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第 4 章 ロシアの東アジア関与 - 日本国際問題研究所

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4章 ロシアの東アジア関与-北朝鮮問題を中心に-

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第 4 章 ロシアの東アジア関与

-北朝鮮問題を中心に-

山添 博史

はじめに

本研究会では、ロシアの中長期的な東アジア関与の方向性も主要課題の一つとしている。

外交・戦略面において、その基軸となるのは中国との関係であるが、2017年には北朝鮮を めぐる危機の緊急性が高まり、ロシアもそのような議論の中にたびたび登場する機会をも った。このため、今年度の中間報告書においては、主に2017年を対象にロシアの朝鮮半島 問題関与を取り上げ、その特異性や継続性について考察する。

1. ロシアの対北朝鮮姿勢の独自性

ロシアは北朝鮮をめぐる問題に関して、核・ミサイル開発は承認しないとともに、圧力 より対話を通じた解決を主張するなど、中国と類似した姿勢を示している。とはいえ、中 国とも異なる行動や発言が見られることもあった。

ロシアは国連安保理における議論で中国と異なる立場を示した事例が見られた。例えば 2017年4月15日にミサイルを発射した北朝鮮を非難する報道声明案を米国が提出した際、

中国は棄権したが、ロシアは反対した。これまでとは異なり、対話を通じた解決への言及 がなかったというのがロシアの反対の理由であり、国連安保理はこの点で修正し対話を通 じた解決に言及した報道声明を採択した1。この時期は、中国の習近平国家主席が訪米にて トランプ大統領と圧力強化について約束した直後であり、北朝鮮に強く働きかける姿勢を 見せておく必要があったと考えられるが、これに対しロシアは、より直接的に北朝鮮の立 場を勘案した対話路線を堅持して、米国とも交渉する道をとった。逆に4月12日には、シ リアでの化学兵器使用に関する安保理決議案に中国は賛成したのに対し、ロシアは拒否権 を行使していた2。また、8月5日の安保理決議において、ロシアのワシリー・ネベンジャ 国連大使は、北朝鮮がミサイル開発を止めるよう呼びかけるとともに、北朝鮮が軍事的脅 威を感じている限りは解決に向かうことはないと付言した3。これらのように、ロシアは中 国と比較しても、北朝鮮の立場へ配慮を示す機会が多かった。

北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長は権力継承以来中国を訪問しておらず、たびたび中国 に対して不満を表明している。朝鮮中央通信は2017年5月3日、異例にも名指しで中国を 非難した4。また8月24日の『労働新聞』も、8月5日の国連安保理決議に賛成した中国

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とロシアが米国に追随しているとの批判を掲載した5。しかし一方でロシアは一定の事務レ ベル往来を行っている。7 月にロシア外務省からオレグ・ブルミストロフ巡回大使が平壌 を訪問し、北朝鮮外務省の崔善姫北米局長らと会談した。9 月には同局長がモスクワを訪 問し朝鮮半島の緊張問題について協議した6。とはいえこれらの往来も、2014年11月に訪 露した崔龍海朝鮮労働党書記、2015年3月に訪露した李洙墉外相と比較すればランクは高 くはなく、現段階では具体的な成果をもたらしているわけではない。

ロシア・北朝鮮関係の最近の特徴として、貿易量の増大がある。ロシア連邦税関局の統 計によると、ロシアは2016年1月~6月には北朝鮮に2,171トン(98万ドル相当)の石油 製品を輸出していたが、2017年1月~6月には4,304トン(240万ドル相当)となった7。 それでも、2016年に中国が31億9,200万ドル相当、ロシアが5,300万ドル相当の輸出をし ていたのであり8、北朝鮮の貿易に占める中国の割合は圧倒的である。2017 年 9 月におい て中国の北朝鮮に対する輸出額は2億7,800万ドル(前年同月比6.7%減)、輸入額は1億

