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ઃ 説 明

ドキュメント内 世 界 正 義 論 に 向 け て (ページ 30-35)

的ナ ショ ナリ ズム の呪 縛

政治 的リ ベラ リズ ムへ の転 向後

、ロ ール ズは 国際 正義 に関 する

﹁諸 人民 の法

﹂の 理論 にお いて

、﹁ 重荷 を負 う社 会︵ bu rd en ed so ci et ie s︶

﹂へ の切 断点 付き 経済 支援 を超 えた 世界 分配 正義 の原 理を 否定 した

Rawls 1999 : 10 5-12 0

が、 その 前提 にあ るの は彼 の次 の見 解で ある

。﹁ 人民 の富 の諸 原因 と諸 形態 は、 その 諸成 員の 政治 的徳 性に 支え ら れた 勤勉 さと 協力 的能 力に だけ でな く、 彼ら の政 治文 化に

、ま た彼 らの 政治 的社 会的 諸制 度の 基本 構造 を支 える 宗 教的

・哲 学的

・道 徳的 諸伝 統に 存す る﹂

。︶ 各国 民の 経済 的境 遇の 原因 を、 もっ ぱら 政治 的徳 性・ 政治 文

Ibid., 108

化と いう その 国内 的要 因に 帰す るロ ール ズの この 言明 は、 国民 的自 己責 任論 の最 も端 的な 表明 であ る︵ ロー ルズ の 世界 分配 正義 に関 する 見解 の批 判的 検討 とし て、 参照

、井 上

。︶ これ は世 界分 配正 義へ の積 極義 務を 限定

200 9: 12 0-13 0

する 根拠 とさ れる だけ でな く、 途上 国の 自己 責任 を強 調し て先 進諸 国の 制度 的加 害責 任を 否定 する 根拠 にさ れて い る。 ロー ルズ の上 記言 明に 象徴 され るよ うな

、途 上国 自己 責任 論の 主要 な根 拠は

、途 上国 間で の経 済的 発展 実績 の差 異で ある

。同 じグ ロー バル な政 治経 済制 度の 下で

、経 済発 展を 進め る途 上国 と貧 窮状 態に 留ま る途 上国 が存 在す る とい う事 実は

、グ ロー バル な政 治経 済制 度よ りも 各途 上国 の国 内的 要因 がそ の経 済的 境遇 を規 定す る主 原因 であ る こと を示 すと され る。 第一 節で 触れ たよ うに

、ポ ッゲ はこ の論 法を

﹁説 明的 ナシ ョナ リズ ム︵ ex pl an at or yn at io na l -is m︶

﹂と 呼ん で批 判し てい る︵ 参照

。︶ ポッ ゲに よれ ば、 たし かに 途

Pogge 2008: 17 -1 8, 11 8-122 ,14 5-1 51 et passim

上国 間の 経済 発展 実績 の差 は途 上国 の国 内的 要因 が経 済発 展に 影響 を与 える こと を示 すが

、そ こか ら、 グロ ーバ ル な政 治経 済秩 序が 途上 国に 対し ても つ不 利な 影響 力を 全面 否定 する 結論 を導 出す るの は、 論理 的誤 謬で ある

。そ れ は、 例え ば、 教材

・教 員・ 学校 設備 など の教 育環 境が 劣悪 なク ラス にお いて も生 徒間 に学 業成 績の 優劣 の差 が出 る こと から

、劣 悪な 教育 環境 が生 徒た ちに 不利 な影 響を 与え てい ない と推 論す るの と同 じ誤 謬で ある

。 説明 的ナ ショ ナリ ズム に対 する ポッ ゲの 批判 は論 理的 に極 めて 的確 なも ので ある

。し かし

、多 くの 論理 的誤 謬が

根強 い心 理的 支配 力を もつ よう に、 説明 的ナ ショ ナリ ズム も執 拗な 呪縛 力を もつ

。こ の呪 縛力 を典 型的 に例 証し て いる のは

、ポ ッゲ の説 明的 ナシ ョナ リズ ム批 判に 対す るデ イヴ ィッ ド・ ミラ ーの 反論 であ る。 第二 節第 項

⑶で 検 討し た﹁ 正義 の間 隙﹂ 論が 示す よう に、 世界 貧困 に対 する 富裕 先進 諸国 の救 責任 一般 に関 する 限り で、 ミラ ーの 世界 主義 志向 は彼 のナ ショ ナリ ズム 志向 に捕 囚さ れて いた

