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3.5 各要因が剥離・剥落に及ぼす影響に関する調査

3.5.2 調査結果および考察

図3.11,図3.12,図3.13にかぶりと中性化深さの関係を示す。図3.11では腐食度ごとに分類し,

図3.12では雨掛かりの有無の影響を,それぞれ健全部と剥離・剥落箇所に分けて図示した。なお,

図3.13 では圧縮強度ごとに分類している。図中の破線は中性化残り10mm を示しており,破線よ り左側に分布している調査結果は中性化残りが10mm以下のもので,土木学会コンクリート標準示 方書で示されている発錆限界以上の中性化が進行しているものである。

図3.11より,鉄筋の腐食度がⅡa以上のものは,概ね中性化残りが10mm以下となる箇所で発生 していた。つまり,中性化により腐食度Ⅱa「鉄筋の表面の大部分に腐食が認められる」程度まで腐 食するためには中性化残りが10mm以下となるまで,中性化が進行することが条件となる。ただし,

腐食度Ⅱaであってもかぶりコンクリートの剥離・剥落に至らない箇所も散在していた。次に図3.12 より,雨掛かりの有無の影響も考慮すると雨掛かりのない場合では,腐食度がⅡa以上であっても 剥離・剥落に至らない箇所も多く存在した。また,雨掛かりがある場合では,概ね中性化の進行が 中性化残り10mm以下となるまで中性化が進行すると鉄筋の腐食度がⅡa以上となり,かぶりコン クリートの剥離・剥落に至る傾向が明確に示されている。同程度の腐食程度であっても雨掛かりが ない場合では,剥離・剥落に至らない箇所も散在されていることから,かぶりコンクリートの剥離・

剥落に至るまでの過程が雨掛かりの有無により異なり,剥離・剥落が発生する際の腐食の程度も異 なるものと推測される。なお,圧縮強度30N/mm2以上に着目するとかぶりが 20mm程度以下であ ると剥離・剥落に至っているが,かぶりが20mm程度以上であれば,中性化の進行が発錆限界付近 であっても剥離・剥落に至らない箇所があった。

これら,雨掛かりがない場所で,腐食度がⅡaであっても剥離・剥落に至らない要因として,塩 害では腐食速度によって腐食生成物が異なり,腐食膨張倍率が変化し,剥離・剥落に影響を及ぼす ことが報告 3-5)されているが,中性化においても,雨掛かりの有無により同様な現象が起こる可能 性がある。そこで,3.6において,実構造物より採取した腐食した鉄筋を詳細に分析した。

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図3.11 剥離・剥落に及ぼす腐食度の影響

図3.12 剥離・剥落に及ぼす腐食度の影響

図3.13 剥離・剥落に及ぼす圧縮強度の影響 0

20 40 60 80 100

0 20 40 60 80 100

性化深(mm)

かぶり(mm) 剥離・剥落

腐食度:0 腐食度:Ⅰ 腐食度:Ⅱa 腐食度:Ⅱb 腐食度:Ⅲ 0

20 40 60 80 100

0 20 40 60 80 100

中性化深(mm)

かぶり(mm)

健全部 腐食度:0 腐食度:Ⅰ

腐食度:Ⅱa 腐食度:Ⅱb 腐食度:Ⅲ

0 20 40 60 80 100

0 20 40 60 80 100

中性化深(mm)

かぶり(mm) 健全部

雨掛りなし(腐食度0,Ⅰ) 雨掛りあり(腐食度0,Ⅰ) 雨掛りなし(腐食度Ⅱa以上) 雨掛りあり(腐食度Ⅱa以上)

0 20 40 60 80 100

0 20 40 60 80 100

中性化深(mm)

かぶり(mm) 剥離・剥落

雨掛りなし(腐食度0,Ⅰ) 雨掛りあり(腐食度0,Ⅰ) 雨掛りなし(腐食度Ⅱa以上) 雨掛りあり(腐食度Ⅱa以上)

0 20 40 60 80 100

0 20 40 60 80 100

中性化深(mm)

かぶり(mm)

健全部 20N/mm225~30N/mm2以下 2030~40N/mm225N/mm2

40N/mm2以上

0 20 40 60 80 100

0 20 40 60 80 100

中性化深さ(mm)

かぶり(mm)

剥離・剥落

20N/mm2以下 20~25N/mm2 25~30N/mm2 30~40N/mm2 40N/mm2以上

44 (2) 腐食速度および腐食深さ

図 3.14 に鉄筋の腐食度と雨掛かりの有無がかぶりコンクリートの剥離・剥落に及ぼす影響を示 す。雨掛かりの無い箇所において剥落している割合は 5%程度で,雨掛かりのある箇所における剥 落の割合は40%程度と,雨掛かりがあるほうが剥離・剥落が発生し易いことを示している。これは,

石橋ら 3-3)の報告と同程度であり,調査結果の妥当性を示している。雨掛かりの有無の違いがかぶ りコンクリートの剥離・剥落に及ぼす影響を定量的に示すために鉄筋の腐食度ごとに想定腐食開始 からの経過年数を求めた。これは,かぶりと中性化深さおよび経過年数から,中性化残り10mmと なる時点を算出し,その時点からの経過年数を想定腐食開始からの経過年数とした。想定腐食開始 からの経過年数とすることで,かぶりコンクリートの品質や厚さに影響を受ける中性化の進行,潜 伏期の影響を除外するためである。

