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第12章 財 務 (教育研究と財政)

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第12章 財 務

(教育研究と財政)

1) 教育研究目的・目標を具体的に実現する上で必要な財政基盤(もしくは配分 予算)の確立状況

[現状の把握]

(1)第1章の大学の理念、目的で述べているように、本学の建学の精神は母体である文京学 園の建学の理念である「女性の自立」と、「誠実・勤勉・仁愛」という教育方針を「人間の自 立」と「共に生きる共生」と今日的な意義に拡大して、「資料2」の文京学院大学 21 世紀ビジ ョンが策定され、地域に開かれた大学、社会人に開かれた大学、国際交流による多文化共生を 目指すなど、現代化をはかってきている。

(2)この教育理念と方針を具体的に実現するために、本学では経営学部の単科大学から順次、

人間学部、外国語学部と2学部を増設した。本学は創立者の方針である「一歩一歩と地固めを して」を守り、1学部あるいは1研究科ずつの設置を行ってきている。

(3)同時に内容的にも教育研究の充実を心がけ、毎年計画的に施設設備の改善と研究費の配 分を行い、留学支援、留学生受入れ支援、交換留学プログラムの実施、子育て支援センター、

地域連携センターの設置等を学生たちの支援と教育の観点から毎年配分予算で実行してきてい る。

(4)社会人と学生がともに学ぶ生涯学習センター、委託事業、大学院等でも幅広い世代の学 生を受け入れ、財政の基盤の充実にもつとめており、経費の節減、人件費の減少への努力の効 果も出てきており、総合的には確立していると分析している。

(5)なお、財政を維持する学園の事業概況として、「2004(平成 16)年度事業報告書」で次 のように報告している。

『1.2004(平成 16)年度の概況

(1) 日本社会の 18 歳人口は、1992(平成4)年度にピークの 205 万人に達した以降、翌年度 から減少に転じ、本事業年度である 2004(平成 16)年度は前年度比5万人減少して 141 万 人、ピーク時の約 69%の規模となりました。

(2) これに対し、本学園の 2004(平成 16)年5月1日現在の設置学校全校の在籍者総数は 6,066 人であり、前年度の在籍者 6,056 人を維持。一方、本学園の在籍者総数のピークであ った 1999(平成 11)年度の 7,192 人に対して、1,026 人の減少(△14.3%)となりました が、1992(平成4)年度当時の学園規模 5,961 人を維持している状況にあります。

(3) 学園の財政状況を消費収支計算書で総括的に見てみますと、最大の財政基盤である 2004

(平成 16)年度学生生徒等納付金は 55 億9千6百万円となり、前年度の 54 億5千4百万 円を1億4千2百万円上回り、これらを含む帰属収入は 73 億6千8百万円で、前年比+2 億5千万円の増収実績となりました。

一方、学園運営上の主要経費である人件費は 38 億2千6百万円で、前年比△5千8百万 円と前年実績内に収まり、消費支出合計が 68 億7千3百万円、帰属収支差額が+4億9千 5百万円となって、前年度より実質的な収支差額の好転を見ることが出来ました。

ただし、後記のとおり校舎建設による固定資産取得がありましたので、基本金組入額が 8億2千万円となり、消費収支差額は、△3億2千4百万円と、依然消費支出超過の状況 にあります。

(2)

(4) 2004(平成 16)年度は、学園創立 80 周年という節目の年でありましたが、21 世紀を迎 えて以来、教育の理念を「女性の自立」から「人間の自立と共生」へと今日的に転換して おり、その具体的な展開として 2005(平成 17)年度からの大学全学部の共学化実施に向け 鋭意準備を行いました。

同時に、経営学部キャンパスの本郷移転という事業も行いましたので、本年度は学園歴 史上も大きな転換点となる年度だったと言えます。』

[点検・評価]

(1)大学の収支は法人全体の約 60%を占め、大学の財政は本法人の財政基盤をベースにして いる実態にあるため、以下、本項では本法人全体の消費収支計算上の計数を軸として点検す る。

(ⅰ)まず、最近5年間の教育研究費への資金配分実態は次のとおりである。

1997(平成9)年度に人間学部を、2001(平成 13)年度に外国語学部を開設して複数学 部を持つ大学として充実を図り、大学の教育研究費への資金配分を順次高めてきた。

[表 12-1] 大学の教育研究費への資金配分の推移 (金額単位:百万円)

H12 H13 H14 H15 H16 大学の教育研究費 a 801 863 919 992 1,303

大学が占める割合 a/b 45.4% 46.8% 49.6% 50.1% 63.0%

法人全体の教育研究費 b 1,766 1,844 1,854 1,981 2,068

消費支出に占める割合 b/c 26.9% 26.6% 26.6% 28.0% 30.1%

本法人の消費支出合計 c 6,572 6,928 6,980 7,076 6,872

(ⅱ)次に、大学の施設・設備関係に対する資金の投下状況を資金収支計算書から抽出すると、

推移は次のとおりである。

本学園は、創立 75 周年を迎えた 1999(平成 11)年度に、2004(平成 16)年度までの5 年間の財政中期計画を発表し、少子化の波が実際に押し寄せることを見据えつつ、本郷キ ャンパスにある短期大学定員を一部振り替えて学部化する計画を軸とし、大学院の教育研 究拠点を構築する構想と併せて、施設設備の大規模な更新整備に着手した。

[表 12-2] 大学の施設・設備関係への資金配分の推移 (金額単位:百万円)

H12 H13 H14 H15 H16 大学の施設関係支出 a 25 221 524 875 604 設備関係支出 b 71 149 110 89 432 大学の施設設備支出計 c=a+b 99 370 634 964 1,036

大学が占める割合 c/f 36.3% 28.2% 25.9% 63.3% 72.9%

法人全体の施設関係支出 d 127 1,109 2,087 1,269 835 設備関係支出 e 146 202 361 255 587 本法人の施設設備支出計f=d+e 273 1,311 2,448 1,524 1,422

(3)

(ⅲ)学生数規模の減少への対応

日本の 18 歳人口は、1992(平成4)年度をピークとして減少期に入り、現在も減少が続 いているが、本学園にあっては、1991(平成3)年度に大学を設置し、短期大学と合わせ、

急増期の臨時定員(大学 150 名、短期大学 320 名)を受け入れ、また、1997(平成9)年 4月人間学部及び経営学研究科開設、1999(平成 11)年4月人間学研究科開設、2001(平 成 13)年4月外国語学部を開設した経過があったため、1999(平成 11)年度までは、設置 学校全体の在籍者数は増加を辿ることができた。

