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EUの新たな挑戦 - 日本国際問題研究所

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Academic year: 2025

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はじめに

欧州連合(EU)加盟交渉とは、実質的には、「アキ(Acquis Communautaire)」と呼ばれるヨ ーロッパ統合の進展過程において蓄積されたEU法と制度の総体系(1)を国内法化する作業を 意味する。ありていに言えば、EUの要求に沿って加盟候補国の法制度、経済制度の国内改 革作業を進め、EU加盟へ向けて国内体系を整備していくのである。この加盟交渉では、通 常、その進捗状況を、「アキ」が規定する各政策分野ごとにEUと候補国の代表者とが定期 的に検証し、一つの分野が達成されたとEUが承認すれば、新たな分野へと進んでいく。過 去6回のEU「拡大」のなかで最短の交渉は、第1回の拡大であるデンマーク、アイルランド、

イギリスの3ヵ国で、1年間の交渉期間の後の1973年1月に加盟条約署名と同時に加盟して いる。2004年の第5次拡大の10ヵ国は、加盟までに4―6年の時間をかけた。

上記のとおり「アキ」は、改革の具体的項目を意味するが、加盟の前提となる条件は

「コペンハーゲン基準」である。冷戦体制の崩壊の結果、国家体制が異なっていた中・東欧 諸国がEU加盟申請に列をなしたが、そうした状況を受けて1997年に明らかにされたのが、

「コペンハーゲン基準」である。すなわち、民主主義、法治主義、人権の確立、少数集団の 権利の保障、そして機能している市場主義経済が国内に確立されていることをEU加盟の前 提条件として掲げている。EUの組織的自己同定である「コペンハーゲン基準」にのっとっ て、それぞれの候補国は、「アキ採択のための国家プログラム」を策定して、それに従って アキを国内法化することが求められる。通常、加盟交渉の対象となるアキは、EU政策分野 ごとの章に分けられており、第5次拡大の中・東欧諸国は31章、8万ページにものぼるEU 法と国内法との調和を実施しなければならなかったと言われる。

このように、大きな忍耐と地道な作業の継続であるEU加盟交渉であるが、トルコの交渉 は足踏みをしていると言える。本稿では、まずトルコのEU加盟交渉の現状を概観し、次に 現加盟国のなかでもトルコ加盟に反対の意見が最も強いフランスで5月に大統領に選出され たサルコジの言動とEUの対応を紹介し、最後に、7月の総選挙で政治的安定を確かにした と思われるトルコの国内情勢が今後の加盟交渉にどのような効果をもたらすかを考えてみ たい。

Hachiya Machiko

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トルコのEU加盟交渉概略

トルコ共和国は1987年にEU加盟申請を提出したが、ようやく1999年12月に公式にEUの 加盟候補国とされ、それから6年後の2005年10月から、クロアチアとともに加盟交渉を開 始した。トルコは、クロアチアと同様に、35章にわたる分野のアキを国内法化することが 求められている。通常は、加盟を前提とした交渉の基本となる国家プログラムを策定し、

アキに調和的な国内制度を整える作業に着手するが、トルコは2000、2003、2005の各年に EUが示した「加盟のためのパートナーシップ」に基づいて、2001年に、短期(1年)と中期

(3年)の国家プログラム、2003年、2005年には実現を2年以内に絞った改訂国家プログラム を策定した。トルコは、国家プログラムの実施のために、憲法改正(2001年および2004年)

と「EU調和法」と呼ばれる立法措置のパッケージを、2002年から2004年までの間に8回に わたって打ち出し、アキに則した国内改革に着手した。これらの国家プログラムの実施は、

交渉開始以前に求められていたのであり、トルコは過去の例とは異なって、アキの国内法 化に着手した時点では、EU加盟が前提とされていなかっただけではなく、加盟交渉さえ開 始されていなかった。しかしながら、これら一連の国内改革の成果は大きく、常に批判の 対象であった人権問題に関しても死刑の廃止など大きな進展が認められて、加盟交渉の開 始へと至ったのである。

