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はじめに:戦略提携理論に見る日台アライアンス

ドキュメント内 専 門 職 学 位 論 文 (ページ 62-68)

第四章 まとめ 台湾活用型対中投資の構造とベネフィット

第 2 節 台湾活用型対中投資の構造とベネフィット再考

2.1 はじめに:戦略提携理論に見る日台アライアンス

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本企業と香港企業の合弁による中国現地法人)、9番(日本企業と台湾企業の合弁による 中国現地法人)、10番(日本企業と前述以外の国・地域にある企業で台湾系資本が入って いる企業を除く、と合弁による中国現地法人)、図表4-3の2番(日本企業と台湾企業の 合弁による台湾現地法人)がそれぞれ合弁形式による現地法人となるが、この中で図表4-3 の2番、台湾における日本企業と台湾企業の合弁パターンの操業期間が平均148カ月で他 のパターンに比べて圧倒的に消滅までの操業期が長い、ということがわかる。

c) まとめ

上記a)およびb)のデータ分析結果から、日本企業にとって台湾企業との合弁による現

地法人経営は撤退リスクが低く、かつ、一般的華人経営の特徴である短期的な投資回収と は一線を画した、永続性を念頭においた企業経営が実現出来、他の合弁選択枠に比べて本 章冒頭に述べた“ユニークな優位性”を得るための学習期間を手に入れやすいものと思料 する。

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み合わせることによって、大きな価値を生み出すことが出来たとしたなら、国境を越えた 提携は企業にとって魅力的な戦略になる。

国際的な企業同士の提携自体は最近に始まったものではない。ライセンス供与や販売・

生産・技術提携、あるいは合弁事業など従来も見られた。しかし、1980年代後半に入って、

その数が急増すると共に特性が変わり、高い戦略性をもつものになった。竹田(2007)はそ の背景として次の2つの要因を挙げている。

まず1つは、市場のグローバル化である。消費者が求める製品やサービス、ソリューシ ョン(問題解決)や消費習慣がどの国や地域でも同じような傾向を持ち始め、世界市場が 同質化し、その結果として、大規模かつ標準化された消費材のグローバル市場が出現して、

生産・販売・流通などの面で規模の経済を利用できる分野が増えた。海外企業とのアライ アンスが急増したもう1点の理由は企業のグローバル化である。市場のグローバル化に対 忚するために、企業の側も、グローバル規模のネットワークで均質な製品やサービスを供 給することを求められる。顧客のニーズに対忚するために必要な知識は複雑かつ高度にな り、しかもその革新は速く、伝播するスピードも加速する。こうした知識を生み出すコス トは巨額にのぼるが、これを回収できない可能性もあり、リスクは大きい。新製品を開発 して市場に投入した場合、どのようにしてマーケット・ポジションを確保して投資を回収 するか、その絶対的なスピード、また、他社に先駆けてこのサイクルを立ち上げる相対的 なスピードが求められる。

また、日本企業の中国進出という文脈でこの問題を考えた場合、上記に述べたグローバ ル化の影響以外に、政治体制・民族性・商習慣の違い・中国側の内的秩序と認識枠組みの 文脈上で顕在化している言動行動(古田2004)の真相を理解する手立てという中国特有の ファクターが欠かせない要素となってくる。グローバル展開を行っている一部のトップ企 業以外で自社の経営資源のみに依存してこれら問題に対忚することは至難の業である。他 社が有する最適な経営資源を利用すること、またその知的資産にアクセスしてこれを手に 入れる事によって、自社の能力を高める手段が必須になった。

しかし、その一方で歴史や経験により蓄積された暗黙知や技能、ノウハウなどはそれぞ れ企業に特有なもの、もしくはその企業に所属する社員固有の資産として可視化あるいは 貨幣価値に換算して売買を行う市場が整備されている環境にはなく、これら無形資産はお 金を払ってすぐ手に入るものではない。こうした他社の知的財産・無形固定資産を自らの 手の内にする方法として考えられるのは、このような資産を有する企業を買収することで

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ある。しかし、往々にして対象とする知識以外のものまで購入せざるを得ない可能性に直 面したり、買収前に期待していた知識・経験をターゲットとしていた社員が当該企業を買 収してみたら期待する知識を持ち合わせていなかった等さまざまなリスクが想定される。

自社による人材開発、マーケットでの取引、買収などでは手にする事ができないベネフィ ットを手にするためには新たな戦略手段が必要になり、登場したのが国際間の戦略提携で ある。(竹田2007)