しかしながら、2000(平成 12)年度以降においては、臨時定員の 50%を段階的に返上を 開始したことや、短期大学の定員の一部を振り替えて外国語学部を増設したため、学生数 に過渡的な減少があり、これらに加えて 18 歳人口がピーク比 50 万人以上も減少するとい う人口基盤の変化があり、1999(平成 11)年 10 月に発表した中期見通しで予測した通り、

本学園の在籍者数も減少に転じることとなった。本学園では、在籍者数が減少に向かう 2000(平成 12)年をスタートとして、5カ年間の実態見通しを学内に発表した。

(ⅳ)過去5年間財政の中期見通しの検証(消費収支ベース)

1999(平成 11)年 10 月に発表した 2000(平成 12)年度から 2004(平成 16)年度までの 中期見通しは、下記表の上段に記載した計数である。下段の計数(ゴシック体表示)は、

当初見通しに対する実績値である。

(4)

[表 12-3] 過去5年間の財政中期見通しと実績 (金額単位:百万円)

H12 H13 H14 H15 H16 6,466 6,039 5,697 5,516 5,464 学生生徒等納付金

6,099 5,980 5,798 5,454 5,596 954 869 884 874 866

補助金 1,053 1,032 1,009 998 1,053

573 530 555 624 540 その他収入

785 613 653 666 719

7,993 7,465 7,136 7,014 6,870 帰属収入の部合計

7,937 7,625 7,460 7,118 7,368

△815 △1,981 △463 △1,110 △1,858 基本金組入計画額

△778 △902 △1,033 △1,032 △820 7,178 5,484 6,673 5,904 5,012 消費収入の部合計

7,158 6,724 6,427 6,086 6,548

3,825 3,917 3,950 4,019 4,198

人件費 3,985 3,853 3,976 3,884 3,826

1,789 1,801 1,856 1,861 1,886 教育研究経費

1,766 1,844 1,854 1,981 2,068 876 889 905 915 917 管理経費

772 756 770 809 852

49 39 32 27 22 借入金等利息

48 39 29 25 22

7 332 7 94 88

資産処分差額

- 436 349 373 104

138 143 148 153 158 その他の支出

0 0 0 4 0

6,684 7,121 6,898 7,069 7,269 消費支出の部合計

6,572 6,928 6,980 7,076 6,872 494 △1,673 △225 △1,165 △2,257 当年度消費収入超過額

+586 △206 △552 △990 △323

73 567 △1,070 △1,295 △2,460 前年度繰越消費収入超過額

△4 +582 +376 △176 △1,166

567 △1,070 △1,295 △2,460 △4,717 翌年度繰越消費収入超過額

+582 +376 △176 △1,166 △1,489 (注)上段数字:中期見通し/下段ゴシック数字:実績

1999(平成 11)年 10 月に、上記中期見通しを発表し、全教職員に厳しい環境の到来を予 告して、対応への協力を呼びかけた。その原文は下記のとおりである(一部を抜粋)。

(5)

『要約消費収支計算書について、

要約資金収支計算書と同様に 1998(平成 10)年度決算および 1999(平成 11)年度から 同 2004(平成 16)年度までの予算および計画を掲載しました。(中略)

今後6年間については次のように見込まれています。

学生生徒納付金収入は主として次の理由により、1999(平成 11)年度をピークにして減 少することが見込まれます。

① 大学経営学部{入学定員 400 名(恒常定員 250 名+臨時定員 150 名)}と、短大{入 学定員 640 名(恒常定員 320 名+臨時定員 320 名)}については、臨時定員を 2000(平 成 12)年度に 50%恒常定員化し、大学経営学部は入学定員 325 名に、短大は入学定員 480 名になる。臨時定員の残りの 50%は、同年度より5年間に亘って順次減少して最終的に 無くなる。更に 2001(平成 13)年度より、短大については、入学定員を 480 名から 200 名にへらし、その分の定員を振り替えることにより大学外国語学部(入学定員 140 名×4 年間=収容定員 560 名、他に編入定員が 28 名ある。)を設置するが、短大からの振り替 え定員分(280 名×2年間=560 名)の埋め合わせに大学外国語学部では4年間かかるた め、この間、臨時定員の解消原因とは別に学生生徒納付金収入が減少することになる。

② 高等学校中学校については、学齢人口の減少、特に 1998(平成 10)、1999(平成 11)

年度中学入学者数の厳しい減少実績からみて、今後6年間以上に亘って中学校、高等学 校の生徒在籍数の減少が見込まれる。

従って、帰属収入合計額も同 2000(平成 12)年度以降各年度で減少が続き、平成 16 年 度での 68 億7千万円は、1998(平成 10)年度の 82 億4千7百万円に比べ 13 億7千7百万 円もの減少があると見込んでいます。

人件費については、1998(平成 10)年度に勤続年数の永い定年退職者が複数人あり、退職 金が増加したため金額が多くなっていますが、1999(平成 11)年度には退職者の補充に若 年者を充て世代交代があったので前年より減少しています。2000(平成 12)年度以降は、

現状では各年度の計画にあるような増加があるとみています。

学生生徒納付金収入との比率(人件費依存比率)は、1998(平成 10)年度で 57.0%であっ たものが 2004(平成 16)年度では 76.8%となると見込んでいます。「振興共済集計」(注)

の 1997(平成9)年度の平均では 68.6%なので比率割合は、各年度の計画(中学高校では、

既に始まっている入学生の減少に基づく予想生徒数、大学等では定員数が確保されたとし た学生生徒園児数を見込み、さらに1人当たりの学費水準を現状のものとした。)でもか なり高くなる見込みです。入学者数、学費水準が計画を下回り、さらにこの傾向が続くと なると相当危険な状況となります。

(注)日本私立学校振興・共催事業団による医療系法人を除く大学法人の集計を言う。

帰属収入との比率(人件費比率)では、1998(平成 10)年度で 45.3%であったものが 2004

(平成 16)年度では 61.1%となると見込んでいます。「振興共済集計」(注)の 1997(平成 9)年度の平均では 50.6%なのでこれも高くなっています。

私立学校を取り巻く環境変化は急速に進んでいます。少子化の影響で、入学園児生徒学 生の定員数確保が問題となり、中等教育段階での生徒確保競争の激化、大学全入の時代と いわれる時代を迎えつつあります。我が学園が次なる時代までに私学のうちにおいて確固 たる地位を占め、更に発展していくために、この現状認識をしっかりと持つことが必要で す。

(6)

今後の収入見通しについては、中学高校で既に初まっている生徒数の減少と、大学短大 における臨時定員増の段階的解消、一定期間ではありますが新学部開設に伴う学生数の大 幅な減少等、更に中等教育段階での学齢人口急減が数年次を経て高等教育段階に確実に現 出することが避けられないので、学生生徒納付金収入の減少が続くとみています。

