An integral expression of Koecher-Maaß Dirichlet series and its applications
(after T. Arakawa)
室蘭工業大学工学部 桂田英典 ( Hidenori KATSURADA )
1 はじめに
この小論では,Arakawa[Ar2]によるSiegel保型形式に付随するKoecher-Maaß Dirichlet級数の積分表示を解説する.これは,Koecher-Maaß Dirichlet級数 の解析的および整数論的性質に多くの情報を与えるものである.
記号一覧
本論では通常よく使用される記号R(実数全体からなる集合)等は断りなし に使う.Kを Rの部分環とするときMmn(K)で Kに成分を持つ (m, n) 行 列全体の集合を表し,Sm(K)でm次対称行列全体の集合を表す.またS ∈ Sm(K), X ∈ Mmn(K)に対してS[X] =tXSXと書く.Erでr次の単位行列 を表す.
さてPnでSn(R)の部分集合で正定値行列全体からなるものを表し,Hn(Z)>0 (及びHn(Z)≥0)で正定値半整対称行列全体(及び半正定値半整対称行列全体) からなる集合を表そう.このときUn = GLn(Z)とおくとよく知られた方法 でUnはPn及びHn(Z)>0に作用する.dY = ∏1≤i≤j≤ndyij で Sn(R)上の通 常の測度を表し,Pn上の測度dvn(Y)をdvn(Y) = detY−(n+1)/2dYで定義す る.dvn(Y)はUnの作用で不変である.
GSpn(R) = {M ∈M2n,2n(R);あるµ(M)>0に対して Jn[M] =µ(M)Jn}, Γ(n) ={M ∈M2n,2n(Z);Jn[M] =Jn}
とおく.ただしJn =
( 0 −En En 0
)
である.GSpn(R)はよく知られた次の 方法でSiegel上半空間
Hn:={Z =X+iY ∈Sn(C);Y ∈Pn} に作用する:
(M, Z)∈GSpn(R)×Hn→M < Z >:= (AZ+B)(CZ+D)−1. ただしM =
( A B
C D
)
とおいた.
fをHnで定義された関数とするときM ∈GSpn(R)に対して f|kM(Z) = detMk/2J(M, Z)−kf(M < Z >)
と定義する.ただしJ(M, Z) = det(CZ +D)である.Nが正の整数のとき Γ(n)の部分群Γ(n)0 (N)を
Γ(n)0 (N) ={
( A B
C D
)
∈Γ(n);C≡0 mod N}
で定義する.また,ϵをNを法とするDirichlet指標とするとき,M =
( A B
C D
)
∈ Γ(n)0 (N)に対してϵ(M) =ϵ(detD)と表す.とくにN = 1のときΓ(n)0 (1) = Γ(n) である.重さk,指標ϵのΓ(n)0 (N)に関する保型形式の空間Mk(Γ(n)0 (N), ϵ)を 次のように定義する:
Mk(Γ(n)0 (N), ϵ) = {f :Hn→C; (i)f はHnで正則,(ii)f|kM(Z) =ϵ(M)f(Z) (iii)もしn= 1ならすべてのM ∈Γ(1)とα >0に対して
f|kM(z) は{z =x+iy;y≥α}上有界}.
とくに N = 1 のとき Mk(Γ(n)0 (N),1) = Mk(Γ(n)) とおく. Siegel 作用素 Φ :Mk(Γ(n)0 (N), ϵ)→Mk(Γ(n0 −1)(N), ϵ) を次のように定義する:
(Φf)(Z1) = lim
λ→∞f(
( Z1 0 0 iλ
)
) (Z1 ∈Hn−1).
Mk(Γ(n)0 (N), ϵ)の元 fが尖点形式であるとはΦ(fk|M) = 0 がすべてのM ∈ Γ(n) について成立するときをいう.Sk(Γ(n)0 (N), ϵ) によりすべての尖点形 式からなる Mk(Γ(n)0 (N), ϵ) の部分空間を表す.なお後の都合上 n = 0 の とき Mk(Γ(0)) = Sk(Γ(0)) = C とおく.f ∈ Mk(Γ(n0 −1)(N), ϵ) とωN(n) =
( O −En
N En O
)
に対してf˜=f|kω(n)N とおく.このときf˜がMk(Γ(n−1)0 (N),¯ϵ) に属することに注意する.ただし¯ϵはϵの複素共役を表すものとする.
