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アクチンフィラメントを選択的に除去する分子道具 としての、アクチンフィラメント切断・キャップタンパク質ゲ

ルゾリンの性質

4-1)  要約

ゲルゾリンは、Ca2+によってその活性が制御されるアクチンフィラメント(F-アク チン)切断・キャップタンパク質である。トロポニン−トロポミオシン複合体(nTm) もまたCa2+によって活性の制御されるF-アクチン結合タンパク質で、骨格筋と心筋 に存在する。本研究において、心筋の細いフィラメントはCa2+非存在下で、ゲルゾ リンのN末断片G1-G3 により非常にゆっくりと除去されることを示す。蛍光顕微鏡 により、単一F-アクチン及び細いフィラメント切断の時間経過が、Ca2+の有無によ りどのように異なるかを定量的に解析した。その結果、F-アクチン除去速度はCa2+の あるときの方が無いときに比べると速かった。またCa2+を結合していないnTmはフ ィラメント除去を充分に阻害する一方、Ca2+を結合しているときはF-アクチン単独 のときと比べ切断速度をやや減少させるだけだった。以上の結果は、Ca2+が無いと きF-アクチン上のnTm結合部位は、G1-G3のF-アクチンへの結合を阻害するように 変化するか、あるいはnTmがF-アクチンの構造を変化させ、G1-G3のF-アクチンへ の結合をアロステリックに阻害するよう働くことを示唆する。

4-2)  研究の背景

ゲルゾリンはF-アクチンを切断し、B端(+端)をキャップするタンパク質である。

プラズマ及び様々な臓器に存在し、細胞の形と運動の制御に重要な役割を果たして いると考えられている(レビューはKwiatkowski, 1999; Mcgough et al., 2003)。ゲル ゾリンによるF-アクチンの切断は、ゲルゾリンへのCa2+結合に伴う 6 つの部位

(G1-G6)の構造変化によって制御されている。その一方で、ゲルゾリンのN末断

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片(G1-G3)はCa

いて重要な役割を果たすことが分かってきた(Kothakota et al., 1997;

2+

2+

線維中の細いフィ メントはCa2+非存在下では非常にゆっくりと切断され除去されることを示す。次

、フィラメント除去過程を顕微鏡下で直視するin vitro系を利用してF-アクチン切 こでもCa2+非存在下ではnTmによりF-アクチンの断片化は大き

2+

2+

2+非依存的にF-アクチンを切断することが報告されていた。また 最近、ゲルゾリンのタンパク分解により生体内でもこのN末断片が生成され、アポ トーシスにお

Azuma et al., 2000)。そのためG1-G3に関する物理化学的な研究は、F-アクチン切

断・キャップの分子機構についてだけでなく、細胞運動からプログラムされた細胞 死に渡る、ゲルゾリンによる細胞機能制御機構についての情報を与えると言える。

筋収縮はトロポミオシン(Tm)・トロポニン(Tn)複合体(nTm)により制御さ れている(レビューはGordon et al., 2000)。その制御機構について広く信じられて いるのは、立体障害モデルである。ミオシンの強結合部位は、Ca を結合していな いTnに結合したTmにより大部分が覆われている。この状態ではクロスブリッジが形 成されず、筋肉は収縮しない。TnにCa が結合することでTmはミオシン結合部位を 開放し、筋収縮が起こる。

Tmのアイソフォームとゲルゾリンはどちらも非筋細胞で発現しており、アクチ ン細胞骨格のダイナミクスに寄与している。種々のTmがゲルゾリンによるF-アクチ ンの断片化を阻害するという報告もいくつかある(Fattoum et al., 1983; Ishikawa et al., 1989; Nyåkern-Meazza et al., 2002)。本研究ではまず、心筋

ラ に

断機構を調べた。こ

く抑制された。しかしCa のあるときは、再構成された細いフィラメント(nTmを 後から結合したF-アクチン)はF-アクチンのみ(nTmなし)と同じくらいの速さで 切断された。以上の結果は、立体阻害的かアロステリック的かによらず、TnからCa が解離することによってnTmがF-アクチンの構造を安定化し、G1-G3のF-アクチン への親和性を弱めたということが考えられる。

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4-3)  材料と方法 4-3-1)  タンパク質

本研究で用いたタンパク質の調製法は 2-2)にまとめた。ビオチン化アクチンを未処 理のアクチンと混ぜ、4 割がビオチン化されたアクチンモノマーで構成されるF-ア クチンを作成し、ローダミンファロイジン(Rh-Ph, R-415; Molecular Probes, Inc.

