ここがポイント
国 語文学的な文章
5
Point!
次の文章を読んで︑あとの問いに答えなさい︒
ある国の有名な陶器師が︑上等とされる軽くて薄い茶わんを︑殿さまに献上した︒以下はそれに続く場面である︒
今度︑新しく︑薄手の茶わんが上 1がってからというものは︑三度のお食事に殿
さまは︑いつも手を焼くような熱さを︑顔にも出されずに我慢をなされました︒
﹁いい陶器というものは︑こんな苦しみを耐えなければ︑愛 2玩ができないものか﹂
と︑殿さまは疑われたこともあります︒また︑あるときは︑﹁いやそうでない
家来どもが︑毎日︑俺に苦痛を忘れてはならないという︑忠 3義の心から熱さを耐
えさせるのであろう﹂と思われたこともあります︒﹁いや︑そうでない︒みんな
が俺を強いものだと信じているので︑こんなことは問題としないのだろう﹂と思
われたこともありました︒
けれど︑殿さまは︑毎日お食事のときに茶わんをごらんになると︑なんとい
うことなく︑顔色が曇るのでございました︒
あるとき︑殿さまは山国を旅行なされました︒その地方には︑殿さまのお宿を
するいい宿屋もありませんでしたから︑百姓家にお泊まりなされました︒
百姓は︑お世辞のないかわりに︑まことにaでありました︒殿さまはどん
なにそれを心からお喜びなされたかしれません︒いくらさしあげたいと思っても︑
山国の不便なところでありましたから︑さしあげるものもありませんでしたけれ
ど︑殿さまは︑百姓の真心をうれしく思われ︑そして︑みんなの食べるものを喜
んでお食べになりました︒
季節は︑もう秋の末で寒うございましたから︑熱いお汁が身体をあたためて
たいへんうもうございましたが︑茶わんは厚いから︑けっして手が焼けるような
ことがありませんでした︒
いくら軽くたって︑また薄手であったとて︑茶わんにたいした変わりのある
はずがない︒それを軽い薄手が上等なものとしてあり︑それを使わなければなら
小説の読み方
▼
あらすじをつかむ
・いつ
︑ 誰 が
︑ どこで
︑ 何 を
︑ どうしたか
︑ を正しくつかむ
︒
・
時間の経過
や
出来事の推移
︑
登場人物の関係
などを読みとる
︒
・出来事の始まり
︑ 展 開
︑ クライマックス
︑ 結末をとらえる
︒
▼
情景を読みとる
・ 季節や日時
︑ 場所などを読みとり
︑ 登場人物がどのような場面に いるのか
をイメージする
︒
▼
登場人物の心情を読みとる
・ 心情を表す言葉
︑ 会話部分
︑ 行動などから
︑ 登場人物の気持ち
を
読みとる
︒ ま た
︑ 物語の進展に従って
変化する心情
をとらえる
︒ 心情が反映されている情景描写にも注意する
︒
随筆の読み方
▼
情景を読みとる
・季節や日時
︑ 場所などを読みとり
︑ 情景をイメージする
︒
▼
主題を読みとる
・ 筆者が体験したこと
︑ 心を動かされたことなど
︑ 文章の題材をと らえる
︒ 中心となる段落や文
に注目する
︒
・
事実の部分
と︑
考えを述べた部分
を区別して読みとる
︒
▼
文章表現を味わう
・
比喩やユーモア
など
︑ 表現のすぐれた部分をおさえる
︒
正解数
/ 基 本 問 題
解答 P.50
⇩
別冊
国 語 ていました︒それをごらんになると︑たちまち殿さまの顔色は曇りました︒また︑
今日から熱い思いをしなければならぬかと︑思われたからであります︒
③ある日︑殿さまは︑有名な陶器師を御殿へお呼びになりました︒陶器店の主人
は︑いつかお茶わんを造って奉ったことがあったので︑おほめくださるのでは
ないかと︑内心喜びながら参上いたしますと︑殿さまは︑言葉静かに︑
﹁おまえは︑陶器を焼く名人であるが︑いくら上手に焼いても︑しんせつ心がな
いと︑なんの役にもたたない︒俺は︑おまえの造った茶わんで︑毎日苦しい思い
をしている﹂と諭されました︒
陶器師は恐れ入って御殿を下がりました︒それから︑その有名な陶器師は︑厚
