日本薬剤師会学術大会に参加して
2.5 μg/5μg の概要
規格/薬価 規格/薬価 2.5μg/ 86.30円 5μg/141.10円
都薬雑誌 Vol 30 No.12(2008)33
図 1 過敏性腸症候群(IBS)診断フローチャート
薬理作用の特徴 作用機序(図 3 )9 )
本剤は遠心性神経の腸管の神経節に存在す るセロトニン5-HT3受容体を遮断することに よりストレスによる大腸輸送能亢進及び大腸 水分輸送異常を改善し,排便亢進や下痢を抑 制する。また,求心性神経の神経終末に存在 するセロトニン5-HT3受容体を遮断すること により大腸痛覚の伝達を抑制し,腹痛及び内 臓知覚過敏を改善する。
その結果,本剤は IBS における便通異常と 腹痛・腹部不快感の両方を改善することが期
待できる。
本剤はヒト5-HT3受容体 に高い親和性を有してお り10),ラットやマウスを用 いた試験により, ストレ スにより誘発される下痢 や排便亢進あるいはセロ トニン誘発下痢に対する 抑制作用が認められたが9 ,
11,12),自然排便には影響を 及ぼさなかった11)。
また,ラットによるスト レス誘発大腸輸送能亢進 及びコルチコトロピン放 出因子(CRF)誘発大腸水 図 3 作用機序 9 )より作図
図 2 過敏性腸症候群(IBS)に おける脳腸相関の悪循環
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分輸送異常などの大腸機能を改善するととも
に13,14),ストレス誘発大腸痛覚閾値の低下を
用量依存的に改善することが認められた9 )。
臨床上の特徴 1 .有効性
第Ⅲ相試験(多施設共同プラセボ対照二重盲 検群間比較試験)15)
男性の下痢優位型 IBS 患者を対象に,本剤
5 μg もしくはプラセボを 1 日 1 回,12週間 投与し,有効性と安全性を比較検討した。主 要評価項目である IBS 症状の全般改善効果の 最終時点における月間レスポンダー※ 2率は,
本剤 5 μg 群がプラセボ群を上回り有意な差 が認められた(図 4)。
長期投与試験(多施設共同非盲検非比較試験)16)
男性の下痢優位型 IBS 患者を対象に,本剤 5 μg( 5 週目より10μg に増量可能) を28 図 4 IBS 症状の全般改善効果(男性:第Ⅲ相試験)
図 5 IBS 症状の全般改善効果(男性:長期投与試験)
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週間(最長52週間)にわたり長期投与したと きの有効性及び安全性を検討した。IBS 症状 の全般改善効果は, 5 μg 維持群では 1 ヵ月 目から改善効果が認められた。増量後である 2 ヵ月( 8 週)目には10μg 増量群において も改善効果が確認され,その後,月間レスポ ンダー※ 2率はいずれの群においてもほぼ増加 しながら推移し, 7 ヵ月(28週)目の月間レ スポンダー※ 2率はいずれの投与群も70%以上 であった。継続投与移行例( 7 ヵ月目までに 有効性の認められた患者)における 8 ヵ月目 以降では, いずれの投与群でも投与後52週
(13ヵ月)にわたる効果の持続が認められた
(図 5)。
2 .安全性
国内臨床試験で下痢型 IBS 患者(男女)を 対象に安全性を評価した総症例数921例中,
臨床検査値異常を含む副作用発現症例は259 例(28.1%) であり, 主なものは便秘63例
(6.84%),硬便65例(7.06%)であった。(承 認時:2008年 7 月)
重大な副作用として,抗悪性腫瘍剤投与に 伴う消化器症状(悪心,嘔吐)の治療のため にラモセトロン塩酸塩を静脈内投与された患 者において,ショック,アナフィラキシー様 症状が報告されている。また,類薬では海外 において,虚血性大腸炎,重篤な便秘が報告 されている。
副作用の多くは薬理作用に基づくと考えら れる便秘,硬便などであり,ほとんどが軽度 なものであった。ただし,海外において類薬 であるアロセトロンで虚血性大腸炎,重篤な 便秘の副作用が発現していることから, 3 日 間以上無排便が続くようであれば服薬を中断 し,主治医を受診するよう,服薬指導が必要 である。
ドラッグインフォメーション
【効能・効果】
男性における下痢型過敏性腸症候群
<効能・効果に関連する使用上の注意>
現時点で得られている臨床成績では,女性 における本剤の有効性は認められず副作用発 現率が高いことから,本剤を女性に対して投 与しないこと。
【用法・用量】
通常,成人男性にはラモセトロン塩酸塩と して 5 μg を 1 日 1 回経口投与する。
なお,症状により適宜増減するが, 1 日最 高投与量は10μg までとする。
