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Koecher Maass Dirichlet series corresponding to Jacobi forms

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(1)

Koecher Maass Dirichlet series corresponding to Jacobi forms

荒川 恒男(立教大学理学部)

種々の保型形式から得られるKoecher Maass 級数とそれを軸にした保形形式の研究が、

今回の研究集会のテーマである。この稿では、Siegel 保型形式の親戚であるJacobi 形式

と半整数 Siegel保型形式について、Koecher Maass級数を定義し、解析接続、関数等式等

の性質の解説をする。Jacobi 形式の興味深い点は、半整数 Siegel 保型形式と結びつくこ とにある(と思う)ので、その点に重点をおきたい。特に、index 1の Jacobi形式の空間 は、Kohnenと伊吹山によって導入された plus 空間と呼ばれる半整数 Siegel 保型形式の 空間と同型になる。この同型を用いて plus 空間の保型形式の面白さを、Koecher Maass 級数との関連で、多少なりとも浮かび上がらせてみたい。

内容

1 ヤコビー形式

1.1 ヤコビー形式の定義 1.2 theta 級数による表示 1.3 Klingen Eisenstein 級数 2 Jacobi 形式の Koecher Maass級数

2.1 定義 2.2 関数等式 2.3 極と留数

3 plus 空間の保型形式と Koecher Maass 級数 3.1 plus 空間

3.2 Cohen Eisenstein 級数

(2)

3.3 plus 空間の保型形式の特徴づけ 3.4 Koecher Maass 級数

3.5 逆定理

3.6 量指標付き Koecher Maass 級数の極と留数 記号 以下、次の記号を断りなしに用いる。

行列 X と対称行列 Y に対し、行列の型が合うとき、Y[X] =tXY X と書く。

実対称行列 Y に対し、Y が半正定値(resp. 正定値)であるとき Y 0 (resp.

Y >0)と記す。

Symn(Z) (resp. Symn(Z))は n 次半整数(resp. 整数)係数の対称行列の成す集合 とする。さらに、Symn(Z)+ は次正定値対称行列の成すの部分集合を表す。

有限集合 A に対し、|A|A の元の個数を表す。

1 ヤコビー形式

1.1 ヤコビー形式の定義

Spn(R) を次数nの実symplectic群とする。lを正の整数とし、ヤコビー群 GJn,l(R) を、次の形の元からなる Spn+l(R) の部分群とする:

(1.1)





1l ρ µ

1n tµ 0 1l

1n







 1l λ

0 1n

1l 0

tλ 1n







 1l

a b

1l

c d





( M =

( a b c d

)

∈Spn(R), λ, µ∈Ml,n(R), ρ∈Syml(R) )

.

GJn,l(R) の上記(1.1)の形の元を ((λ, µ), ρ)M と記す。さらに ((λ, µ), ρ)12n= ((λ, µ), ρ) の形の元から成る GJn,l(R) の部分群を Hn,l(R) と記す。この部分群は Heisenberg 群と 呼ばれる。

実 symplectic Spn(R) 群はn 次上半平面 Hn に自然に作用するが、その作用を

M⟨τ⟩= ( +b)( +d)1

( M =

( a b c d

)

∈Spn(R) )

(3)

と記し、

J(M, τ) = +d とおく。ヤコビー群 GJn,l(R) の作用を考えよう。

Dn,l =Hn×Ml,n(C)

とおくと、 g = ((λ, µ), ρ))M ∈GJn,l(R) (M ∈Spn(R)) と (τ, z)∈ Dn,l に対し、. g(τ, z) := (M⟨τ⟩, zJ(M, τ)1+λM⟨τ⟩+µ)

で、GJn,l(R) の Dn,l への作用が定義される。次にこの作用に関する標準的保型因子を定 義したい。Hn+l 上の関数 F(Z)と M ∈Spn+l(R) に対し

(F|kM)(Z) = detJ(M, τ)kF(M⟨Z⟩).