一方支出見通しについては、高度情報化、国際化対応を初めとする教育環境充実のため の支出増加、人件費、諸経費の増加、校舎建替等の財政支出増加が避けられない見通しが あり、このバランスをとるため種々様々な角度から検討することが求められています。

とりわけ消費収支における人件費依存比率が今後更に上がって行くと、この他の必要な 諸経費支出、設備購入支出、さらに私立学校として取り組まなければならない将来展望に 向けての財政支出が困難になり、学校の継続的な存立に関わる問題になります。

今後6年間でも、財政収支の状況がこれだけ悪くなることが見込まれますが、更に長期 的には一層厳しい状況になることも予想されます。長期的な経営の安定を図るためには、

諸経費の見直し、冗費の削減が検討されるべきですが、一方この困難な時代を乗り切るた めには、校舎施設のリニュウアル、教育設備の充実、学部改組等を積極的に計画、実施す る財政の対応も必要となります。

教職員関係者のご理解、ご協力をお願いいたします。』

以上が、厳しい環境の到来を予告して、対応への協力を呼びかけた 1999(平成 11)年当 時の文書の一部である。これに対し、本学園は、順次、次のような対応策を実施した。

(ⅴ)財政の安定基盤確保に向けた対応策

学園の収入基盤である学生生徒等納付金の明らかな減少が見込まれたことに対し、学園 として、財政基盤の安定確保のために、次の学生確保対策と支出の抑制対策という二面対 策を講じた。

①学生確保のための積極的な教育環境改善事業の実施

・ 大学院研究棟の建設

・ 外国語学部の増設及び校舎の増改築

・ 経営学部・経営学研究科のキャンパス東京(本郷)移転、校舎増築

・ 人間学部の4学科設置とその教育研究設備の充実化

・ 全学部の男女共学化

・ 併設高等学校校舎の全面的な改築による教育環境の抜本的改善

これら改善策のために投下した設備資金総額は、約 63 億円規模となり、全額自己資 金を充てた。

②支出の抑制対策

・ 大学の活性化、人件費の流動化の基本対策として、定年年齢を従来の 73 歳から 68 歳に変更した〈2001(平成 13)年4月1日実施〉。

・ 大学教員及び事務管理職の給与は、基本的には人事院勧告に準拠した一定の学内 ルールに基づいて決定しているが、2002(平成 14)年、2003(平成 15)年の人事 院減額勧告に準じて、2003(平成 15)年、2004(平成 16)年度にそれぞれ平均約 2%、1%の給与表減額改定を行った。

・ 施設設備の維持管理を委託する業者の低コスト先への入れ替えを徹底して行った。

また、備品等納入価格は、合い見積もり等による価格低減に努めた。

(7)

・ また、水光熱費抑制・消耗品の節約のための学内運動を継続的に実施している。

これらの結果、最大の運営経費である人件費は、2004(平成 16)年度実績において、1999

(平成 11)年発表の中期見通しで予測した規模を 372 百万円下回り、学生生徒等納付金収入に 対する割合は 68.4%となり、当面目標とするバランス内に収まることとなった。

また、この間に行った教育環境の抜本的な改善のため設備は、当初中期見通しを発表した 1999(平成 11)年当時に計画していなかった経営学部の東京移転のための校舎増築、大学学部 の共学化のための設備改修という事業があったにも拘わらず、既存計画規模の見直し等により、

当初の基本金組入計画額に収めることが出来た。

[今後の改善方策]

以上の通り、大学の教育研究を支える本学園の財政基盤は、2000(平成 12)年度以降の学生 数減少という調整期を積極的な教育環境改善投資策と内部経費の節減対策等を実施することによ り、今後も収支の均衡を図りうる基盤を形成した。

財政基盤は、保有資産が土台となるが、実態的には負債額を差し引いた金融資産の保有高と 年度ごとの学生生徒等納付金収入の安定性が基本となる。学園としては、1994(平成6)年度以 降の施設設備の調達においては、借入金に依存せず、保有する金融資産を有効に活用して教育研 究環境の整備に当たってきた。今後においても、基本的には総資産に対する自己資金の比率を低 下させることなく体質の健全性を維持して参りたい。

ただし、2005(平成 17)年4月を期して、経営学部をふじみ野キャンパスから本郷キャンパ スに全面移転させるに当たり、ふじみ野キャンパスの活用が課題となり、理事会として慎重に検 討の上、2006(平成 18)年4月開学を目指して、同キャンパスにある人間学部の隣接領域とし て考えた保健医療技系の学部(保健医療技術学部)の設置を計画したので、この学部を計画通り 完成させることと、その教育研究体制の整備向上を自己資金の範囲内で達成することが大きな課 題となる。

これまで、本学園全体として財政基盤に対する認識と対応経過の状況を検証してきたが、次に、

大学部門に限定した収支の状況を点検する。

[大学部門の消費収支計算の現状と点検・評価]

2004(平成 16)年度以前5年間の大学部門の消費収支計算の実績推移は、[表 12-4]のとお りである。

本学は、先にも触れたとおり 1991(平成3)年度に経営学部を置く単科大学として発足した 後、1997(平成9)年度に人間学部を増設し、同時に経営学研究科を設置、1999(平成 11)年 度に人間学研究科設置、2001(平成 13)年度に外国語学部を増設して今日に至った。この間、

経営学部を埼玉県ふじみ野キャンパスから東京都の本郷キャンパスに移転させ、そのための校舎 増築等を行ったが、これら学部増等の設置経費及び校舎増築資金は、基本的には大学部門での収 支差額を財源とした。

一方、これら設備資金投下に伴い、2002(平成 14)~2004(平成 16)年度の基本金組入額が 増加したため、2003(平成 15),2004(平成 16)年度の消費収支差額は支出超過となった。し かしながら、帰属収支差額(帰属収入-消費支出)は、いずれの年度も収入超過としており、ま た、主要な比率指標は、同系複数学部のほぼ平均ゾーンに位置しており、収支構造は比較的安定

(8)

的な基盤を形成していると考える。ただし、今後とも、特に人件費比率のバランス維持に留意し て参りたい。

[表 12-4] 大学部門過去5年間の収支実績

2) 総合将来計画(もしくは中・長期の教育研究計画)に対する中・長期的な財

(金額単位:百万円)

