1.消費支出費目の弾力性(対年間収入)の変化
前項により,特に中核世代は,年収減少の下で税負担,借入負担を賄う必要性から,資産形成の 余力に乏しくさらに消費支出を抑制するパターンになっていることが明らかになってきた。
本項では,そういった状況の中で,主要費目の弾力性(対年間収入)がどう変化しているか,必 需的支出と選択的支出との区分がどう変化しているかを明らかにする。
食料支出/消費支出の変化
最も必需的な支出である食料支出が消費支出に占める割合が,年収別にどう変化しているかは図 2―75のとおりである。いずれの年収層も1989年から調査年毎にその比率が逓減していることが分
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図2―75 食料支出/消費支出の推移
図2―76 2004/1989 食料支出/消費支出 増減率
かる。1989年と2004年の割合が年収階層によりどのように変化しているかその増減率を見ると,特 に中位の500〜599万円,600〜699万円の層が下がっている。年収減少の下で食料支出を大幅に切り 下げている。
2.家計の就業状況の変化
各家計の就業状況はどのように変化しているのだろうか。特に世帯主と配偶者など世帯員2がど のような状況にあるか8)。特に1989年から年間収入が減少している局面で家計としてどのように対
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表2―10
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世帯主(就業)×世帯員2(非就業)の場合 1989年では世帯主就業43.7%,世帯員246.1%だったのが,2004年では各々38.7%,32.7%と,特に世帯員2の非就業が増えている。これは,
有業者数の減少と関連し,年収減少につながっていると考えられる。
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世帯主の就業率も90.2%から74.2%に減少している。これも同様に,有業者数の減少と関連し,年収減少につながっていると考えられる。
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世帯主(非就業)×世帯員2(非就業)の場合も,概ねリタイア世代と考えられるが,1989年 では7.8%だったのが,2004年では17.4%に増えている。8)縦軸は世帯主,横軸は世帯員2。元データの世帯員1が世帯主ではない場合,縦軸に世帯主のデータを使い,
横軸に世帯員1のデータを使っている。
第二編で確認した事項
[年収と消費水準]
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1989年当時40〜44歳代だった年齢割合のピークが2004年にはそのまま55〜59歳代をピークに高 齢化が進んでいる。同時に世帯構成員数も減少化しつつある。"
年間収入は平均値,中央値いずれでも1994年をピークに逓減傾向にある。1989年の中央値が695 万円だったのが,2004年には613万円に減少している。#
個票データを実質化し,さらに消費支出について消費税率分を抜いた消費支出(税抜)でとし た場合,年収の減少に比例して消費支出(税抜)も減少している。消費税率引上げ分が消費支 出(税込)の引上げになっている。年収減,税率増に合わせて消費水準を切り下げている。[年間収入の分布]
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年間収入の分布は,1989〜2004年を通じて,500〜600万円の層はほぼ一定の割合にある。但し,それ以下の層の割合が1994年以降増える一方,それ以上の層は減っている。
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世帯主年齢による年収階層は,1989〜2004年にかけて,10〜30歳代前半及び60歳以上は同様の 年収階層にあるが,30歳代後半から50歳代後半については,全体になだらかになり,特に45〜59歳代が1999年,2004年いずれも同一水準となりまた1994年比水準も落ち込んでいる。
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特に50〜54歳代は二つ階層が落ちている。1989年で見られた50〜54歳代をピークにした逆V
字型の年収増減の形は,2004年には45〜59歳代の三年齢層を天井にした台形の形に変化してい る。年功賃金的な制度が次第に年齢を問わない賃金制度に切り替わりつつあることが背景にあ ると予想される。'
世帯主職業による年収階層は,各職業の中位層の年収で見た場合,概ね法人経営者,個人経営 者,官公職員,民間職員,自由業者,農林漁業従業者,商人及び職人,常用労務作業者,臨時 及び日々雇労務作業者,無職の順になっている。ほぼ職業による年収階層は固定的なものであ る。(