とおくと、簡単な計算で

(F|kM1M2)(Z) = (F|kM1|kM2)(Z) (M1, M2 ∈Spn+l(R))

となる。今、次数lの正定値半整数対称行列Sを取り固定する(S ∈Syml(Z)+)。Z Hn+l を次の形の小行列

Z = (

ζ z

tz τ )

(τ Hn, ζ Hl, z ∈Ml,n(C)) に分解し、関数 F(Z) を、Dn,l 上の関数 ϕ(τ, z) から

F(Z) =ϕ(τ, z)e(tr())

とおいて定義すると、g = ((λ, µ), ρ))M ∈GJn,l(R)⊂Spn+l(R) (g は (1.1) の形) に対し、

(1.2) (F|kg) (Z) = Jk,S(g,(τ, z))1ϕ(g(τ, z))e(tr()) の形に書け、Jk,S(g,(τ, z)) は

Jk,S(g,(τ, z)) := det(J(M, τ))k× e

(

tr()tr (

S[λ]M⟨τ⟩+ 2tλSzJ(M, τ)1−S[z]J(M, τ)1c ))

で与えられる。Jk,S(g,(τ, z)) は Jacobi 群 GJn,l(R) の標準的保型因子で、(1.2) により Jk,S(g1g2,(τ, z)) =Jk,S(g1, g2(τ, z))Jk,S(g2,(τ, z)) (g1, g2 ∈GJn,l(R))

を満たす。

(4)

Γn を Siegel モジュラー群 Spn(Z) とし、ヤコビー群 GJn,l(R) の自然な離散部分群 ΓJn

ΓJn =GJn,l(Z) := {((λ, µ), ρ)M |M Γn, λ, µ∈Ml,n(Z), ρ∈Syml(Z)}. とする。Jacobi形式の定義を与えよう。

定義(Jacobi 形式) Dn,l 上の正則関数 ϕ(τ, z) が、重さ(weight)k, 次数(degree)n

の Jacobi形式とは、次の 2 条件を満たすときをいう.

(i) ϕ(γ(τ, z)) = Jk,S(γ,(τ, z))ϕ(τ, z) for all γ ΓJn. (ii) (Fourier 展開)

(1.3) ϕ(τ, z) = ∑

NSymn(Z), rL, T0

c(T)e(tr(N τ+trz)),

ここで、T = (

N tr/2 r/2 S

)

であり、N, r はそれぞれ、Symn(Z) と L =Ml,n(Z) の元 を Te:=N 14tS1r≥0 の条件下でわたるとする(T 0 と Te0は同値な条件)。

n > 1のときは、所謂 Koecher 原理により、(ii) の条件は不要である。

Jk,Sn) で、重さ k, 次数n の Jacobi 形式の成す C-線形空間を表す。尖点 (cusp) 形 式の成す Jk,Sn) の部分空間 Jk,Scuspn) は、

Jk,Scuspn) ={

ϕ∈Jk,Sn) CS,k(τ, z)1/2(τ, z)| は Hn 上有界}

で定義される。ここで、CS,k(τ, z) は、g(i1n,0) = (τ, z) なるように g GJn,l(R) を選 んで、

CS,k(τ, z) = |Jk,S(g,(i1n,0))|2 = (det Imτ)kexp(

4πtr(S[Imz](Imτ)1)) で与えられる。CS,k(τ, z)1/2(τ, z)| は Γn の元の作用で不変である。

注意) index S に対する極大条件 (1.8)(後述)の下では、ϕ∈Jk,Sn) が cusp 形式で あるための必要十分条件は、ϕ が Fourier 展開

ϕ(τ, z) = ∑

NSymn(Z), rL, T >0

c(T)e(tr(N τ +trz)) をもつことである([Ar4], Proposition 4.1)。

(5)

Jacobi形式の文献としては、degree 1 (n= 1)の場合を専一に扱っているEichler-Zagier

の [E-Z] がある。この本には、おもしろいことが一杯詰まっている。多変数の場合は、

Ziegler [Zi] に Siegel 保型形式との類似で基本的なことは、大方書かれている。

この節では、以下、k は偶数と仮定する。Jacobi形式の Fourier係数c(T) については、

次の性質がある。

Proposition 1.1 ϕ∈Jk,Sn) とし、c(T) を ϕFourier 係数とする。

(i) 任意の U ∈GLn(Z) と λ∈L=Ml,n(Z) に対し c

(

t

( U 0 λ 1l

) T

( U 0

λ 1l ))

=c(T).