2 主結果
fをMk(Γ(n)0 (N), ϵ)の元とするとき,fは次のFourier展開を持つ: f(Z) = ∑
T∈Hn(Z)≥0
af(T)exp(2πitr(T Z)).
このとき,Koecher-Maaß Dirichlet級数D(f, s)を次のように定義する:
D(f, s) = ∑
T
af(T) e(T) detTs,
ここで Tは n 次正定値半整対称行列のGLn(Z)-同値類の完全代表系を走り e(T)をTの直交群の位数とする.D(f, s)はsの実部Res が十分大きいとこ ろで絶対収束しsの正則関数となる.D(f, s)にGamma因子をかけてξ(f, s) を
ξ(f, s) = 2Nns/2(2π)−nsΓn(s)D(f, s), と定義する.ここで
Γn(s) =
∏n i=1
π(i−1)/2Γ(s−(i−1)/2) と定義する.ξ(f, s)の積分表示を得るために
f∗(Z) = ∑
T∈Hn(Z)>0
af(T)exp(2πitr(T Z))
とおき,RnをPnのUnの作用による基本領域とする.このとき,素朴な積分 表示として1変数保型形式のときと同じように次が成立する.
命題1 積分 ∫
Rn
f∗(iY /√
N) detYsdvn(Y) はRes > k+ (n+ 1)/2で絶対収束しξ(f, s)に等しい.
上の積分表示ではξ(f, s)が全平面にsの有理型関数として解析接続され るかどうかはわからないし,また極およびそこでの留数に関する状況もわか
らない.Koecherは以上の諸点にたいして精密な情報を与えるξ(f, s)の表示
を提出したが証明には成功しなかった.Maaßは[M]で微分作用素を用いて
ξ(f, s) が全平面にs の有理型関数として解析接続され以下に述べるような
関数等式を持つことを証明した.(本報告集での伊吹山氏の解説も参照のこ と).しかし,極及び留数に関する結果を得ることはできなかった.Arakawa
は[Ar1]でN = 1のときKoecherの表示式を証明した.さらに一般のレベル
Nのとき[Ar2]で次を示した.
定理2 k > n−1 かつ ϵ(−1) = (−1)kと仮定し,f ∈ Mk(Γ(n)0 (N), ϵ)と する.このときξ(f, s)は全s−平面に有理型関数として解析接続され次の積 分表示を持つ:
ξ(f, s) = I(f, s) +v(n)(inkaf˜(0)
s−k −af(0) s ) +1/2
n∑−1 µ=1
v(n−µ)(inkξ(Φn−µf , n/2)˜
s−k+µ/2 − ξ(Φn−µf, n/2) s−µ/2 ).
ただし
v(m) =
{ ∏m
r=2π−r/2ζ(r)Γ(r/2) m≥2
1 m= 1 ,
I(f, s) =
∫
Rn,detY≥1{detYsf∗(iY /√
N) + detYk−sinkf˜∗(iY /√
N)}dvn(Y) とおいた.
定理 2の証明の概略を述べるのが本論の目的のひとつである.[Ar2] で
はEpstein-Koecher zeta 関数についても同様の結果を得ている.すなわち,
Q∈Pmに対してEpstein-Koecher zeta関数Dn(Q;s)を Dn(Q;s) =∑
G
det(Q[G])−s
で定義する.ここで,GはrankG=nであるZに成分をもつ(m, n)行列の 右-Un同値類を走る.このとき,
ξn(Q;s) = 2π−nsΓn(s)Dn(Q;s) とおくと,次が成立する.
定理2’ m >2n−2とする.このときξn(Q, s)は全s−平面に有理型関数 として解析接続され次の積分表示を持つ:
ξn(Q, s) =In(Q, s) +v(n)((detQ)−n/2 s−m/2 − 1
s) +1/2
n∑−1 µ=1
v(n−µ)((detQ)−n/2ξµ(Q−1, n/2)
s−(m−µ)/2 − ξµ(Q, n/2) s−µ/2 ).