世帯主産業別の年収階層は,2004年に産業分類が細分化されたため,1989年から連続して比較 することは難しいが,1989〜1999年の産業別所得階層(50%累積)と2004年を合わせて見ると,電気・ガス・熱供給・水道業を筆頭に,次いで金融・保険業,公務,教育・学習支援業,次い で不動産業,情報・通信業,複合サービス業,次いで農林漁業,建設業,運輸,卸売・小売業,
サービス業の順になっている。産業による年収階層も概ね固定的なものである。
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各年の中央値にあたる年齢階層は概ね30〜34歳であり,50〜54歳が概ね年収がピークになる階 層である。但し,中核世代は平成前期(1989〜2004)で,次第に年収水準が下落するとともに,年代差が縮小している。また職業差,産業差は概ね維持されており,職業転換,産業転換の難 しさを考慮すれば,その家計構造の下での家計収入・支出コントロールはより難しく,タイト な形を迫られていると予想できる。
[消費支出の変化]
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最も必需的な支出である食料支出が消費支出に占める割合は,いずれの年収層も1989年から調 査年毎にその比率が逓減している。1989年と2004年の割合が年収階層によりどのように変化し ているかその増減率を見ると,特に中位の500〜599万円,600〜699万円の層が下がっている。全体に年収減少の下で食料支出を10〜15%と大幅に切り下げている。
[家計構造の変化]
(経常収入−消費支出)+(社会保障給付−(直接税+社会保険料))+(−借り入れ返済金)
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経常収支'
税・給付収支)
借り入れ収支+(預貯金引き出し−預貯金)+その他収支(その他収入−その他支出)=0
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預貯金収支*
その他収支!
特に経常収支が大きい層,すなわち消費支出を抑制して他の支出に充てようとしている年齢層 は,35〜39歳の層,その前後の30〜34歳,40〜44歳の層である。それだけ消費支出を抑制し,その収支プラス分を他の大きな支出である税負担,住宅ローンなど借入金返済に充てていくパ ターンである。1989年から2004年にかけて全体に経常収支額が次第に大きくなっていることは,
それだけ,経常収入が伸びない中で,消費支出を抑え,他の強まってくる税負担,借入金返済 を賄う状況になっていることと予想される。
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フローベースでの家計収支の余力は,ストックベースの純資産に反映されていくと考えられる。ストックベースの純資産(貯蓄−負債)では,貯蓄額が1989年を除けば,どの年齢層でも概ね 同様の曲線であるのに対して,負債額は様相が異なる。ほとんどの年齢が1989年から調査年を 追うごとに負債額が増加している。特に30〜34,35〜39,40〜44歳代の層は,いずれも概ね倍 以上の負債額になっている。
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以上より,純資産(貯蓄−負債)ではさらに厳しい状況になっている。2004年では,30〜34歳−193万円,35〜39歳−179万円,40〜44歳−3万円とマイナスとなっている。この状況は50歳 以上から回復し,75〜79歳代では1916万円の水準になっている。
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各世代がこの15年間にどういう経路を辿ってきたか見ると,例えば2004年時点で35〜39歳代の 人は1989年時点では20〜24歳代であり,1989年97万円から,2004年では−179万円というよう に,厳しい経路を辿っている。[就業状況の変化]
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各家計の就業状況は,特に1989年から年間収入が減少している局面では,世帯主(就業)×世 帯員2(非就業)の場合 1989年では世帯主就業43.7%,世帯員246.1%だったのが,2004年 では各々38.7%,32.7%と,世帯主の就業割合が減少すると同時に,世帯員2の非就業が増え ている。有業者数の減少と関連し,年収減少につながっていると考えられる。以上の分析に関連して,さらに確認したい点として,重回帰分析による年間収入,消費支出の要 因分析など,第三編および次号で明らかにしたい。