(ii) ϕ のみに依存する正定数 C1 が存在し、

|c(T)| ≤C1det(Te)kl/2 for anyT > 0, ここで Te=N 14trS1r とおいた。

証明) (i) γ = ((λ,0),0) (

U 0

0 tU1 )

(λ∈L, U ∈GLn(Z)) をとり、

ϕ(γ(τ, z)) =Jk,S(γ,(τ, z))ϕ(τ, z) において、γ(τ, z) = (U τtU, ztU +λU τtU), および

Jk,S(γ,(τ, z)) = (detU)ke

(tr(S[λ]U τtU + 2tλSztU) )

に注意して、両辺の Fourier展開を比較すれば得られる。

(ii) は Maassの [Ma, p.205, Lemma] と同様にして示される。

1.2 theta 級数による表示

L:=Ml,n(Z) とおく。

S ∈Syml(Z)+, τ Hn に対して Θ(n)S,τ を正則関数 θ :Ml,n(C)−→C で θ(z+λτ +µ) = e

(tr(S[λ]τ)2tr(tλSz) )

θ(z) ∀λ, µ∈L

を満たすものの成す空間とする。Θ(n)S,τ は C 上の次元が d= det(2S)n の有限次元ベク トル空間になることが知られている。

(6)

r∈L=Ml,n(Z) に対して theta 級数 θr(τ, z) は θr(τ, z) = ∑

λL(n)

e (

tr (

S[λ+ (2S)1r]τ+ 2t(λ+ (2S)1r)Sz ))

, ((τ, z)∈ Dn,l).

で定義される。θr(τ, z)は r∈L/(2S)L にのみ依存し、zの関数として Θ(n)S,τ の元である。容 易に示せるように、r(τ, z)}rL/(2S)LはC上線形独立であり、|L/(2S)L|= (det 2S)n=d だから、

(1.4) r(τ, z)}rL/(2S)L は C-ベクトル空間 Θ(n)S,τ の基底を成す.

θr(τ, z) (r ∈L/(2S)L) を L/(2S)L を添数集合として並べて列ベクトルにする: Θ(τ, z) :=

(

θµ(τ, z) )

µL/(2S)L

.

領域 {W Mn(C)| Re(W) >0} 上の正則関数 det(W)1/2WW =Y > 0(Y は正定値)のときは、通常の det(Y)1/2 > 0 に一致する分枝とする。次の theta 変換公 式が基本的である。

Proposition 1.2 (Theta 変換公式) Γn の元M を作用させると Θ(M(τ, z)) =J0,S(M,(τ, z))jS(M, τ)Θ(τ, z).

ただし、jS(M, τ) = (

jS(M, τ)λ µ )

λ, µL/(2S)L

Mτ にのみ依存する d×d 行列で

tjS(M, τ)jS(M, τ) =|detJ(M, τ)|l·1d をみたす。d= det(2S)n である。行列成分で書くと

θλ(M(τ, z)) = JS,0(M,(τ, z))×

µL/(2S)L

jS(M, τ)λ µθµ(τ, z).

ただし {jS(M, τ)λ µ}

λL/(2S)L

jS(M, τ)λ µjS(M, τ)λ µ =δµ,µ|detJ(M, τ)|l

を満たす。δµ,µKronecker 記号をあらわす: δµ,µ = {

1 · · · µ≡µ mod (2S)L 0 · · · µ̸≡µ mod (2S)L .

(7)

証明) Γn の生成元について証明すればよい。M Γn が (

U 0

0 tU1 )

(U ∈GLn(Z)),

(

1n X 0 1n

)

(X ∈Symn(Z))

のときは、容易である。M =Jn= (

0 1n 1n 0

)

のときに調べればよい。Poisson和公 式により

θr(−τ1, zτ1) = det(2S)n/2det (τ

i )l/2

e(tr(τ1S[z]))×

µ∈L/(2S)L

e (1

2tr(trS1µ) )

θµ(τ, z)

となり、これより

(1.5) jS(Jn, τ)λ µ = det(2S)n/2det (τ

i )l/2

e (1

2tr(tλS1µ) )

.

この jS(Jn, τ)λ µ が命題の条件を満たすことは容易に確かめられる。 証明終。

Jacobi 形式ϕ∈Jk,Sn) は z の関数として Θ(n)S,τ の元になるので、(1.4) より r(τ, z)}rL/(2S)L の線形結合として表示される:

(1.6) ϕ(τ, z) = ∑

r∈L/(2S)L

hr(τ)θr(τ, z),

ここで、hr(τ) は Fourier展開

hr(τ) = ∑

NSymn(Z), N14trS1r0

c(T)e (

tr(T τe ) )

,

をもつ。c(T) (

T = (

N tr/2 r/2 S

)) は ϕ の Fourier係数であり、Te=N 14trS1r

おいた。そこで、

(1.7) h(τ) = ∑

rL/(2S)L

hr(τ)

とおくと、次の変換公式が成り立つ。

(8)

Proposition 1.3 h(τ), h0(τ) は (1.6)、(1,7) の通りとする。このとき h(−τ1) =det

(τ i

)kl/2

h0(τ), ただし c= (1)nk/2det(2S)n/2.

