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ドキュメント内 炎害対策法政策の総合的研究 (ページ 34-44)

第5章 問題点の改善方向 〜総合的な住居確保支援制度の提案〜

I.はじめに

第4章で指摘したように、被災者の住居の確保に関する支援に関する現行の支援制度は、

個別の制度が、それぞれ独立した考えの下で実施されている形となっており、全体として 体系的な支援とはなっているとは言い難い状況にあると考えられる。

このため、被災住居の確保に対する支援に関しては、被災者の置かれている状況や住居 形態によって受けることのできる支援に偏りが存在し、場合によっては見るべき支援措置 が全くないというような被災者が生じるなど、被災した住居に代わる住居を求める被災者 のニーズに即した、多様で、複線的な支援がなされているとは必ずしもいえない状況にあ ると思われる。

実際、今回の調査結果を見ても、例えば、住居が全壊しているにもかかわらず、年齢に 関して公庫の融資要件に該当しないため、十分な融資を受けられず、再建を断念せざるを 得ない、或いは軽微な修繕にとどめざるを得ないなど、実質的には住居に関し復興を成し 遂げたとは言えない被災者が多く存在していることが判明している。このような状況に置 かれている被災者は、真に安全で恒久的な住居の確保・回復が達成されているとはいえな

い。

個人にとって、住居が生活の基盤として最も重要なものであり、個々の被災者の置かれ ている状況に適した住居の確保が災害対策として強い必要性を有するというのであれば、

現在のような、それぞれがバラバラで、不十分で、及び腰で実施されているような法制度 を改善し、被災者の潜在的復興能力をサポートでき、被災者それぞれに適した居住形態に 応じて、大きな不均衡のない、体系的で、整合性のとれた、総合的な支援制度を構築する 必要性は高い。

Ⅰ.住居の確保という観点から見た現行支援制度の問題点の改善方向

自然災害によって住居を失った被災者に対する住居の確保という観点から現行制度を 概観すると、これに関連する制度は、 ①災害救助法の応急仮設住宅、応急修理、 ②被災者 生活再建支援法における居住安定支援制度、 ③住宅金融公庫の災害復興住宅融資等、の三 つが主なものであることについては既に述べた。

それぞれの制度が有している問題点については、第4章でできる限り指摘したが、まず、

①の災害救助法に基づいて行われている二次的救助としての応急仮設住宅の提供・応急修 理の実施は、被災者のニーズに対応できておらず、無駄の多いものとなっている。これを 被災者の置かれた状況に適した恒久的な住居の復興に結びつけていくためには、この支援 を災害救助法から切り離し、総合的な住宅復興施策の一環として位置づけ直すことが不可 欠であると考える。本来、住宅復興施策の中核部分は、被災者の置かれている状況、被災 者のニーズ、被災者の潜在的復興能力等に応じて、これを適切にサポートできることにあ り、復興能力の低い被災者から比較的高い被災者に至るまで、その程度に応じた複線的か つアナログ的な支援★が必要であると考える。

☆ 要件に該当すれば支援を受けられ、該当しなければ支援を受けられないというデ ジタルな支援方式ではなく、支援の必要性と支援の程度が連動する形となっている アナログな形の支援方式をいう。

また、 ②被災者生活再建支援法に基づく支援制度は、 「自力では生活再建が困難と認め られる被災者に対して、自立した生活の開始を支援すること」を目的としているが、平成 16年度法改正により創設された居住安定支援制度については、被災者の住宅復興制度全体 の中における位置づけを明確にする必要がある。

この制度については、住宅本体の復興については支援しないという考え方に立ちつつ、

被災住宅の解体費や住宅ローンに対する利子補給、家賃等の経費などその周辺費について は一定限度額までの使用を認めるなど、極めて中途半端なものとなっていることは否めな

い。

本来、被災地においてどのような復興対策が不可欠かは地方公共団体が判断すべきこと であるが、行政による住宅復興支援は、居住の本拠である住宅に被害を受けた被災者が、

それぞれが置かれている状況と能力に応じ、様々な形で恒久的な住居を確保しようと努力 する場合、それぞれの潜在的復興能力に応じて復興努力をサポートする機能を果たすこと を目的とすべきである。被災者生活再建支援法の居住安定支援制度は、被災地法公共団体 が地域の状況に応じた上乗せ・横出し支援を実施することを前提に、どこの被災地域であ っても、少なくとも、この程度の支援が受けられるというものとすべきである。この意味 で、その支援の対象が、救貧的色彩を有していて、デジタル的支援の形となっている現行 制度は、再検討すべき余地があると考える。