手の茶わんを造る普通の職人になったということです︒
︵小川未明﹁殿さまの茶わん﹂による︶
︵注1︶上がって⁝できあがって︒
︵注2︶愛玩⁝大切にし︑楽しむこと︒
︵注3︶忠義⁝主君や国家に真心をつくして仕えること︒
︵注4︶調法⁝便利で都合がよいこと︒
⑴ 次の一文が入る最も適切な位置を︑本文中の〜から一つ選び︑記号を書
きなさい︒
殿さまは︑このとき︑ご自分の生活をなんという煩わしいことかと思われました︒
⑵ aには︑すべて同じ言葉が入ります︒その言葉を︑本文中からひらがな
四字で抜き出して書きなさい︒ ぬということは︑なんといううるさいばかげたことかと思われました︒ ①殿さまは︑百姓のお膳に乗せてある茶わんを取りあげて︑つくづくごらんになっ
ていました︒
﹁この茶わんは︑なんというものが造ったのだ﹂と申されました︒
百姓は︑まことに恐れ入りました︒じつに粗末な茶わんでありましたから︑殿
さまに対してご無礼をしたと︑頭を下げておわびを申しあげました︒
﹁まことに粗末な茶わんをおつけもうしまして︑申しわけはありません︒いつで
あったか︑町へ出ましたときに︑安物を買ってまいりましたのでございます︒こ
のたび不意に殿さまにおいでを願って︑この上のない光栄にぞんじましたが︑町
まで出て茶わんを求めてきます暇がなかったのでございます﹂と︑正直な百姓は
いいました︒
﹁なにをいうのだ︑俺は︑おまえたちのaにしてくれるのを︑このうえなく
うれしく思っている︒いまだかつて︑こんな喜ばしく思ったことはない︒毎日︑
②俺は茶わんに苦しんでいた︒そして︑こんな調 4法ないい茶わんを使ったことはな
い︒それで︑だれがこの茶わんを造ったかおまえが知っていたなら︑ききたいと
思ったのだ﹂と︑殿さまはいわれました︒
﹁だれが造りましたかぞんじません︒そんな品は︑名もない職人が焼いたの
でございます︒もとより殿さまなどに︑自分の焼いた茶わんがご使用されるなど
ということは︑夢にも思わなかったでございましょう﹂と︑百姓は恐れ入って申
しあげました︒
﹁それは︑そうであろうが︑なかなか感心な人間だ︒ほどよいほどに︑茶わんを
造っている︒茶わんには︑熱い茶や︑汁を入れるということをそのものは心得て
いる︒だから︑使うものが︑こうして熱い茶や︑汁を安心して食べることができ
る︒たとえ︑世間にいくら名まえの聞こえた陶器師でも︑そのaな心がけが
なかったら︑なんの役にもたたない﹂と︑殿さまは申されました︒
殿さまは︑旅行を終えて︑また︑御殿にお帰りなさいました︒お役人らがう
やうやしくお迎えもうしました︒殿さまは︑百姓の生活がいかにも簡単で︑のん
きで︑お世辞こそいわないが︑aであったのが身にしみておられまして︑そ
れをお忘れになることがありませんでした︒
お食事のときになりました︒すると︑膳の上には︑例の軽い︑薄手の茶わんが乗っ
国 語
⑶ ﹁ ①殿さまは︑百姓のお膳に乗せてある茶わんを取りあげて︑つくづくごらん
になっていました﹂とありますが︑このときの殿さまの気持ちとして最も適切
なものを︑次のア〜エから一つ選び︑記号を書きなさい︒
ア 安い茶わんを用意した百姓の︑その心構えを正したい︒
イ 茶わんを造った者の名を聞き︑その者をたたえたい︒
ウ 粗末な茶わんの本当の価値を︑百姓に教えてやりたい︒
エ 茶わんを造った者の名を聞き︑その造り方を知りたい︒
⑷ ﹁ ②俺は茶わんに苦しんでいた﹂とありますが︑殿さまの苦しみとはどのよう
なものだったのですか︒次の文のIにあてはまる言葉を︑本文中の言葉を
使って︑十字以上十五字以内で書きなさい︒
食事のときにIという苦しみ︒
⑸ ﹁ ③ある日︑殿さまは︑有名な陶器師を御殿へお呼びになりました﹂とありま
すが︑殿さまが陶器師を御殿に呼んだ理由として最も適切なものを︑次のア〜
エから一つ選び︑記号を書きなさい︒
