第 4 章 アルミニウム鋳物の切削におけるアルコールのミスト供給の効果
4.3 アルコールのミスト供給の効果
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ずれのディスクの場合も摩擦係数が同程度であったことが分かる.一方,ta-Cディスクで IPA 潤滑の場合,水溶性切削液の潤滑の場合と同様にディスクにほとんどアルミニウムが 凝着せず,低い摩擦係数を得られることが分かった.
以上から,従来研究で報告されているアルコール潤滑による低摩擦化の効果を,本研究 で用いるta-Cとアルミニウム合金との摩擦においても確認することができた.また,その 摩擦係数は水溶性切削液に匹敵するほど低いことが分かった.
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図4.6 ミストノズルを配置した二次元切削実験装置
4.3.2 実験結果及び考察
(1) 切削抵抗
図4.7に,切削抵抗の時間変化を示す.断続切削については10 sを,連続切削について は最初の3 sを示した.断続切削では,ドライの場合に比べてIPAミストの場合が主分力,
背分力とも大きく減少した.また値の変動はドライに比べてIPAミストの場合が少なかっ た.断続切削に比べて減少量は小さいが,連続切削でもドライの場合に比べてIPAミスト の場合が主分力,背分力とも低くなった.図4.8に,断続切削の切削開始後2 s~10 sの切 削抵抗の平均値,及び連続切削の1 s~3 sの平均値を示す.図のエラーバーは,平均値算 出区間における標準偏差である.ドライに対して IPA のミスト供給による値の減少率は,
断続切削では主分力が約16 %,背分力が約30 %であり,連続切削では主分力が約8 %,背 Workpiece
Turning tool Mist nozzle
(a) Experimental apparatus
(b) Closeup view of cutting point Mist nozzle
Insert tip Dynamometer
- 89 - 150
200 250 300 350
0 2 4 6 8 10
Principal force N
Time s
50 100 150 200 250
0 2 4 6 8 10
Thrust force N
Time s
0 100 200 300 400
0 0.5 1 1.5 2 2.5 3
Principal force N
Time s
0 100 200 300 400
0 0.5 1 1.5 2 2.5 3
Thrust force N
Time s
図4.7 二次元切削における切削抵抗変化
100 150 200 250 300
Principal force Thrust force
Cutting force N
100 150 200 250 300
Principal force Thrust force
Cutting force N
図4.8 二次元切削における切削抵抗の平均値
分力が約15 %であった.いずれの切削形態でも主分力よりも背分力の減少率が大きいのは,
次項で述べる工具すくい面の摩擦係数が低下したためと考えられる.
(2) 摩擦係数
図4.9に,切削中の工具すくい面の摩擦係数変化を示す.断続切削については10 sを,
連続切削については最初の3 sを図に示した.また図4.10に,断続切削の開始後2 s~10 s (a) Intermittent cutting
IPA mist Dry
(b) Continuous cutting
IPA mist Dry
(a) Intermittent cutting (b) Continuous cutting IPA mist Dry
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の摩擦係数の平均値,及び連続切削の1 s~3 sの平均値を示す.図のエラーバーは,平均 値算出区間における標準偏差である.断続切削,連続切削ともにIPAミストの場合がドラ イの場合より摩擦係数が低いことが分かる.IPA ミストによる摩擦係数の低下率は,断続
切削で約16 %,連続切削で約8 %であった.
以上から,IPA をミスト供給することにより,切削中の工具すくい面の摩擦係数を低下 させる効果があることが明らかになった.またその効果は,連続切削より断続切削の場合 に強く発揮されることが分かった.これは,断続切削では切削しない(非切削の)時間が あるため,この時間に工具刃先にIPAが十分に供給されるためと考えられる.ただし,AC2A の切削では,後述する切りくずの形状から分かるように,連続切削でも切りくずが分断さ れるため,IPAが工具刃先に入りやすいと考えられる.そのため連続切削においても,IPA ミストを供給することによる摩擦係数低下の効果が発揮されたと考える.
0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2
0 2 4 6 8 10
Friction coefficient
Time s
0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2
0 0.5 1 1.5 2 2.5 3
Friction coefficient
Time s
図4.9 二次元切削における摩擦係数変化
0.6 0.7 0.8 0.9 1 1.1
Intermittent cutting Continuous cutting
Friction coefficient
図4.10 二次元切削における摩擦係数の平均値
IPA mist Dry
IPA mist Dry
(b) Continuous cutting (a) Intermittent cutting
IPA mist Dry
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(3) 工具すくい面及び逃げ面
図4.11に,実験直後の工具すくい面及び逃げ面の状態を示す.断続切削,連続切削とも,
工具すくい面への凝着の範囲は,IPA ミストの場合がドライの場合より小さいことが分か る.また逃げ面への凝着量もIPAミストの場合が少ない.
(4) 切りくず
図4.12に,各条件で切削したときの切りくずを示す.断続切削,連続切削ともIPAミス トの場合の切りくずは,ドライの場合に比べてカールが小さくなっていることが分かる.
このことは,工具すくい面への切りくずの接触面積が減少したことを示しており,図4.11 に示した工具すくい面の凝着の範囲がドライに比べて小さいことと一致する.
図4.11 二次元切削後の工具すくい面及び逃げ面
(上段:すくい面,下段:逃げ面)
(a) Intermittent cutting Dry IPA mist
Rake face
Flank face
(b) Continuous cutting
500μm
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図4.12 二次元切削で生成された切りくず
以上の二次元切削実験による検証から,切削時にIPAをミスト供給することで,切削中 の工具すくい面の摩擦係数がドライの場合より低下し,切りくずのカールが小さくなって 工具へのアルミニウムの凝着範囲が抑制され,切削抵抗が減少することが分かった.