Eugene, OR)で染色した。細いフィラメントは、この部分的にビオチン化した

F-アクチン(400 nM)とnTm(100 nM)を使用前にRegulated filament buffer(100 mM KCl, 25 mM Imidazole-HCl, pH 7.4, 6 mM MgCl , 1 mM EGTA and 5 mM DTT)中で 混ぜ、12時間以上氷上で放置して調製する。安定なF-アクチン-nTm複合体を調製す るためには、F-アクチンと を混合後ある時間放置する必要があるが、この放置 時間は温度に大きく依存することが知られており、45°Cで10 min、低温では半日を 要する(Ishiwata, 1973, 1978; Ishiwata and Kondo, 1978; Gordon et al., 1997)。

グリセリン処理したラット心筋は、以前報告された方法に従い調製した(Fukuda et al., 1996; Fukuda and Ishiwata, 1999)。ウィスター系ラットのオスの心臓は、早稲 田大学のガイドラインに従って本研究室で調製した。ラット乳頭筋(長さ約5 mm、

幅1 mm)を左心室から切り出し、グリセリン溶液(51% v/v glycerol, 5 mM E A,

0.5 mM NaHCO )中に4°Cで一晩浸けておく。次の日にグリセリ

ン溶液を新しいものに交換し-20°Cで保存する。実験には、-20°Cで保存開始後 目から 5 週間の範囲で用いた。実験の直前に、0°C以下に冷やしたグリセリン溶液 中でグリセリン処理した筋肉をピンセットを用いて割き、筋線維断片(直径約 100

2

nTm

4-3-2)  筋線維中でのF-アクチン除去過程の観察

GT

3, 2 mM leupeptin

3日

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µm、長さ1∼2 mm)を切り出す。筋線維長軸に沿って筋肉を切り出すとき、引っ張

すぎないよう非常に注意深く作業を行なった。切り出した試料は 4°Cの 1 % v/v ん だ Rigor 溶 液 ( 120 mM KCl, 5 mM MgCl2, 10 mM

anesulfonic acid (MOPS), pH 7.0, 1 mM EGTA)中に20∼30分 浸して化学的に除膜し、Relaxing溶液( 2, 10 mM MOPS, pH 7.0, 4 mM EGTA, 3.8 mM ATP)で洗う。除膜心筋試料中の細いフィラメント クチンフィラメント)は、試料を 1.1 µM

)と1 mM DTTを含む4°CのRelaxing溶液中に1.5時間浸 して蛍光染色した。その後試料を xing溶液で洗い、

xing 溶液中に浸しておいた。G1-G3処理は、Working溶液(60 mM K

Mg-Acetate, 20 mM MOPS, pH 7.0, 2 mM EGTA, 1.5 mM NaN3, 2 mM leupeptin, 10 mM DTT, 20 mM 2,3-butanedione 2-monoxime TP, 4.5 mg/ml

D(+)-glucose, 50 unit µg/ml

1-G3を、1.9 mM CaCl2を含めるか(+Ca)、あるいは含めずに(-Ca)、顕微鏡下 5分後に、溶液中に存在するG1-G3/actin複合体を洗い流 すために新しいG1-G3 を含むWorking溶液と交換した。共焦点蛍光像は、倒立型顕 pus Co., Japan)にビデオレート共焦点 ユニット(CSU10; Yokogawa Electric Co., Japan)とアルゴンレーザー(GLG3100, 488 nm; Showa Optronics Co., Ltd., Japan)を装着して観察した。画像は

)で 120フレーム)を1分毎に20分 間撮影し、デジタルビデオレコーダー(WV-D10000; SONY an)で録画した。

試料には画像取得の間だけ励起光を当てた。取得した画像はパソコン(Apple Japan) でLG3画像取り込みボードを利用して取り込み、蛍光像のコントラストを上げるた り