ア 上等な茶わんを使ったときの苦しみを述べ︑名人となる方法をそれとなく
教えるため︒
イ 上等な茶わんは役に立たないことを述べ︑思い上がった陶器師に強く反省
を迫るため︒
ウ 上等な茶わんを使った際の苦しみを述べ︑実用的な茶わんのよさを率直に
伝えるため︒
エ 上等な茶わんは実用的ではないと述べ︑陶器師の進むべき道を厳しい態度
で示すため︒
15 10
次の文章を読んで︑あとの問いに答えなさい︒
小学校二年生の心平は
︑ヤマメやウグイなどの魚とりを何よりも楽しみ にして
︑毎日のように川へ行っていた
︒以下は
︑近所のじいちゃんから聞
いた雨 1鱒に出会うことになる場面である︒
学校が終わると︑心平は放たれた矢のように家に飛んで帰った︒ ①心は川で溢
ていた︒ヒ 2デとの約束の水汲み仕事はどこかへいってしまい︑ヤ 3スを手にすると
川へ走った︒
風はもう秋だった︒谷の野原に桔梗の花がぽつんと寂しげに咲いていた︒堤
の土手の道には︑コスモスの花が風に揺れていた︒森の木立を吹き抜ける風は
川面をすべるように流れてとても涼しかった︒川面には赤トンボがたくさん飛び
交っていた︒空には雲が広がっていて︑はるか遠くに連なる山々は厚い雲をかぶっ
ていた︒しかし︑それも山頂だけのことで︑それに︑空に広がっている雲は高い
雲だったので︑雨が降りそうな気配の空ではなかった︒
心平は堰 4堤の下のコンクリートを慎重に歩いた︒川の水は少し冷たかったが
それでも︑しばらく入っていて慣れると︑水の冷たさはさほど気にならなくなっ
た︒頭上で︑大きな鷲が急降下して︑対岸の豊かな森の中に消えた︒川には心平
のほかには誰もいなかった︒太陽は︑レースのカーテン越しにみるように︑高い
薄雲を通してやさしく光っていた︒
心平は ②魚をみつけようと勢い止めの中に入っていった︒流れの弱い所だった
心平は丸太に手をかけて水中をのぞきみた︒とたんに︑眼の前いっぱいに大きな
口が現れた︒丸く黒い眼がじっと心平をみていた︒大きな口が閉じたり開いたり
していた︒とてつもなく大きな魚の頭だった︒これまで︑心平がみたこともない︑
ものすごく大きな魚だった︒心平は面喰らった︒じっと魚にみ入っていた︒﹁
た!﹂と叫ぶ儀式や︑ヤスを構えることさえできなかった︒魚は︑手をのばせば
届きそうなところにいた︒丸太の陰や石の間に隠れようとせず︑真正面から心平
をみていた︒尖った大きな面構えだった︒頭から背にかけては黒っぽく︑ところ
どころで︑鈍い金色に光っていた︒白い唐草模様が背に踊っていた︒体側にはみ
ごとな白い水玉模様が規則正しく並んでみえた︒大きな魚は︑優雅に身体をくね
らせて︑一点にとどまっていた︒少し左右に揺れると︑白い水玉が鮮やかに浮き
国 語 あがってみえた︒心平は息をするのも忘れて魚にみ入っていた︒大きな魚も逃げようとしなかった︒心平と魚は︑互いにじっとみつめあっていた︒ ついに︑心平は水面から顔をあげた︒急いで大きく息を吸い込んだ︒ ﹁いた⁝⁝﹂心平はつぶやくようにいった︒驚きが大きすぎたのだった︒しばら
く︑顔をあげたままぼうっとしていた︒﹁でっけえ⁝⁝︒雨鱒だべが⁝⁝﹂
心平は︑おそるおそる川の中をのぞいた︒ ③ヤスを持つ手に力が入っていた︒手
が震えているのが分かった︒すると︑大きな魚は素早く反転してあっという間に
姿を消した︒鮮やかな銀色の鱗 5光がみてとれた︒
﹁あッ﹂心平は水中で声をあげた︒それから魚が去った水中に眼をこらした︒す
ると︑遠くにまた鱗光が光った︒
心平は急いで大きな魚のあとを追った︒
︵川上健一﹃雨鱒の川﹄集英社文庫による︶
︵注1︶雨鱒⁝サケ科イワナ属の魚︒体長六十センチになるものもある︒
︵注2︶ヒデ⁝心平の母親︒ ︵注3︶ヤス⁝魚を突く道具︒
︵注4︶堰堤⁝水や土砂をせき止めるための堤防︒ ︵注5︶鱗光⁝鱗に反射した光︒