。し かし

、世 界貧 困に 対す る結 責任 が問 われ ると き、 彼の 世界 主義 志向 が救 出さ れる 可能 性は ある

。ミ ラー によ れば

、救 済責 任一 般は 結果 惹起 責任 に依 存し ない が、 前者 は後 者に よっ て生 じる こと があ りえ

、後 者を もつ 主体 に第 一次 的に

、か つ最 も厳 重に 割り 当て られ る。 も し富 裕諸 国が 世界 貧困 に結 果惹 起責 任を もつ なら

、ミ ラー は富 裕諸 国に 対し

、世 界貧 民救 済責 任を 遂行 する ため に、 彼の 正義 の間 隙の 観念 が受 容さ せる より もは るか に大 きな 自国 益の 犠牲 を要 請し なけ れば なら ない

。し かし

、 彼の 世界 主義 志向 を取 り戻 すこ の可 能性 は世 界貧 困に 対す る先 進諸 国の 結果 惹起 責任 を極 小化 する 彼の 試み によ っ て阻 まれ てい る。 ポッ ゲの 制度 的加 害是 正論 に対 する 論評 にお いて

、ミ ラー は、 IM Fの 市場 原理 主義 的な

﹁条 件付 け︵ co n -di ti on al it y︶

﹂政 策な ど、 従来 の世 界秩 序の ある 側面 が途 上国 に不 利益 を課 して いる こと を認 容す るが

、以 下の 根拠 でポ ッゲ を批 判す る。

﹁我 々が 現有 する 不完 全な 秩序 の下 でさ え、 多く の﹇ 途上 国﹈ 社会 が相 当な 前進 を既 に達 成 して おり

、そ のこ とは

、少 なく とも

、﹇ 前進 でき ない まま

﹈残 って いる 社会 の状 態に 対す る︵ 結果 惹起

︶責 任が 単 純に その 秩序 とそ れを 支え る富 裕諸 国に のみ 帰せ られ えな いこ とを 示す

﹂︵

︶。 彼は さら に進 んで

Mill er 2007: 244

この 論点 を以 下の 類推 によ って 補強 する

。﹁ 環状 交差 路は 下手 に設 計さ れて いる かも しれ ない が、 注意 深い 運転 手 によ って それ が安 全に 通過 され てい ると いう 事実 は、 現実 に起 こる 事故 の責 任の かな りの 部分 が運 転手 自身 の肩 に 負わ され なけ れば なら ない こと を示 して いる

﹂︵ Ib id .︶

。 この 批判 にお いて

、ミ ラー はポ ッゲ の議 論の 趣旨 を取 り違 えて おり

、そ れに よっ て、 ポッ ゲが 説明 的ナ ショ ナリ

ズム と呼 んだ もの と同 じ類 の誤 謬に 陥っ てい る。 ミラ ーが 言う には

、﹁ 説明 的ナ ショ ナリ ズム とは

、異 なっ た社 会 の富 と貧 困の 差は その 社会 内部 の制 度や 実践 によ って 完全 に説 明で きる とい う見 解で ある

Ib id .︶

。こ の性 格づ け は正 確で はな い。 ポッ ゲに よっ て指 摘さ れた 説明 的ナ ショ ナリ ズム の根 本的 な誤 謬は

、ミ ラー が要 約し たそ の結 論 にで はな く、 むし ろ、 同じ 世界 秩序 の下 での 異な った 途上 国の 異な った 発展 実績 の事 実か

、世 界貧 困の 説明 にお ける 世界 秩序 の有 意な 関連 性の 否定 へ

、そ して その 秩序 を支 える 富裕 諸国 の結 果惹 起責 任の 否定 へ 進む 誤っ た 推論 様式 に存 する

。 ポッ ゲは この 推論 を飛 躍論 証や

、結 論先 取の 誤謬 を犯 すも のと して 斥け る。 なぜ なら

、た とえ

、途 上国 間の 発展 実績 格差 が途 上国 の国 内要 因に よっ て部 分的 に説 明可 能だ とし ても

、以 下の よう な可 能性 が依 然存 在す るか らで あ る。 すな わち

、① 現在 の世 界秩 序が

、事 態を さら に悪 化さ せる 付加 的な 因果 的寄 与を なし

、も しそ れが なけ れば

、 貧窮 諸国 の苦 境は いま より まし なも のだ った であ ろう 可能 性、 およ び② 現在 の世 界秩 序が

、貧 窮諸 国の 事態 に関 連 ある 国内 要因

︱︱ その 専制 的な 体制

、頻 繁な 軍事 クー デタ

、為 政者 の腐 敗や 無責 任な 統治 など

︱︱ を生 み出 し再 生 産す るた めの イン セン ティ ヴと 効果 的手 段を

、貧 窮諸 国の 統治 者や 海外 の利 害関 係主 体に 付与 する こと によ り、 か かる 国内 要因 を促 進す る因 果的 寄与 をな して いる 可能 性で ある