TritonX-100 を 含 3-(N-morpholino)prop

120 mM KCl, 3.9 mM MgCl

(ア のAlexa488-ファロイジン(A12379;

Molecular Probes Inc., OR

Rela シャーレ(3910-035; ASAHI TECHNO GLASS Co., Chiba, Japan)の底に両面テープで両端を固定して、Rela

-propionate, 4 mM

(BDM), 1 mM A

s/ml glucose oxidase and 50 units/ml catalase)に70 G

で溶液交換して開始した。

微鏡(IX70 with UPlanApo 60× Water; Olym

CCDカメ ラ(CCD300-RC; DAGE-MTI Inc., IN 4秒間(

, Jap

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めに120フレームで平均化した。

4-3-3)  in vitroでのF-アクチン及び再構成した細いフィラメントの切断・除去過程

の観察

F-アクチンの顕微観察の方法は以前報告されているもの(Ichetovkin et al., 2000;

Ono et al., 2004)と似ているが、フィラメントをガラス面に固定する方法をUemura et al.の方法(Uemura et al., 2004)を参考にして変えた。まずあらかじめビオチン 化したBSAを表面に吸着したカバーガラスにアビジンを結合する。次にビオチン化 したF-アクチンあるいは細いフィラメントとnTm(100 nM)を含む溶液をフローセ ルに流し入れ、2分後にガラス面に吸着しなかったフィラメントをWorking溶液で洗 い流す。このWorking溶液には、以降の実験条件に従って1.9 mM CaCl2と100 nM

nTmが含まれている。ガラス面に吸着したフィラメントの数は、1 画面にだいたい

10 本となるように調節した。カバーガラスを落射蛍光顕微鏡(IX70 with PlanApo 100× Oil; Olympus Co., Japan)の試料台に設置し、F-アクチンの蛍光像をICCDカ メラ(ICCD-350F; Video Scope International, Washington D.C.)で撮影し、デジタ ルビデオレコーダー(DSR-11; SONY, Japan)に録画した。次にG1-G3と、以降の 実験に従い1.9 mM CaCl2及び100 nM nTmとを含むWorking溶液でフローセル中の 溶液を交換する。溶液交換には約2秒かかった。試料には、最初の120秒間は連続 して励起光をあてる。F-アクチンと細いフィラメントはそれ以降300秒まで、30秒 毎に5秒間励起した。Ca2+を含まない細いフィラメントのときは、さらに600秒ま では60秒おきに5秒間、それ以降は300秒おきに1800秒まで観察を続けた。

4-3-4)  顕微解析の方法

録画した蛍光像はパソコン(Apple Japan)でLG3 画像取り込みボードを利用して

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取り込み、像のコントラストを上げるために最初の120秒間については5秒毎に4 間(120 フレーム)ずつ積算した。Ca2+を含むか含まないかにかかわらず、F-ア

3、4-1CとD、4-2AとB、及び 4-2CとDに示した。また解析結果を図 4-3 に

なる。式(1)において、F(0) = 1、F(∞) = C / (1 + C)であり、Cは定数である。全て 式(1)で十分良く近似できた(図4-3、表4-1)。

クチンと細いフィラメントの全てについて同じ方法で解析を行い、その例を図4-1A と 4-1B

まとめた。

データを近似する際、初期状態(α)からある中間状態(β)を経て、F-アクチン がガラス面から解離し、一部はガラス面に残る最終状態(γ)になるという、単純な 2段階モデルを使った:

α → β → γ k1 k2

ここでk1k2は、それぞれ状態αからβ、及びβからγへの速度定数を表す。状態γで、

ガラス面から解離して見えなくなるF-アクチンの積算量は

(k2 exp[-k1t] - k1 exp[-k2t]) / (k1 - k2) + 1

と書ける。よって、観察される蛍光強度の時間変化は

F(t) = (1 - ((k2 exp[-k1t] - k1 exp[-k2t]) / (k1 - k2) + 1)) / (1 + C) + C / (1 + C) (1)

の条件において、データは

蛍光強度の減少は、ガラス面に吸着したアビジン分子に結合したアクチン分子を

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