⑴ ﹁ ①心は川で溢れていた﹂とありますが︑心平の心がどのような状態にあるこ
とを表現していますか︒三十字以内で具体的に書きなさい︒
⑵ ﹁ ②魚をみつけようと﹂とありますが︑心平は魚を見つけるたびにどのような
ことをするのですか︒﹁いつもしていること﹂がわかる言葉を含む表現を︑本
文中から十字以内で抜き出して書きなさい︒
⑶ ﹁ ③ヤスを持つ手に力が入っていた︒手が震えているのが分かった﹂とありま
すが︑この二文から読みとることができる心平の心の動きとして最も適切なも
のを︑次のア〜エから一つ選び︑記号を書きなさい︒ ア 驚きが続く中︑ひとりで対決するのが急に心細くなった︒
イ さらに驚きが増して︑ヤスが構えられずに焦りを覚えた︒
ウ 少し冷静さを取り戻して︑身体の状態を自覚しはじめた︒
エ 冷静になって︑闘志をみなぎらせている自分に気づいた︒
⑷ 本文を読んだあとに︑中学生二人が話しています︒会話の内容が正しくなる
ように︑Ⅰ〜Ⅲにあてはまるものを︑あとの指示に従って書きなさい︒
教子
雨鱒を見つけたときの心平の気持ちは
﹁
Ⅰ
﹂と書かれている けど
︑その気持ちがよくわかって
︑自分が心平になったような感じ
で読めるわ︒英太
﹁眼の前いっぱいに大きな口が現れた﹂という表現にはとても臨
場感があるよ︒教子
雨鱒の描写の仕方も
︑
Ⅱ
と描かれていて
︑見たことはないけ
ど︑その大きさや美しさが想像できたわ︒
英太
彼はまだ雨鱒だと確信していないけど
︑﹁丸く黒い眼がじっと心
平をみていた﹂の後に続く描写の中では
︑﹁
Ⅲ
﹂の一文が心の
出会いのような感じがするよ︒教子
そうね
︒この先
︑互いに深くかかわり合っていくことを最も強く
予感させる表現になっていて︑印象的だわ︒
・Ⅰには︑本文中から︑あてはまる言葉を五字で抜き出して書くこと︒
・Ⅱには︑次のア〜エから一つ選び︑記号を書くこと︒
ア 部分から全体へ イ 動作から静止像へ
ウ 外観から内面へ エ 機能から色彩へ
・Ⅲには︑本文中から︑あてはまる一文を抜き出して︑はじめの五字を書
くこと︒
30 10
Ⅱ
Ⅲ Ⅰ
国 語
うが︑読みたいという気持ちがそれに勝っていたらしい︒そういえば︑友だちの
母上が私を電車で見かけたとき︑﹁顔は見えなかったけど本を読む手が見えたか
ら麻由ちゃんだと思った﹂と言ったこともあった︒
点字と聞いて駅の券売機やエレベーターのボタンの脇に張ってある文字を思い
浮かべる方も多いだろう︒しかし本当の点字は︑もちろんたいてい︑紙に書いて
ある︒街で見かけるバリアフリー仕様の点字は鉄片やテープに書いてあるので
むしろ特殊なものである︒
紙に書いた点字は︑紙質や季節︑その日の湿気や読む人の手の状態によってさ
まざまに変化する︒寒い日にかじかんだ手で点字を読むといつもより薄く感じる
し︑梅雨時に読むとどことなく紙が湿っていて︑自分の手の湿りと重なって指の
滑りがとても悪くなる︒この季節︑点字は年間で最悪の手触りになる︒もちろん︑
指の滑りも最悪だ︒
ところが︑一転秋になると︑点字はスベスベと指によく馴染むようになる︒空
気が乾燥してきて紙が乾き︑手も汗をかかなくなるからだろう︒読書のときに指
がよく滑ると︑快調に読み進むことができる︒子供心に︑私はその感触が気に入っ
ていたので︑読書の秋というのは本当だと思ったのである︒
︵三宮麻由子﹃空が香る﹄文藝春秋刊による︶
︵注1︶墨字⁝点字に対して︑凹凸をつけずに書かれたり印刷されたりしている︑一般的な
文字︒
︵注2︶いや増している⁝ますます増やしている︒ 次の文章を読んで︑あとの問いに答えなさい︒
著名な脳科学者が︑電子書籍を画面で読むよりも︑紙の書物を手に取って読む
ほうが脳に刺激があってよいと書いていた︒本の重み︑ページをめくる感覚︑紙
の手触りなど︑手に直接受ける刺激が脳によいのだそうだ︒
言われれば感覚的に納得できる気がする︒そして︑手に何かを感じることが脳
