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序 文 - 日本国際問題研究所

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Academic year: 2023

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序 文

野上義二

1.本報告書の目的と背景

日本国際問題研究所においては、2010 年度の研究プロジェクトの一つとして、「日 米関係の今後の展開と日本の外交」に関して特に日米関係・日本外交の現状と今後の 展望に焦点をあて、当該分野に詳しい専門家を結集して日米関係の今後の展開と日本 の外交につき多角的に分析・検討する研究会を設置し研究を行った。本報告書はその 成果であり、研究会合での報告・討議、海外調査出張、シンポジウムでの意見交換な どで得られた知見をもとに、わが国の対米政策をより有効なものとするための政策提 言の一助となるべく、「調査報告書」としてまとめたものである。

激動する国際社会の中にあって、わが国は戦後半世紀以上にわたり平和と繁栄を享 受してきた。この要因としては、いうまでもなく国民の努力があげられる。加えて、

わが国が自由主義国の一員として関係諸国との友好と協調を図ってきたこともわが国 に繁栄をもたらした一大要因といってよい。なかでも、「日本国とアメリカ合衆国との 間の相互協力及び安全保障条約」、いわゆる日米安保条約と安保体制は自由と民主主義 という基本的な価値、理念を共有し、強大な軍事力を有する米国との同盟関係を継続 し、その抑止力をわが国の安全保障のために一貫して有効に機能させることで、わが 国自らの適切な防衛力の保持と合わせ、わが国の安全と繁栄を確保してきた。金融危 機やテロ、疫病の拡大や大規模自然災害、気候変動など、少なからぬグローバルな課 題を抱える現在の国際社会を見ても、日米両国の共通の価値観や利益に基づく日米同 盟が重要であり続けることはいうまでもない。特に2010年は日米安保条約の調印から 50周年を迎え、節目ともいうべき重要な年である。

以上のような問題意識を踏まえ、当研究所は外務省からの公告に応募の上、「日米関 係の今後の展望と日本の外交」を以下に示す二つのサブテーマに分けて企画立案し、

実施してきた。サブテーマ1及びサブテーマ2の両面から米国の同盟関係・日米同盟 を総合的に研究し、互いの研究成果を有機的に連関させることにより、(1)米国の同 盟政策の全体像、(2)そこにおける日米同盟の相対的位置づけ、(3)日米関係の現状 とその長期的展望が総体的に明らかにされよう。

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サブテーマ1:『アメリカ外交にとっての同盟の研究』

サブテーマ2:『公共財としての日米同盟と日本の役割』

2010年度においては、それぞれのサブテーマごとに最適と思われる研究者を選定し、

サブテーマ1、サブテーマ 2 についてそれぞれ 10 名前後の研究者により構成される

「ワーキング・グループ」(以下 WG1、WG2 と呼ぶ)を設置し、研究報告会を定期的 に実施してきた。研究報告会には、各WGのメンバーの他、外務省の担当官等にも広 くオブザーバーとして参加を呼びかけ、政策提言の参考とする機会を与えてきた。

それ以外にも2011年2月にはWG1、WG2のメンバーによるシンポジウム「同盟を 考える」を実施し、本研究プロジェクトの成果を広く発信する機会を設けた。そこで 得られたフィードバックをもとに、それらの意見を今後の研究に一層反映させた。各 サブテーマの内容は以下のとおりである。

2.本研究プロジェクトの説明

(1)サブテーマ1の概要と説明

サブテーマ1 は主に米国を主軸として、日米同盟を中心に米国の同盟関係(英国、

イスラエル、NATO、韓国、フィリピンなど)の歴史と現状につき、網羅的に比較研究 するものである。この作業を通じて、日米同盟の相対的役割や意義、重要性がよりいっ そう明らかなものとなるであろう。

サブテーマ 1 においてはアメリカがもつ多数の同盟関係におけるアメリカの国益と 動機、同盟関係が抱える困難、アメリカの同盟国との妥協の様相などを明らかにして きた。そこでは日米同盟を中心的な問題関心とするが、それをより広く、米国の他の 同盟関係との比較的な観点から理解しようと試みる。当然ながら、同盟成立時の利害 調整やそれに由来する歴史的環境も研究対象の重要な一部であるが、同一の同盟にお いても、世界情勢や国内政治状況に鑑みて同盟の内容は常に変化している。このよう な変化の部分も十分に念頭に置いて、現在アメリカが結んでいる同盟とそれを支える 政治的構造を解明し、それによって日米同盟の特徴をより鮮明にものにしようという のがここでの問題意識に他ならない。

とりわけ、日米同盟においてアメリカの国益はどこにあるのか。また、アメリカは 自らの国益と引き換えに日本とどのような妥協をしているのか。それは米国の他国と の同盟関係と比較してどの部分において同様で、どの部分が異なっているのか。それ ぞれの同盟において所謂「同盟の非対称性」はどのような形で存在しているのか。以 上の作業を通じて日米同盟を米国の多層的同盟のどこにどのように位置づけることが

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可能であろうか。これらが本サブテーマにおける中核的な問いである。

わが国における類似の研究としては船橋洋一編著『同盟の比較研究―冷戦後秩序を 求めて』(日本評論社、2001 年)や桜田大造・伊藤剛編『比較外交政策』(明石書店、

2004年)などがあるが、いずれも「同盟」の一般的研究といえよう。本プロジェクト は、「アメリカにとっての同盟」という視点を明確に打ち出した研究であり、特に日米 同盟への政策的インプリケーションを強く念頭においている点で類のない研究である といえる。プロジェクト参加者の能力やキャリアを見てもわかるように、この研究は 学術的に非常に高いレベルにあることはいうまでもなく、それと同時に日米関係の現 場にいる実務家にとっても大いに指針を与えるものとなろう。