5,200万ドル(前年同月比37.9%減)となっており、現在もなお中国の貿易額の割合は大き

いと考えられる。

ロシアの朝鮮半島問題専門家のゲオルギー・トロラヤ教授によると、ロシアは中国と類 似した姿勢をとるが、それでも中国が北朝鮮をめぐる軍事行動や統治の崩壊で直接的な影 響を大きく受けるのに比べると、ロシアはそれほどの緊急性を感じておらず、姿勢に違い も出てくる9。また、北朝鮮にとって、上記の貿易額でも示される通り、中国は大口の貿易 相手として圧力をかけうる存在で、実際に圧力を増しているが、ロシアとの貿易量が北朝 鮮に及ぼす影響は小さく、そのような点でもロシアは脅威になりにくい。

2.中露協調のもとの北朝鮮問題

上記のような違いはあるものの、より大きな枠組みで言えばロシアは中国との北朝鮮問 題における協調のもとにある。ロシアにとって中国は最大の貿易相手であり、東アジアで の地位において安定的に関係を運営すべき相手であり、かつグローバルな国際政治の場に おける重要なパートナーでもある。朝鮮半島をめぐっても、北朝鮮に対する措置の類似性 が見られるほか、米国と同盟国によるミサイル防衛システムの進展に反対する姿勢でも共 通している。

中国の王毅外相は2017年3月から「双暫停」(ダブル・フリーズ)というフレーズのも と、北朝鮮が核・ミサイル実験を一時停止し、かつ米韓同盟が軍事演習を一時停止するこ とで緊張を緩和することを提言している10。これに続いて、習近平国家主席がモスクワを 訪問し首脳会談を行った際の7月4日に、王毅外相とセルゲイ・ラブロフ外相が共同声明

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を発し、同じく双方が軍事行動を停止することから始めて段階的に対話のレベルを上げて 問題解決を目指すべきという考えを表明しており11、これを両国政府は「ロードマップ」

と呼んでいる。このようにロシアは中国と歩調を合わせた主張をしているが、これだけで 対話に近づいたわけではなく、現に北朝鮮も米国もこの考えを受け入れていない。

国連安保理におけるプロセスで、上記の2017年4月のケースはロシアの独自性を示すも のであったが、ロシアだけの反対で決議そのものが流れるなどの重大な結果になったこと もない。9 月に米国が北朝鮮への石油輸出を全面的に禁止する決議案を準備したが、中国 もロシアも反対することにより、上限を定めて輸出量の報告を義務づける限定的な輸出規 制に修正され、9月11日に決議は成立した12

このように、ロシアは中国と異なるように見えることはあっても、それは中国の行動や 環境を変えない程度にとどまっている。中国にとって北朝鮮問題は重要な問題であり、か つ2017年においては習近平・トランプ関係の重大協議案件としてその意義は高まった。中 国はロシアの北朝鮮への働きかけについて一定の懸念を持っているとも言われるが、もし 中国の政策の成果を無効化するほどにロシアが行動するのであれば、中国が望む北朝鮮へ の対策さらには対米関係の運営にも障害があるため、ロシアとの緊密な連携の外観を保つ のも難しくなる。ロシアも中国との連携を重視し、2014年以降は中国との緊密さを示すこ とにさらに留意するようになっており13、北朝鮮問題で過度の関与をすることには慎重に なっていると考えられる。

おわりに

以上のように、ロシアは中国と異なる行動をとったり、貿易額を増したりしたが、それ でも大きく事態を変えるには至らなかった。ロシアの外交・政治・経済資源の実態の反映 ではあるが、中国への配慮を伴ったものでもあり、基本的には中国との協調関係の範囲内 であったと言えよう。米国からはしばしば、ロシアは国連安保理における意思決定や制裁 履行に対する障害とみなされ、米国に外交上のバーゲニングをしているという観点も考え られるが、実際には、例えば欧州や中東で見られるようなリスクを伴う軍事行動で強く対 応を迫るといったことも、東アジアでは実施していない。ロシアの思考を推測してみるに、