証明) theta級数 θr(τ, z) のtheta 変換公式(Proposition 1.2)と(1.6) 及びϕ の保型性

から ∑

rL/(2S)L

qL/(2S)L

hq(Jn⟨τ⟩)jS(Jn, τ)q r = ∑

rL/(2S)L

detJ(Jn, τ)khr(τ) となる。(1.5)を使うと

rL/(2S)L

jS(Jn, τ)q r = det(2S)n/2det (τ

i )l/2

·δq,0,

となるので、等式

h0(−τ1) = (1)nk/2det(2S)n/2det (τ

i )kl/2

h(τ)

が従う。τ−τ1 に変えれば, 求めたい変換公式が得られる。 証終)

1.3 Klingen Eisenstein 級数

Siegel保型形式の場合にはKlingen Eisenstein 級数は保型形式を構成する強力な手段で あった。Jacobi形式の場合も Klingen Eisenstein級数は構成されている([Zi])。

まづ、Jacobi 形式の空間に作用する Siegel 作用素 Φ を定義しよう。ϕ Jk,Sn) と (τ, z)∈ Dn1,l に対し、

ϕ)(τ, z) = lim

t+ ϕ ((

τ 0 0 it

)

,(z,0) )

とおく。この極限は存在し、Φϕ∈Jk,Sn1) となる([Zi], [Ar4])。ϕ の展開が (1.3) で 与えられるときには、

ϕ)(τ, z) = ∑

NSymn1(Z), rMl,n1(Z) N14S1[r]0

c ((

N 0 0 0

) ,(r,0)

)

e(tr(N τ +trz)).

となる(同上)。

Jacobi 形式としての Klingen Eisenstein 級数を定義しょう。関数 ϕ : Dn,l −→ C と g ∈GJn,l(R) に対し、

(ϕ

k,S g)(τ, z) =Jk,S(g,(τ, z))1ϕ(g(τ, z))

(9)

とおく。r を 0≤r≤n なる整数とする。Γn の部分群 Γn,r を Γn,r =

{(

a b c d

)

Γn c=

( c1 0

0 0 )

, d= (

d1 d2 0 d4

)

, c1, d1 ∈Mr(Z) }

とし、ΓJn,r

(((λ1,0), µ), ρ)M, (λ1 ∈Ml,r(Z), µ∈Ml,n(Z), ρ∈Syml(Z), M Γn,r) の形の元から成る Jacobi 群 ΓJn の部分群とする。(τ, z)∈ Dn,l に対し、

(τ, z) = (τ, z) = (

τ [(

1r 0

)]

, z (

1r 0

))

∈ Dr,l.

とおく。さらに、r 次のJacobi cusp 形式 ϕ∈Jk,Scuspr) に対し ϕ(τ, z) :=e ϕ(τ, z)

とおく。ϕe は Dn,l 上の関数である。r= 0 のときは、ϕ は定数関数と理解する。

Klingen Eisenstein 級数 は次式で定義される Dn,l 上の関数である: En,rk,S(ϕ,(τ, z)) = ∑

γΓJn,r\ΓJn

( ϕe

k,S

γ )

(τ, z).

定義が合理的なことは、任意の σ ΓJn,r に対し ϕe

k,S

σ =ϕe

であることより、直ちに確かめられる。右辺の無限級数が k > n+r+l+ 1 の条件下で 絶対かつ広義一様収束することは、[Zi], Theorem 2.5 で示されている。従ってk につい ての同じ条件下で、En,rk,S(ϕ,(τ, z)) は Jk,Sn) の元、すなわち、重さ k、index Sn 次 Jacobi形式である。特に、r= 0 で ϕ= 1 のときは、

Ek,S(n)(τ, z) := En,0k,S(1,(τ, z))

と書き、次数n、重さk、index S のJacobi Eisenstein級数と呼ばれる。k > n+r+l+ 1 のとき

Jk,S(r)n) ={En,rk,S(ϕ,(τ, z))|ϕ∈Jk,Scuspr)} (0≤r ≤n)

とおくと、Jk,S(r)n) は Jk,Sn) の C-部分空間である。特に、r = 0 とr =n の場合は、

それぞれ

Jk,S(0)n) =CEk,S(n)(τ, z), Jk,S(n)n) = Jk,Scuspn)

(10)

となる。Jk,Sn) のKlingen Eisenstein 級数の空間への分解定理を得るために、index S に関して次の仮定を設ける:

(1.8) x∈(2S)1Ml,1(Z) が, S[x]Z を満たせば、必ず x∈Ml,1(Z) となる.

