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第十章 国際機関等の評価とその背景

15. ニューヨーク市

ニューヨークは、全ての市内レストラン及び飲食サービス施設において、工業由来トランス脂肪 酸を段階的に廃止するという健康規則の改正を承認した。2007年7月1日までに、全てのレストラ ンが、フライやスプレッドに用いる人工トランス脂肪酸を含む全ての油脂、ショートニング及びマー ガリンを、1単位当たりトランス脂肪酸<0.5 gでとしなければならない。第二段階では、2008年7月 1日までに、レストランで販売される食品を、一食あたりトランス脂肪<0.5 gとしなければならなくなっ た。この規則施行に当たり、市当局は、健康に良い油の選び方と使用法、混合品や半調製品の検 索法、Q&A などの、様々な情報資料を作成した。レストランは、多国籍である場合が多いことを考 慮し、情報は、英語、スペイン語、アラビア語、ベンガル語、中国語、朝鮮語及びロシア語など複数 の言語で利用できる。なお、一般の包装食品にはこの規則は適用されない。

表17に諸外国のトランス脂肪酸規制状況の主なものを要約した[40]。

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表17-1 諸外国における食品中のトランス脂肪酸低減のための自主的努力及び強制規制の要約

方法 成果

デンマーク 2003 年:任意表示又は健康強調表示。食品ラベルに おけるトランス脂肪酸の強制表示義務はない。脂肪及 び油脂中のトランス脂肪酸強制成分基準が総脂肪酸 の<2%

20036月~20041月の段階的 導入施行

オランダ 1995~1996年:工業界主導によるマーガリンからトラン ス脂肪酸の排除

2004年:Product Board for Margarine、 Fat and Oils Task Force on Responsible Fatty Acid Composition レストランにおけるディープフライ中の硬化油及び SFA低減キャンペーン。食用油業界、レストラン業界、

消費者、心臓病協会及び政府による合同戦略

マーガリン中のトランス脂肪酸含量が 18 g/100 gから<2 g/100 gに減少し た。

20056月までに、ファーストフード 店の45%が、トランス脂肪酸が<5%

でシス不飽和脂肪酸>55%の油脂を 使用している。

米国 2005年:USDAと保健社会福祉省がトランス脂肪酸摂 取低減を推奨し、食品業界に対しトランス脂肪含量の 削減を要求することを議論した。

2006年:一食につきトランス脂肪酸を0.5 g以上含み、

脂肪、脂肪酸又はコレステロールに関する強調表示を する場合に、食品中のトランス脂肪酸含量を強制表示 義務化。

一般大衆の意識が向上し、いくつか の 製 品 の 組 成 変 更 が 増 加 し た 。 AC-Nielsen 調査で、2003~2004 で「トランス脂肪ゼロ」のラベル表示製 品が米国で 12%まで売上げ増加し た。

ニューヨーク 2006 年:ニューヨーク市健康・精神衛生部局が、レスト ランでのトランス脂肪禁止を通告。

2007年:200771日までに、ニューヨーク市のレ ストランにおける全てのスプレッドとフライ油中トランス 脂肪酸を、一食中<0.5 gを義務化。

2008年:200871日までに、ニューヨーク市レスト ランの全ての食品中トランス脂肪酸を一食あたり<0.5 g を推奨(製造者が包装した包装食品を除く)

2007年:ニューヨーク市レストランのほ とんどのフライ食品中で、トランス脂肪 酸含量が0.5 g以下に制限された。

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表17-2 諸外国における食品中のトランス脂肪酸低減のための自主的努力及び強制規制の要約

方法 成果

カナダ 2005年:規制活動、強制栄養表示。FDRg/一食のト ランス脂肪酸含量表示を要求。トランス脂肪含量が

<0.2 g/一食及び食品中の飽和脂肪+トランス脂肪含 量が 2 g以下(低飽和脂肪)の場合、「トランス脂肪ゼ ロ」を許可。

2006年:TFTFがトランス脂肪酸を脂肪・油脂、マーガリ ン中の総脂肪の 2%以下、及び市販、飲食店、レスト ラン食品中の総脂肪5%以下とすることを推奨。

2007 年:健康省が、ヘルスカナダがカナダ食品中のト ランス脂肪に対しTrans Fat Task Force推奨基準を採 用し、TFTF の推奨レベルまでトランス脂肪を低減する ため工業界に2年の猶予を与えると通告。次の2年で 有意な進展がなされない場合、レベル遵守の法的措 置がとられる。また、ヘルスカナダは調査結果を公表 する。

2007年:ヘルスカナダは、2005年、2006年、2007年春 に大規模小売店、レストラン、ファーストフード施設から 採取した食品中のトランス脂肪酸調査結果の最初の 公表を行った。

監視の上限基準値は、上記TFTFの数値を使用。

2005 年:ほぼ全てのパンとサラダドレ ッシングがトランス脂肪酸フリー。多く の他の食品はなお、高含量のトランス 脂肪酸を含有している。

多くの食品群で進展がみられた。多く の場合、製造者がトランス脂肪酸に 替わる健康に良い代替品を使用して いた。

調査の結果、低減が認められている。

アルゼンチン 食品業界が硬化油に代わり、オレイン酸含量の高いヒ マワリ油(トランス脂肪フリー、加熱抵抗性が高い)の 製造に協同合意。

2007年:Mercosur加盟国(アルゼンチン、ブラジル、パ ラグアイ、ウルグアイ)が、全ての食品に、トランス含量 表示義務を設定。

オーストラリア /ニュージーランド

カナダと同様の規制手法、トランス脂肪酸含量の自主 的表示又は脂肪酸やコレステロールの含量強調表示 をする場合、義務表示とすることを勧告。

最近のレビューで、工業由来トランス脂肪酸摂取が低 いため、トランス脂肪酸低減の非法規的手法を推奨し ている。

自主的な低減活動により、工業由来 トランス脂肪酸摂取量が2007年から 25~40%減少した。このトランス脂 肪酸摂取量減少は、集団の平均総 エネルギー摂取量の0.2%減少に相 当する。

104 第十ニ章 わが国の対応

食品安全委員会のトランス脂肪酸ファクトシートで、日本でのトランス脂肪酸の平均摂取量は 0.7

~1.3 g/日(摂取エネルギー比0.3~0.6%)で集団の平均値は諸外国に比べ少ないが、多く摂取し ている人の存在が指摘されている。厚生労働省の日本人の食事摂取基準(2010年版)では、トラン ス脂肪酸について、「日本でも工業由来トランス脂肪酸は、全ての年齢層で、少なく摂取することが 望まれる。」と記述されている。しかし、トランス脂肪酸摂取量低減のための具体的な対策は取られ ていない。

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