安室(2008)は戦略的提携を理解するために有用な主要理論として、内部化理論(取引コ スト経済学)、資源ベース戦略理論、知識理論の3つを挙げている(図表4-4)

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図表4-4 戦略的提携に関係した主要理論

理論 基本的主張点 提携との関連性

内部化理論 取引コストの最小化

市場と階層組織のうち、もっと も効率的な形態を選択する。

資産特殊性が重要性を持つよ うな市場の失敗がある場合、階 層組織が選択される。

戦略的提携が最も効率的な形 態と見る。

合弁は準内部化の発露。

資源ベース戦略理論 ユニークで稀尐性が高く模倣 困難な資源の束を保有してい るかどうかで競争優位性が左 右される。そのような資源を十 分に利用し、企業の資源ベース を構築することが重要。

戦略的提携を通じて、自己に欠 落している資源を獲得したり、

自己が保有している資源を補 完したりする。資源蓄積が重要 である。

知識理論 知識創造はイノベーションを

もたらし、それが競争優位性に つながる。組み合わせ能力を使 った学習が重要である。

戦略的提携を通じた学習、パー トナー間の知識移転と知識の 内部化、知識移転の過程で専門 能力を構築する。

(資料)安室(2008)より引用

長谷川(2002)によると、従前の海外直接投資に関する理論モデルがHymer(1960)に 端を発する経営資源の優位性の利用という側面からのアプローチであったのに対し、異な る国に立地する拠点間の取引を効率化して、付加価値を最大限確保する道具として直接投 資をとらえようとする考え方が取引コスト経済学に基礎を置く内部化モデルである。

Inkpen(2001)によると、取引コスト経済学に基づく戦略提携理論においては、何故企業が 外部との取引や内製化、買収・合併という選択肢ではなく、アライアンスを選択するのか

についてWilliamson(1975,1981)を引用し、市場と階層企業(=企業)とは一連の取引を

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完結させるための代替的手段であり、それらの取引が市場を通じた企業間取引でなされる のか、あるいは一企業内部でなされるのかは、各企業の相対的効率性によるものだ、と述 べている。安室(2008)はホフマンら(2001、pp133)をもとに、もし提携企業の機会主義的 行動のリスクが高く、各社の利害を防衛するためにかかる費用が高くつく場合、とくに資 産特殊性が高い場合、それらの経済活動を1社内部に統合することに価値があるとし、企 業が取引コストを最小化するためには完全所有形態が有効であるが、その一方で、もし企 業の経済活動を統合するコストが想定しているシナジー効果と比べて高くつき資産特殊性 も中程度である場合、戦略的提携が取引コストの観点から見て最も効率的な組織形態とな る、と論じている。この点について、本論の主な対象と想定している日本の中堅・中小企 業という観点から捉えると、例え提携企業を買収して統合することが最小の取引コストを 実現出来ると想定されたとしても自社の限られた経営資源、資金調達力の範囲では叶わず、

提携という選択肢が実現可能な範囲で最も効率的であるであろうという点も付け加えてお く。

次に資源ベース戦略理論であるが、竹田(2007)では、1990年代に入って、ハメル=

プラハラドは資源ベース戦略論、なかでもコア・コンピタンスの概念を拓いて、その一環 として提携戦略について論じた。ここでは既存の技術や製品市場におけるマーケット・シ ェアをめぐる今日の競争戦略と、コア・コンピタンスを活用してこれから拓いてゆく未来 の市場を巡る競争を区別して、企業が成長するためには、後者の戦略が重要であると主張 する。こうした視点に立って、未来への扉を開く提携こそ真の戦略提携であるとして、自 社のコア・コンピタンスを構築するための提携、あるいは新しい国際標準を確立するため の提携が重要である事を、また、ハメル=ドーズ(2001)は、戦略提携のベネフィットは、

従来から考えてきたような卖純なコストベネフィットよりも、これまでとはまったく異な る組織間で、複雑なスキルを提供し合い、相互座用を進めていくことによって価値が生み 出される状況においてその成否はそれぞれのパートナー間でコスペシャライゼーションが 成功するかどうかにかかっているため、その努力に見合った成果が得られるかを予測する のは不可能であり、そのような価値を創造したか、価値の蓋然性についての戦略的な評価 の方が適切である、としている。また、バーニー(2003)は経営資源の観点から企業の強 みと弱みの分析”VRIOフレームワーク“を提示した。このフレームワークは、企業が従事 する活動に関して、①経済価値(value)、②稀尐性(rarity),③模倣困難性(inimitability),

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