第 4 章 ディジタル制御に基づくスイッチング電源のフィードバック制御実験 33
4.4 DIMC に対する適応機構の導入
4.4.3 適応 DIMC における実験結果
本節では、モデルベースド制御であるDIMCのオンラインでのモデル更新に適応同定法である
VFF-RLSを導入する。モデル化誤差に対する適応機構の影響を検討するために、制御対象のゲイ
ンと減衰率を変化させる。本研究の制御対象の出力端に抵抗負荷を付加してシステム同定実験を3 章で行った。これより抵抗負荷の抵抗値を0.98Ωから5.6Ω、そして無負荷と変化させ、その結果 から伝達関数を導出した。導出した伝達関数から、ゲインと減衰率に着目すると抵抗値の変化に よって無負荷状態から比べゲインは減少、減衰率は増加している。
したがって、無負荷状態の伝達関数から、減衰率を30%増加、ゲインを30%減するP(s)でシミュ レーションを行う。シミュレーション条件はサンプリング時間 3.41µs、コントローラに含まれる フィルタ帯域幅を1000 Hzとした。パラメータ更新時間は27.3 msとした。そのときのシミュレー ション結果を図4.14、図4.15、図4.16、図4.17に示す。図4.14では適応を5ステップ行った結果 を示す。各ステップでのオーバーシュートを表4.1に示す。これよりVFF-RLSによりパラメータ を適応するごとにオーバーシュートが減少していることが確認できる。図4.15に適応機構を含ま ないDIMC(点線)、適応機構を含むDIMCで矩形波の5ステップ目(実線)、Pn1(s)、Pn2(s)の ゲインを0.7倍、減衰率を1.3倍にしたもの(破線)を示す。図4.13において、P(s)が負荷変動に
よりPn1(s)、Pn2(s)とモデル化誤差が生じた場合、まず外乱オブザーバによりフィードバック補
償が行われる。外乱オブザーバのノミナル化によりPn1(s)はP(s)に近づく。P(s)とPn1(s)を含 めて同定対象としPn2(s)にのみ適応機構でパラメータ推定を行う。これによりPn2はP(s)に近 づく。VFF-RLSによる適応化によってPn2(s)がP(s)になっているか検討するために、意図的に Pn2(s)のゲインを0.7倍、減衰率を1.3倍にしたものを示す。適応前と適応後のオーバーシュート 量、整定時間、破線と比べた平均二乗誤差(MSE)の比較を表4.2に示す。これより応答やMSE が向上していることが確認でき、出力端の負荷変動によるモデル化誤差に対応できることがわかっ た。
図4.16よりARXモデルで同定した離散時間同定パラメータの真値と平均値を表4.3に示す。こ こで、真値は一括最小二乗法の結果であり、平均値は定常100個のデータの平均値とする。各パラ メータは1ステップで収束していることが確認できる。a1、a2は極に相当するため同定しやすい ため、真値と近い値となっているが、b1、b2はゼロ点に相当するため同定しにくく、真値と値がず れている結果となった。
図4.17よりARXモデルで同定した連続時間同定パラメータの真値と平均値を表4.4に示す。1 ステップで各パラメータは定常に収束していることが確認できる。K1は伝達関数の定常ゲインで あるが、真値とずれている。これは離散時間同定パラメータb1、b2の値がずれたことに起因する ことが考えられる。極であるp1、p2は真値と近い値となっている。
このVFF-RLSを用いた同定法は閉ループで行なっているため雑音信号や入出力信号が相関を持
つこと、また入出力信号以外の外乱を必要とするため容易ではない。また、本論文ではVFF-RLS を適応機構として適用したが、遺伝的アルゴリズムなどの適応機構も含めて検討されたい。
表 4.1: 各ステップにおける定量的評価
1 step 2 step 3 step 4 step 5 step Adaptation 10% 4.6 % 4.58% 4.57% 4.55%
No adaptation 4.85% 4.85% 4.85% 4.85% 4.85%
0 0.05 0.1 0.15 -0.2
0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2
0 0.05 0.1 0.15
-0.05 0 0.05
0.1 0.15
0.2 0.25
0.3
u
pwm[V ] v
out[V ]
Time [s]
Adaptation No adaptation
図 4.14: 同定に用いた入出力信号
0 0.5 1 1.5 2 2.5 3
-0.2 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2
Time [ms]
Output Voltage [V]
1 step 5 step Pn2(s)=P(s)
図4.15: 適応前後の波形比較
0 0.02 0.04 0.06 0.08 0.1 0.12 -2
-1.5 -1 -0.5 0 0.5 1
Time [s]
Identified parameter : a1 a2
a1 a2
0 0.02 0.04 0.06 0.08 0.1 0.12
-1 0 1 2 3 4
Time [s]
Identified parameter : b1 b2
b1 b2
図 4.16: 離散時間同定パラメータ
0 0.02 0.04 0.06 0.08 0.1 0.12
0 2 4
x 1010
Time [s]
K1
0 0.02 0.04 0.06 0.08 0.1 0.12
0 1 2x 105
Time [s]
p1
0 0.02 0.04 0.06 0.08 0.1 0.12
0 2 4
x 104
Time [s]
p2
図 4.17: 連続時間同定パラメータ
表 4.2: 定量的評価
Overshoot [%] Settling time [ms] MSE [%]
1 step 10 0.535 4.4
5 step 4.55 0.348 0.11
表4.3: 離散時間同定パラメータ
a1 a2 b1 b2
真値 -1.128 0.7031 3.209 0.9958 平均値 -1.9170 0.9263 0.0577 0.0138
error 69 % 31% 98 % 98 %
表4.4: 連続時間同定パラメータ
K1 p1 p2
真値 2.88×1010 −1.00×104 −1.00×104 平均値 6.39×109 −1.12×104 −1.12×104