4.5 かぶりコンクリートの発生応力
4.5.2 腐食促進試験におけるモルタル表面ひずみとの比較
4.3 において検討した腐食促進試験におけるモルタル表面のひずみ変化量と厚肉円筒理論により 算出されるモルタル表面にひずみとの比較を行った。表 4.11 に腐食促進試験における実験値と厚 肉円筒理論において算出に用いる条件を示す。腐食促進試験後にクエン酸二アンモニウム水溶液浸 漬にて求めた質量減少率から腐食による断面減少量Awを求め,式4.1~式4.7を用いてモルタル表 面の平均引張応力 ftを算出した。その平均引張応力 ftを算出するにあたり,表4.12に示すモルタ ルの材齢 70日における静弾性係数を用い,かぶりはモルタル供試体を割裂して腐食した鉄筋を採 取する際に実測した。また,腐食生成物の体積膨張倍率は,4.4 にて検討した内容を考慮して塩害 では2.5~4.0の範囲と考えられ,ここでは,2.5~4.0の平均値として3.25,中性化では2.5とした。
ここでは,コンクリートと腐食生成物のクリープの影響はないものとした。
表4.11 腐食促進試験における実験値と各条件値 供試体記号 鉄筋径
(mm)
腐食生成物の 体積膨張倍率
かぶり※1 (mm)
質量減少率※2 (%)
表面のひずみ量※3 (×10-6) 65-5-0-Cl
φ10
3.25
6.2 0.69 287
65-5-5-Cl 6.0 0.51 264
65-5-10-Cl 6.7 0.45 298
65-5-5-C
2.5
6.3 0.18 107
65-7.5-7.5-C 7.5 0.20 97
65-10-10-C 11.8 0.16 58
※1 モルタル供試体を割裂し,鉄筋を採取した際に実測した
※2 腐食促進試験終了後にクエン酸二アンモニウム水溶液浸漬にて求めた
※3 モルタル表面のひずみ変化量,腐食膨張に起因する表面のひずみ変化量(実験値)
105
表4.12 モルタルの圧縮強度と静弾性係数
図 4.30 に腐食促進試験におけるモルタル表面のひずみ変化量と厚肉円筒理論により算出される モルタル表面にひずみとの比較結果を示す。塩害を想定した条件で初期の塩化物イオン浸透深さを 10mmとしたもの(65-5-10-Cl)のほうが,初期の塩化物イオン浸透深さ0mm
としたもの(65-5-0-Cl)より,実験値と計算値が近い結果となった。これは,厚肉円筒理論により算出する際に,図4.29
に示すように腐食生成物が均一の厚さに鉄筋表面に生成されると仮定している。実際には,塩害を 想定した条件では,4.2 で示したように腐食形態が鉄筋の長手方向および鉄筋の断面方向において 均一に腐食することはなく,局所的な腐食形態となる。この腐食形態が局所的に偏ることで,質量 減少率が増大し,計算上の腐食深さが大きくなり,塩害を想定した条件では実験値と計算値が乖離 するものである。塩害を想定した条件では,厚肉円筒理論を用いてコンクリート表面のひずみを算 出する場合,腐食形態の違いを考慮する必要がある。一方で,腐食形態が均一的になる中性化にお いては,計算値と実験値が,塩害を想定した条件よりも近い値を示し,中性化による鉄筋腐食を想 定する場合において,厚肉円筒理論により比較的,精度よく再現できるものと考えられる。
また,4.4 で示したように塩害における鉄筋の腐食生成物の結晶相は,鉄筋腐食が開始されて初 期の段階からひび割れ発生した後の期間において経時的に変化し,その結晶相の変化に伴い,腐食 生成物の体積膨張倍率が2.5~4.0程度の範囲で変化しながら,鉄筋の腐食が進展する。これらが影 響し,実験値と計算値が乖離した可能性もある。
図4.30 モルタル表面のひずみ量の計算値と実験値の比較 0
200 400 600 800
65‐5‐0‐Cl 65‐5‐5‐Cl 65‐5‐10‐Cl
モルタル表面のひずみ(×10‐6) 計算値
実験値
0 200 400 600 800
65‐5‐5‐C 65‐7.5‐7.5‐C 65‐10‐10‐C
モルタル表面のひずみ(×10‐6) 計算値
実験値 材齢 見かけの密度(g/cm3) 圧縮強度
(N/mm2)
静弾性係数 (kN/mm2)
7 2.26 24.7 19.7 14 2.25 30.9 22.3 28 2.26 36.2 23.4 70 2.27 46.0 26.6
106
【4章 参考文献】
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