H12 H13 H14 H15 H16

2,880 3,327 3,484 3,370 3,586

65 86 40 75 131

1 9 1 1 1

218 250 295 330 404

22 22 32 49 61

0 0 0 0

160 198 198 198 185

48 51 83 75 100

3,394 3,943 4,133 4,098 4,468

-101 -371 -540 -953 -575

3,293 3,572 3,593 3,145 3,893

1,466 1,852 1,994 1,983 1,977

801 863 919 992 1,303

385 488 364 547 588

0 0 0 0 0

10 2 3 43

2,652 3,213 3,279 3,525 3,911

641 359 314 -380 -18

478 1,119 1,478 1,792 1,412

1,119 1,478 1,792 1,412 1,394

人間学部 完成

外国語学部 開設

外国語学部 完成

[主要比率]

人 件 費 比 率 43.2% 47.0% 48.3% 48.4% 44.2%

教育研究経費比率 23.6% 21.9% 22.2% 24.4% 29.2%

消 費 支 出 比 率 78.1% 81.5% 79.4% 86.0% 87.5%

( )はH15年度同系平均 (84.4%) 備 考 前年度繰越消費収支超過額 翌年度繰越消費収支超過額

(49.3%) (26.8%) 徴 収 不 能 引 当 金 繰 入 額

消費支出の部合計 当 年 度 消 費 収 支 超 過 額

消費収入の部合計 消費支出の部

基 本 金 組 入 額 合 計

消費収入の部

学 生 生 徒 等 納 付 金

(9)

政計画の策定状況、および両者の関連性

[現状の把握]

時代は「男女共同参画型社会」へ本格的に移行しつつあるところから5年前から「共学化」

への検討委員会をつくり、施設、設備をはじめ、共学化のための準備をあらゆる面から行ってき た。共学化と同時に経営学部のふじみ野キャンパスから東京へ移転のための予算を 2003(平成 15)年度、2004(平成 16)年度、2005(平成 17)年度の3ヵ年度に措置している。

また、時代のニーズを慎重に検討し、かつ既設「人間学部」の学科を構成する福祉、保育、

心理、共生分野に隣接する保健医療分野の学部として「保健医療技術学部」をふじみ野キャンパ スに設置することを 2004(平成 16)年度に決断し、2006(平成 18)年度に開設する。

この新学部は、理学療法と作業療法の2つの分野に加えて臨床検査の分野の3学科からなり、

設置経費財源として 19 億円の予算措置をした。

共学化により応募者もふえてきているので、定員を充足することにより財政基盤はより安定 化するとみている。各学部が「自立と共生」を目指してそれぞれの目標にふさわしい人間教育と 専門教育が達成できるよう既に一定財源を保有すると共に、今後の収支においても対応可能な見 通しを持っている(表 12-5)。

各学部が単独でも収支のバランスがとれるよう努力をして自立することを基本方針としつつ 4つの学部がまさに共生していくことが大学としての基本的な総合将来計画と認識している。

[点検・評価]

新学部の完成年度までの財政計画は、表 12-5 のとおりである。固定資産取得に伴う基本金組 入、新学部の学年進行経過年度という事情もあり、2008(平成 20)年度までは消費収支差額は 支出超過の状態が続く計画としている。

しかしながら、基本金組入前の帰属収入に対する消費支出の差額ベースでみた収支差額の実 態では、2006(平成 18)年度、2007(平成 19)年度の2ヵ年度については支出超過としている ものの予備費を計上しての支出超過であり、2008(平成 20)年度以降は通常の収入超過に転換 する計画としているため、教育研究体制を支える財政計画上の基本的な支障はないと見ている。

(10)

[表 12-5]財政の次期5ヵ年計画表(消費収支計算ベース)

[今後の改善方策]

新学部を含めた一学部あたりの収容定員平均が、約 1,000 人弱という規模になるため、定員を 充足することがいわゆる損益分岐点をクリアするという基本認識を持ち、学生確保に当たりたい。

帰属収入の約 80%近くを占める学生生徒等納付金が財政維持の基盤であることを考慮して、教 育研究経費を確保したうえで最大の運営経費である人件費との適正なバランスを確保していくこ とに努める。

次に、大学部門に限定した次期5ヵ年の収支計画を見る。

[単位:百万円]

学 生 生 徒 等 納 付 金 5,596 5,579 5,731 5,975 6,203 6,427

160 186 134 134 135 135

33 28 26 25 25 25

1,053 963 954 953 952 952

資 産 運 用 収 入 114 123 113 107 99 99

資 産 売 却 差 額 0 0 0 0 0 0

253 248 244 242 251 258

159 105 343 181 153 59

帰属収入合計 7,368 7,232 7,545 7,618 7,818 7,955

  

基本金組入額合計 820 △ 455 △ 997 △ 243 △ 215 △ 235

 

消 費 収 入 の 部 合 計 6,549 6,777 6,548 7,375 7,603 7,720

[単位:百万円]

3,826 3,916 4,315 4,335 4,385 4,395

教 育 研 究 経 費 2,068 2,051 2,229 2,287 2,201 2,203

852 1,044 883 854 858 856

借 入 金 等 利 息 22 18 14 11 7 6

資 産 処 分 差 額 104 16 12 7 18 7

徴収不能引当金繰入額 0 0 0 0 0 0

--- 163 175 175 170 170

             

消費支出の部合計 6,872 7,209 7,629 7,668 7,638 7,636

 

当年度消費収支差額 323 △ 432 △ 1,081 △ 293 △ 35 84

当年度帰属収支差額 497 23 △ 84 △ 50 180 319

 

帰属収支差額比率 6.7% 0.3% 1.1% 0.7% 2.3% 4.0%

(注) (帰属収入-消費支出)/帰属収入 年度

科目

年度 科目

【消費収入の部】

【消費支出の部】

(計 画)

平成19年度 平成20年度 平成21年度

(計 画)

平成19年度 平成20年度 平成21年度

(計 画)

(実 績) (計 画) (計 画)

(計 画)

平成16年度 平成17年度 平成18年度

(計 画) (計 画)

平成16年度 平成17年度 平成18年度

(実 績) (計 画) (計 画)

(11)

[大学部門の消費収支計算の次期5ヵ年計画]

大学部門の次期5ヵ年の収支計画は、[表 12-6]のとおりである。

本学は、経営学部移転後の埼玉県ふじみ野キャンパスの有効活用と大学基盤のさらなる充実 のために、同キャンパス人間学部と隣接した領域の学部として保健医療技術学部の設置を計画し、

2006(平成 18)年度に開設することとした。

この新学部を含む次期5ヵ年の大学部門の収支計画が次に掲げた表である。

2006(平成 18)年度は、新学部設置に伴う基本金組入があるため単年度消費収支が一時的に 支出超過となるが、2007(平成 19)年度以降は大学全体で収入超過とし、新学部が完成する 2009(平成 21)年度には、本来の収支の均衡を確保する計画である。