ただし I(f, s)はある整関数.
定理2’に関しては本論ではこれ以上言及しない.興味のある方は直接原 論分を参照されたい. さて,定理2より次が容易に従う.
系
ξ(f, k−s) =i−nkξ(f, s).
定理2においてfが尖点形式ならば ξ(f, s) =
∫
Rn,detY≥1{detYsf(iY /√
N) + detYk−sinkf˜(iY /√
N)}dvn(Y) となりこれは容易に導くことができる.定理2 のポイントはfが尖点形式 でなくとも成立する点にある.さて,定理 2 を Klingen’s Eisenstein 級数 の Koecher-Maaß Dirichlet級数に適用しよう.N = 1 のときf ∈ Sk(Γ(r)) (0≤r≤n)に対してfに付随するKlingen’s Eisenstein級数[f]nr(Z)を
[f]nr(Z) = ∑
M∈Cn,r\Γ(n)
f(M < Z >
[ Eµ O
]
)J(M, Z)−k
と定義する.ただし,Cn,r ={
( ∗ ∗ On−r,n+r ∗
)
∈Γ(n)} とする.[1]n0(Z)は重 さkのSiegel Eisenstein級数 En,k(Z)に他ならない.このとき,
Φi([f]nr) =
{ [f]nr−i 0≤i≤n−r−1 0 i≥n−r
に注意すると次が容易に導かれる.
定理3 k, n, r をk ≡0 mod 2, k > n+r+ 1, n≥ 1,0≤ r≤ nを満たす 整数とする. fをSk(Γ(r))の元とする.このときξ([f]nr, s)は全s−平面に有理 型関数として解析接続され次の積分表示を持つ:
ξ(f, s) =I([f]nr, s) +v(n)af(0)( ink s−k − 1
s) +1/2
n∑−1 µ=r
v(n−µ)(inkξ([f]µr, n/2)
s−k+µ/2 −ξ([f]µr, n/2) s−µ/2 ).
注意 定理3は定理2に先立ち,[Ar1]で公刊されていた.しかし,(筆者 の講演中の佐藤氏の指摘にもあるように)Arakawaは定理2の証明を[Ar1]の 公刊前に得ていたという.レベルが1のときのSiegel保型形式のなす次数環 の構造定理を使うと逆に定理3からk >2n, k ≡0 mod 2の仮定のもとで定 理2が得られる.
さて,B¨ochererの結果を述べるために,整数mでm ≡ 1 mod 4または
≡ 0 mod 4を満たすものに対しψmで判別式がm である2次体の指標を表
す.ただしmが平方数のときψm = 1と約束する.
F− ={D0 ∈Z+;−D0 はある2次体の基本判別式}
とおく.正の整数 Dで D ≡ 3,0 mod 4 を満たすものは D = D0m2, D0 ∈ F−, m >0の形に書けるがこのとき
L−,D(s) =L(s, ψ−D0)∑
d|m
µ(d)ψ−D0(d)d−s ∑
c|md−1
c1−2s
とおこう.ただし,L(s, ψ−D0)はψ−D0に付随するDirichlet L-関数でµはM¨obius 関数である.L−,D(s)を
L−,D(s) =
∑∞ m=1
ϵ−D(m)m−s,
書き,重さkのΓ(1)に属する尖点形式 f(z) =
∑∞ m=1
a(m)exp(2πimz)
に対してλ とsに関する2変数Dirichlet級数L−(f, λ, s)を L−(f, λ, s) =∑
D
∑∞ m=1
a(m)ϵ−D(m)m−λD−s,
と定義する.ここでDはD ≡3,0 mod 4 を満たすすべての正の整数を走る ものとする.この型の Dirichlet級数はもともとは特別な場合にKohnenと Zagier [K-Z]によって導入されBump,Hoffstein達が盛んに研究している重 要で面白い級数である.(本報告集の渡部氏の解説も参照されたし). さて,
さらにfは正規化されたHecke作用素の同時固有関数であるとし,standard zeta function ζ+(f, s)を次のように定義する.