ところが、欧州委員会による2006年のトルコに関する年次報告書は、加盟交渉開始後に 提出された最初のものであったが、アキの遵守に厳しい評価を示した。これを受けて同年 12月の欧州理事会は、アキ35章のうちの8章について交渉を凍結することを決定した。そ れらの8章とは、トルコとEUの関税同盟に関する分野である。2005年の「パートナーシッ プ」は、トルコがすべてのEU加盟国と関税同盟を締結してその規定事項を実施することを 求めており、「国家プログラム」もそれに沿った内容となっているが、2004年にEU加盟を 果たしたキプロス共和国を国家として承認していないトルコは、キプロスとの署名に応じ ておらず、トルコのすべての海港と空港を相手国に開放するという関税同盟の規定を、キ プロスに対してはいまだ実施していない。

こうした状況には、トルコ国内の政局が大きく関係している。2002年11月の総選挙で、

トルコでは公正発展党(AKP)による単独政権が成立した。AKPはイスラームの流れを汲む 政党であり、国家原則である世俗主義(ライクリーキ)の前衛である軍部には政権への不信 が根強い。党首エルドーアンの妻はスカーフを着用しているために、世俗主義を擁護する もう片方の雄である大統領が主催する催しには招かれることがないという(2)。このような緊 張関係をはらんでいる世俗主義者と政権与党ではあるが、EU加盟の実現については一致し ている。世俗主義者にとっては、EU加盟はケマル・アタテュルクが目指した「文明的近代 国家」の到達点と言っても過言ではない。かたやAKPにとっては、EUが謳う「民主制」や

「人権」によって信教の自由や表現の自由が保障されることが期待できる。こうした理念的 側面のほかに、EU加盟による経済的発展に対する期待は国民の多くに共有されている。つ まり、EU加盟は、それが同床異夢であったとしても、トルコの国家的目標であったと言え

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る。

しかしながら、EUがトルコに対して課してくる加盟条件が具体的になると、トルコ国内 の勢力間の立場の違いが顕現して、制度改革の進展を妨げる結果になっている。分断キプ ロスの問題はその一つである。キプロス島は1973年のギリシア系キプロス人によるクーデ タの試みを契機に、迫害の危険にさらされていたトルコ系キプロス人を保護するとしてト ルコ軍が侵攻し、以後今日まで、南北に分断された状況が継続している。2003年にエルド ーアン首相は、グリーンラインと呼ばれる国際連合軍が駐留している分断ラインを一方的 に開放する日を設定してみせた。さらに、2006年12月の時期には、国家承認を意味しない という条件のもとに関税同盟に署名をする用意があると発言していた。しかし、欧州理事 会の結論までに署名することはなかった。

その後トルコの国内政局は混乱していく。きっかけは、2007年4月に予定されていた大統 領選挙である。AKPが候補者として外務大臣のギュルを立てたことに対し、軍の反発と干 渉を示唆する警告的な文が軍のホームページに掲載され、4月から5月にかけて世俗主義擁 護の大々的なデモがアンカラやイスタンブールで繰り広げられた。トルコの大統領は、国 会である国民会議での立法措置に対する拒否権を有しており、世俗主義者にとっては、議 会の「独走」への重要な歯止めである大統領までが、イスラームの流れをくむことは絶対 に受容できないことなのである。国民の間でAKPに対する支持が拡大していることは前年 12月の時点でもすでに広く認識されており、次期大統領候補については全国的な関心の高 まりとともにさまざまな憶測が流れた。大統領選挙をめぐる緊張した空気のなかで、世俗 主義のエリートたちのAKPに対する抗議行動は、ひとつ間違えば大きな政治不安へと至る 危険性をはらむ。このような状況のなかで、宗教的要素の有無にかかわらず、キプロス問 題のようなトルコ国家の根幹にかかわる争点については、AKPは保守的な対応をとらざる をえなかったと言える。

一方、加盟条件を徐々に追加していくようなEUのあり方に対して、トルコ国民からは怒 りと失望の声が高まりEU加盟への支持が急激に低下している。たとえば、2004年まではコ ンスタントに70%近い国民の支持を得ていたが、2006年春には45%まで低下した(3)。「EU加 盟はいいことだ」という国民の認識は、「加盟へ向けた準備は、トルコが必要としていた国 内改革を促進させるから意義があり、改革の進展が重要であって加盟そのものは重要では ない」という意見へと変わってきている。こうした国内世論の変化は、EU加盟に対する国 民の熱意の低下であり、ひいては内閣におけるEU政策の優先度の低下を意味する。延期さ れている大統領選挙をめぐる制度改革のための国民投票や、国民会議議員を選出する総選 挙などの重要な案件を目前に抱えていた政権は、当面は国内政治の対策に重きを置かざる をえない状況にもあった。