これを主要な比率指標で見ると、人件費比率 46.4%とバランスを確保し、教育研究経費比率 は 27.1%と標準ゾーンに置き、消費支出比率は 87.2%と財務的には無難な経営状態を目指すも のである。

[表 12-6]大学部門の次期5ヵ年収支計画 (金額単位:百万円)

H16(実績) H17 H18 H19 H20 H21

3,586 3,639 4,026 4,442 4,757 4,977

131 131 99 100 100 101

1 0 0 0 0 0

404 331 321 321 321 320

61 66 62 60 55 55

0 0 0 0 0

185 182 191 196 208 217

100 77 127 98 68 43

4,468 4,426 4,826 5,217 5,509 5,713

-575 -149 -904 -91 -120 -135

3,893 4,277 3,922 5,126 5,389 5,578

1,977 2,117 2,394 2,523 2,593 2,650 1,303 1,316 1,466 1,620 1,541 1,549

588 596 672 669 686 684

0 0 0 0 0 0

43 15 5 17 5

0 83 95 95 94 95

3,911 4,127 4,627 4,912 4,931 4,983

-18 150 -705 214 458 595

1,412 1,394 1,544 839 1,053 1,511

1,394 1,544 839 1,053 1,511 2,106

外国語学部 完成

外国語大学院 開設

保健医療技術 学部 開設

[主要比率]

人 件 費 比 率 44.2% 47.8% 49.6% 48.4% 47.1% 46.4%

教 育 研 究 経 費 比 率 29.2% 29.7% 30.4% 31.1% 28.0% 27.1%

消 費 支 出 比 率 87.5% 93.2% 95.9% 94.2% 89.5% 87.2%

( )はH15年度同系平均

消費収入の部

学 生 生 徒 等 納 付 金

基 本 金 組 入 額 合 計 消費収入の部合計 消費支出の部

消費支出の部合計 当 年 度 消 費 収 支 超 過 額

(84.4%) 前 年 度 繰 越 消 費 収 支 超 過 額 翌 年 度 繰 越 消 費 収 支 超 過 額

(49.3%) (26.8%) 備 考

(12)

3) 教育・研究の十全な遂行と財源確保の両立を図るための制度・仕組みの整備 状況

[現状の認識]

本学として、教育・研究を十分に遂行するための環境整備については、過年度の中長期計画を 軸にして、推進してきたところである。

大学キャンパスは、埼玉県ふじみ野キャンパスと東京都文京区の本郷キャンパスの2キャン パスからなるが、本学の4年制大学としての成り立ちとしては、ふじみ野キャンパスにおいて 1991(平成3)年4月経営学部を開設してスタートし、1997(平成9)年4月に人間学部を設置 し、さらに、2003(平成 15)年4月に人間学部を1学科制から4学科編成に改組した経緯にあ る。このため、ふじみ野キャンパスは、学部増、学科増の過程で教育・研究環境の充実が図られ た。

一方、本郷キャンパスにおいては、2001(平成 13)年4月に、同キャンパスに置く短期大学 の定員振替を通じて外国語学部を増設したが、短期大学を含む収容定員が従前の規模に収まるた め、校舎の増築等の大幅な環境の整備を経ずして学部キャンパスをスタートさせた経緯にある。

しかしながら、2000(平成 12)年に全線開通した地下鉄南北線の東大前駅出入り口が本学本 郷キャンパス内に設けられたこと、その後、2002(平成 14)年に工業等制限法の廃止決定があ ったこと、また、日進月歩するIT技術を教育研究設備に導入する必要性の高まり等を受けて本 郷キャンパスの活用ニーズが急速に高まってきた。これらは、学生確保と教育・研究機能の向上 のために、経営学研究科の大学院機能を本郷キャンパスに置く、加えて経営学部を本郷キャンパ スに移転させる、国際交流機能を本郷キャンパスで充実させるといった施策に具体化させた。

これらの結果、本郷キャンパスにおける増築校舎面積は 9,117.48 ㎡、建築工事金額 2,543 百 万円、備品・IT機器等の設備導入金額 505 百万円、合計約 30 億円強を資金投下する大規模な キャンパス整備事業となった。この間、ふじみ野キャンパスにおいても介護福祉士養成施設の設 置等、施設・設備の整備に4億円弱を投入して、教育・研究環境のさらなる改善にあたった。こ れらの必要資金は、全額自己資金で充当している。

教育・研究活動を十分に推進するための主要な事業計画の決定は、最終的には理事会の責任 で行うが、ニーズの把握、推進体制の構築等のためには、全学的な協力が必要であり、その現場 集約機関として機能しているのが大学運営会議である。大学運営会議の構成員は、学長、副学長、

学部長、学長(理事長)が指名する理事2名及び大学事務局長とし、原則として毎月1回、学長

(理事長)が招集して開催している。大学運営会議の諮問機関として、調査・企画を担当する専 門委員会を設ける場合があるものとし、具体例として、特色GP,現代GPをはじめとする支援 資金を確保するためにも、学長補佐の教授が任命されて3年先までのプランの原案をつくり、委 員会で検討をする仕組みをつくっている。

事務局でも助成金をふやすための検討会議を行う等の整備を行っている。この仕組みづくり は、除々に成果をあげつつあると考える。また、すべては大学運営会議に報告、審議され、理事 会が最終責任を負っている。

また、教育・研究活動を遂行するための施設・設備の更新財源として、学園全体として減価 償却引当特定預金を計画的に保持する仕組みを設けている。減価償却引当特定預金の積み上げは、

前年度減価償却累計額の増加額の 30%を基準として組み入れており、2004(平成 16)年度の引 当特定預金の累計残高は、3,055 百万円となっている。学園では、この資金を一般の運営資金と

(13)

切り離して管理している。

一方、年度ごとの経常的な研究費、人件費等は、単年度の収入で賄われるべきことであり、

その基本的な財源は学生生徒等納付金に依存し、運営上必要な学生数の確保が大前提となる。

学生確保のためには、平素から学生の満足度を高めるよう授業や施設、学生生活に最高の配 慮が必要である。現在、雇用・能力開発機構から委託を受けている「大学等委託訓練」や生涯学 習センターについても同様である。学生とのコミュニケーションをとる様々な工夫をし、就職支 援策を充実させ、有効な広報活動や高大連携の仕組みの整備を図っている。

即ち、大学が学則の規定に基づき行う自己点検・評価の実施、学生に対して果たすべきサービ ス機能等によって新たに編成した事務局組織(キャリアセンター・学生支援センター等)のワー ク、教員と事務局員及び理事が構成メンバーとなってタイムリーな広報企画を検討する募集戦略 会議の活動等がある。

[点検・評価]