ζ+(f, s) = ∏
p
(1−(a(p2)−pk−1)p1−k−s+p−2s)−1.
定理4 ([B])
D([f]21, s) = 22sγ2,k
D(f;k−1)
ζ+(f;k−1)ζ(2s−1)L−(f, k−1, s−k+ 3/2), ここで
γ2,k = (−1)k/2(2π)k−1(k−1)!
(2k−2)! . 上の定理と定理3を組み合わせて次を得る.
系 L−(f;k −1, s)は全s−平面に有理型関数として解析接続されs = 1 のみに極を持ちその留数は
1/2 ζ(k−1)
ζ(2k−2)ζ+(f, k−1) となる.さらに
L−(f, k−1, s)
=π−2s−2k+3ζ(2s+ 2k−4)Γ(s+k−3/2)Γ(s+k−2)L−(f;k−1, s) とおくとL−(f, k−1, s)は次の関数等式を満たす:
L−(f, k−1,3−s−k) =L−(f, k−1, s).
注意 同様な結果がfの一般の偶数次元nへのKlingen-Eisenstein lift[f]1n について成立する([I-K]参照). いずれにしても,1変数保型形式にとって重 要と思われるDirichlet級数が現れることに注意されたい.この種のDirichlet 級数の有理型性および関数等式はBump,Hoffstein氏達によって最近研究され ているようだが(B¨ocherer, Kohnen 氏の指摘), いったんKlingen-Eisenstein
級数のKoecher-Maaß Dirichlet級数を経由すると比較的見通しの良い方法で
それのある部分が証明できる.またその特殊値についても興味深い結果が定 理2を用いて得ることができる.これが多変数保型形式をやる(というか,話 を1変数に限らない)意義のひとつと私は考える.
3 積分表示の証明
本節および次節で定理2の証明の概略を述べる.正の整数h1, ..., hrで h1+ ...+hr =nを満たすものに対して
Uh1,...,hr ={
V1 ∗ ∗ ∗ 0 V2 ∗ ∗ 0 0 . .. ∗
0 0 0 Vr
∈Un;Vi ∈Uhi (i= 1, ..., r)}
とおく.f ∈ Mk(Γ(n)0 (N), ϵ)に対して Pn上の関数Pn(f, Y)を帰納的かつ形 式的に次のように定義する:
P1(f, Y) =f∗(iY)−c−1Y−kaf˜(0).
n >1に対して
Pn(f, Y)
=f∗(iY)−c−ndetY−k{af˜(0)+
n∑−1 µ=1
∑
U∈Un/Un−µ,µ
Pµ(Φn−µf ,˜ (N Y)[U]−1
[ O Eµ
]
}. (∗)
ただしc =Nk/2i−kとおいた.形式的というのは(∗)の右辺が一般に無限和 であるためこのままでは収束しているかどうかわからないからである.
定理5 k > n−1, ϵ(−1) = (−1)kとし,f ∈Mk(Γ(n)0 (N), ϵ)とする.この とき(*)の右辺は絶対収束し,関数Pn(f, Y)が(*)によって帰納的に定義さ れる. さらに次が成り立つ.
Pn( ˜f ,(N Y)−1) = cndetYkPn(f, Y), Pn(f, Y[U]) = Pn(f, Y) (U ∈Un).
この証明が一番難しいところである.特に収束性が難しい.この略証を 次の節で述べる.さて,
L(Pn) = {u; uはPn上定義されたCに値をもつ関数}
とおく.またRµ (µ= 1, ..., n−1)をMk(Γµ0(N), ϵ)からL(Pµ)への写像とし その像をRµ(h, W) (h∈Mk(Γµ0(N), ϵ), W ∈Pµ)で表す.
