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第五章 地盤環境改善技術の実装化に向けた実験的検討

5.3 緑化土質材料の水分環境がカンゾウ生存率に及ぼす影響

5.3.1 実験条件

実験条件として,現地で調達した材料の水分状態を使用した緑化土質材料の設置条件を 図表5-1に示す.図表中のVR-1は,Ulaanbaatarより調達した培養土(Ulaanbaatar Compost, UB)とS3-7(H)より採取した炭酸カルシウムを含む砂質土(S3Sand)をそれぞれ混合比0%,5%,

10%,20%で混合した材料を,直径6cm,高さ25cmのプラスチック製の筒袋に充填し緑化

土質材料とし,これにカンゾウ根を一筒につき一本入れ,地表面から10cmに垂直に埋めた 条件である.VR-2は,S3SandとBogd付近で調達した乾燥肥料(Local Compost, LC)をそれぞ れ乾燥重量に対しての混合比 0%,10%,20%で混合した材料を,上記と同じプラスチック 製の筒袋に充填したものを緑化土質材料とし,これを地表面から10cmに垂直に埋めた条件 である.HR-1,HR-3はそれぞれS3SandとUBを0, 5, 10, 20%で混合した緑化土質材料を地 表面から10cm及び20cmに水平に埋めた条件である.HR-2はS3SandとLCを0, 10, 20%で 混合した緑化土質材料を地表面から20cmに埋めた条件である.緑化土質材料を設置する深 さは,5.2節より地表面10cm以浅は10cm以下に比べて蒸発が激しく,土壌の含水比が著 しく低下するという結果を基に選定した.緑化土質材料上部は芽が出てこられるように開 いておきS3-F(NH) より5km程度離れた川から採取した水を250ml加え,下部は根が地下に 伸長できること及びと筒内の湿害を避けるために直径1cm程度の穴を3箇所程度開けるよ うにした.

各緑化土質材料の初期含水比,pH,EC,及び水溶性陽イオン4種(Ca2+, Mg2+, K+, Na+),

及び炭酸カルシウムを表5-4に示す.S3Sandは第三章で示した塩類滞留の影響により,水溶 性カルシウムイオンと水溶性ナトリウムイオンを多く含む土壌である.またこの砂は前述 したように水溶性カルシウムイオンの他に水に溶け込んでいない炭酸カルシウムも多量に 含有する土壌である.また,UB条件とLC条件で比較すると,pHは2種類とも8~9前後で あり変わらないが,UBを混合した条件の方が高いECを保っている.さらに,水溶性陽イ オンに関しては4種とも同じ混合比ではLC混合条件の方が高いが,炭酸カルシウム含有量 はUB条件のほうが全体的に高い.

緑化土質材料の設置については,一筒につき根は一本加え,土中に縦に設置する方法 (Vertical-Root以下 VR)と横に寝かせて設置する(Horizontal-Root 以下HR)二つの方法をとる こととした.これはカンゾウの主根は縦に伸長するが,ストロンと呼ばれる根の一部は横 向きに広がるように伸長するためどちらも適当な設置法であると考えたからである.

各条件で作成した緑化土質材料を,一条件につき 5~10 個作成し,これを乾燥地地盤内 に設置した.S3-F(NH)の見取り図を図5-6に示す.図中のS-1, S-2はカンゾウ種子を埋めた ものであり,本章では議論しない.図中の上段,下段でVR-1,2, HR-1,2,3は同条件であるが,

下段の網掛けしている部分には,表層処理としてマルチングを施している.これは,この

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地域が降水量より蒸発量の方が卓越するため,簡易的な蒸発防止策として採用したもので ある.ビニールはBogd村で調達し,緑化土質材料を埋めた場所の真上を被覆し,S3-F(NH) 周辺で取れる石などを被せて風による剥離を防ぐ仕様にした.また,ビニールには切れ込 みを加え,芽が出られるように施した.ビニールマルチングを施した様子は,写真5-2に示 している.なお,VRは各土壌材料につき20個(マルチング10個,裸地10個),そのほかは 10個(マルチ5個マルチなし5個)ずつ設置した.

図5-4. S3-F(NH)の深さごとの含水比分布 図5-5. S3-F(NH)の深さごとのCaCO3-Ca分布

0

50

100

150

200

250

0 50000 100000 150000

S3-3(NH) S3-7(H) S3-F(NH) CaCO3-Ca (mg/kgdry)

Depth (cm)

0

50

100

150

200

250

0 5 10 15 20 25

S3-3(NH) S3-7(H) S3-F(NH)

Depth (cm)

Water content (Directly measured) (%)

Vertical Root-1(VR-1) S3Sand:UB=0%, 5%, 10%, 20%

Vertical Root-2(VR-2) S3Sand:LC=0%, 10%, 20%

Horizontal Root-1(HR-1) S3Sand:UB=0%, 5%, 10%, 20%

Horizontal Root-2(HR-2) S3Sand:UB=0%, 5%, 10%, 20%

Horizontal Root-3(HR-3) S3Sand:LC=0%, 10%, 20%

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表5-4. 緑化土質材料の物理・化学特性

図5-6. S3-F(NH)の実験条件の見取り図 Soil Type Initial water

content

initial dry

density pH EC Ca2+ Mg2+ K+ Na+ CaCO3-Ca

Unit % g/cm3 mS/cm

S3Sand (0%) 6.03 1.33 10.03 0.33 56.96 48.71 47.14 446.57 24807.74

UB5% 10.14 1.21 9.65 0.32 50.03 60.16 194.78 628.90 13997.97

UB10% 12.43 1.12 9.32 0.23 82.10 40.37 165.52 341.45 7572.75

UB20% 17.95 0.93 8.19 0.39 120.79 48.35 243.00 412.91 11633.14

UB 27.42 7.83 0.65 212.99 75.07 641.94 360.03 5855.50

LC5% 7.20 1.25 - - -

-LC10% 7.35 1.18 8.13 0.17 89.48 143.15 1163.91 1299.72 7950.36

LC20% 7.71 0.92 9.14 0.11 97.82 223.15 768.74 2506.69 6615.79

LC 9.91 9.39 0.41 514.11 1188.99 1960.94 6103.49 8188.35

mg/kgdry

S-1 UB

S-2 LC

VR-1 UB

VR-2 LC

HR-1 UB

HR-2 UB

HR-3 LC

1 m 2 m 1 m

1.5 m 1 m

1 m S-1

UB

S-2 LC

VR-1 UB

VR-2 LC

HR-1 UB

HR-2 UB

HR-3 LC 0%

5%

10%

20%

0%

5%

10%

20%

0%

5%

10%

20%

0%

5%

10%

20%

0%

5%

10%

20%

0%

5%

10%

20%

0%

5%

10%

20%

0%

5%

10%

20%

5%

10%

20%

0%

5%

10%

20%

5%

10%

20%

5%

10%

20%

0%

5%

10%

20%

5%

10%

20%

Entrance Covered with mulching sheet

Uncovered

20 m

Number of individuals 5

5

5

5

5

5

5

10 5

5

5

5 10

10

10

10

10

10

10 5

5

5

5

5

5

5

5

5

5

5

5

5

5

5

5

5

5

5

5

5

5

5

5

5

5

5

5

5

5

5

5 5

5

5 10%

UB

UB: Potting compost bought in Ulaanbaatar LC: Potting compost bought in Bogd

2 m

** %or** %: Concentrations of compost 1

1

1

1

1

1

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