既設3学部の教育・研究活動の遂行体制は、2004(平成 16)年度までに完了したキャンパス の整備事業により整った。また、将来に備える施設・設備の更新資金を減価償却引当特定預金と して計画とおり保有した。

2005(平成 17)年度の大学学部入学者は、募集定員 715 人をクリアして 860 人(1.2 倍)を 受け入れ、学部の収容定員 2,961 人に対しても、在籍者数は 3,282 人(1.1 倍)となっており、

教育・研究を遂行するための財源確保につながる計画人数をクリアしている。

[今後の改善方策]

今後の教育・研究体制の整備、特にインフラ整備に際しては、従来のような自己資金の積み立 てにも限界があることから、より計画的に、より合目的的な学内意思統一を果たしながら推進す る必要がある。

経常経費を賄うためには、学生数の継続的な確保が最重要課題であるが、本学の持つ教育の 理念を堅持しつつ教育・研究の成果を高め、同時に学生の満足度を高め、結果として社会一般か らより高い評価を得て行くようにしなければならない。一言で言うなら、教育・研究のより高い 質の確保が課題である

4) 文部科学省科学研究費、外部資金(寄付金、受託研究費、共同研究費など)、

資産運用益等の受け入れ状況

[現状の把握]

本学園における外部資金関係の受入実績推移は、[表 12-7]のとおりである。

科学研究費については、受け入れている研究者には同じ顔ぶれという偏り傾向があり、また、

前任校からの実績を引き継いで受け入れているというケースも多く、実績に広がりがないのがこ れまでの実態である。

寄付金については、積極的な募集活動をしていない。過年度に寄付金の受入実績があるのは、

主に学校後援会からのものであり、それも漸減傾向にある。

こういった中で、資産運用については、2002(平成 14)年4月以降の預金保険制度における いわゆるペイオフ凍結解除の扱いが拡大する中で、資金運用のあり方について理事会で審議を重 ね、一定のルール(資金運用規程)をつくり、一部の運用資金について、敢えて一定のリスクを 取りつつ比較的安全で利回りのよい運用に心がけ、受取利息の拡大に努めている。

(14)

国内の金利水準は 1991(平成3)年7月以降低下を続け、1999(平成 11)年2月からゼロ金 利政策が採られたため、ここ数年の銀行預金は殆ど0に近い水準のまま推移している。従来、学 園の資金運用は銀行預金だけで行っていたため、2000(平成 12),2001(平成 13)年度当時の受 取利息は 30 百万円台にとどまっていたが、2002(平成 14)年度以降は長期性の債権運用等運用 手段の範囲を広げたことにより、受取利息は倍増する結果となった。ただし、ハイリターンには 当然ハイリスクが伴うため、運用の拡大には一定の歯止めをかけ、慎重に判断していく方針とし ている。

[表 12-7]外部資金の受入れ実績 (金額単位:千円)

H12 H13 H14 H15 H16 科学研究費 13,100 11,500 16,500 5,600 7,500 寄付金 37,789 46,753 30,382 26,960 26,539 受託事業収入 - 17,693 36,716 40,224 26,242 資産運用収入 73,112 66,630 72,427 97,736 114,096 受取利息 35,577 31,445 46,040 65,714 79,179 施設設備利用料等 37,535 35,185 26,387 32,022 34,917

また、外部資金に関連して、国庫補助金収入のうち大学での採択系の補助金獲得推移を見ると、

[表 12-8]の内訳のとおりである。学内の推進体制を見直した 2002(平成 14)年度以降、採択 額が増加している。この他に、2004(平成 16)年度において現代GP1件が採択となり、初年 度に約1千万円の研究者助成を得ることが出来た。

[表 12-8]国庫補助金のうち採択系補助金実績 (金額単位:千円)

H12 H13 H14 H15 H16 国庫補助金収入 308,286 318,835 329,122 380,404 453,360 うち大学における採択系補助金 7,930 1,690 20,100 24,800 117,641

高等教育研究改革推進経費 500 1,000 2,500 11,500 18,500

教育・学習方法等改善 2,400 0 13,800 11,600 8,400

教育研究用ソフトウェア 5,030 690 3,800 1,700 4,400

私立学校施設整備費補助金 0 0 0 0 52,396

私立大学等研究設備整備費等補助金 0 0 0 0 33,945

[点検・評価]

資産運用益の受け入れに対する取組を除いて、この種外部資金の受け入れは、まったく十分 とは言えない。寄付金については、永年にわたり安易に依存しない方針をとってきた結果でもあ る。

受託研究費の受け入れ実績はなく、これに準じた受託事業として、雇用失業情勢が厳しさを 増す中で、再就職のために職業能力の開発を必要とする求職者に多様な教育訓練の受講機会を提 供する一環として、国策(窓口:雇用・能力開発機構東京センター)による大学・大学院のカリ キュラムを利用した委託訓練が実施されることになり、本学は、2002(平成 14)年2月から、

これを受託することが出来た。この取組は評価されてよいものである。ただし、事業としては基

(15)

本的には時限性があるものであり、本学としては、社会人教育の実戦的ノウハウを蓄積し、今後 更に活かしていくこととしたい。

資金運用については、常に、運用先の信用あるいは運用環境の激変というリスクが伴うこと を考慮しつつ、学内のコンセンサスを形成して一定の運用ルール(規程)を設けたことは、大き な成果であった。資金運用の基本方針は、教育事業を行う学校法人の公共的な使命を十分認識し、

元本の確実性を損なうリスクは極力避けることとしている。

[今後の改善方策]

科学研究費・受託研究費・共同研究費については、本学の文系学部という性格から、受け入 れ実績が乏しいという側面があるかと思うが、今後、研究活動の活性化、学際分野における共同 研究の推進等の見地から、これら研究費の受け入れに説明会を開催する等により積極的に対応す るよう呼びかけたい。採択・獲得実績に対して、学園が独自に研究支援するインセンティブも検 討したい。

寄付金については、今後、本学園にとってもその必要性が増大するという認識のもとに、受 け入れ方策について検討して参りたい。

(予算編成)

5) 予算編成過程における執行機関と審議機関の役割の明確化

[現状の把握]

予算編成の最終審議機関は理事会であるが、本学園の規模、運営実績から得た智恵を基にし て編成作業が展開されており、予算編成過程において多くの場合、執行機関である事務局責任者 と予算原案の立案責任者が共通するのが現実である。編成内容の予備審議は、大学事務局長、法 人本部の業務部長、総務部長、財務担当理事で行うようにしている。