補題6 f ∈Mk(Γµ0(N), ϵ)とする.無限和
∑
U∈Un/Un−µ,µ
Rµ(Φn−µf,√
N−1Y[U]−1
[ O Eµ
]
はPn上絶対収束すると仮定する.さらにすべてのµ= 1, ..., n−1に対して
積分 ∫
Rµ
detWsRµ(Φn−µf, W/√
N)dvµ(W)
が(µ−1)/2 < Res < k −(µ−1)/2で絶対収束ししかもそれがξ(Φn−µf, s) に等しいとする.このとき次が成立する.
(1) Res > µ/2で
∫
Rn,detY≥1
detY−s ∑
U∈Un/Un−µ,µ
Rµ(Φn−µf,√
N−1Y[U]−1
[ O Eµ
]
dvn(Y)
= 1/2v(n−µ) 1
s−µ/2ξ(Φn−µf, n/2).
が成り立つ.さらに左辺はRes > µ/2で絶対収束である.
(2) Res >−µ/2で
∫
Rn,detY≥1
detY−s ∑
U∈Un/Uµ,n−µ
Rµ(Φn−µf ,˜ √
N−1Y[U]
[ Eµ O
]
dvn(Y)
= 1/2v(n−µ) 1
s+µ/2ξ(Φn−µf , n/2).˜ が成り立つ.さらに左辺はRes >−µ/2で絶対収束である.
証明 (1)を示すために問題の積分をIとおこう.σ = Resとおき次の 積分を考えよう.
I˜= ∑
U∈Un/Un−µ,µ
∫
Rn,detY≥1
detY−ρ|Rµ(Φn−µf,√
N−1Y[U]−1
[ O Eµ
]
|dvn(Y).
明らかに I˜=
∫
∪U∈Un/Un−µ,µRn[U],detY≥1
detY−ρ|Rµ(Φn−µf,√
N−1Y−1
[ O Eµ
]
|dvn(Y) である.ただしRn[U] ={Y[U];Y ∈Rn}とおく.ここで∪U∈Un/Un−µ,µRn[U] が Pnの Un−µ,µの作用に関する基本領域であり,上の積分の被積分関数が Un−µ,µの作用で不変であることに注意すると,上の積分において∪U∈Un/Un−µ,µRn[U] を他の基本領域に取り換えてもよいことがわかる.そこでこれを
Fn−µ,µ={
( V 0
0 W
) [ En−µ X
0 Eµ
]
;V ∈Rn−µ, W ∈Rµ, X ∈Tn−µ,µ} に取り換えよう.ただし
Tn−µ,µ={X = (xij)∈Mn−µ,µ(R); 0 ≤x11 ≤1/2,|xij| ≤1/2 ((i, j)̸= (1,1))} である.(微妙な定義に注意.) よって
I˜=
∫
Fn−µ,µ,detVdetW≥1
(detV detW)−σ|Rµ(Φn−µf, W−1)|
×detVµ/2(detW)(−n+µ)/2dn−µV dµW dX
= 1/2
∫
Rn−µ×Rµ,detVdetW≥1
(detV)−σ+µ/2detW)−σ|Rµ(Φn−µf, W−1)|
×detVµ/2(detW)(−n+µ)/2dn−µV dµW
= v(n−µ) 2(−σ+µ/2)
∫
Rµ
(detW)−n/2|Rµ(Φn−µf, W−1)|dµW
= v(n−µ) 2(−σ+µ/2)
∫
Rµ
(detW)n/2|Rµ(Φn−µf, W)|dµW.
仮定よりI˜は有限となる.よってLebesgueの収束定理と Fubiniの定理を用 いると上と同様な計算で
I = v(n−µ) 2(−s+µ/2)
∫
Rµ
(detW)n/2Rµ(Φn−µf, W)dµW
が示される.よって再び仮定より後半の等式が示された.同様にして(2)が 示される.
さて定理2は次の特別な場合である.
定理7 k > n−1, ϵ(−1) = (−1)kと仮定し f ∈Mk(Γ(n)0 (N), ϵ)とする.
(1) ξ(f, s)全s−平面に有理型関数として解析接続され次の積分表示を持つ:
ξ(f, s) = I(f, s) +v(n)(inkaf˜(0)
s−k −af(0) s ) +1/2
n∑−1 µ=1
v(n−µ)(inkξ(Φn−µf , n/2)˜
s−k+µ/2 − ξ(Φn−µf, n/2) s−µ/2 ).