トルコ加盟をめぐる加盟国とEUの議論

トルコ国内のEU加盟に対する世論にさらに冷水を浴びせるような変化がEU加盟国にお いて続いた。一つはトルコ加盟を一貫して支持していたイギリスのブレア首相の退陣であ

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り、一つはトルコ加盟に反対の意見が強いフランスで、同様に反対を表明していたサルコ ジが新しく大統領に就任したことである。

イギリスのブラウン新首相は、トルコの加盟に関する目立った発言はいまのところない。

一方フランスでは、多数のアルメニア人が犠牲になった1915年の出来事をトルコによるジ ェノサイド(集団殺害)と認める法律が2001年に成立している。さらに、未成立に終わった が、ジェノサイドを否定することに対する罰則が2006年に提案された。また、クルド人に 対するトルコ政府の対応は、トルコの人権問題の代名詞のごとくに受け止められており、

フランスでも厳しい批判にさらされてきた。これらのことに象徴されるように、フランス 世論はオーストリアと並んで、トルコに対して最も厳しく、トルコのEU加盟へのフランス 国民の支持は、2006年の調査では、わずか25%にすぎない。また、2005年の国民投票で欧 州憲法条約が否決された理由の一つに、トルコのEU加盟に対する反対があったとされてい る。

このように厳しいフランスの世論はサルコジ新大統領をいっそう勢いづかせたかもしれ ない。内務大臣であった時から「EUにトルコの場所はない」と公言してはばからなかった 彼のもとでの新内閣は、アキ35章のうち今年後半にトルコとの交渉開始が予測されていた3 章について拒否権行使の可能性をちらつかせながら、トルコのEU加盟に対する反対の態度 を隠そうとしなかった。また、サルコジは大統領に就任すると新たに「地中海ユニオン」

構想を発表した。それによると、地中海沿岸地域の結束を目的に、この地域のEU加盟国と トルコを含む非EU加盟国からなる地域組織の創設を提案している。それに対してトルコは、

あくまでもEU加盟を目指すとして、同案には強い反発を示した。

フランスが新大統領のもとで際立ったトルコ外しの動きをとっていることに対して、欧 州委員会は警告を発している。拡大担当委員のレーンは、トルコとの加盟交渉の開始は、

EU加盟国代表による全会一致の決定であり、そのような決定は十分に尊重されるべきもの であること、そして交渉過程は長期にわたるものであること、さらに、トルコは困難でか つ深遠な歴史的変容をとげつつあるという理解にたって、トルコ国内の改革の進展を見守 っていくことの重要性を繰り返し強調している。

バローゾ欧州委員長も同様の見解を述べている。彼は、トルコはEU加盟を果たす段階に は到達していないことは明白であるとしながらも、EUがトルコに対して扉を閉ざしてしま わないように加盟国に強く求めると同時に、ことはEUの信頼性の問題であるとして、加盟 国の全会一致による決定のもつ重みを訴えている。2007年下半期のEU議長国ポルトガルは バローゾ委員長の出身国である。議長国の任についた日のインタヴューにおいて、ポルト ガルの主要閣僚は欧州委員長の発言を確認している。議長国は、EUの意思決定機関であり 全会一致を制度に残す理事会の議題を調整する役割をもつ。上半期の議長国を務めたドイ ツ同様に、ポルトガルにとっても最優先課題は欧州憲法条約の合意を打ち立てることであ り、トルコの加盟交渉をことさらに困難な状況にする意思はない。なにより、トルコの政 治的安定に果たすEUの役割については、自国のEU加盟の経験も踏まえて、フランスより ははるかに敏感であろうと思われる。

(5)

トルコ総選挙と評価

2007年7月22日にトルコ国民会議の総選挙が実施された。結果は、大方の予測どおりに 政権与党であったAKPが46.59%の得票率を得て大きな勝利を収めた(4)。今回の総選挙で、

