2008年度
上智大学経済学部経営学科 網倉ゼミナール 卒業論文
男女間の海外旅行経験率の差は どこからくるのか
A0542342 杉山愛 2009年1月15日
目次
1、はじめに ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2
2、これまでの思考プロセス ・・・・・・・・・・・・・・・・ 2 2-1、若者の海外旅行離れ問題
2-2、海外旅行経験率
3、素朴な疑問 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 4
4、分析① ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 4 4-1、仮説①
4-2、検証 4-3、検証結果
5、分析② ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 6 5-1、仮説②
5-2、男女の海外旅行に関する情報源の差
① Selectivity Model
② 男の子はモノが好き、女の子はヒトが好き
③ 口コミュニケーションの効用
5-3、考察
6、分析③ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 11 6-1、仮説③
6-2、「海外」というリスクの回避行動 6-3、男性の「一人旅」のステータス 6-4、考察
7、全体を通しての考察・補足 ・・・・・・・・・・・・・・・・ 14 8、おわりに ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 16 9、参考文献 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 16
1、 はじめに
本論文は、昨今話題となっている、若者の海外旅行離れの問題に興味を持ったことからはじま った。海外旅行における、意思決定プロセスの中の「興味」をもつ段階で、男女で海外旅行への 興味を持つプロセスが異なることに着目する。本論文の目的としては、男女の海外旅行の行動プ ロセスの差が、男女の海外旅行経験率に何らかの影響をあたえていることを明らかにすることで ある。男女の意識・行動の差から、海外旅行を考察してみたい。
2、 これまでの思考プロセス
2-1、若者の海外旅行離れ問題
以下のグラフは、各年齢層の出国者数/各年齢層の人口を図示したものである。
(表Ⅰ、出国者数は出入国管理局データ、各年齢層人口は総務局統計より)
出国者の絶対数だけでみれば、若者層の海外出国者は減っているけれども、以上の図からわか るように、相対的出国者数でみると、毎年大きな変化はない。また、出国者数は延べ人数であり、
もしかしたら海外旅行へ行く人と海外へ全くいかない人の二分化現象が起きている可能性も考 えられる。このデータのみで若者の海外旅行離れを証明するのは不可能である。
0 5 10 15 20 25 30
H11 H12 H13 H14 H15 H16 H17 H18 H19
0~4歳
5~9歳
10~14歳
15~19歳
20~24歳
25~29歳
30~34歳
2-2、海外旅行経験率
次に、男女の海外旅行経験率に着目してみた。
(表Ⅱ、海外旅行経験回数)(マクロミルモニタ調べ)
(表Ⅲ、海外旅行経験の有無)(表Ⅱの海外旅行経験回数をもとに作成)
以上二つの図から、男女に経験率の差異が認められるのは明らかで、明らかに男性よりも女性 の方が、海外旅行経験率が高く、女性よりも男性の海外旅行経験率は低い。
0 20 40 60
0回 1回 2回 3~5回 6~9回 10回以上
男性 女性
男性 女性
0 10 20 30 40 50 60 70 80 行ったことがない
行ったことがある
女性
男性
3、 素朴な疑問
◆海外旅行経験率に男女で差が出るのはなぜか?
◆男性に比べ、女性の方が海外旅行への経験率が高いのはなぜか?
4、 分析①
4-1、仮説①
仮説「男女の会話の内容差が海外旅行の経験率の差を生む。」
男女間の会話の内容差に着目をした。
男性同士の会話、男女混合の会話、女性同士の会話に差があることは容易に想像ができる。
アランとバーバラ(2000)も、話の内容は男女で違うとし、「年齢を問わず、男だけのグル ープ、女だけのグループが話すのを聞いていると、同じ話題であっても男女では会話に大きな差 がみられる。女性集団は、誰が誰を好きか、誰と誰が仲が悪いといった話が中心で、絆のしるし として秘密を共有したがる。十代の女性の話は、男性のこと、体重、洋服、友達のことで持ちき りで、大人の女性にしても、ダイエット、付き合い、結婚生活、子供、恋人、性格、洋服、他人 の行動、職場の人間関係など、とにかく人間にまつわることが話の中心である。これに対して、
男性たちは、誰が何をした、あいつはこれが得意だとか、これはこんなふうに動いているといっ たこと、つまりものごとや行動について話したがる。思春期になると、スポーツやメカ、ものの 機能が話題になる。大人になると、スポーツ、仕事、ニュース、何をした、どこへ行った、テク ノロジー、自動車、機械のあれこれについて語り合う。」と述べている。
