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本研究では,以下の示す要求事項に対応した拘束条件について述べる.

アシスト量に最大値を設けて,過度なアシストを抑制する.

アシスト変化量に最大値を設けて,jerkを抑制する.

ドライバのペダル操作に反したアシストは掛けない

4.6.1 アシスト量の最大値の制約

過度なアシストは走行に支障をきたし危険になり得るので,アシスト量に最大値を設け て,過度なアシストを抑制する.最適減速アシスト量をyas[i](0),最適加速アシスト

解をyas+[i](≥0),それぞれの最小値をyasmyasm+ ,最大値をyasMyasM+ と置くと,式 (4.30)のようにおける.

{

yasm ≤yas[i]≤yasM

yasm+ ≤y+as[i]≤yasM+ (4.30)

4.6.2 アシスト変化量の最大値の制約

アシスト量が急激に変化することによる違和感を軽減するため,式(4.31)の制約を設 ける.

{|yas[i]−yas[i1]| ≤yas,th

|yas+[i]−y+as[i1]| ≤yas,th+ (4.31)

4.6.3 ペダル操作とアシストの干渉抑制

ドライバがブレーキペダルを踏んでいるときは加速アシストを抑制し,逆にアクセルペ ダルを踏んでいるときは減速アシストを抑制する仕組みを作るために,式(4.32)の制約 を設ける.人間のアクセルペダル操作量をh+(0),ブレーキペダル操作量をh(0) とおく.

{

h+0→ω1= 0

h0→ω2= 0 (4.32)

この制約により,ペダル操作に反したアシスト量を抑えることが可能となる.

4.6.4 相対速度によるアシスト量の制約

相対速度u3 = 0付近では,式(4.27)から分かるように,KdBの変化量が大きく不安 定になるので,以下の制約を設ける.相対速度に関するスレッショルドをvthとおく.

u3[i]> vth→ζ[i] = 0 (4.33) この制約により,u3= 0付近では減速アシストを抑制することが可能となる.

実験的検証

5.1 PWARX モデルを用いたオフラインシステム同定

本節では運転シミュレータ上での前方者追従行動のデータをもとにオフラインで

PWARXモデルを同定した結果について述べる.ここでオフラインシステム同定とは,

まず一定時間分の運転データを一括して取得し,その後システム同定を行う方法を指す.

以下に,実験結果中に現れるラベルの意味と単位についてまとめる: height 標高[m]

Assist Mode 0:支援なし,1:通常支援,2:緊急支援 Range 車間距離[m]

velocity 自車速度[m/s]

Rangerate 相対速度[m/s]

Accel. 自車加速度[m/s2] Operation ペダル操作量[-]

+Assist 加速アシスト量[m/s2] -Assist 減速アシスト量[m/s2]

ただし,本報告の中では標高と支援モードについては言及していない.

2.2.6節において示した手順で健康な男子大学生2名に実験を行ってもらった.被験者

の情報を表5.1にまとめる.

次に,得られた実験データを用いて,3.2節にて述べた流れで式(3.46)のパラメータ同 定およびモデル化を行った.モード数を4としたPWARXモデルパラメータおよびモー ド数を2にまとめた場合のPWARXモデルパラメータを表5.2に示す(小数点5位以下 切り捨て).ここでモードを集約して2モードとするのは後述するアシストシステムの計 算コストを低減するためである.表中のθj1, θj2, θj3, θj4は式(3.46)におけるそれぞれの 入力変数の係数と対応している.

表5.2における各パラメータについて説明する.まずθj1θj2θj3 の各パラメータは

5.1 被験者の個人情報(E-1E-2)

Examinee Age Driving Career Mileage per Year

[Years] [km]

E-1 23 4 0〜100

E-2 23 3 300〜500

5.2 PWARXモデルパラメータ1

Examinee Mode Mode θj1 θj2 θj3 θj4

(KdB) (車間距離) (相対速度) (出力再帰項)

4 1 -0.0239 0.0688 0.1239 0.8772

2 -0.0079 0.0026 0.0019 0.9931

E-1 3 -0.0066 -0.0002 -0.0019 0.9770

4 -0.0044 -0.0044 0.0181 0.9552

2 1 -0.0239 0.0688 0.1239 0.8772

(2,3,4) -0.0053 0.0001 -0.0005 0.9762

4 1 0.0031 -0.0028 0.0089 0.9591

2 -0.0001 -0.0002 0.0039 0.9935

E-2 3 -0.0002 -0.0026 0.0091 0.9916

4 -0.0028 -0.0553 0.0609 0.6002

2 1 0.0031 -0.0028 0.0089 0.9591

(2,3,4) -0.0001 -0.0011 0.0067 0.9928

PWARXモデルのKdB,車間距離,相対速度の係数をそれぞれ表しており,出力に与え

るゲインの大きさを意味する.θj4は出力の再帰項のパラメータであり,人間の応答の速 さを表している.一般に,θj4の値が小さいほど反応速度が速いことを意味する.各モー ド内でθj1θj2θj3の値を比較した場合,総じてθj3,すなわち相対速度に対する係数が 最も大きくなることが多い.これは運転行動の中で,ドライバが相対速度を注視している 事を裏付けている.

モード数を4として3.2.3節で紹介したクラスタリングを施すと図5.1〜5.4(被験者:

E-1)のようになる.各図のクラスタ(Mode)についてKdBの大きい順にMode 1(赤), Mode 2(緑),Mode 3(青),Mode 4(黄)と定義した.図5.1〜図5.4の解析結果からモー ド数を4とした場合の各動作モードの特徴を述べる.