研究期間は、1 年単位であるが可能な限り 2 年間の継続的研究を目指すこととし、

その終了時に単行本を刊行したいと考えている。2010年度はそれぞれの専門家による 考察を進めるべくほぼ月1回のペースで研究会合を開き、相互の有機的関連性につい ての議論を深めてきた。

(2)サブテーマ2の概要と説明

サブテーマ 2 は日本からみた日米同盟の重要性と意義、問題点などを総括的に研究 するものである。この作業を通じて、わが国からみた日米関係の現状、日米関係(特 に日米同盟)が抱える問題点とその解決方法、そして将来の日米関係に関する長期的 展望が得られるであろう。

現在、必ずしも同盟関係自体が危機に瀕しているとは言えないだろうが、米軍普天 間基地移設先の見直しを巡る一連の混乱が中長期化すれば、日米両国政府間に著しい 信頼性の低下を招きかねない。

そして、そのような状況は、世界の国、就中アジア諸国の懸念を生み、日米同盟が 揺らぐことによって、多くの東アジア諸国は、自国の防衛安全保障政策が日米同盟を 前提に成立してきたことを再確認している。中国の台頭に敏感な東南アジア諸国の駐 日大使以下大使館員は、日本の同盟政策に関する情報収集と分析に多くの労力を費や し、北朝鮮情勢の流動化に備える韓国からも懸念の声が伝えられる。このことは、日 米同盟が東アジアの、そして世界の公共財であることを、図らずも浮き彫りにしたと 言えるだろう。

そのことを日本の課題としてみれば、これまで日本の社会と政治が公共財としての 日米同盟の実像にどれだけ自覚的であったのかという問題を提起している。「55 年体 制」とよばれる日本的な政治社会環境の下で、日米同盟に関する問題設定と国民的議

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論が、果たしてどこまで的確に行われてきたであろうか。

今日、東アジア情勢を含めた世界の安全保障環境は根本的に流動化している。昨年 2月に米国国防省が公表したQDRは、サイバーテロや「グローバル・コモンズ」への 挑戦等の新たな世界的脅威や、イラク・北朝鮮・中国の「アクセス拒否戦能力」の高 まりへの懸念を強調し、これまでの米国の優位を前提とした安全保障環境が揺らいで いることへの危機意識を滲ませた。そして、米軍による「空海戦力統合」の考え方を 示し、同盟関係の再構築や多国間枠組みのアプローチの重要性を強調した。

それは、公共財としての日米同盟が危機意識をもって対処すべき問題であり、言う までもなく日本の安全保障政策にとって他人事ではない。そこでサブテーマ 2 では、

流動化する国際安全保障環境の現状を分析するとともに、現状および今後の展望の下 で、日米同盟がどのような新たな課題に直面しているのかについて、日本の視点から 検討を深めてきた。その作業は、日米同盟の公共財としての性質を再確認ないし再定 義し、それを前提とした日本の外交安全保障政策のあり方について、今後の方向性を 示し、新たな政策課題を提起するものとなる。

サブテーマ1同様、専門家による考察を進めるべく月1回を目処に研究会合を開き、

相互の有機的関連性についての議論を深めてきた。

3.本研究プロジェクトの成果

本研究プロジェクトの遂行にあたっては以下のような二つの目標をたてて望んでき たが、この目標を遂行する過程で以下のような効果が得られた。

第一に、本研究プロジェクトは現実の政策立案への貢献を目指すものとして立ち上 げられた。すなわち、二つの研究グループが同盟を総合的に研究することにより、現 在の米国の同盟政策の概観、日米の二国間関係・日米同盟が抱える課題とその解決策、

日米関係の有する現代的意義について研究を深めるとともに、同研究を踏まえた新し い時代に相応しい日米関係について政策提言の手がかりとなる知見を提供するもので ある。

この目標のもとに2010年度においては研究会合での報告・討議、海外調査出張、シ ンポジウムでの意見交換などを鋭意実施し、そこでの知見をもとに同盟に関する現実 的政策提言のヒントとなる知見を数多く盛り込んだ「調査報告書」として、本報告書 をまとめることができた。詳しい内容については本報告書の「第一部」、「第二部」を 実際に参照されたい。

第二に、本研究プロジェクトの実施を通じて、日本の外交政策シンクタンクの役割

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と機能を一層強化することをもあわせて目指してきた。すなわち、研究成果を日本国 内にとどまらず、当研究所がこれまで培ってきた国内外の研究機関・研究者との強固な 連携をもとに、広く海外にもその成果を公表することを通じて、日本独自の日米関係 に関する研究の成果を海外にも発信し、国際世論形成に際してのわが国の影響力を高 めることを目指すものである。この点において明らかなように、本研究プロジェクト は世界的な視野に立った国際関係に関する研究であるとともに、研究機関・研究者間 の国際的連携を深めることを通じて日本と外国との相互理解を促進することにも大い に貢献するであろう。将来的には、本プロジェクトをベースとしたより大きな国際的 研究プロジェクトの進展も展望できよう。

この目標のもとに、2011年2月にはWG1、WG2のメンバーによる合同シンポジウ ム「同盟を考える」を実施し、本研究プロジェクトの成果を広く発信する機会を設け た。シンポジウムの概要については本報告書の「付録」を参照されたい。

参照

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