表3.7,図3.15に想定腐食開始からの経過年数と腐食度の関係を示す。想定腐食開始は,中性化 残りが10mmとなる時点と仮定し,式(3.1)により,中性化速度係数を用いて中性化残りが10mm となる経過年数を算出した。そして,調査時点での構造物の経過年数から減じることで中性化残り が10mmとなった時点からの経過年数を求めた。想定腐食開始年数が0以下のものは,調査時点に おいて中性化残りが10mmに達していないものである。

・・・・・・・・・・・・・・・(式 3.1)

ここで,t:想定腐食開始からの経過年数(年),t1:構造物の経過年数(年),c:かぶり(mm),

α:中性化速度係数α = y /√t1 (mm/√年),y:中性化深さ(mm)

腐食の程度がある程度進行し,雨掛かりあり,なし両方の調査測点の多い腐食度Ⅱaに着目する と,腐食度Ⅱaにおける想定腐食開始からの経過年数は,雨掛かりがある箇所で平均14.8年,雨掛 かりがない箇所で平均49.4年となった。つまり,腐食度Ⅱaにおける腐食速度は,雨掛かりがある 場合のほうが,ない場合よりも3.4倍程度大きくなった。雨掛かりがある場合,雨掛かりがない場 合よりもかぶりコンクリートが剥離・剥落し易くなることは,雨掛かりがある場合のほうが鉄筋の 腐食がし易いとこを示している。雨掛かりがある場合,中性化の進行は,乾燥しているよりも抑制 されるものの鉄筋の腐食速度が大きくなり,かぶりコンクリートの剥離・剥落が早期に発生するも のである。なお,腐食度Ⅱaにおける想定腐食開始からの経過年数にばらつきが見られるが,これ は,雨掛かりがある中でも,水分の供給量やコンクリートの緻密性などコンクリート中での鉄筋位 置における水分状態が異なることなどが影響しているものと考える。

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図3.14 鉄筋の腐食度および剥離・剥落に及ぼす雨掛かりの影響

表3.7 想定腐食開始からの経過年数

腐食度 最小値 最大値 平均値

雨掛かり あり

Ⅲ 67.2 70.2 68.7

b 2.9 83.1 53.7

Ⅱa -34.6 77.3 14.8 雨掛かり

なし a 16.5 80.2 49.4

図3.15 想定腐食開始からの経過年数と腐食度の関係

次に,表3.3および表3.4の鉄筋の腐食度と質量減少率の関係より腐食深さを算出する。腐食深 さと質量減少率の関係は,図3.16に示す2つのケースを想定した。図3.16(a)は,鉄筋断面におけ るかぶり側から鉄筋が腐食する場合であり,図 3.16(b)は鉄筋断面において均一的に腐食する場合 である。(a)における腐食深さは,式(3.2)により,(b)における腐食深さは,式(3.3)により算出 した。それぞれの調査結果において,鉄筋の腐食度から定まる質量減少率と鉄筋の径から2つのケ ースの腐食深さを算出している。図3.17に求めた腐食深さと配筋条件(c/D)の関係を示す。また,

図中には鉄道構造物等維持管理標準 3-1)に示されている式(3.4)の剥離・剥落に至る腐食深さの閾

0% 20% 40% 60% 80% 100%

0

a

Ⅱb

腐食

健全部 剥離・剥落

0% 20% 40% 60% 80% 100%

雨掛りあり 雨掛りなし

健全部 剥離・剥落

0 1 2 3 4 5

-50 0 50 100

腐食

想定腐食開始からの経過年数

雨掛りあり-剥離・剥落 雨掛りなし-剥離・剥落

雨掛りあり-健全部 雨掛りなし-健全部

Ⅱb

Ⅱa

46 値をあわせて示す。

図3.17より,雨掛かりの有無ともにc/Dが小さいと腐食深さが大きい傾向となった。雨掛かりが ある箇所では,腐食深さがΔrsp以上となると剥離・剥落している傾向となるが,雨掛かりのない箇 所ではΔrsp以上であっても多くの調査箇所において剥離・剥落していなことが見て取れる。つまり,

かぶり,鉄筋径(c/D)と腐食深さの関係からも図3.12と同様の傾向を示しており,雨掛かりの有 無によって,かぶりコンクリートが剥離・剥落する際の腐食の程度も異なるものと推測される。

100 ・・・・・・・・・・・・・・・(式3.2)

100 ・・・・・・・・・・・・・・・(式3.3)

∆ 56 / 10 ・・・・・・・・・・・・・・(式 3.4)

ここで,m:質量減少率(%),D:鉄筋径(mm),Δr:腐食深さ(mm),

Δrsp:剥離・剥落時の鉄筋の腐食深さ(mm),c:かぶり(mm)

(a)かぶり側から鉄筋が腐食する場合 (b)鉄筋断面において均一的に腐食する場合 図3.16 腐食深さと質量減少率の関係の模式図

r:腐食深さ

D:鉄筋径 腐食減量

D:鉄筋径

r:腐食深さ 腐食減量

コンクリート表面 コンクリート表面

コンクリート内部 コンクリート内部

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(a)かぶり側から鉄筋が腐食する場合における腐食深さ

(b)鉄筋断面において均一的に腐食する場合における腐食深さ 図3.17 腐食深さと配筋条件(c/D )の関係

0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 1.2 1.4

0 2 4 6 8 10

腐食深さ(mm)

c/D

雨掛りあり 健全部 剥離・剥落

0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 1.2 1.4

0 2 4 6 8 10

腐食深さ(mm)

c/D

雨掛りなし 健全部 剥離・剥落

0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 1.2 1.4

0 2 4 6 8 10

腐食深さ(mm)

c/D

雨掛りあり 健全部 剥離・剥落

0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 1.2 1.4

0 2 4 6 8 10

腐食深mm

c/D

雨掛りなし 健全部 剥離・剥落

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