Fig.2 1step合成(上)と2step合成(下)の概略図
1step
2step
高専学生寮の廃油を用いたバイオディーゼル燃料の合成
鶴岡工業高等専門学校 教育研究技術支援センター 米澤文吾
1.緒言
近年、地球温暖化や化石燃料の枯渇化が懸念され、エネルギー需要の増加や石油価格の高騰等による 背景から植物由来のバイオディーゼル燃料(Bio Diesel Fuel)への取り組みが活発化している。BDFは動 植物油、廃油等を原料として、アルカリ触媒等を用いてアルコールと反応し、メチルエステル化するこ とで製造される(Fig.1)。カーボンニュートラルかつ再生可能なバイオマスを原料としているBDFはデ ィーゼル軽油と代替可能な燃料である。よって石油使用量の低減と二酸化炭素の増加防止にも繋がり、
環境対策に有効なことから循環型社会の形成に寄与できる。
しかし国内におけるBDFの生産量・普及率は未だに低水準である。原因は軽油と比べて安価ではな いことや、低温条件(氷点下)ではBDF中の高融点成分が析出または凝固することで燃料の流動性が悪化 し、エンジンに不具合が生じる使用上の問題点がある。これらを解決するには、高純度かつ低コストで 合成できる製造プロセスの改善が不可欠である。本研究ではコストが要らない本校の学生寮廃油を採り 上げ、アルカリ触媒を用いることで高価なアルコールを極力消費せずに高品質なBDFを合成し、国内 の使用規格を満たすBDF製造の反応条件を検討した。
2.実験方法・手順
現行のBDF製造プロセスはFig.2(上)に示す1step合成である。アルカリ触媒をメタノールに溶解さ せ原料油に添加、反応温度を60℃、時間を60分と設定した。反応終了後は二層に分離するまで静置さ せ、副生成物であるグリセリン層を除去し、BDFを生成する。更にBDFを水洗し、未反応のメタノー ルや石鹸成分の除去を行い、最後に100℃で脱水しBDFを得た。
製造したBDFの物性評価は低温試験、動粘 度、NMR測定により行った。低温試験は室温 からBDFを徐冷し、曇り点と凝固点を測定す る。曇り点とは結晶の析出により液全体が白く 曇り始める温度であり、凝固点は固形化し試験 管を水平にしても全く流動しなくなる温度であ る。以上の操作について原料油1モルに対する メタノールのモル比を、量論比の3~18と設定 し実験を行った。
原料油 (学生寮廃油)
メタノール
BDF
(脂肪酸メチルエステル)
グリセリン
Fig.1 アルカリ触媒法による原料油からのBDF製造の化学反応式
Fig.3 曇り点・凝固点に及ぼす メタノール量の影響
Fig.4 1stepと2stepにおける 純度に及ぼすメタノール量の影響
3.実験結果
Fig.3に低温特性に及ぼすメタノール量の影響を
示した。添加するメタノール量が少ない(モル比:3
~5)と曇り点が高く、凝固点が低い。これは反応が 不十分であることが示唆され、未反応の原料油や反 応中間体が多く存在していることを動粘度・NMR 測定により確認した。よって凝固しにくい燃料と言 えるが、不純物が含まれているため品質規格に適合 せず使用できない。またメタノールモル比が6以上 では殆ど低温特性に変化は見られなかった。メタノ ールの添加量を増やすと反応性が増し、純度が高く なるが、それに伴いコストを要する問題がある。
そこで従来よりも少ないメタノール量で高純度 のBDFを製造するためFig.2(下)に示した2step による合成を試みた。2stepとは1stepと同量の メタノールの量を二分(1:2または2:1)し、片方を 加え反応させ、途中でグリセリン層を除去する。
その後もう一方を再度反応器に投入し、反応を促 進させる手法である。
Fig.4に1stepと2stepにおける純度に及ぼす メタノール量の影響を示した。1stepよりも2step の方が高純度であることに加え、2:1の割合でメ タノールを添加した方がより高純度のBDFが得 られる。平衡反応であるためグリセリンの除去が 効果的だと考えられる。しかし、曇り点・凝固点 は1stepと2stepでほぼ同じ結果だったため低温 特性の改善には至らなかった。原因は不純物量で
はなく、原料油本来の成分であることを調査し、凝固しやすい飽和脂肪酸成分の除去が必要となった。
この問題を解決するためにウィンタリゼーションと呼ばれる分離技術を用いて、BDF中に含まれる 飽和脂肪酸成分を析出させ精製を試みた。BDFを約3日間冷蔵室(約-5℃前後)で保存すると白い固形 成分が僅かに析出した。これを低温状態で濾過することにより、高融点成分と思われるBDFを取り除 いた。従来のBDFは温度が下がると結晶が析出し、濁った状態で固化したが、ウィンタリゼーション を施したBDFは温度を下げても曇り点は存在せず、凝固点は-13℃以下であったことから低温特性の 向上に繋がった。しかし現段階では、高融点成分の除去は不完全であることから、冷却時の温度制御や 分離の方法を再検討する余地がある。
4.結言
2step合成の導入により、1step合成よりもエステル化率がわずかに増加したことを物性評価により
確認した。また高専の学生寮で使用する廃油でも国内における品質規格を満たすBDFの製造が可能で あり、少ないメタノール添加量でBDFを合成することに成功した。