この条件下で、ϕ ∈Jk,Sn) が cusp 形式であるための必要条件は Φϕ = 0 となること に注意する([Ar4], Proposition 4.1)。

次の分解が成立する([Ar4], Theorem 4.2)。

Proposition 1.4 S∈Syml(Z)+ は条件 (1.8) を満たすとする。kk > 2n+l+ 1 なる偶数とするとき、直和分解

Jk,Sn) =

n r=0

Jk,S(r)n).

が成り立つ。

Dulinski [Du] は同様の分解定理を index S に極大条件を付けずに証明した。

2 Jacobi 形式の Koecher Maass 級数

2.1 定義

S Syml(Z) は固定し、この小節 2.1 と次の 2.2 では極大条件 (1.8) は仮定しない。

index S の Jacobi形式を扱うのに都合のよい2次形式の族を導入しよう(詳しくは[Ar3,

4] 参照)。n+l 次半整数対称行列の成す集合 Symn+l(Z)の部分集合 Symn,l, Symn,l+

Symn,l:=

{ T =

(

N tr/2 r/2 S

) N ∈Symn(Z), r∈L }

⊃Symn,l+

で定義する。ここで Symn,l+Symn,l の正定値な元からなる部分集合とする。

GLn+l(Z)の部分群 Bn,l(Z) を

Bn,l(Z) = {(

U 0 λ 1l

)U ∈GLn(Z), λ∈L }

とする。群 Bn,l(Z) は集合 Symn,lT −→ tγT γ (T Symn,l, γ Bn,l(Z)) で作用 する。

(11)

Symn,l+ の2 元 T, T がZ-同値であるとは、ある γ ∈Bn,l(Z) に対し、T =tγT γ と なるときをいう。この 2 次形式の族 Symn,l+ に対するSiegel の定理は[Ar3] で扱われて いる。

ϕ∈Jk,Sn) に対して Koecher-Maass Dirichlet 級数を定義しよう:

Dn(ϕ, s) = ∑

TSymn,l+/Z

c(T)

|Aut(T)|det(Te)s

和は、T が上記の意味で Symn,l+ の Z-同値類全体をわたることを意味し、Aut(T)は T の次で与えられる単数群である:

(2.1) Aut(T) = ∈Bn,l(Z)|tγT γ =T}.

Proposition 1.1の(i)により、定義は合理的であり、同じPropositionの(ii)から、Klingen [Kl, p.146] のProposition 1 の証明と同様の方法で、Dn(ϕ, s) は Re(s)> k−2l +n+12 で 絶対収束することがわかる。

ϕ に対して関連する別のDirichlet 級数Dbn(ϕ, s)も Dbn(ϕ, s) = ∑

NSymn(Z)+/

c(N ⊥S)

|Aut(N)|(detN)s,

で定義する。ここで NSymn(Z)+ の 通常の GLn(Z)-同値類全体をわたり、Aut(N) は N の単数群 {U GLn(Z)| N[U] = N} のこととする。N S は行列

( N 0

0 S )

を表す。この級数も、Re(s)> k− 2l +n+12 で絶対収束する。

2.2 関数等式

関数等式を記述するために、これらの 級数に同じガンマ因子 γn(s) := 2πn(n1)/4(2π)ns

n j=1

Γ (

s−j 1 2

)

を掛けよう。すなわち

ξn(ϕ, s) =γn(s)Dn(ϕ, s), ξbn(ϕ, s) =γn(s)Dbn(ϕ, s) とする。

定理 2.1 ゼータ関数 Dn(ϕ, s), Dbn(ϕ, s) は全 s 平面上の有理型関数に解析接続され、

次の関数等式を満たす:

ξn(ϕ, k−l/2−s) =c·ξbn(ϕ, s), ここで c= (1)nk/2det(2S)n/2 である。

(12)