男女では会話の内容が異なることから、男女で親しい同性の友人との間の会話に求めるものや、
海外旅行の話題に関しても男女で差があり、それが海外旅行の行動に影響を与えているのではな いか、と考えた。
4-2、検証
◆検証方法:アンケート
◆アンケート対象者:18歳から25歳までの男女(男性20人、女性62人)
◆質問内容
問1:あなたが同性の友人との会話に求めるものは何ですか?次のうち、重要度の高い順に並 び替えてください。
(アドバイス・解決策、共感・共有、情報の伝達、ただ聞いてほしい、その他)
問2:親しい同性の友人との会話を思い浮かべ、次のうち話題に上がりやすいと思う順に、並 び替えてください。
(恋愛、将来、家族、ニュース、旅行、学校、アルバイト、その他)
4-3、検証結果
問1は男女ともに「共感・共有」が一位。問2に関しては、女性のうち数人に、「旅行」が話 題にあがる順位として上位にあげたが、男性にも旅行を上位にあげる人が数人いるくらいだった。
旅行に行っている回数を照らし合わせても、旅行に出かける回数が多いからといって、「旅行」
が会話の話題によくあがるとは限らないことがわかった。
よって男女間で有意な差を認めることができなかったので、仮説①は棄却とした。
5、 分析②
5-1、仮説②
仮説「男女の、海外旅行に関する情報収集における行動差が、海外旅行経験率の差を生む」
海外旅行へのプロセスには、「興味」「決定」「行動」の、大きくわけて三つのプロセスがある。
佐々木(2000)は行動プロセス5段階にわけ、「休暇系旅行系列」と名付け紹介している。
観光旅行実施前のプランニング過程に相当するのが、
① 一般的意思決定(generic decision)
② 情報獲得(information acquisition)
③ 共同意思決定(joint decision)
であり、③共同意思決定の後、実際に④旅行活動、⑤満足・不満足、という過程を経る。
仮説②では、この三つのプロセスのうちの、「興味」の地点、5段階モデルの中の、②情報獲得 の地点での男女の行動の差に着目することとする。
5-2、男女の海外旅行に関する情報源の差
0 20 40 60 80 100
インターネットサイト(PC) テレビ 新聞 雑誌 家族・友人の話インターネットサイト(携帯電話)
男性
0 20 40 60 80 100
テレビ インターネットサイト(PC) 家族・友人の話 雑誌 ブログ フリーペーパー
女性
(WEBマーケティングガイドレポートより)
男性はマスメディアに情報を求め、女性は親しい人との口コミュニケーションや、口コミサイ トや価格比較サイトを利用する傾向がある。この男女の行動差が、海外旅行経験率に影響を与え ているのではないだろうか。
次に、この男女の行動差を裏付ける記述をいくつかあげてみたい。
① Selectivity Model
Larocheら(2000)、Meyers-Levyら(1991)によって提唱されたモデル。彼らに
よると、
A、 女性はより、努力をして、包括的で、詳細な分析をする傾向がある。つまり、あらゆる 情報を入手して、あらゆる状況を考慮する傾向がある。
B、 男性は、場合によっては、包括的な分析は行わずに、ヒューリスティックな情報処理を 利用する。つまり、あらゆる情報の検討を行うというよりは、ある特定の情報に依拠し て意思決定をする傾向が強いということ。
(ヒューリスティックとは、必ずしも成功するか分からないが、うまくいけば解決に要する 時間や手間が省ける手続きや方法)
C、 時間が足りないケースでの意思決定の場合、上記の男女の差はなくなる。つまり、男女 ともヒューリスティックな情報処理を利用する。更に、非常に重要な案件のように、男 性が包括的な情報分析の必要性を強く感じる場合は、男女の差はなくなる。男女とも包 括的な情報分析を行う。
D、 学問的な用語でいうと、包括的な情報分析(elaborative information processing)を行 うための敷居(threshold) が、女性の方が低いことが、Meyers-Levyら(1991)の実験 から分かっている。よって、その敷居より低いケースに関しては、男女ともにヒューリ スティックな情報処理を利用し、高いケースに関しては、男女とも包括的な情報処理を 行うということである。
E、 男女間に包括的な情報分析能力の大きな差はないと考えられている。
0 10 20 30 40 50 60 70
口コミサイ ト利用 比較
サイ
ト利用
男性
女性
② 男の子はモノが好き、女の子はヒトが好き (アラン・バーバラ、2000)
女の子の脳は人間や人の顔に、男の子の脳は物体やその形に反応しやすい。生後数時間から 数か月までの赤ん坊を調べると、例外なくひとつの事実が明らかになる。男の子はモノに、女の 子はヒトに興味を示すのだ。
男と女が配線の異なる脳で世界を見ていることは、科学的な数値にもはっきり表れている。女 の赤ちゃんが、人間の顔に注意を向け、相手と目を合わせる時間は男の赤ちゃんより2~3倍長 いし、男の赤ちゃんは不規則な形・パターンをした動くおもちゃを見る時間が長かった。生後二 週間ぐらいになると、女の子は家族とそれ以外の人間を写真で見分けられるようになる。男の子 にはまだ無理だが、そのかわりなくなったおもちゃを見つけるのが得意だ。社会による条件づけ がまだ行われていない、いわば白紙の状態で、すでにこれだけの違いが現われている。片方に物 体が、もう一方に人間の顔が見えるようにした双眼鏡の装着を就学前の児童にのぞかせて、どち らをよく覚えているかという実験を行ったところ、女の子は顔とその表情を、男の子は物体とそ の形を思い出すことが多かった。