(2) 積分 ∫
Rn
detYsPn(f, Y /√
N)dvn(Y)
は(n−1)/2<Res < k−(n−1)/2で絶対収束しξ(f, s)に一致する.
証明 2つの主張はn= 1のとき明らかに成り立つ.n >1とし,これら の主張が1≤µ < nに対して成立すると仮定する.(1)を示すために
η(f, s) =
∫
Rn,detY≥1{detY−sf∗(iY−1/√
N)−inkdetYk−sf˜∗(iY /√
N)}dvn(Y)
とおこう.このとき次が成立する.
ξ(f, s) =I(f, s) +η(f, s).
定義から
Pn(f, Y−1/√
N) = f∗(iY−1/√
N)−N−nk/2inkdet(Y−1/√ N)−k
×{af˜(0) +
n∑−1 µ=1
∑
U∈Un/Uµ,n−µ
Pµ(Φn−µf ,˜√
N−1Y[U]
[ Eµ O
]
)}, であり,さらにf˜˜= (−1)nkfに注意すると
Pn( ˜f , Y /√
N) = ˜f∗(iY /√
N)−(−1)nkN−nk/2inkdet(Y /√ N)−k
×{af(0) +
n∑−1 µ=1
∑
U∈Un/Un−µ,µ
Pµ(Φn−µf,√
N−1Y[U]−1
[ O Eµ
]
}
となる.定理5より Pn(f, Y−1/√
N) =inkdetYkPn( ˜f , Y /√
N) (∗∗) が成り立つ.よって次が成り立つ.
η(f, s) =
∫
Rn,detY≥1
detYk−sink
×{af˜(0) +
n∑−1 µ=1
∑
U∈Un/Uµ,n−µ
Pµ(Φn−µf ,˜ √
N−1Y[U]
[ Eµ
O
]
)}dvn(Y)
−∫
Rn,detY≥1
detY−s
×{af(0) +
n∑−1 µ=1
∑
U∈Un/Un−µ,µ
Pµ(Φn−µf ,˜√
N−1Y[U]−1
[ O Eµ
]
}dvn(Y).
よって帰納法の仮定と補題5により主張(1)が成立する.次に(2)を証明す る. まず ∫
Rn
detYsPn(f, Y /√
N)dvn(Y)
=
∫
Rn,detY≥1
detYsPn(f, Y /√
N)dvn(Y)+
∫
Rn,detY≥1
detY−sPn(, Y−1/√
N)dvn(Y) であるから再び(∗∗)を用いると
∫
Rn
detYsPn(f, Y /√
N)dvn(Y)
=
∫
Rn,detY≥1detYsPn(f, Y /√
N)dvn(Y)+
∫
Rn,detY≥1inkdetYk−sPn( ˜f , Y /√
N)dvn(Y) となる.よって
Z1(f, s) =
∫
Rn,detY≥1
[detYsf∗(iY)
−c−ndetY−k+s{af˜(0)+
n∑−1 µ=1
∑
U∈Un/Uµ−µ,µ
Pµ(Φn−µf ,˜ √
N−1Y[U]−1
[ Eµ O
]
)}]dvn(Y),
Z2(f, s) =
∫
Rn,detY≥1
[detYk−sf˜(iY /√ N)
−c−ndetY−s{af(0)+
n∑−1 µ=1
∑
U∈Un/Un−µ,µ
Pµ(Φn−µf ,˜√
N−1Y[U]−1
[ O Eµ
]
}]dvn(Y) とおくと
∫
Rn
detYsPn(f, Y /√
N)dvn(Y) =Z1(f, s) +inkZ2(f, s)
となる.再び帰納法の仮定と補題6よりZ1(f, s)はRes < k−(n−1)/2で 絶対収束し Z2(f, s)はRes >(n−1)/2で絶対収束する.それ故,積分
∫
Rn
detYsPn(f, Y /√
N)dvn(Y)
は(n−1)/2<Res < k−(n−1)/2で絶対収束する.さらに(1)でやったと 同じような計算をすることによりこれがξ(f, s)に一致することがわかる.以 上により帰納法が完了した.
