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a に等しいベクトルと定義し,cabと書く。

外積については,

交換法則:baab

分配法則:(ab)cacbc が成り立つ。

磁場の定義とローレンツ力の性質

電荷qの速度ベクトルをv ,磁束密度のベクトルをBとすると,qに磁場から作用す るローレンツ力f は,

B v

fq  (4.2) と書ける。ここで,f は,vBに垂直であることに注意しよう。さらに,電場Eの定 義式(1.2)と一緒にして,速度v で運動する電荷qに作用する電磁気力f は,

) (E v B

fq   (4.3) と表される。

一般に,(4.3)式によって,電場Eと磁場としてのB(磁束密度)を定義する。すなわ ち,電荷に作用する力の元になる空間(これを場(field)という)として,電場と磁場 を定義する。したがって,(4.3)式は電磁気の基本法則ではなく,電場と磁場の定義式で ある。

例題 4.1 磁場中での荷電粒子の運動

磁束密度の大きさBの一様な磁場中に,磁場に垂直に電荷q,質量mの荷電粒子が速さv で飛び込むと,荷電粒子は速さv の等速円運動をする。このときの円軌道の半径と円運動の 周期を求めよ。

【解答】

図4.5のように,磁場の向きにz軸正方向(紙面表か ら裏の向き)をとり,荷電粒子がx軸正方向に速さv で 飛び込むとする。このとき,荷電粒子にはy方向に大 きさqvB のローレンツ力が作用する。ローレンツ力は粒

a b

b a c

図4.4

c

b a

r qvB

q v

B

x

y z

図4.5

119

子の速度に垂直であるから,粒子の速さv に変化はなく,その向きだけが変わる。こうして,

荷電粒子は速さvの等速円運動をする。円軌道の中心はy軸上にあり,その半径r は,粒子 の円運動の式より,

r qvB

mv2  ∴ rqB mv

周期Tは,一定の速さvで円軌道を一周する時間であるから,

v T 2

r

qB

m 2

円軌道の半径rは入射粒子の速さv に比例するが,円運動の周期Tは,粒子の速さによら ないことに注意しよう。 ■

荷電粒子に磁場から作用する力

図 4.6 のように,磁束密度の大きさBの磁場と角

の向 きに,電荷qの荷電粒子が速さvで飛び込むと,粒子には,

磁場と垂直な向きに大きさq(vsin

)Bの力がはたらく。こ れより,粒子の磁場に垂直な速度成分vvsin

に大きさ

B

qv の力が作用し,磁場に平行な速度成分v//vcos

に 力は作用しないと考えることができる。そうすると,荷電 粒子を磁場に垂直な平面に射影した点は,速さvで等速円 運動し,磁場の方向に一定の速さv//で等速運動をする。そ の結果,荷電粒子は,磁場に沿ったらせん軌道を描いて運 動する(図4.7)。

例題 4.2 磁場に斜めに飛び込む荷電粒子

x軸正方向に磁束密度の大きさBの一様な磁場がかけられている。原点Oに質量m,電 荷qの荷電粒子が,xy平面内でx軸と角

をなす向きに速さvで打ち込まれた。この粒 子が再度x軸上に戻る点のx座標を求めよ。

【解答】

z

y 平面に射影した粒子の点は,x軸に垂直な速度成分の大きさvsin

で等速円運動を するので,粒子がx軸上に戻るまでの時間はT

qB

m

 2 となる。この間,粒子はx軸に沿っ て,

v T x //

qB mv

cos 2

だけ進む。 ■

v

q B

図4.6

cos v

vsin v

B

図4.7

120 例題 4.3 電磁場中の荷電粒子の運動

図4.8 のように,y軸正方向に強さEの電場をかけ,それと同時 にz軸正方向(図の紙面表から裏の向き)に磁束密度B の磁場をか ける。原点Oに質量m,電荷q(0)の荷電粒子を静かに置く。

その後,荷電粒子はどのような運動をするか定めよ。ただし,重力 は無視する。

【解答】

速度v0 (v0,0,0)で運動する荷電粒子には,電場と磁場から力 )

), (

,

(0 0 0

0qEv B

f

が作用する。したがって,v0E/Bのとき,この粒子にはたらく合力は0であり,力はつ り合う。よって,粒子は速さv0x軸正方向に等速直線運動をする。

また,磁束密度Bの磁場だけがz軸正方向にかけられているとき,速度v (vx,vy,0)で 運動する荷電粒子に作用するローレンツ力f は,

) , ,

(qvyBqvxB 0

f と書ける。

元の座標系をSとし,S系に対して速さv0E/Bx軸正方向に等速直線運動している 座標系をSとする。座標系Sで荷電粒子の速度がv (vx,vy,0)のとき,座標系Sでの速度 は,