。説 明的 ナシ ョナ リズ ムに 対す るポ ッゲ の批 判の 眼 目は

、か かる 可能 性が 現在 の世 界の 現実 であ るか 否か とい う問 題を 精査 する こと なく

、世 界貧 困に 対す る富 裕諸 国 と貧 窮諸 国の 結果 惹起 責任 の比 重に つい ての 規範 的な 判断 や、 いわ んや 富裕 諸国 の責 任の 否定 はな しえ ず、 なす べ きで はな いと いう 点に ある

。 ミラ ーは

、途 上国 間の 発展 実績 格差 を根 拠に

、世 界貧 困に 対す る結 果惹 起責 任は

﹁世 界秩 序と それ を支 える 先進 諸国 にの み単 純に 帰す るこ とは でき ない

﹂と 結論 する

。も し彼 が、 彼の 前提 が貧 窮諸 国も また 何

、ゼ ロで はな い結 果惹 起責 任を 有し うる こと を含 意す るこ とを 意味 して いる だけ なら

、彼 の推 論に は何 の問 題も ない

。唯 一

の問 題は

、ポ ッゲ もそ のよ うな 弱い 結論 は否 定し てお らず

、そ れゆ え、 かか る推 論は ポッ ゲの 議論 に対 する 批判 に はな りえ てい ない とい うこ とで ある

。 しか し、 ミラ ーが これ 以上 のこ とを 言お うと 意図 して いる のは 確か であ る。 だか らこ そ、 彼は 彼の 結論 がポ ッゲ の主 張を 論駁 する もの だと 考え たの であ る。 ミラ ーが 意味 する 一層 強い 結論 は、 彼の

﹁下 手に 設計 され た環 状交 差 路﹂ の類 推に 示さ れて いる

。ミ ラー は次 のよ うに 言う

。﹁

﹇環 状交 差路

﹈が 注意 深い 運転 手に よっ て安 全に 通過 され てい ると いう 事実 は、 現実 に起 こる 事故 の責 任の か 部分 が運 転手 自身 の肩 に負 わさ れな けれ ばな らな いこ と を示 して いる

Ib id .強 調と 角括 弧内 挿入 句は 引用 者に よる

。︶ この 類推 に示 され た彼 の強 い結 論は 次の よう な欠 陥を もつ 第 。 一に

、こ の類 推は

、途 上国 間発 展実 績格 差の 事実 が、 世界 貧困 に対 する 責任 の︱

︱単 に何

、ゼ ロで は ない 部分 では なく

︱︱ か 部分 が貧 困状 態に 留ま る諸 国に 帰せ られ なけ れば なら ない こと を含 意す ると ミラ ー が考 えて いる こと を示 す。 ここ で、 彼は 富裕 諸国 と貧 窮諸 国の 責任 の相 対的 比重 につ いて

、概 括的 なも のと はい え、 ある 規範 的査 定、 貧窮 諸国 が自 らの 苦境 に対 して もつ 結果 惹起 責任 の比 重が 小さ くは なく かな り重 いも ので あ ると 主張 する 査定 を行 い、 しか も、 ポッ ゲが 示唆 した よう な可 能性 を綿 密に 検討 する こと なく

、こ の主 張を 彼の 前 提︵ 途上 国間 発展 実績 格差 の事 実︶ から の推 論と して 行っ てい る。 ここ で彼 は、 説明 的ナ ショ ナリ ズム と同 じ類 の飛 躍論 証の 誤謬 を犯 して いる

。 第二 に、

﹁環 状交 差路

﹂の 類推 は、 下手 に設 計さ れた 環状 交差 路が

、事 故を 起こ す運 転手 の不 注意 さに は何 ら関 与せ ず、 うま く設 計さ れた もの より も多 くの 注意 深さ を運 転手 に要 求す るこ とに よっ ての み事 故リ スク を高 める と 想定 して いる

。事 故を 起こ す運 転手 の不 注意 さは 環状 交差 路の 設計 のさ れ方 とは 独立 に彼 らが もつ 彼ら 自身 の性 格 であ ると 想定 され てい る。 この よう な類 推を 使用 する こと によ って

、ミ ラー は、 世界 秩序 の設 計は 貧窮 諸国 の経 済

ドキュメント内 世 界 正 義 論 に 向 け て (ページ 30-35)

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