証明) 以下で、h(τ), h0(τ) は ϕ ∈Jk,Sn) から (1.6)、(1.7) で決まる関数とする。証 明は、次の (i) (iii) に基づいてなされる:

(i) 積分表示:

(2.2) ξn(ϕ, s) :=

GLn(Z)\Pn

h(iY)(detY)sdvn(Y), ただし、h(Z) は

h(Z) = ∑

N0

a(N)e(tr(N Z)) と書くとき、

h(Z) = ∑

N >0

a(N)e(tr(N Z))

で与える。Pnn 次正定値実対称行列の成す空間とし、GLn(R) がその上に Y 7−→

gYtg (Y ∈ Pn, g ∈GLn(R)) により自然に作用する。dvn(Y) は dvn(Y) = det(Y)(n+1)/2

1ijn

dyij (Y = (yij)∈ Pn).

で与えられる Pn 上の不変測度とする。この積分は Re(s)> k−2l +n+12 で絶対収束す る。

(ii) h(Z) の変換公式:

h(iY1) =(detY)kl/2h0(iY).

(iii) 関数等式を証明するための、Pn 上の不変微分作用素を用いる、Maass の方法。

(ii) は Proposition 1.2 から、直ちに得られる。(iii) の方法はMaass の [Ma]、ないしは、

一般的取り扱いは、伊吹山氏の [Ib3]参照。(i)、(ii) から、(iii) の方法を用いれば、解析 接続と関数等式は容易に示される。(i)は次のようにする。

多少の準備が必要である。Bn.l(Z) の部分群 Bn,l(Z) を Bn.l(Z) =

{(

1n 0 y 1l

) y∈L }

. と定義する。まづ

h(τ) = ∑

rL/(2S)L

NSymn(Z) N14trS1r>0

c(T)e (

tr(T τe ) )

= ∑

TSymn,l+/Bn,l(Z)

c(T)e (

tr(T τe ) )

(13)

に注意する。ここで、Symn,l+/Bn,l(Z) は 2次形式の族 Symn,l+ の 部分群 Bn,l(Z) の作 用による一つの完全代表系を意味する。このとき

h(τ) = ∑

TSymn,l+/Bn,l(Z)

γAut(T)\Bn,l(Z)/Bn,l(Z)

c(T[γ])e (

tr(Tg[γ]τ) )

の如く変形される。Aut(T) は(2.1) で与えられるTBn,l(Z) に関する直交群である。

ここに、γ は両側剰余類

Aut(T)\Bn,l(Z)/Bn,l(Z).

の完全代表系をわたる。さらに、c(T[γ]) = c(T) に注意すれば、

h(τ) = ∑

TSymn,l+/Bn,l(Z)

γBn,l(Z)/Bn,l(Z)

c(T)

|Aut(T)|e (

tr(Tg[γ]τ) )

= ∑

TSymn,l+/Bn,l(Z)

VGLn(Z)

c(T)

|Aut(T)|e (

tr(T V τe tV) )

と変形される。VGLn(Z) のすべての元をうごくとき、V(GLn(Z)\Pn)tVPn を 2 重に覆うことに注意すると、

ξn(ϕ, s) = 2 ∑

T∈Symn,l+/Bn,l(Z)

c(T)

|Aut(T)|

Pn

e2πtr(T η)e (detη)sdvn(η).

積分公式

Pn

e2πtr(T η)e (detη)sdvn(η) =πn(n−1)/4(2π)−ns

n j=1

Γ (

s− j−1 2

)

·(detTe)−s

([Ma,§ 6])に帰着させて、

ξn(ϕ, s) =γn(s)Dn(ϕ, s)

となる。Re(s)> k− 2l +n+12 で絶対収束することは、右辺のゼータ関数が収束すること

から従い、証明が完了する。 証終)

2.3 極と留数

ゼータ関数 Dn(ϕ, s) の極や、極の留数に関する情報も考察したい。そのためには、index S についてある極大条件を課す必要がある。ここでは、S は極大条件(1.8) を満たすと仮 定する。

(14)

非負整数 j に対し

ε(j) = {

1/2 · · · j ̸= 0 1 · · · j = 0, とおき、各正整数 ν に対し

v(ν) = {

π12ν(ν+1)2ν

j=2 ζ(j)Γ(j

2

) · · · ν 2

1 · · · ν = 1,

とおく。

定理 2.2 k は偶数で k > 2n + l + 1 とし、S は極大条件 (1.8) を満たすとする。

ϕ ∈Jk,Sn) とすると、

ξn(ϕ, s) = In(ϕ, s) +

n1

j=0

ε(j)v(n−j)

(c·ξbjnjϕ,n2)

s−k+2l + j2 −ξjnjϕ,n2) s−2j

) .