編成過程の実態は、収入予算科目については、寄付金収入、資産売却収入、長期借入金収入 の基本施策部分については、理事会での検討・審議の状況及び理事長、財務担当理事の意向を斟 酌して法人総務部長が基本案を策定。退職関係交付金収入については、人事課長が異動見込みを 考慮して原案を策定する。その他の学生生徒等納付金収入等については、学内情報等に基づき、

経理課長が原案を策定している。

支出予算の科目については、人件費支出については、理事会での検討・審議の状況及び理事 長、財務担当理事の意向を斟酌して法人総務部長が基本的な枠組みを策定し、人事課長が過年度 実績と次年度人員異動見込みを考慮しつつ原案を策定している。

教育研究経費支出の経常的支出については、過年度の実績及び大学における積み上げ計算結 果をベースとして経理課長が原案を策定、ほかに大学の現場で特別に計画する特色ある教育、現 代的ニーズに対応する教育、国際交流等については、大学における各種審議機関の検討状況を集 約して大学事務局長が原案を策定している。

管理経費支出については、経常的支出については、過年度の実績をベースとして経理課長が 原案を策定、広告費については、入試広報センター長の策定案を基にして、年度ごとの戦略的要 素を担当理事と協議して原案を策定、借入金等利息・返済支出については、借り入れ約定に基づ き経理課長が策定している。

施設・設備関係支出は、過年度の整備状況を確認し現場の希望をヒアリングして、法人業務 部長が原案を策定している。

(16)

資産運用支出のうち資金運用支出については、現状の運用状況を基に法人総務部長が長短の 資金バランス等を考慮して策定している。その他の未払金、預かり金等の支出については、経理 の実態を確認したうえで経理課長が策定している。

[点検・評価]

本学園の予算規模、財源の限界、少子化のため存立の競争的環境に置かれた大学の位置づけ 等について、本学の中間責任者は比較的よく自覚するに至っており、予算執行と審議の役割につ いては自覚的に認識されている。

即ち、存続をかけてより効果的に教育研究を推進すべき環境作りのために予算確保に向かう べき使命と、予算規模の限界からくるバランス維持と効率性追求の使命が、上記編成過程で自律 的に働いている。ただし、施設・設備上の抜本的整備や学部増等の戦略的判断は、理事会が積極 的に主導している。これは、主要な業務の執行責任者が理事を兼務しているという組織上の成果 でもあるとも言える。

[今後の改善方策]

一般的には、予算制度をどのように構築し運用したらよいかという課題は、大学が置かれた 環境や時代、大学の成り立ち等により対応策が多様であろうと考える。

本学においては、過去の運営実績の積み重ねから現在の方式が採られているが、経営環境は 厳しくなる一方なので、財政情報を各部門運営責任者はじめ一般教職員が共有し理解を深めるこ とを強化し、現状の方式に固執することなく、改善の方策を探りたい。当面は、財源の限界性か ら、シーリングを導入した予算編成過程を目指すことになる。

6) 予算配分と執行のプロセスの明確性、透明性、適切性

[現状の把握]

大学の現場における運営経費予算は、各部門の計画に基づき積み上げ方式とし、大学の将来 構想委員会、学部運営会議、大学運営会議で審議された結果を統括ディレクター(事務局長)が 取り纏め、政策判断を加えて原案とし理事会で承認された後、公表し、各部門に示達している。

学園予算の全体については、前年度決算報告とともに学内報「ぶんきょうニュース」に掲載して 発表している。

予算の執行上の物品調達、経費の支出については、執行の明確性、透明性、適切性を期して 制度化している学内規程、具体的には「物品等調達手続規程」「同規程細則」「C稟議規程」に 基づく稟議制度により個別執行のプロセスを明らかにしている。

なお、主要な施設・設備予算については、法人業務部で執行管理を行っている。また、学園 全体の予算執行状況については、法人総務部経理課が把握し、財務担当理事及び理事長に報告す る仕組みとしている。

[点検・評価]

現状においては、本学の運営実態に合った制度として定着していると判断している。予算執 行のプロセスの明確性、透明性、適切性は、稟議制度に基づきかなり明白になっている。

ただし、今後、限られた財源下での予算配分のありかたについては、財政事情の動向と合わ せ、より適切に見直されるべき課題と認識している。

[今後の改善方策]

予算配分のありかたは、シーリング導入の方向で見直されるべき課題であるが、予算制度と

(17)

それを支える運営組織のありかたは、結局は、制度の納得性と人員効率のバランスとの問題に帰 着する。いわゆる「小さな政府」で納得性のある効率的で公正な大学運営をするにはどうしたら よいのか、英知を集め模索していきたい。

予算執行プロセスを明らかにしようとする本学の稟議制度は、かなり成熟度が高い反面、記 述の事務負担を来している面もありうるので、教育・研究の質の向上を前提としながら、手続き の簡素化も検討していきたい。

7) 予算執行に伴う効果を分析、検証する仕組みの導入

[現状の把握]

予算執行の効果分析、検証とは、大きく見る場合は、年間の予算執行により大学の「輝き」

具合がどうなったか、その結果、社会に評価され学生の募集効果等にどのようにつながったか、

という面からの検証がある。一方、狭義の面から見た場合は、個別の企画案件や個々のプロジェ クトに予算をつけた場合の結果の分析、検証ということがある。

前者の場合の検証は、年間の予算執行という数量的効果のほかに取組姿勢などの質的側面も 加味されるべきであるため、その検証は複合的、複雑なものとなろうが、これらを事業結果とし て見れば、事業報告として検証することが出来る。改正私学法で評議員会に対する事業の実績報 告が義務づけられたが、本法人ではこの趣旨に則り、実施している。

一方、個々の予算案件の執行効果の検証という次元でとらえた場合、制度として仕組みを導 入しているか、という点では、まだ、全面的・網羅的に制度として実施するに至っていないのが 実態である。

ただし、例えば、過年度に建設した軽井沢セミナーハウスの採算状況、或いは、大学の組織 として設けた生涯学習センターの採算状況については、当然ながら、年度別にフォローをしてい る。また、水光熱費の部門別使用実態・節減の状況、外部への業務委託コストの妥当性等につい ては定期的に検証し見直している。

[点検・評価]

学園の事業報告として前年度の分析、検証は、実施しているが、その精度や報告の内容は必 ずしも十分とは言えないので、今後、さまざまな角度から検討して参りたい。

個々の予算案件の執行効果の検証という次元では、現在、部分的に実施されてはいるが、全 面的・網羅的に制度として実施するに至っていないため、今後の検討課題としたい。

[今後の改善方策]

大学経営環境として、今後ますます予算財源の限界性という大きな制約が伴うので、財源の 有効活用のためには、執行の検証ということは基本的に欠かせないテーマである。これを、どの 程度の単位の細かさで行うかを検討し、予算実績主義を極力排して参りたい。