刺激になるのだとすれば︑ ①点字使用者の私は︑本を手にもつだけでなく絶えず文
字に触れているわけだから︑かなり自然にたくさんの脳刺激を受ける機会にめぐ
まれていることになる︒墨 1字が読めない不便と引き替えの幸いとでも受け取って
おくのがよいのだろう︒
私はいわゆる文学少女ではなかったし︑自分が読書好きだとも思っていなかっ
た︒特に子供のころは︑点字や音読の形で読める本自体が限られていたうえ︑一
文字ずつの表音文字を指でたどって読む点字での読書は︑相当な速読能力があっ
ても漢字で意味をとらえながら一度に複数の行に目を走らせるようなわけにはい
かない︒だから︑もちろん本を読まないほうではないとしても︑読んでいる人に
はとうていかなわないと自覚していた︒ただ︑ある日母が知人から﹁麻由ちゃん
はいつも本を読んでいるわね﹂と言われ︑﹁そうね︑必ず枕元に何冊か本をおい
ているし︑乗り物のなかでもいつも何か読んでいるのよ︒何だか面白いらしく
て﹂と話しているのを小耳に挟んだので︑大人から見てもそこそこの読書好きで
はあったのかもしれない︒
秋は読書に適した季節というのは本当だと︑私は小学生のころから思っていた︒
子供にとって︑秋は運動会や学園祭などいろいろ忙しい季節だ︒けれども︑秋は
紙の手触りが年間で最もよい季節だと思う︒だから本に触るのも気持ちがよく︑
静かな夜長の読書も進むのだろう︒普通は秋は静かで気候がよいので読書に適し
ているといわれているが︑私にはそれと同時に︑紙に触れる手の感触が ②ひときわ
心地よいことも︑読書の快感をい 2や増しているような気がするのである︒
もちろん︑当時はそんなことを自覚してなどいなかったが︑なるほど母の言う
通り︑夜はいつも本とともに眠ったし︑電車のなかで読む本も持ち歩いていた︒
点字の教科書は電話帳ほどもあるので︑時間割に合わせて何冊もの教科書を持
ち︑そのほかに読む本も持つのは体の小さかった私にはかなりの負担だったと思
国 語 ⑷ ﹁秋は読書に適した季節というのは本当だ﹂とありますが︑筆者は︑どのよ
うな点で秋は読書に適していると述べていますか︒その内容についてまとめた
次の文のa︑bにあてはまる言葉を書きなさい︒ただし︑aは︑
本文中から二十字程度で抜き出して書きなさい︒また︑bは︑本文中の言
葉を使って︑具体的に四十字程度で書きなさい︒ ⑴ ﹁ ①点字使用者の私は︑本を手にもつだけでなく絶えず文字に触れている﹂と
ありますが︑筆者が本を読むときに﹁絶えず文字に触れている﹂とは︑具体的
にどのようにして読む様子を表していますか︒﹁様子︒﹂につながるように︑本
文中から二十字程度で抜き出して書きなさい︒
⑵ ﹁ ②ひときわ﹂の意味として最も適切なものを︑次のア〜エから一つ選び︑記
号を書きなさい︒
ア 意外に イ いっそう
ウ わずかに エ ひととき
⑶ 本文に述べられている内容として最も適切なものを︑次のア〜エから一つ選
び︑記号を書きなさい︒
ア 筆者は︑大人になるまでにたくさんの点字に触れるうち︑点字の多くが街
で見かけるような︑鉄片やテープに書かれたものであることを知った︒
イ 筆者は︑幼いころ点字に慣れていなかったので読書が好きではなかった
が︑周囲の人々に読書をすすめられるうちに本を読みたいと思うようになっ
た︒
ウ 筆者は︑子どものころ自分が読書好きだとは思っていなかったが︑周囲の
大人が言うように︑夜寝る前も乗り物のなかでもよく本を読んでいた︒
エ 筆者は︑電話帳ほどもある点字の教科書を何冊も持っていくのが大変だっ
たので︑通学途中の電車では好きな本をあまり読むことができなかった︒
20
様子︒ 紙に書かれた点字はaによって感触が変わるものであり︑特に秋は
静かで気候がよいうえに︑bので読書が快調に進むという点で︑読書
に適している︒
20
a
40
b