本研究で確立された光環境制御法は、一次育苗や二次育苗以外でも、定植後におけるトマトの生 育制御技術として応用が可能である。また、人工環境下における植物の最適な光環境の探索には、 本研究で用いたアプローチが参考になり、短期間で研究成果が得られると考えられる。
ところで、本研究では、さまざまな条件の光環境下でトマトを育苗し、トマト苗の形態や最終 的な収量まで調査したが、そのメカニズムについては未解明な課題が残っている。例えば、共同研 究先の野菜茶業研究所の野菜ゲノム研究グループでは、本研究で行われた一次育苗の苗を用いて、 網羅的な遺伝子発現(トランスクリプトーム)や代謝産物蓄積(メタボローム)の解析を行い、ト マトの光応答メカニズムを解明した。しかしまだ、二次育苗の苗の解析を行っていない。二次育苗 のハウスでは、季節や天候により気象条件が変動するため、環境応答メカニズムがより複雑となる。 今後も、このような研究が続けられ、変動環境下での光応答メカニズムを解明する必要がある。他 方、本研究で用いた局所環境制御は特定の部位(器官)ではなく、特定の場所、すなわちハウス内 における栽培ベンチ周辺あるいは群落内のみの環境を制御することを示している。局所環境制御は 本来、必要性あるいは感応性の高い特定の器官、すなわち花芽、成長点および根などを対象として 環境を制御することに意味がある。よって、植物体における器官別の環境応答メカニズムが解明さ れれば、環境制御の省エネ化がより進むと考えられる。
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