もしロシアが中国と同様の圧力を姿勢として保っても、北朝鮮を動かせるわけではない。

もしロシアがさらに進んで米国や日本に同調しても、北朝鮮を動かせるわけでも、日米か ら見返りを得られるわけでもない。それであれば、ロシアの数少ない特徴である、北朝鮮 と比較的対話がしやすいというメリットを保持し、いつか到来するかもしれない対話・仲 介の機会に備えることが選択すべき道であろう。

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今後のロシアについていえば、2018年5月に次期大統領が着任すれば新たな方針で政治 や外交が動き出すことが予期される。しかし北朝鮮問題への関与に関しては、2017年に特 異な点は見られたものの、継続的な中露関係の枠組みの中でのロシアの限定的な独自性で あると考えられるため、今後も一定の継続性を示していくであろう。

-注-

1 “Russia Blocks Security Council Statement on North Korea,” VOA News, April 19, 2017; Press Statement, United Nations Security Council, April 20, 2017

<https://www.un.org/press/en/2017/sc12801.doc.htm>, accessed on January 15, 2018.

2 Press Release, UN Security Council, August 12, 2017

<https://www.un.org/press/en/2017/sc12791.doc.htm>, accessed on January 15, 2018.

3 Press Release, UN Security Council, August 5, 2017

<https://www.un.org/press/en/2017/sc12945.doc.htm>, accessed on January 15, 2018.

4 「朝鮮中央通信が異例の中国名指し批判 「親善の伝統を抹殺する妄動だ!」」、産経ニ ュース、2017年5月3日。

5 辺真一「北朝鮮がまたまた中国を非難」、Yahoo!ニュース、2017年8月25日、

<https://news.yahoo.co.jp/byline/pyonjiniru/20170825-00074923/>、2018年1月15日アクセス。

6 Foreign Ministry of Russian Federation, September 29, 2017,

<http://www.mid.ru/ru/maps/kp/-/asset_publisher/VJy7Ig5QaAII/content/id/2881337

>, accessed on January 15, 2018.

7 「ロシア、北朝鮮への石油製品輸出を倍増 実態はさらに巨額か」、産経新聞ウェブサイ ト、2017年8月20日。

8 『2016 年度 最近の北朝鮮経済に関する調査』、日本貿易振興機構(JETRO)、2017年3 月、84頁。

9 Georgy Toloraya, “Can a Russia-China Axis Help Find a Solution to Problems on the Korean Peninsula?” 38North website, June 8, 2017, <http://www.38north.org/2017/06/gtoloraya060817/>

accessed on January 15, 2018.

10 中華人民共和国外交部、2017年3月8日、

<http://www.fmprc.gov.cn/web/zyxw/t1443990.shtml>、2018年1月15日アクセス。

11 “Joint statement by the Russian and Chinese foreign ministries on the Korean Peninsula’s problems,” The Ministry of Foreign Affairs of the Russian Federation, July 4, 2017,

<http://www.mid.ru/en/foreign_policy/news/-/asset_publisher/cKNonkJE02Bw/content/id/280766 2>, accessed on January 15, 2018.

12 「北朝鮮制裁、全会一致で採択 石油関連輸出3割減」、日本経済新聞ウェブサイト、

2017年9月12日。

13 2011年にはプーチン首相が訪中する直前に連邦保安庁(FSB)が中国人スパイの拘束を

発表した。2013年7月に実施された中露合同軍事演習の直後に(中国艦艇はオホーツク 海に向かった)、プーチン大統領が東部軍管区で大規模な軍事演習(抜き打ち検閲)を命 令し、かつ中国国境付近の演習場を視察した。しかし2014年9月の東部軍管区軍事演習

「ヴォストーク2014」では、中国国境付近で小規模なミサイル発射演習を行ったのにと どまり、重点はオホーツク海からベーリング海にかけての海洋方面であった。

参照

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