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Fig.3‑11過渡吸収スペクトルの結果 Fig.3・10類縁体の構造 OH
トルを比較すると ICT準イ立を示すどークが大きくなっていることが分かる。このことから、エス テルを有する 2つの類縁体においてもペリジニンと同様に、 ICT準位が存在することが理解でき る。
次に、先の共役鎖を改変した類縁体および イリデンブテノリド環を修飾した類縁体の
SllICT寿命をすめle3‑3に示す。共役鎖を改変し た類縁体では、ヘキサン中において共役鎖長 が短くなる(最大吸収波長が小さくなる)につ れ、その寿命の値が大きくなっていくのに対 し、メタノ}ル中ではほぼ同じ 10psを示し た。一方で、、イリデンブテノリド環を修飾し、
共役オレブインがシスとなっている類縁体で は、ヘキサン中において寿命が逆の傾向を示 した。すなわち、最大吸収波長が小さくなる につれ、寿命の値が大きくなることが予想さ れたが、予想に反しその値は小さくなった。
さらに、メタノール中でも 9'E‑オレブインエステノレ類縁体では 21土1ps、13Z‑アセチレンエステ ル類縁体では43土1psと寿命の値が大きくなる傾向が見られた。このように、このイリデンブテ ノリド環を修飾した類縁体のSlIICT寿命を計測することで、シス体の場合ではトランス体と大きく 挙動が異なることが分かつた。 Frank教授らは、他のカロテノイドにおいても、トランス体とシス 体で異なる寿命の傾向が見られることを報告している 11 これらの結果から、 ICT準位と Sl準位 が独立な挙動を示すことは言えるものの、さらなる性質については明確なことは言えず、分光学 的考察から機構解明に迫るためにもイリデンブテノリド環は本質的に重要であることが示唆され
︒た
Table 3‑3共役鎖長(上)およびイリデンブテノジド環(下)を 修飾した類縁体におけるS川CT寿命の結果
I
ifetime (ps)
solvent C33 Der. C35 Der. C37 Per. C39 Der.
共役鎖n: 5 6 7 8
n‑Hexane 4200泣00 1000::1:100 186:1::4 41 :t1 Methanol 竹 却 9土1 10土1 9土1
λmax(nm)
n‑Hexane 416 436 454 469 Acetyl~ne Ester Olefln Ester C37 Per.
υer. uer.
n‑Hexane 64土 83とご 186土;4 Methanol 43土1 21土1 10土1
λmax(nm) n‑Hexane 410 430.5 454
3‑3 電場変調吸収スペクトル(シュタルクスペクトル)の測定 A.涼理・浪.IJ定意義
次に、超効率的なエネルギー伝達に関与すると考えられる、
もう一つの要因である分子内電荷移動現象(CTcharacter)につ いて述べる。この現象は、先に述べたICT準位を誘起する国 子と推定される。ペリジニンやフコキサンチンはカルボ、ニノレ 基を有するため、光により基底状態から励起状態に遷移した
励起状態
一,、、 IJ、
w~, '‑0/ hv Ilcha唱eTransfer (CT)
γ11 Charac抱r R..
、 A 5 )
とき分子内で電荷移動が起こり、共役鎖の電子的な対称性が 基底状態 晴 子
失われる(Fig.3‑12)。ペリジニンに代表される超効率的なエネ Fig.3‑網岨
α
岨ノルレギ}イ伝云達にはこの励起状態における電荷移動が寄与していると推定され、その相対的な大きさ が注目され検討されているO
どれほど大きな電荷移動が起こっているかについては、シュタルクスペクトル(電場変調吸収ス ペクトノレ)を測定することで見積もることができる。この測定により、 Fig.3‑12に示す基底状態と 励起状態における分子内電荷移動後の双極子モーメントの差(Aμ の値)を見積もることで、励起比 態における分子内電荷移動の程度を数値化できる。但し、このAμ の値は電荷移動の絶対的な大き
さを示すものではなく、様々な要因がある中の指標の 1つであることを注記しておく。以下、そ の意味や算出方法について簡単に説明する。
シュタルクスペクトルは、サンプノレに電場をかけることでサン
プルの基底状態および励起状態を変化させ、その吸収スペクトル 82 電場をかけることで
エネルギー準位が わずかに変化
を測定する分光学的手法である 120 Fig. 3‑13に示すように電場を かけることにより基底状態および励起状態に影響を与え、吸収ス ベクトノレがわずかに変化する。そこで、電場をかけたことによっ て得られた吸収スペクトルの変化を観測し、そのスペクトルの計 算による解析によって、種々の有意な物理定数を求めるというも
Fig.3‑13シュタルクスペクトノレ
のであるO の原理
シュタルクスペクトルとは、上記で述べたように「外部電場による吸収スペクトルの変化L1AJ のことであり、次式より求められる。
ル ! O g ( 半)
ここでは、 1/:外部電場のないときの透過光強度jであり、 1M:外部電場による透過光強度の変 化Jである。これらが実験で測定され、シュタルクスペクトルL1Aを決定できる。
シュタルクスペクトノレL1Aに対する理論は、Liptayらにより提唱され ている 13 その理論式および計算過程は複雑なためここでは省略する が、実験で得られたスペクトルの結果を解析することで、次の有意な 物理定数が求められる。一つは「励起状態と基底状態の双極子モーメ
遷移双極子ベクトル
、 / 、 / 、 / 、 / 、 /
布、、』ノ角度。
μ
、. 可 . . . . . . .