Mode 1(危険回避)

Mode 1は車間距離が小さく,相対速度が負の領域を占めていることがわかる.これは前

方車が至近距離で自車に近づいてくるため非常に危険な領域であると言える.他のモード に比べてもブレーキ操作が多い事がわかる.

Mode 2(回避準備)

0 100 200 300 400 500 600

−100

KdB 0

0 100 200 300 400 500 600

0 50 100

Range

0 100 200 300 400 500 600

−10 0 10

Range rate

0 100 200 300 400 500 600

−5 0 5

Accel.

time[s]

5.1 クラスタリング結果(E-1:時系列)

−600 −40 −20 0 20 40 60

10 20 30 40 50 60 70 80 90

KdB

Range

5.2 クラスタリング結果   (E-1KdB−車間距離)

0 10 20 30 40 50 60 70 80 90

−10

−8

−6

−4

−2 0 2 4 6

Range

Range rate

5.3 クラスタリング結果   (E-1:車間距離−相対速度)

Mode 2は車間距離が大きく,相対速度が負の領域を占めている.図5.1を見ると,アク

セルを緩める操作をしている領域に多く分布していることがわかる.つまりこれは遠方か ら前方車が徐々に近づいて来る時に,危険領域に入る前に準備する行動と言える.

Mode 3(加速追従)

Mode 3は車間距離が大きく,相対速度は主に正の領域を占めていることがわかる.また,

アクセル操作量が最も大きい領域を占めている.これは遠方で前方車がさらに離れて行く 状態なので積極的にアクセル操作を行い,追従を行おうとしている領域である.

Mode 4(回避直後)

−10 −5 0 5 10

−1

−0.5 0 0.5 1

Range rate

Pedal Operation

5.4 クラスタリング結果  (E-1:相対速度−ペダル操作量)

5.3 SVMパラメータ推定結果

Subject Modes η1 η2 η3 η4 η5

E-1 Mode[1]-[2,3,4] 19.8986 -21.7770 -12.9044 -18.6342 -5.6664 Mode[1,2]-[3,4] 12.5693 -4.0326 -0.0705 3.4487 2.2409 Mode[1,2,3]-[4] 17.7851 2.8648 14.2091 12.7884 5.2986 E-2 Mode[1]-[2,3,4] 22.1326 0.0925 -2.8820 -7.5045 1.6652 Mode[1,2]-[3,4] 26.7642 30.0617 -7.7417 9.6002 2.6246 Mode[1,2,3]-[4] 44.0047 21.6643 37.5991 26.7784 20.6878

Mode 4は車間距離が小さく,相対速度が正の領域を占めている.図5.1を見ると,ブ

レーキを緩めてアクセルを踏み込んでいる事がわかる.これは車間距離が近い状態で前方 車が加速し始めた時に,それまでの減速行動から加速行動に移る領域である.

て特筆すべき点は,ほぼ全ての分離面でη1,すなわちKdBの係数が最も大きい値をとっ ている点である.つまりドライバは前方車追従行動をする際に,前方車の背面積の変化率 を元に動作モードの切り替えを行っている事が分かる.図5.5にクラスタリング結果に分 離面を書き込んだ例を示す.

5.5 SVMによるモード分離平面(E-1)

5.2 PrARX モデルを用いたオンラインシステム同定

PrARXモデルを用いたオンラインシステム同定実験の手順を以下に述べる.

各被験者について,10分間の前方者追従タスクを連続して2回ずつ行い,2つの運 転行動データE-1とE-2を取得する.

データ E-1の全範囲用いてパラメータ推定を行い,得られたモデルパラメータを θiniiniとする.

データE-2について,θiniini を初期値として逐次更新を用いて解析を行った結果 と,行わなかった結果について,モデル化誤差を比較する.

ある被験者の初期パラメータθiniini の値を以下table.5.4,5.5に示す.

5.4 Initial Parametorθ

mode θ1 θ2 θ3 θ4 θ5

1 -0.1460 0.2339 0.1737 0.7567 -0.0667 2 -0.0019 0.0024 0.0178 0.9108 0.0029

5.5 Initial Parametorη

mode η1 η2 η3 η4 η5

1 11.2270 -4.4160 -9.3682 -25.5031 -17.9684

5.6 出力誤差の比較

driver recursive estimetion Without recursive

A 3.5e4 4.6e4

B 0.0036 0.0896

C 0.0027 0.0097

この被験者について,オンラインパラメータ推定により求めたパラメータの変化の様子 を図5.6に示す.ただし初期値θiniiniの値が1となるように正規化してある.

図5.6(a)(b)に示されるθの時系列変化に注目すると,どちらのモードにおいても入力

u1の係数の変化幅が最も大きく, KdBの値が運転行動のダイナミクスに大きく影響して いると考えられる. 次に3 人の被験者A,B,Cについて逐次更新を行った場合と行わな かった場合のモデル化誤差の比較結果を以下のtable.5.6に示す. 被験者A,B,Cについて 逐次更新を行った場合のモデル化誤差が,逐次更新を行わない場合の値より小さくなる結 果が得られた. これらの結果から,逐次更新を行うことによって,より各ドライバに対応す る前方車追従動作の正確なモデリングができるようになると考えられる.

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