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論文内容の要旨 - 自治医科大学機関リポジトリ

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Academic year: 2025

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氏 名 澤さ わEA AEは たEA AE美千瑠 E 学 位 の 種 類 博士 (医学) 学 位 記 番 号 甲第477号

学 位 授 与 年 月 日 平成27年3月18日

学 位 授 与 の 要 件 自治医科大学学位規定第4条第2項該当

学 位 論 文 名 サルコイドーシスの病態研究:日本人サルコイドーシスの臨床像とその 時代的変遷

論 文 審 査 委 員 (委員長) 教 授 石 川 鎮 清

(委 員) 教 授 杉 本 英 治 准教授 江 口 和 男

論文内容の要旨

1 研究目的

サルコイドーシスは、呼吸器系を中心とした全身臓器に異時性に多彩な病変を生じる、原因不 明の肉芽腫性疾患である。未知の抗原に対する増幅され持続するTh (T-helper cell) 1型肉芽腫反応 と理解されているが、病態は未だ解明されていない。分子生物学的、病理学的、疫学的研究から、

初期病態では原因抗原が肺から侵入し、胸郭内の所属リンパ節を侵すことが推定されている。欧 米では抗酸菌を、日本では環境に常在するPropionibacterium acnes (P. acnes)を原因抗原とみなす 異なる病因論を展開している。

サルコイドーシスは遺伝的素因を持つ個体において何らかの環境要因の変化を契機に発病する と考えられているものの、その詳細は明らかになっていない。環境要因は個体を取り囲む外的な ものと内在する内的なものに分類できるが、確定的なものは得られていない。疫学的に農村居住 や農業従事や微生物曝露と疾患の発生の関連が指摘されている。

サルコイドーシスの病態の本質や環境リスク要因を明らかにするためには、疫学研究がきわめ て重要である。臨床像は人種間で異なることが知られており、その共通性や相違性を把握するこ とで、これ等を明らかにし得ると期待される。しかし近年の日本における大規模疫学研究として は、厚生労働省難病克服事業の一環として2004年に行われた第9回全国疫学調査以外にはない。

そこで本研究では、2つの研究(研究1: 日本人サルコイドーシスの臨床像、研究2: 日本人サルコ イドーシス臨床像の時代的変遷)を行い、病態解明への一助とすることとした。

2 研究方法

1974 年から2012 年に自治医科大学付属病院呼吸器内科で新規診断されたサルコイドーシスの 連続症例588例(組織診断群431例、臨床診断群157例)の臨床記録を後方視的に検討した。研究1 では、胸部X線病期、臓器病変分布、発見動機を中心とした臨床像について、性別による比較と ともに、若年診断群(45歳未満)と高齢診断群(45歳以上)の2群に分類し年齢による比較を行った。

また研究2では、診断時期により10年毎の4群に分類し、臨床像を比較した。

本研究内容は本学倫理委員会の承認を得ている(臨A12-54 2013年1月8日)。

(2)

3 研究成果 研究1

1.臓器病変分布

・呼吸器系は性別・年齢によらずほぼ全ての患者で侵されていた。

・男性では胃十二指腸病変、唾液腺病変、腎病変が女性より有意に多く、高Ca血症も多い傾向が あった。女性では眼病変が有意に多かった。

・若年群では胸郭外リンパ節病変、唾液腺病変、肝病変が高齢群より有意に多 くみられた。高齢群では眼病変、心病変、筋病変、腎病変等のリンパ系臓器 以外の多様な胸郭外臓器の病変がみられた。

2.胸部X線写真病期

・男性では肺門部リンパ節腫脹(BHL:bilateral hilar lymphadenopathy)、肺野病変が女性より多い傾 向にあり、Ⅰ期+Ⅱ期が有意に多かった。

・若年群では BHLのあるⅠ期とⅡ期が高齢群に比べ有意に多く、高齢群では0 期とⅢ/Ⅳ期が多 かった。高齢になるほどⅠ期とⅡ期の占める割合は一貫して減少した。

研究2

1.診断時年齢の時代的変遷

人口動態における高齢者割合の増加による影響を除去して検討したところ、この40年間で以下の 変遷が示された。

・男女とも診断時年齢は高齢化し続けていた。

・男女とも若年成人の発症を示す第一ピークの明らかな低下傾向が認められた。

・女性のみでみられる45歳以降の第二ピークは、一貫して保たれていた。

2.臨床像の時代的変遷

・増加傾向にあるのは0期とⅢ/Ⅳ期とともに高Ca血症、胃十二指腸病変、皮膚病変、神経病変、

筋病変、腎病変であり、いずれも高齢診断群に多く見られる傾向がある病期/病変であり、診断時 年齢の高齢化との関連が考えられた。

4 考察

日本人サルコイドーシスの臓器病変分布は年齢に関連する

呼吸器系は男女とも年齢によらずほぼ全ての患者で侵されおり、特に若年群では大部分がBHL を呈していた。また若年群では胸郭外リンパ節病変、唾液腺病変、肝病変も比較的高頻度に侵さ れていた。同様の傾向が、以前の他人種における研究結果でも示されている。初期病態で原因抗 原が経気道的に侵入し、胸郭内の所属リンパ節を介してリンパ管系や血管系をめぐり、胸郭外リ ンパ節や肝臓や脾臓を侵すという病態仮説を肯定する結果であると考えられた。