世俗主義を護るというイデオロギー対決を試みた野党と軍の戦略は、EU加盟をてこに国内 制度の改革をすすめる態度を明確にした与党に敗北したことになる。また、経済が好調で あることと党組織を基盤にしたきめ細かい住民サービスも支持を固めるのに大きく貢献し たと言われており、いわゆる世俗主義のトルコエリート層と一般国民との現状認識の乖離 が明らかになったとも言える。

今回の総選挙の結果は、諸外国には概して好意的に受け止められており、欧米のメディ アでは、トルコにも予測可能な政治状況が生まれて政治的安定が確立してきたことを歓迎 する論調が多くみられた。同様の反応は経済面にも顕著で、選挙結果を受けてトルコへの 外国からの直接投資が大幅に増加している。AKPが政権を続行することについては、安定 と民主制への期待がイスラーム化への不安をはるかにしのいでいると言えるだろう。

この後、もう一つの大きな選挙である大統領選が予定されているが、その選挙方法を国 民会議議員による選出から国民の直接選挙へと変更する法案を、総選挙に先立つ7月7日に トルコの憲法裁判所が承認した。この判決は、法案の無効を求めて野党の共和人民党(CHP)

と大統領の二者が原告となって憲法裁判所へ提訴していたケースに対するものであるが、

裁判官の投票による判決は、6対5の僅差で法案を認めるものであった。7月31日の時点で は、候補者は明らかにされていないが、だれが立つにしろAKPが推薦する候補者の勝利を 予測することは、現時点では自然なことと思われる。

EUのなかでもAKPをイスラーム政党とする警戒心が消失してはおらず、宗教的マイノリ

ティー(キリスト教徒とユダヤ教徒)への配慮と世俗主義の一側面としての信教の自由の確 立を要望する声明も出された。一方、行政を担う欧州委員会は、2002年秋以来与党の地位 にあるAKPの総選挙での勝利を、さらなる国内改革の促進を保障するものとして歓迎して いる。また、国民投票型の大統領選挙制度の導入についても、民意のより明確な反映を可 能にするとして歓迎している。

今後の展望とEUの役割

トルコ国民の強い支持を民主的に獲得したAKPは、軍の政治的影響力をさらに弱体化さ せることを含めて、アキの実施における国内の自律性を高めることが可能な状況を作り出 した。キプロス問題以外に、トルコの国内改革のスピードが鈍っているという批判がEUか ら出されていたことに対して、トルコ政府は、すでに4月17日(軍の警告文がホームページ に掲載される10日前)に独自の改革ロードマップを公表した。それによると、トルコ国民の 最高レベルの生活の実現を目指して国内改革を進めることと、EU加盟はあくまでもトルコ の目標であり、2013年までにアキの条項を整えていくという強い政治的意思を表明してい る。なかでも注目すべきは、「トルコ国家への侮辱」の罪によって多くの知識人やジャーナ

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リストが訴追され、言論の自由の侵害であるとしてEUによる厳しい批判の対象となってい る刑法301条の修正を、「断固として」実施するとギュル外相が断言していることである。

トルコ政府は、4月の時点で交渉が終了している研究開発と産業政策以外の、アキの残り33 章に則して具体的な立法事項を提案しているが、ババジャンEU交渉担当大臣によれば、こ れらの提案の実施には、国民会議で200ほどの法律と、政府による400を超える施行規則の 成立が見込まれるという。

ただし、第3党に躍進した民族主義者行動党(MHP)が、たとえばキプロス問題のような トルコのナショナリズムを喚起しうる問題において、与党と対立することも考えられる。

トルコのナショナリズムの発露は、宗教ではなくアタテュルク主義であり、トルコ共和国 の一体性を追求する国家のあり方は基本的にEUが標榜する「多様性」とは相容れない性質 をもつと言える。コペンハーゲン基準の一つでもある「少数者集団の尊重」は、トルコ国 内のクルド人の地位や権利と即座に関係する条項でもある。このような国民感情を刺激し やすい課題に対して、AKPがどのような舵取りをするかは注目に値するであろう。

その際に、トルコ国内における政治的安定の錘おもりはEU加盟への期待が提供することを忘れ てはいけない。軍の政治的影響力の後退を可能にしているのは、EUという外圧である。そ の逆に、民族主義を前面に打ち出すMHPの今回の選挙での議会進出は、EU内のトルコ加盟 への抵抗がもたらしたという側面もむげには否定できない。

