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論文内容の要旨 - 自治医科大学機関リポジトリ

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Academic year: 2025

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氏 名 楊よ うEA AE EA AE E 学 位 の 種 類 博士 (医学) 学 位 記 番 号 甲第576号

学 位 授 与 年 月 日 平成31年3月20日

学 位 授 与 の 要 件 自治医科大学学位規定第4条第2項該当

学 位 論 文 名 膵β細胞の内因性機能制御因子としての Nesfatin-1 の役割の解明 論 文 審 査 委 員 (委員長) 教 授 原 一 雄

(委 員) 教 授 石 橋 俊 准教授 豊 島 秀 男

論文内容の要旨

1 研究目的

現在、日本ならびに世界において糖尿病患者が増加しており、深刻な健康上の問題となってい る。糖尿病の90%以上を2型糖尿病(T2DM)が占めている。T2DMは、インスリンの絶対的あるい は相対的な不足により、慢性的な高血糖を呈する。インスリンの不足は膵β細胞と深く関わって いる。膵β細胞は、インスリンを分泌する唯一の細胞であり、インスリンは血糖を低下させる唯 一のホルモンである。

膵β細胞においてグルコース刺激インスリン分泌(glucose-stimulated insulin secretion;

GSIS)の機序として、グルコースが細胞内に取り込まれ、解糖系やミトコンドリア代謝によりATP

が産生され、ATP/ADP比が上昇する。これによりATP感受性K(KATP)チャネルの開口率が低下す る。その結果、細胞膜脱分極が起こり、電位依存性 Ca2+チャネルが開口し、細胞質内 Ca2+濃度

([Ca2+]i)が上昇する。[Ca2+]i増加によりインスリン顆粒の開口放出が惹起される。

一方、膵β細胞の増殖経路として、膵β細胞膜におけるインスリン受容体 (IR)/インスリン様 増殖因子受容体(IGF-1R)のチロシン残基IRS-2をリン酸化する。その下流因子Aktのリン酸化 が起こり、シグナル伝達され、膵β細胞分化・増殖を刺激する。

Nesfatin-1は、前駆体NEFA/nucleobindin2 (NUCB2) のプロセッシングにより作られるN末端 の82個アミノ酸のペプチドである。2006年に、Nesfatin-1 が摂食抑制作用を持つことが初めて 報告された。2009年に、室傍核parventricular nucleus (PVN)に局在するNesfatin-1がオキシ トシンを介して摂食を抑制する神経経路が報告された。その後の研究において、Nesfatin-1の構 造はヒトやげっ歯類動物で高度に保存されていること、中枢に加えて末梢組織の胃、十二指腸、

脂肪組織、膵β細胞に発現していることが報告された。さらに、Nesfatin-1の末梢投与はインス リン分泌を促進することが報告された。そこで、膵β細胞から分泌させるNesfatin-1は、オート クライン作用で膵β細胞のインスリン分泌、増殖を促進する可能性が示唆される。しかし、膵β 細胞内の内在性NUCB2/Nesfatin-1の機能は、明らかでない。

そこで本研究は、膵β細胞内在性NUCB2/Nesfatin-1のインスリン分泌および膵β細胞保護・増 殖における役割、および、その膵β細胞内情報伝達系を解明することを目的とする。

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2 研究方法

2.1 膵β細胞において特異的に NUCB2/Nesfatin-1 がノックアウトされたマウス(βNUCB2 KO) を用い、以下の解析を行った。体重、随時血糖値と耐糖能を測定した。膵臓組織を採取しパラフ ィン切片を作製し、免疫染色を行なった。コラゲナーゼを用いて膵ランゲルハンス島(膵島)を 採取し、グルコース刺激によるインスリン分泌量をELISA kitを用いて測定した。膵島からβ細 胞を単離し、Ca2+感受性蛍光色素fura-2を用い蛍光画像解析により細胞質遊離Ca2+濃度([Ca2+]i) の測定を行い、各種分泌刺激に対する応答を計測した。

2.2 NUCB2 shRNA 発現プラスミドを遺伝子導入し、安定発現した膵β細胞株MIN6 細胞(NUCB2

shRNA-MIN6 細胞)を用い、以下の解析を行った。ELISA kit を用いてグルコース刺激によるイン

スリン分泌量を測定した。リアタイムRT-PCR法とWestern Blot法を行い、インスリン分泌及び 細胞増殖に関与する遺伝子とタンパク質の発現をそれぞれ検討した。WST-1法、BrdU 取り込み、

DNA染色マーカーPCNAの方法を用い、細胞増殖能を検討した。

3 研究成果

3.1 βNUCB2 KOマウス:

βNUCB2 KOマウスは、⑴随時血糖値が上昇し、体重が減少した。⑵グルコール負荷試験におけ る耐糖能が低下した。血漿 GLP-1 濃度の変化がなかった。⑶単離膵島において、低濃度グルコー ス(2.8 mM)存在下のインスリン基礎分泌が低下傾向を示し、高濃度グルコース(8.3 mM)存在 下のインスリン分泌が有意に抑制された。⑷単離β細胞における、高濃度グルコース(8.3 mM)

刺激に対する[Ca2+]i増加が抑制された。一方、トルブタミド、アルギニン刺激(2.8 mM グルコ ース存在下)に対する[Ca2+]i増加は変化しなかった。

3.2 NUCB2 shRNA-MIN6細胞:

NUCB2 shRNA-MIN6 細胞では、⑴高濃度グルコース(16.6 mM)刺激下のインスリン分泌が有意 に抑制された。⑵UCP-2 mRNA の発現が増加した。IRS-2 mRNA、リン酸化 Akt の発現が低下した。

⑶生細胞数、DNA合成が減少し、PCNA蛍光染色が抑制された。

4 考察

インスリン分泌:

βNUCB2 KOマウスは、随時血糖値の増加および耐糖能障害が示したことから、膵β細胞内在性

Nesfatin-1 には血糖を維持する機能があることが示唆される。次に、βNUCB2 KO マウス膵島と

NUCB2 shRNA-MIN6細胞は、高グルコース刺激によるインスリン分泌が低下したことから、膵β細

胞内在性 Nesfatin-1 は膵β細胞からのインスリン分泌を維持することが示唆される。また、β

NUCB2 KO マウスの単離β細胞[Ca2+]iの各種分泌刺激応答のうち、高グルコースに対する応答が

障害されていた。一方、トルブタミト、アルギニンに対する反応は正常であったことから、脱分 極応答、KATPチャネル自身は正常であることが考えられる。以上の結果から、内在性Nesfatin-1 は、脱分極よりも上位のグルコース代謝の過程・分子に障害があると示唆される。候補分子とし て、グルコーストランスポータ2(GLUT2)、グルコースリン酸化酵素glucokinaseおよびグルコ ース 6-リン酸(G6P)酵素が挙げられる。一方、NUCB2 shRNA-MIN6細胞において、ATP 産生を低 下させるUCP-2 mRNAの発現が増加したことから、膵β細胞内在性Nesfatin-1は細胞内ATP産生

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を維持する機能を持つ可能性がある。

膵β細胞の再生・増殖:

NUCB2 shRNA-MIN6 細 胞 に お い て 、 細 胞 増 殖 マ ー カ ー が 低 下 す る こ と か ら 、 内 在 性 NUCB2/Nesfatin-1 には膵β細胞増殖を維持する機能が示唆される。さらに IRS-2 mRNA の発現お よび下流因子Aktのリン酸化が抑制されることから、膵β細胞内在性Nesfatin-1はインスリンシ グナル伝達経路を維持していることが示唆される。

5 結論

本研究では、膵β細胞内在性NUCB2/nesfatin-1はインスリン分泌を維持する機能と細胞増殖を 維持する機能を持つことを明らかにした。また、膵β細胞内在性NUCB2/Nesfatin-1は、インスリ ンシグナル伝達を維持・促進することにより、膵β細胞の増殖に関わることを示した。

本研究の結果は、膵β細胞内在性NUCB2/nesfatin-1を分子標的としてインスリン分泌促進およ び膵β細胞増殖を促進する、新規糖尿病治療薬開発の基盤となる可能性がある。今後、膵β細胞

内在性NUCB2/nesfatin-1発現と膵β細胞増殖の因果関係の検証が重要な課題である。

論文審査の結果の要旨

摂食中枢で重要な機能を持っているNesfatin-1が膵β細胞においても何らかの役割を担ってい ることが推測されているものの、膵β細胞特異的な作用についてはほぼ不明である。本研究は発 生工学的手法や様々な実験系を活用して膵β細胞にけるNesfatin-1のインスリン分泌機構におけ る役割を解明しようとするものであり、学問的意義と新規性のある研究と評価できる。

NUCB2遺伝子欠損によりNesfatin-1のみならずNesfatin-2および3も欠損し、本研究では厳

密には Nesfatin-1欠損だけの効果を見たものではない可能性もあるが、既報ではNesfatin-2 お

よび3の生物学的作用は報告されておらず、学位論文として合否判断を超えたレベルであり、今 後更に研究を発展させていけば良いと思われる。

最終試験の結果の要旨

2次審査の指摘事項について一部更なる改訂が必要であるが、軽微なものであり最終審査とし ては合格とする。

参照

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