<用法・用量に関連する使用上の注意>
用量調整を行う場合は 1 ヵ月程度の症状推 移を確認してから実施すること。また,症状 変化に応じた頻繁な用量調整を行わないよう にすること。
【重要な基本的注意】
(1)下痢型過敏性腸症候群治療の基本である 食事指導及び生活指導を行った上で,症状 の改善が得られない患者に対して,本剤の 適用を考慮すること。
(2)慢性便秘症または便秘型過敏性腸症候群 の患者でないことを確認すること。
(3)十分な問診により,下痢状態が繰り返し ていること及び便秘状態が発現していない ことを確認のうえ投与すること。
(4)類似症状を呈する疾患(大腸癌,炎症性 腸疾患,感染性腸炎等)が疑われる場合に は,必要に応じて専門的な検査を考慮する こと。
(5)腹部手術歴のある患者は本剤の投与によ る便秘,硬便等の発現に伴うイレウス等の 発現に注意すること。
(6)本剤では便秘,硬便が認められているこ とから,類薬で海外において報告されてい る虚血性大腸炎や重篤な便秘の発現に注意 すること。また,本剤の投与により腹痛の
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悪化,下血や便秘,硬便が認められた場合 には,医師等に連絡するよう患者に指導す ること。
(7) 本剤による治療により継続的な症状の 改善が得られた場合,本剤の投与を漫然と 継続することなく,投与開始 3 ヵ月を目処 に,治療の継続,終了を検討すること。
適正使用のための注意点(Q&A)
Q: なぜ,適応は男性だけなのでしょうか?
第Ⅲ相試験を男女別に層別解析した結 果,男性ではプラセボ群に対して有意差が 認められましたが,女性では男性と比較し て月間レスポンダー率※2は高かったもの の, 2 ヵ月目以外はプラセボ群に対して有 意差が認められませんでした。
この理由として,女性は例数が少なかっ たこと,プラセボの有効性が高かったこと があげられます。なお,女性でプラセボの 有効性が高かった理由は不明です。
Q: 服用前に患者さんに確認するべきことは?
薬に対するアレルギーの有無,腹部手術 歴の有無,服用中の薬剤(大衆薬を含めた 併用薬)の有無について確認してください。
Q: 1 日 1 回投与する時間帯(朝・昼・夕?)
はいつでもよいのでしょうか?
IBS は一般に就寝時に症状はなく,起床 時からその日初めての食物摂取後にかけて 症状が発現し始めるため,通常,朝食前の 服用が望ましいと考えられています。した がって,臨床試験では,服用時期を朝食前 と設定しました。
なお,用法として服用時間帯の指定はあ りません。
Q: 患者さんが飲み忘れた場合の服薬指導は?
飲み忘れた場合は,気がついたときにで きるだけ早く服用いただくようご指導くだ さい。次の服用時間が近い場合は,忘れた 分は飲まないで 1 回分とばし,絶対に 2 回
分を一度に服用しないようご指導ください。
Q: 用量調整を行う時期は?
長期投与試験において, 5 μg/日から 投与を開始し, 4 週( 1 ヵ月)後の効果に より2.5μg への減量あるいは10μg への増 量をすることによって,その後の用量変更 を行った症例はほとんど無く,長期にわた り治療のコントロールが可能であることが 示されたので,投与後「 1 ヵ月程度」の症 状推移を確認してから用量を調整してくだ さい。また,症状変化に応じた頻繁な用量 調整を行わないよう注意してください。な お,長期投与試験において,約77%の症例 が 5 μg/日投与を継続しており,2.5μg
/日への減量例は約 8 %,10μg/日への 増量例は約15%ありました。
Q: どのくらい継続服用するのでしょうか?
IBS は症状が長期間持続もしくは悪化・
改善を繰り返しますが,長期投与試験にお いて, 3 ヵ月以上の服薬で症状が寛解し た症例の中で服薬を中止した12例のうち,
25%( 3 例)がその後も 3 ヵ月間症状改善 を維持したので,継続的に症状が改善した ら投与開始 3 ヶ月を目処に治療の継続,終 了を検討してください。
Q: 便秘,硬便がでたらどうすれば良いですか?
便秘,硬便などの症状に気づいたら,担 当の医師または薬剤師に相談するようご指 導ください。また, 3 日以上連続して排便 がない場合には一旦服用を中断し,その後 の服用方法については担当の医師または薬 剤師に相談するようご指導ください。
Q: すぐに服用を中止すべき症状(副作用)は?
以下のような症状は副作用の初期症状で ある可能性がありますので,使用をやめ,
すぐに医師の診療を受けるようにご指導く ださい。
・ 顔面蒼白, 冷汗, 立ちくらみ( ショッ ク,アナフィラキシー様症状)