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第3章 SiC 結晶のキャリア寿命の注入レベル、温度、およびドーピング密度依存性

3.7 まとめ

本章では、4H-SiC エピタキシャル成長層のキャリア寿命の温度依存性、注入レベル依存性、

およびドーピング密度依存性について、50 µm厚のp型およびn型4H-SiCエピタキシャル成長層 に対し、差動 µ-PCD 装置を用いて評価した。キャリア寿命の注入レベル依存性について評価した 結果、非常に高い注入レベル領域を除き、p型およびn型エピタキシャル成長層の両サンプルにお いて、注入レベルの増加に伴うキャリア寿命の緩やかな増加が確認された。このキャリア寿命の緩 やかな増加は、低レベル注入領域でキャリア寿命を支配する少数キャリアの捕獲断面積が、多数キ ャリアのそれに比べて十分大きいと仮定することで、SRH モデルより理解できた。一方、非常に 高い注入領域におけるキャリア寿命の減少に対しては、過剰キャリアの濃度勾配の増加に伴う基板 における再結合の影響と、バンドベンディングの平坦化による表面再結合の促進が原因であると推 測した。一方、キャリア寿命の温度依存性に関しては、p型とn型の両タイプのエピタキシャル成 長層とも、温度の上昇に伴い、キャリア寿命は継続的な増加を示した。この温度上昇に伴うキャリ ア寿命の増加は、主にトラップ準位からのキャリアの放出レートの増加によるものと考えられる。

キャリア寿命のドーピング密度依存性に関しては、アクセプタ密度の異なるp型4H-SiC試料に対 し、キャリア寿命を測定した結果、アクセプタ密度の増加とともに、キャリア寿命が顕著に減少す ることが明らかになった。

p型SiC結晶に対し、複数の再結合過程を考慮したモデルをたて、キャリア寿命の注入レベル 依存性のモデル計算を行った。この結果、輻射再結合とオージェ再結合は励起キャリア密度がかな り高い領域で、SiC のキャリア寿命に影響を及ぼすことを確認した。また、低注入領域では SRH ライフタイムが、高レベル注入領域では表面再結合がキャリア寿命を支配することが判明した。

キャリア寿命のドーピング密度依存性に関しては、注入レベルの影響や、オージェ再結合や輻 射再結合の影響について計算し考察した。キャリア寿命の測定値は、注入レベルの影響が小さく、

また、オージェ再結合や輻射再結合過程から算出されたキャリア寿命の計算値よりも1~2桁小さ

いことが判明した。以上の結果より、アクセプタ密度の増加に伴うキャリア寿命減少の原因は、Al ドーピングにともなうトラップの増加や表面再結合の影響の増加であると推察した。

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