日本人サルコイドーシスの胸部X線写真病期は年齢に強く関連する

本研究は、胸部X線写真病期は年齢に関連することを明確に示した初めての報告である。20歳 代では男女ともにほとんどの症例でBHLがみられたのに対し、この頻度は加齢に伴い一貫して減 少した。原因抗原が循環経由する胸郭内リンパ節で抗原特異的Th1細胞の増殖が起こること、ま た加齢に伴い増強する免疫制御機構の影響を受けることを反映している可能性がある。

(3)

診断時年齢の高齢化は外的環境要因の変化と関連する可能性がある

この40年間に男女とも診断時年齢は高齢化し続けていること、また少なくとも若年成人の発症 を示す第一ピークの明らかな低下傾向を反映していることが把握できた。診断時年齢の高齢化は 米国やデンマークでも観察されているが、特に遺伝的均一性が高い日本人における結果は、本症 の発病年齢が遺伝的素因のみでなく環境リスク要因によって修飾される可能性を示している。日 本における環境リスク要因が、この40年間で変化してきている可能性がある。

若年成人における発生頻度の低下は、農村環境の都市化に伴い多様な微生物に曝露される機会 が減少してきていることによって説明できるかも知れない。これまでに疫学的に微生物曝露と本 症発生との関連が示され、抗酸菌やP. acnesといった特定の微生物を原因抗原とみなす病因論が 展開されてきた。一方で農村環境における多様な微生物曝露は、原因抗原の肺への侵入機会を増 やすばかりでなく、過剰なTh1型免疫反応を生じやすい疾患感受性をもたらし、本症の発病に寄 与している可能性も否定できない(衛生仮説)。

診断時年齢分布の女性特有の第二ピークは内的環境要因の変化と関連する

日本人サルコイドーシスの診断時年齢分布は、ヨーロッパ諸国と同様、男性では若年成人期に ピークをもつ一峰性であるのに対し、女性では45歳以降に第二ピークをもつ二峰性を呈すること が知られてきた。この40年間で女性のみでみられる45歳以降の第二ピークは一貫して保たれて おり、高齢女性の発病に寄与する内的環境要因の存在も示唆される。

2012年に女性特有の内的環境リスク要因に注目した初めての疫学研究が報告されている。米国 黒人女性を対象とした検討であり、妊娠年齢や閉経年齢が高齢になり女性ホルモンへの曝露期間 が長くなるほど発生頻度が低下する傾向から、女性ホルモンが本症の発病に対し防御的に働く可 能性を指摘している。これまで日常臨床において本症の妊娠女性における病状の軽快とともに出 産後の増悪や発病が経験され、また肝サルコイドーシスで卵巣ホルモン補充による良好な効果が 報告されている。閉経に伴う卵巣ホルモンの欠乏状態が、本症の発病に寄与している可能性があ る。

5 結論

自治医科大学附属病院呼吸器内科における約40年間の蓄積症例を検討し、日本人サルコイドー シスの臨床像とその時代的変遷を明らかにした。

(1) 診断時の臨床像、特に胸部 X 線写真病期は年齢に関連していた。経気道的に侵入した原因抗 原が胸郭内の所属リンパ節を介してリンパ管系や血管系をめぐる経路とともに、加齢に伴い 増強する免疫制御機構を反映している可能性が考えられた。

(2) この約40年間に、診断時年齢は男女とも高齢化し続けており、若年成人の発症を示す第一ピ ークの明らかな低下傾向が認められた。日本における環境リスク要因が変化してきている可 能性がある。

(3) 女性のみでみられる診断時年齢の45歳以降の第二ピークは、一貫して保たれていた。閉経に 伴う卵巣機能不全が、本症の発病に寄与している可能性がある。

(4)

論文審査の結果の要旨

日本人のサルコイドーシスの臨床像とその時代変化を検討するために本学附属病院での約 40 年にもわたる診療データを用いた後ろ向き疫学研究である。サルコイドーシスは原因不明な希少 疾患であり日本でも詳細な疫学データが不足している。過去には厚生労働省難病克服事業での全 国疫学調査以外にはなく、本論文では、全国調査では検討しきれていない詳細な臨床像を検討し、

サルコイドーシスの臓器病変分布、胸部X写真による病期についての性別、年代別の特徴や診断 時年齢や臨床像の時代的変遷、について詳細に検討していたおり、学術的にも意義が深いと判断 する。長期間のデータを丁寧に分析しているのみならず、考察では、諸外国の疫学データとの比 較、原因不明ながらわかっている範囲内での病態生理についての考察もしっかりできていること から、学位論文としてふさわしいものであると判断する。

最終試験の結果の要旨

申請者は課題とした研究内容について、背景、目的、方法、結果およびその解釈について説明 した。研究成果の提示においては、新規性についてこれまでの研究との違いを踏まえ解析してい た。また、得られた知見を元に原因不明ながら病態生理について現時点での基礎的、疫学的な文 献的考察がなされていた。審査委員の質問にも的確に回答していた。以上より、申請者は学位を 授与するにふさわしいと全員一致で判断した。

参照

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