4 定理 5 の証明の概略
f ∈Mk(Γ(n)0 (N, ϵ)とµ= 0,1, ..., nに対して
fµ(Z) = ∑
T∈Hn(Z)≥0,rankT=µ
af(T)exp(2πitr(T Z)) とおく.
fµ(iY) = ∑
U∈Un/Un,n−µ
(Φn−µf)∗(iY[U]
[ Eµ 0
]
)
であることに注意する (たとえば([Ko])参照). また,Y ∈PnとU ∈Unとr 個の正の整数の組h = (h1, ..., hr)でh1+...+hr =nを満たすものに対して次 数がそれぞれh1, ...., hr−1, hrである行列W1h(U, Y), ..., Wrh−1(U, Y), Wrh(U, Y) を次のように定義する:
Y[U] =
W1h(U, Y) 0 0
0 . .. 0
0 0 Wrh(U, Y)
[
E1 ∗ ∗ 0 . .. ∗ 0 0 Er
].
このとき,行列式detW1h(U, Y), ...,detWrh−1(U, Y),detWrh(U, Y)はUの剰余
類U Uh1,...,hrのみに依存し,上の行列の分解のしかたよらない.さて,定理5
の証明のためにPn( ˜f ,(N Y)−1)を次のように形式的に書き換える.
Pn( ˜f ,(N Y)−1) = ˜f∗(i(N Y)−1)−cndetYk
n∑−1 µ=0
fµ(iY)
+cndetYk
n∑−1 µ=1
∑
U∈Un/Uµ,n−µ
c−µdet((Y[U])
[ Eµ 0
]
)−k[Φµ(Φn−µf|ωN(µ))
+
µ∑−1 ν=1
∑
V∈Uµ/Uµ−ν,ν
Pν(Φµ−ν(Φn−µf|ωN(µ)),((N(Y[U])
[ Eµ
0
]
[V])−1
[ 0 Eν
]
].
さて,h1, h3 >0, h2 ≥0, h1+h2+h3 =nを満たす整数の組h= (h1, h2, h3) に対して
Mn(h;f, Y) = (Nk/c)h1+h2 ∑
U∈Un/Uh1,h2,h3
∏2 j=1
det(Wjh(U;N Y))−k
×Ph2(Φh1(Φh3f|ωN(h1+h2)), W2(h1,h2,h3)(U; (N Y)−1) とおく.ただし
P0(Φh1(Φh3f|ω(hN1)), W2(h1,0,h3)(U; (N Y)−1) = Φh1(Φh3f|ωN(h1)) とおく.さらに,
Mn(f, Y) = ∑
h1,h2,h3>0,h1+h2+h3=n
Mn(h1, h2, h3;f, Y), En(f, Y) = ∑
h1,h3>0,h1+h3=n
Mn(h1,0, h3;f, Y) とおく.ここで,UがUn/Uµ,n−µを走りVがUµ/Uµ−ν,νを走るとき,U
( V 0 0 En−µ
)
はUn/Uµ−ν,ν,n−µを走ることに注意すると上の式は次のように表される.
Pn( ˜f ,(N Y)−1) = ˜f∗(i(N Y)−1)−cn(detY)k
n∑−1 µ=0
fµ(iY) +cn(detY)k{En(f, Y) +Mn(f, Y)}.
同様にして,
Pn(f, Y) = f∗(i(N Y)−1)−c−n(detY)−k
n∑−1 µ=0
f˜µ(iY) +c−n(detY)−k{En(f, Y) +Mn(f, Y)}
となる.一方
f(iY) =
n−1∑
µ=0
fµ(iY) +f∗(iY), f˜(i(N Y)−1) =
n∑−1 µ=0
f˜µ(i(N Y)−1) + ˜f∗(i(N Y)−1) とf(Z)の保型性より
f˜∗(i(N Y)−1)−cn(detY)k
n∑−1 µ=0
fµ(iY)