次に、 ③住宅金融公庫の災害復興住宅融資についてであるが、住宅金融公庫は、 1950 年に設立され、戦後の住宅不足を解消するために設立された国内唯一の住宅専門の政府系 金融機関であり、これまでに、 「住宅とは、地域の環境、安全、文化、まちなみを形成する 社会経済の基盤‑単なる個人の私的財産ではない」という理念の下、持ち家の建設を推進 してきた。金融公庫の災害復興融資は、こうした持ち家対策の一環として、災害によって 住宅に被害を受けた者に対して、より手厚い支援を行っているものである。この制度は、

被災者の「持家住宅」の再確保という意味では、極めて有効で、有力な制度ではあるが、

あくまで融資という形をとった支援であるため、被災者が再建能力に大きく欠けている場 合までを対象とすることは難しい。ここには、実際にかなりの額の国費が投入され(今回 調査地域については利用者一人あたり約150万円) 1、収入要件等を満たして、返済可能 とされる被災者にとっては、その恩恵を受けることができる重要な支援策であるが、融資 1災害復興融資

基準金利 今回調査地域

融資利用平均額 返済期間平均

利率 1.7%

2.85% (11年目以降3.25%.)

1122.7万円 21.7年

(元金均等返済)

基準金利利子額一災害復興金利利子額‑3501181‑2010717‑1490464 現行法上低利子部分には約150万程度の公金が支出されている。

を受けられる要件に届かない低所得者、高齢者等には、意味のない制度となっている。融 資制度に対応した形で、再建能力に大きく欠ける被災者に対する支援制度が整備される必 要性は高い。

上記のように、現在の住宅被災者に対する公的支援制度について見てみると、異なる目 的を持った法律の中に、それぞれ個別に住居支援項目が組み込まれている。従って、支援 の重複や、逆に支援が受けられない層等も広く存在する。バランスの取れた支援を行う上 では、被災者の住居の確保の支援という目的に向けた統一的な制度を考えるべきである。

Ⅲ.被災者のニーズに即した支援 1.被災住宅の修繕対応

住居を失った被災者が、新たな住居の確保としてとりうる選択̀としては、被災した住宅 を再建あるいは新たな住宅を購入する他に、被災住宅の修繕、民間賃貸住宅‑の入居、公 営住宅や福祉住宅‑の入居等が考えられる。

このうち、被災した住宅の修繕については、現行の災害救助法に根拠を置く応急修理制 度があり、それが殆ど活用されていないことについては、既に見たとおりである。被災住 宅の修繕に関しては、災害救助法に基づく「応急修理」ではなく、恒久的な住宅の確保と いう観点からの「本格的修理」を実現する仕組みが必要だと考える。

今回の調査は、行政による全壊認定を受けた住宅を対象に行ったため、本来、修繕で対 処すべき被害を受けたものについての支援策の検討を行うことができるほどの材料が得ら れていない。しかし、例えば平成16年宮城調査では、被災者の半分以上が、被災を受け た住宅を修繕して住み続けていることが判明している。そして修繕に要した費用の額から、

ここで行われている修繕は、主要構造部に及ぶ本格的修繕ではなく、修繕者の多くが被災 後に手元にある額の範囲で、可能な限りの修繕を行ったことが推測されるのである。それ は結果として危険な住宅に住み続けているという状況を招いているのではないかと危ぶ まれるし、そのような状況で被災者が満足しているとは到底思えず、また客観的に見ても 安全で恒久的な住居の確保がなされているとはいえない。

主要構造部分に著しい損害を受け、建替えるべき建物であるにも関わらず、修繕にとど めて住み続けている者が多い理由として、被災世帯に再建の為の資金の調達能力が不足し ており、住居の再確保に向けての資金確保が大きな障害となっていることが挙げられる。

修繕者は、決して融資が不要だったわけではなく、融資を利用したくても融資要件や金利 等の要因から利用できなかったということである。

こうした返済能力に欠ける被災者に対しては、持家の再建等の支援として支援金を給付 する制度と見合う形で、修繕のための費用を借入れる際の利子補給や返済保証を行う制度 が必要であろう。

なお、現行の公的支援制度においては、全壊と半壊、再建と修繕が対応するかのような 前提に立った内容となっていることが多い。また、修繕に関しては、全壊・再建の場合に比 して、単純に半分程度の支援で足りるとの認識に立った制度となっていることが多い。正 確な調査資料に基づいた実態把握を前提に、必要かつ的確な支援対応を検討する必要があ

ることはいうまでもない。

ドキュメント内 炎害対策法政策の総合的研究 (ページ 34-44)

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