) , , (

) , ,

(vxvy 0  vxv0 vy 0 これより,S系で荷電粒子に電磁場からはたらく力fは,

) , ,

( ) , ) (

( , ( ) ), (

,

(qvyB qEvxB 0  qvyB qEvx v0B 0  qvyBqvxB 0

 f

となり,fの表式から電場Eは消える。これをローレンツ力f の表式と比較すれば,S系で荷電粒子には,磁束密度Bの磁場 からローレンツ力だけが作用することがわかる。

粒子の初速度は,座標系 Sで0であるから,座標系Sでは,

) , ,

(v0 0 0 となり,粒子はS系で,図4.9のように,点(0,r,0) を中心に速さv0の等速円運動する。その半径r は,円運動の式 より,

B r qv

mv020

qB rmv0

この運動を元の座標系Sでみると,円軌道の中心は速さv0

x

y B z

E S

図4.8

v0 z

r

y

B x

図4.9

S

121

x軸正方向に動き,そのまわりに反時計回りに速さv0で等速円運動するから,軌道は図4.10 のようなサイクロイド曲線を描く。

例題 4.4 電流密度

一様な重力場中に,単位体積あたりn個の電子とn 個の1価の正イオンからなる電離し た気体がある。そこに,磁束密度Bの磁場を水平方向にかけると,磁場に平行で水平方向 に電流が流れる。そのときの平均の電流密度(電流に垂直な単位面積あたりに流れる平均 の電流)を求めよ。ただし,重力加速度の大きさをg,電子の質量をm,イオンの質量をM とする。このとき,M mであることから,電流へのほとんどの寄与は,イオンである か,電子であるか。

【解答】

図 4.11 のように,鉛直下方にy軸,水平方向にx軸とz軸を とり,z軸正方向に磁束密度Bの磁場をかけるとする。例題4.2 の電場からはたらく力qEのかわりに重力が作用すると考えれば,

例題4.2と同様に,イオンと電子は,初速度0であればx軸に沿 ったサイクロイド曲線を描く。1価の正イオンと電子の回転中心 の速度vi,veは,それぞれy軸方向(鉛直方向)の力のつり合い

i 0

evB

Mg mgeveB 0

eB viMg

eB ve mg

となる。イオンあるいは電子のx方向の平均速度がそれぞれvi,veであるから,それぞれの 平均電流密度ji, jeは,

i

i nev

j B

nMgjen(e)veB nmg

これより,電流へのほとんどの寄与はイオンであることがわかる。 ■

(3) 電流に磁場から作用する力

実験によると,図 4.12 のように,磁束密度Bの磁場中で磁 場と角

をなす導線に強さI の電流が流れているとき,長さl の 電流には大きさ

0

r 2

x E B

y

qB T 2m T

v0 z

図4.10

S

x

y z

M e B

Mg

図4.11:イオンの場合

I

B

図4.12

F

122

sin IBl

F  (4.4) の力がはたらく。その力の向きは,図4.12の紙面表から裏の向きである。この力のベク トルF は,電流のベクトルI と磁束密度のベクトルBを用いて,

l B I

F   (4.5) と書ける。

例題 4.5 電流に作用する力とローレンツ力

電荷が移動することによって電流が流れることを考慮すると,(4.5)式で表される力は,

ローレンツ力(4.2)から導かれることを示せ。

【解答】

断面積S,長さlの導線に大きさI の電流が流れているとする。導線内を自由に動くこと のできる電荷qの数密度(単位体積中の電荷の数)をn ,電荷が電流の向きに移動する速 さをvとすると,電流の大きさIと導線内の電荷の数N は,

qnSv

I NnSl と書ける。

図 4.13のように,導線と角

の向きに大きさB の磁束密度の磁場がかけられている場合,導線内の

N 個の電荷に作用する力は,紙面表から裏の向き,

すなわち,電流Iに作用する力の向きに一致し,そ の合力の大きさNf は,ローレンツ力の大きさ(4.1) を用いて,

sin sin

sin qnSv Bl IBl

qvB nSl

Nf     

となり,(4.4)式で与えられる電流にはたらく力の大

きさF に一致する。こうして,(4.5)式で表される力F は(4.2)式で与えられるローレンツ力 f から導かれる。 ■

直線電流間に作用する力

図4.14のように,真空中で距離rだけ離れた十分長い2本の平行 導線に,強さI1I2の電流が流れている場合を考える。実験によれ ば,電流間に作用する力は,2つの電流が同じ向きのとき引力で,

逆向きのとき斥力となり,その強さは電流I1I2の積に比例し,距 離rに反比例することがわかる。そこで,その比例定数を

2

0 とお

いて,真空の透磁率(permeability of vacuum)

0を定義する。そ うすると,無限に長い直線電流間に作用する力の強さF は長さl あ たり,

q v l

I

B

S

図4.13

I1 I2

F

r

図4.14

同じ向きの電流 間に作用する力

123 r l I F I

2

2 1

0 (4.6) と表される。

電流の定義

真空中で 1m 離れた2本の直線導線に同じ強さの電流を流すとき,それぞれの導線の 1m あたりにはたらく力の強さが2107 Nとなる電流を 1 A と定義する。この定義を (4.6)式に用いると,

2 7 0 4

10 N/A