トルコを加盟国として迎えることは、EUにとっての挑戦であると同時に、現実的メリッ トも多々あることは事実である。わけても、トルコとの関係においてEUにとってのより重 要で喫緊の課題は、しばしば言われるような軍事的安全保障ではなく、エネルギーの安全 保障である。EUは天然ガスの供給をロシアに大きく依存しており、そのような現状の改善 に貢献しうるジェイハンパイプラインの設置や、石油積出港としての能力を備えたトルコ をEU域内にもつことは、EUの経済活動と周辺地域の政治的安定に大きな意義をもつであ ろう。実際、ヨーロッパが必要とする石油と天然ガスの15%を仲介する能力が期待されて おり、レーン拡大担当委員は、このようなトルコの重要性にはっきりと言及するようにな っている。

しかしながら、「価値の共同体」として民主制や人権を重要な加盟条件とするEUにとっ て、トルコの状況はいまだ不十分であり、また、EU内でのトルコへの支持も相変わらず低 い。当面は、トルコの国内改革を制度的に支援していくことで加盟への後押しを継続する ことが、EUの肯定的なメッセージとなる。ドイツは議長国として、統計と財務管理の2章 のアキについて交渉を開始することを決めた。トルコは、ユーロ導入にかかわる経済通貨 同盟に関する章も交渉に加えることを期待していたが、フランスの要求により、当該章に 関しては「トルコに対するEUの立場をもっと時間をかけて検討する」(5)こととなった。ト ルコにとって不満は残るが、EUは長期戦を覚悟の加盟交渉を継続する意思は示したのであ る。今後の進展は、トルコによるアキの実施のみならず、「全会一致の決定は尊重されるべ し」とする欧州委員会が、特定の加盟国の抵抗を前にどこまでその責務を全うできるかに もかかっている。

(7)

トルコのEU加盟は現実的なメリットをEUにもたらすと同時に、安定したトルコ社会を

EUに迎え入れることは、EUが標榜する「多様性のなかの統合」を最大級に実現することに

もなるはずである。

1) 中村民雄「EU法制度の形成と東方拡大」、森井裕一編『国際関係の中の拡大EU』、信山社、2005 年、39ページ。

2) トルコの大統領の任期は7年で再任はない。2007年4月に退任予定であったセゼル大統領は、憲 法裁判所裁判官の前歴をもつ徹底した世俗主義者である。セゼルの後継者の選挙は、2007年7月31 日時点では未実施であるため、憲法の定めに従って、後継者が決定するまでは現職者のセゼルが 大統領の任務を執行している。

3 Eurobarometerの各回調査結果。

4) ただし、議席数は341議席となり、改選以前の352よりは減らした。これは10%条項をクリアし

70議席を獲得した第3党(MHP)の進出による。第2党(CHP) は112議席獲得。国民会議は

550議席であり、その3分の2の367議席で憲法改正も可能である。

5 EUobserver, 25. 06. 2007.

■参考文献

ジャン = ドミニック・ジュリアーニ著(本多力訳)『拡大ヨーロッパ』、白水社、2006年。

八谷まち子編『EU拡大のフロンティア―トルコとの対話』、信山社、2007年刊行予定。

【追記】

トルコの大統領選挙は、国民投票法案の合法性が認められたが法案そのものは審議を 経ていないので、今回も国民会議議員の選挙によって選出される。AKPは再び、ギュル 外相を大統領候補にたてた。憲法の定める手順にしたがって、8月20日に第1回目、24日 に第2回目の投票が実施され、8月28日の第3回投票でギュル候補が過半数を制して選出 されると予想されている。EU拡大担当委員のレーンは、フィンランドの新聞のインタビ ューで、選挙が民主的かつ合法的に遂行されることの意義を強調するとともにギュル大 統領候補を歓迎する意向を表明している。

「連載講座:EUの新たな挑戦」

第1回 EUの安全保障・防衛政策の可能性と課題 (4月号)

広瀬佳一(防衛大学校教授)

第2回 EUの経済と単一通貨ユーロの現在(5月号)

田中素香(中央大学教授)

第3回 欧州における移民問題の現状と課題(6月号)

三浦信孝(中央大学教授)

第4回 EU の機構改革と欧州憲法条約(78月合併号)

小窪千早(日本国際問題研究所研究員)

はちや・まちこ 九州大学准教授 [email protected]

参照

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