ただし、

In(ϕ, s) =

GLn(Z)\Pn detη1

{(detη)sh() +(detη)kl/2sh0()}

dvn(η)

とし、写像 Φ :Jk,Sn)−→Jk,Sn1) は Siegel 作用素を表す。この In(ϕ, s) は、任意 の s で絶対収束し、s の全平面で正則な関数を表す。

証明はかなりめんどうなので、詳細については、[Ar5] を参照されたい。。基本的方針は

[Ar1] と同じである。以下に証明の方針を述べる。

(i) 極大条件(1.8) の下では、分解

Jk,Sn) =

n r=0

Jk,S(r)n) が成り立つので、

(ii) Klingen Eisenstein 級数 En,r(ϕ,(τ, z)) に対して、定理の主張を示せばよい。[Ar1]

の方法を用いる。

注意) Boecherer 氏が指摘するように、定理は、Klingen Eisenstein 級数を用いずに、

Arakawa [Ar2] の方法を用いて証明されると思われる。

(15)

3 plus 空間の保型形式と Koecher Maass 級数

「Jacobi形式を導入する意義は何なのか」という素朴で重大な疑問がある。Siegel 保型

形式と半整数 Siegel 保型形式の世界で事足りるわけで、Jacobi 形式を持ち出す必要はな いという異議である。それに対する反論は、一つには、Jacobi 形式それ自体が、多様性 のある豊かで興味深い研究対象であるという点であり、他方には、Jacobi 形式の研究が、

半整数保型形式の研究に、新たな重要な視点(半整数保型形式のみを研究したのでは見逃 してしまう)を提供するという点であろう。Eichler-Zagier の Jacobi 形式の教科書 [E-Z]

に、半整数保型形式と Siegel 保型形式の研究に役立った実例が豊富にかつ興味深く語ら れている。

ここではJacobi 形式が役にたつ一例を、plus 空間と呼ばれる半整数保型形式の空間を

例にとって説明する。

3.1 plus 空間

この節では、l = 1 かつ S = 1 の場合を専一に扱う。この場合が最も simple でかつ重 要である。まづ S = 1 が極大条件 (1.8) を満たすことに注意する。この場合

L=M1,n(Z) =Zn

となる。このとき、L/2L の代表系として、2n 個の元からなる集合 {(a1, . . . , an)|ai = 0, or 1}

を取れることに注意する。

半整数Siegel保型形式の空間を定義するために、特別な theta級数θ(n)(τ)を導入する: θ(n)(τ) :=θ0(n)(τ,0) =∑

λL

e(λτtλ) (τ Hn).

Γn の合同部分群Γ(n)0 (4) を通常の如く Γ(n)0 (4) =

{(

a b c d

)

Γn

c≡0 mod 4 }

で定義する。次のΓ(n)0 (4) に関する θ(n)(τ) の変換公式はよく知られている。任意の M = (

a b c d

)

Γ(n)0 (4) に対し

θ(n)(M⟨τ⟩) = j(n)(M, τ)θ(n)(τ).

(16)

ただし、j(n)(M, τ)C×

j(n)(M, τ)2 =sgn(detd) det( +d) を満たす。j(n)(M, τ)は志村の保型因子と呼ばれる。

さて、k を正整数とし、Sn(k)(Z) を条件

あるλ∈Lに対して (1)kN ≡ −tλλmod 4Symn(Z).

を満たす n 次整係数対称行列 N の成す集合とする。Sn(k)(Z) は、nk の偶奇にのみ 依存する。Sn(k)(Z)+ で正定値な元から成る Sn(k)(Z) の部分集合を表すとする。

半整数保型形式の空間であるplus空間 Mk+1/2(n)0 (4)) はn = 1のときKohnen [Koh]、 n > 1 のときは 伊吹山 [Ib1]により導入された。fMk+1/2(n)0 (4)) の元であるとは、

Hn 上の正則関数f が次の(i), (ii) を満たすときをいう:

(i) 任意の M =

( a b c d

)

Γ(n)0 (4) に対し、f(M⟨τ⟩) =j(n)(M, τ)2k1f(τ).