(財務監査)

8) アカウンタビリティを履行するシステムの導入状況

[現状の把握]

財務情報の基礎となる学校会計の年度情報は、処理セクションである法人総務部経理課が決算 業務を行い、公認会計士による期中監査、決算監査を経てその妥当性を確認している。その監査

(18)

経過については、決算取り纏め終了時点となる5月中旬または下旬に、監事が公認会計士から直 接説明を受ける仕組みとしており、同時に、監事に対し経理課長が決算数字について詳細な説明 を行い、監事による会計監査が進められる。決算内容は、理事会で審議承認を受けた後、評議員 会に報告し意見を徴することになる。決算確定作業と並行して、法人総務部総務課において、前 期の事業実績を事業報告として取りまとめ、理事会、評議員会に報告するしくみとしているが、

ここまでは、寄附行為に基づく業務処理でもある。

上記の手続きにより明らかとなった学園の事業概況と財政状況について、学内報「ぶんきょう ニュース 特別号」として7月または9月に特集し、資金収支計算書、消費収支計算書、貸借対 照表及び次年度予算書とともに教職員に配布説明するしくみとしている。その概要は、学内掲示 をして、学生にも開示している。

さらに、学外の関係者に対する説明並びに一般公開の方法として、インターネットのホームペ ージ活用が最適であると判断し、「2004(平成 16)年度事業報告書概要」、「2005(平成 17)

年度事業計画概要」を掲載して、2004(平成 16)年度決算及び 2005(平成 17)年度予算概要に ついて説明した。

[点検・評価]

学内に対する説明は、上記手順、内容で行う仕組みが定着している。また、学外の利害関係者 から開示請求がある場合の対応も可能な態勢としている。インターネットのホームページ上では、

単に決算数字の記載だけではなく、施策としてどのような考え方で、何を実施したか、また、計 画した事業計画がどのような概要なのかについて言及することを志向している。

[今後の改善方策]

学校財務情報の説明は、学校会計基準独特の概念もあって複雑な部分もあるが、これを極力 分かりやすく、また、学園の状況について、より理解しやすくなるような表示上の工夫改善を加 えていく必要がある。特に、インターネットによる開示は、一般公開であるだけに説明のあり方 については今後とも留意して参りたい。

9) 監査システムの運用の適切性

[現状の把握]

会計処理は事実の記録からスタートするが、本学園は伝票会計方式を採っており、個々の処 理は、全て事務の担当現場で3連式複写伝票に起票し、現場管理者の検印を受け、その1部を担 当現場の控えとして残し、複写2部を本部経理課に回付、本部経理課で処理内容の適切性を確認 して勘定処理のうえコンピュータ入力伝票とし、勘定処理が施された複写3枚目の伝票が担当現 場に戻して正式な現場記録として保存するしくみを採っている。

現場起票段階では、その支払いがどのような承認に基づいているか、稟議制度により記録さ れた稟議承認番号を伝票上に付記する事務処理としている。20 万円以上の物品等の調達はA稟 議による理事長承認を必要とし、20 万円未満の物品調達は、B稟議による大学事務局長(本部 では、業務部長及び総務部長)の承認、20 万円以下でも、消耗品を除く経費の支出はC稟議に よる理事長承認を義務付けており、伝票上にその承認番号を記載することにより相互の確認・牽 制機能を果たすようにしている。

本部経理課においては、個々の支払いに当たり、稟議承認が得られているかを必ずチェック し、その内容の確認上必要がある場合には当該稟議承認内容を精査することもある。また、常時、

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処理の妥当性について現場担当者や責任者に照会して、チェックするようにしている。

また、公認会計士による期中監査において、伝票のサンプリングチェックのほか、処理の考 え方等について、公認会計士から直接担当者をはじめ担当責任者に質問し、これに応えるやりと りを通じて、処理の妥当性確認と過誤の防止に努めている。この監査には、本部経理課員も必ず 同席してその応答記録を残し、学内での検討・改善材料として活用している。

前記の稟議制度の運用状況については、2005(平成 17)年度から監事の業務監査の対象とし てその閲覧に供し、意見をいただくようにしている。具体的には、毎月数回、監事として出席す る理事会開催の前後の時間帯に、前回以降の稟議書を閲覧願い、稟議案件とその検討の状況、検 討に当たりもっと配慮されるべき側面、或いはもっと簡素化が望まれる側面、承認案件に関する 理事長あるいは担当理事の指示コメントの適切性等について、企業感覚で客観的に助言や感想を いただくようにしている。意思決定には本法人として固有の制度や文化的背景があることを理解 していただきつつ、学園としては、経営体として業務の適切性を検証する一つの契機としたい考 えである。

[点検・評価]

担当者と管理者間における実施と検閲の関係、現場と本部間における処理の妥当性チェック、

稟議制度における現場責任者と理事長または理事長の権限委譲を受けた責任者間の伺いと承認の 関係、その稟議制度の運用に対する監事の監査、会計処理全般に対する公認会計士の監査がシス テム全体として、現在は有機的に適正に機能している。

ただし、事務処理につきまとう問題点として処理のマンネリ化に陥る懸念が常にあり、正し い事務処理をして当たり前の会計処理に当たっては、常に原点に帰ることに留意し、工夫改善の 積み上げが必要となることを銘記したい。

[今後の改善方策]

現在のシステムを機能的に維持向上させなければならない。しかし、精密な制度向上を図る には、最終的には、マンパワーを伴うものであり、適切な目的達成とそのための投入コストとの バランスをいかに両立させるかは、本法人規模にあっては、大きな問題となる。

その意味で、監査システムの客観的な充実のために、学内に独自の組織を立ち上げる必要性 を考慮しつつも、その機能を現行組織のなかで果たせないかを検討していきたい。

(私立大学財政の財務比率)

10) 消費収支計算書関係比率及び貸借対照表関係比率における各項目毎の比率 の適切性

本項の点検に当たっては、本学の過去5年間〈2000(平成 12)~2004(平成 16)年度〉の実 績値推移に対し、日本私立学校振興・共催事業団の「今日の私学財政」における 2003(平成 15)年度系統別区分「文他複数学部」の平均値を参考データとして対比しながら検証していく。

1.消費収支計算書関係比率

(1)人件費比率

参照

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※ Microsoft Forms により実施 産業技術短期大学卒業生の学習・仕事・生活に関するアンケート(2021年) 本学では、卒業生の皆さんが、在学中に受けてきた教育をその後の仕事や生活でどのよ うに活用しておられるのか、また本学の教育についてどのような意見をお持ちなのかにつ いてお伺いし、本学の教育の質向上・学生支援の充実を図っていこうと考えております。