ントの差Aμjである。もう一つは、 IAμの遷移双極子の鰐の角度8Jで、 Fig.3圃14角度。について
ある。ここでの角度は、遷移双極子ベクトルに対するAμ(ベクトル)の角度であるO 測定時に、
定方向から電場を与えているサンプルに対し、様々な角度から透過光強度の変化Mを求めること でその角度依存性を解析する。それにより、遷移双梅子に対するAμの角度を算出することができ るOポリエンの遷移双極子はポリエンと平行で
あることが知られているため、シュタルクスベ クトルを測定することで、Fig.3‑14に示すよう にベクトノレAμと交わる角度を予測することが できる。今回のシュタルクスペクトルの測定に おける目的は、 Aμ の大きさ I~μ| の催を決定する ことであり、その分子の励起状態におけるその 分子の電荷移動の程度を求めることである。こ れまでの研究として、vanGrandelleらによって ペリジニンのAμの値が求められており 14、Fig. 3即時に示すようにペリジニンはカルボニル基 を有するフコキサンチンやスブエロイデノン と比べると測定条件は異なるものの、大きな Aμの値を持つことが分かつている 15
¥ ズ / ・ ' グ
AcO¥¥/〆¥.'OH
¥<"'" ..グ AcO〆¥/
OH
、、/、E、/'、~/.;:::ミと
O
Peridinin Aμ= 5.42 (x 10剖 C 刊) n = 7 (in PMMA)
OH
ミ~/'号、/、
/ 、 / 、
Fucoxanthin 郎 =5.01 (x 10剖 C刊) n = 7 (in 2幽MeTHF)
OMe
、
、/λ、/、、/、、
Spheroidenone d.μ= 4.28 (x 10‑29 C m) n = 10 (in PMMA) PMMA: poly (methyl methacrylate)
Fig.子15シュタルクスベクトルの結果
そこで、機構解明のもう一つの手掛かりとなる電荷移動(CT character)の大きさに注自し、大阪 市立大学橋本教授らと共にシュタルクスベクトルを測定することにより、ベリジニンの特異な構 造とその大きさとの関係について検討することにした。すなわち、ペリジニン類縁体についての シュタルクスペクトルを測定することで、ペリジニンのアレンおよびC37という炭素骨格がどの ように大きな電荷移動に寄与しているのかを検討するのである。
事.ペリジニン類縁体の測定結果16
励起状態において電荷移動の程度を検討するため、メタクリル駿メチルポリマー中でベリジニ ンおよび合成した5つの類縁体のシュタルクスペクトルを測定した。その結果、 Table3‑3に示す ようにアレン結合を持つベリジニンが、アレンをオレブインやアセチレンに置き換えた全ての合 成類縁体の中で、最も大きなAμの値を持つことが明らかとなった。すなわち、ペリジニンの Aμ の値が5.42x10却 C . mであるのに対し、アレンを修飾したジオレブイン類縁体は4.25x10羽 C . m、オレブイン類縁体は4.22x10羽 C . m、ア
セチレン類縁体は2.47x10‑29 C • mとなった。
Table 3‑4およびFig.3‑16に示す構造を比較 しながら、アレンを修飾したジオレブイン類 縁体、エポキシオレブイン類縁体、エポキシ
Table 3‑4シュタルクスベクトルの結果
na卜C37Per. Diolefin Der. allene‑
Olefin Der. modified derivatives
Id.f.ll
(x10・29Cm)
庄司
4.25 4.22
θ λ(nm似 ) m (0)
2.9 454.0 9.6 459.0 20.3 450.0
ことが分かるO しかし、アレン結合を持つベリジニンとジオレブイン類縁体を比較すると、明ら かにペリジニンの方が大きなAμ の値を示している。先に述べたように、 Aμ の大きさは励起状態 における電荷移動の程度を示すため、篭荷移動はペリジニンの場合に最も大きいことが明らかに なった。また、角度。を考慮した模式闘をFig.3‑16に示す。励起状態において、カルボニル基が 電子アクセプターであると仮定すると、ペリジニンではアレンの位置に正電荷が来ることが予測 されるO 一方で、、 Fig.3‑16左側
l
のアレンを修飾した 3つの類縁体のAμは共役鎖の方向を向いてお り、そのため、カルボニル基との距離が近づき十分な電荷移動が起こっていないことが推定され た。これらの結果から、アレンが電子供与基の役割を果たすことにより、他の類縁体にはない大 きな電荷移動現象(CTch訂acter)が引き起こされていることが推測される。これはアレンの重要性 を初めて明確に示したものであり、 ペリジニンはなぜアレン結合を持つのか"と言う疑問に対す る一つの明確な答えである。共同研究者の橋本研の橋本は、 MNDO聞PSDCI計算17によりこれらの 実験結果が安定な配座を取った場合の計算結果と一致することを示している 16d。一方で、共役鎖を変えた類縁体について注目すると、先程のアレンを修飾したペリジニンより 共役鎖が長い C39類縁体が最も大きな Aμ の値を持っと予想されたにも拘らず、予想、に反しその 値はベリジニンのものより小さく励起状態における電荷移動の程度は小さいことが明らかとなっ た。すなわち、ペリジニンの Aμの値が5.42x10・29C " mであるのに対し、共役鎖がペリジニンよ り一つ長いC39類縁体は5.29x10・29C "m、共役鎖がベリジニンより一つ短い C35類縁体は4.25 x10却 C"mとなった。ここでも天然の炭素数C37骨格を持つベリジニンの電荷移動の程度が最も 大きくなることが明らかとなり、 ペリジニンがなぜC37であるのか"という疑問に対する可能な 答えであると言える。
選移双犠子 Aμ
4ーーーー‑・h
OH
OH
AcQ'
.OH
AcO' C39輔Derivative
Fig. 3‑16 ペリジニン類縁体において予想、される電荷移動状態の模式国