(ii) f は Fourier 展開

f(τ) = ∑

NSymn(Z), N0

a(N)e(tr(N τ)) をもち、N ̸∈Sn(k)(Z) ならば a(N) = 0 を満たす。

Sk+1/2(n)0 (4)) を Mk+1/2(n)0 (4)) のcusp 形式から成る部分空間とする。正確には、

Sk+1/2(n)0 (4)) ={f ∈Mk+1/2(n)0 (4))|(det Imτ)(k1/2)/2|f(τ)| は Hn 上有界}. kは偶数とする。plus空間で注目すべきことは、Mk+1/2(n)0 (4)) は重さk、index 1、次 数 n の Jacobi 形式の空間 Jk,1n) と同型になるという事実である。この同型は、n= 1 のとき Kohnen、Eichler-Zagier [E-Z]、n >1 の場合に伊吹山 [Ib1]により与えられた。

定理 3.1 (Kohnen, Eichler-Zagier, Ibukiyama) kは偶数とする。このとき、Jk,1n) は、線形写像 σ(n):ϕ(τ, z)7−→f(τ) :=h(4τ) = ∑

rL/2L

hr(4τ)により、空間Mk+1/2(n)0 (4)) と同型になる。ここで、hr(τ) は、ϕtheta級数の線形結合として表した係数として

ϕ(τ, z) = ∑

rL/2L

hr(τ)θr(τ, z)

で与えられる。さらに、cusp 形式の空間同志、すなわち、Jk,1cuspn) と Sk+1/2(n)0 (4)) は、この対応で全単射に対応する。

(17)

[注意] kが奇数のときは、この同型は成り立たない(kが奇数、nも奇数ならば Jk,1n) = {0})。その場合は、Skoruppa [Sk1,2] の 歪正則 Jacobi 形式(skew-holomorphic Jacobi

forms)の概念を導入する必要がが生じる。

3.2 Cohen Eisenstein 級数

k は偶数とする。r を 0 r n なる整数とし、f Sk+1/2(r)0 (4)) とする(f は cusp 形式)。r = 0 のときは、f は定数関数である。f は、次数 r のときの上記同型写 像 σ(r) により ϕ Jk,1cuspr) と対応する(σ(r)ϕ = f)。fϕ により一意的に決まる。

r = 0 なら、σ(0) は C の単位写像(identity map)とする。そこでKlingen Eisenstein 級 数 Cn,rk1/2(f, τ) を Klingen Eisenstein 級数 En,r(ϕ,(τ, z)) の上記同型 σ(n) による像とし て定義する:

Cn,rk1/2(f, τ) =σ(n)(En,rk,1(ϕ,(τ, z))).

特に、r = 0 ならば、単に Cnk−1/2(τ) と書く:

Cnk1/2(τ) = σ(n)(Ek,1(n)(τ, z)).

n = 1の場合に、C1k1/2(τ) はCohen [Co]によって研究された。この関数は Fourier展開 C1k1/2(τ) = 1

ζ(32k)

dZ0, d0,3mod4

H(k−1, d)e()

をもつ。H(k−1, d) は Cohen 関数と呼ばれる有理数で、正確な定義は [Co] 及び [E-Z]

参照。Cohen [Co] は右辺で定義される関数が重さ k− 12 の plus 空間に属する半整数保 型形式になることを示している。[E-Z]のTheorem 2.1 を眺めると、右辺の関数が、次数 1、重さ k、index 1 の Eisenstein 級数 Ek,1(1)(τ, z) の同型 σ(1) による像 C1k1/2(τ) に一 致することがわかる。

一般の次数の場合も、Cnk1/2(τ) を次数 n の Cohen Eisenstein 級数と呼ぼう。

f Sk+1/2(r)0 (4)) に対する Klingen Eisenstein 級数 Cn,rk−1/2(f, τ) を、Siegel 保型形 式のときの記法に倣って

[f]nr(τ) =Cn,rk1/2(f, τ) とも書こう。

注意) Cohen Eisenstein級数 Cnk1/2(τ) については、比較的きれいな形のSiegel公式が 成り立つ。これに関しては、[Ar5] 参照。筆者には、Cnk1/2(τ) と Klingen Eisenstein 級 数 Cn,rk1/2(f, τ) は大変興味深い研究対象と思われる。

各整数 r (0≤r≤n)に対し、fr 次のcusp 形式の空間 Sk+1/2(r)0 (4)) を動くとき、

参照

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