta-C,超 硬ともに約0.6と差はなかった.一方,IPAと水溶性切削液の潤滑下では,ta-Cと超硬とで 摩擦係数に差があった.いずれの潤滑剤においても,ta-Cの場合が60 s経過後の摩擦係数 が低くなった.また,IPA潤滑下におけるta-Cの摩擦係数は,水溶性切削液を用いた場合 と同程度の低い値であった.

(2) 実験後のボールとディスクの表面の状態

図4.4に,実験後のボールの摩擦部の状態を示す.ドライの場合には,ta-C,超硬のいず れの場合もボールの摩擦部が大きく摩耗している.一方,IPA と水溶性切削液の潤滑の場 合には,いずれのボールも摩耗量は少ない.

図4.5に,実験後のディスク表面の状態を示す.ta-Cについては,IPAと水溶性切削液の 潤滑の場合,摺動痕がほとんど残存しておらず摩擦部が判別できない.ドライの場合,摩 擦部にアルミニウムが著しく凝着していることが分かる.一方,超硬については,IPA潤

0 0.2 0.4 0.6 0.8 1

0 10 20 30 40 50 60

Friction coefficient

Time s

図4.3 ボールオンディスク摩擦実験における摩擦係数変化

ta-C-IPA ta-C-Dry

Carbide-Dry Carbide-Emulsion

Carbide-IPA

ta-C-Emulsion

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図4.4 摩擦実験後のボールの摩擦部の状態

図4.5 摩擦実験後のディスクの摺動部の状態

滑の場合,若干の凝着物が認められる.水溶性切削液の潤滑の場合,幾筋かの摺動痕が残 存している.ドライの場合にはアルミニウムが著しく凝着している.

ボールとディスクの実験後の状態から,ドライについてはディスクへのアルミニウムの 凝着により,アルミニウムのボール対アルミニウムの凝着物の摩擦になっていたため,い

(b) ta-C-Emulsion (c) ta-C-Dry

(d) Carbide-IPA (e) Carbide-Emulsion (f) Carbide-Dry (a) ta-C-IPA

(b) ta-C-Emulsion (c) ta-C-Dry

(d) Carbide-IPA (e) Carbide-Emulsion (f) Carbide-Dry (a) ta-C-IPA

500μm

200μm

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ずれのディスクの場合も摩擦係数が同程度であったことが分かる.一方,ta-Cディスクで IPA 潤滑の場合,水溶性切削液の潤滑の場合と同様にディスクにほとんどアルミニウムが 凝着せず,低い摩擦係数を得られることが分かった.

以上から,従来研究で報告されているアルコール潤滑による低摩擦化の効果を,本研究 で用いるta-Cとアルミニウム合金との摩擦においても確認することができた.また,その 摩擦係数は水溶性切削液に匹敵するほど低いことが分かった.