積み木で建物を作らせたら、女の子は低く左右に長い建物を作って、その中にどんな人間が いるか想像を膨らませる。男の子は、隣の男の子より大きく、高い構造物を作りたがる。走り 回り、飛び上り、取っ組み合いをしたり、飛行機や戦車になったつもりで遊んだりするのは男 の子だ。女の子はどの男の子が好きだとか、どの男の子がバカみたいだといったことをおしゃ べりする。
幼稚園でも、新しく入ってきた女の子はすぐに歓迎されて、女の子同士すぐに名前を覚える が、新入りの男の子に対して、男の子たちに対して、男の子たちは最初関心を示さず、使えそ うな奴だとわかったところで序列関係に組み込む。一日いっしょにいたくせに、男の子たちは 新入りのこの名前も知らなかったりするが、遊び相手として有能かどうかはちゃんと判断して いる。女の子は知らない子でも歓迎し、受け入れてハンディキャップや障害を持つ者にもやさ しく接するが、男の子は仲間外れにしたり、いじめたりする。
いくら男の子、女の子を分け隔てなく育てようと親が努力しても、脳の違いによって好みや 行動ははっきり分かれてくる。四歳の女の子にテディベアを与えたら、そのぬいぐるみは大切 な友達になるだろう。男の子だと、ばらばらにして造りを確かめたあと、すぐにどこかに売っ てしまって、次のおもちゃに興味を示す。男の子は物体とその仕組みに、女の子は人間とその 関係に興味を持つのである。
③ 口コミュニケーションの効果 (川上、1997)
ヘアーら(1991)による、口コミに関する実験がある。
性能の良いコンピュータと性能の悪いコンピュータで、口伝えによってその性能の良し悪しを伝 えた場合と、印刷物でその性能の良し悪しを伝えた場合、そのコンピュータに対する評価の差に ついて調べる。「7」が最も高い評価で、「1」が最も低い評価を示す。
(表Ⅳ、口伝えのコミュニケーションの効果)
実験結果から、口コミの効果は一目瞭然である。性能の良いコンピュータについては、印刷物 でほめたものと比べ物にならないくらい良い評価を得ている。これに対し、悪いコンピュータに ついては印刷物に比べ、断然悪い評価が与えられている。このように、口伝えのコミュニケーシ ョンは、他人の商品評価に強い影響を与えることがわかる。
どのような場合に、人は他人に伝えたいと思うのか。
第一に、購入した商品自身がとても良いと感動したとき。購入した商品がとても気に入った場 合にその商品について話さずにはいられない気持ちになる。
第二に、必ずしも商品自身が優れたところがなくても、バーゲンなどで破格に安く購入したと か、誰も気づいていないとても便利な商品や変わった商品を購入したりすると、自分が見つけた のだということを含めて吹聴したくなる。商品にかこつけて自分の買い物上手を宣伝しているの である。骨董などの掘り出し物を見つけた場合などは自分の鑑識眼を認めてもらいたいのである。
第三に、使ってみて体が楽になったとか、とても良い効果があったりすると、その良さを一緒
000 001 002 003 004 005 006 007
性能の良いコンピュータ 性能の悪いコンピュータ
口コミ 印刷物
に共有したいという気持ちから親しい人に話す場合もある。押しつけがましく、その商品をもう 一つ買ってあげたりすることもある。他人に対する強い関心がある場合にも起こる。
第四に、面白い現象としてはコマーシャルのキャッチコピー、たとえば「とまらないとまらな い」などのセリフにつられて買ってみて、実際に「とまらない」経験を持ったりすると、「あの コピーは本当よ・・・。本当にトマラナイんだから」と人に話したりする。企業の発するメッセ ージにすっかりのせられてしまうこともある。
5-2、考察
① の記述より、男女の消費行動の差を認められる。②の記述からは、女性は男性よりも ヒトとの関係を重んじ、ヒトに興味を示し、またおしゃべり好きであることがわかる。記述③ では、口コミの効用には、良いものがより良い評判を得、良くないものにはとことん悪い評価 を得るという特徴があることがわかる。
また、口コミの利点として、口コミの送り手は、実際に使ってみて良かったことを素直に伝 えるため、納得できる情報が多い。マスメディアの情報が一方向性であるのに対して、口コミ は双方向性が保障されている。受け手は送り手に、自分が疑問に感じたことを直接聞くことが できる。多くの場合、受け手が疑問に思ったことは、送り手も感じていた疑問である場合が多 いのではないだろうか。この様な点で、口コミはその疑問に適切に応えてくれる。
記述③で、口コミの発信者の心理を述べたが、記述②より、女性の方がおしゃべり好きで、
ヒトを好む傾向があることから、口コミ発信者の多くは女性であることが推測できる。また、
発信者だけでなく、口コミ情報の受信者も女性の特徴と重なることから、口伝えのコミュニケ ーションは女性中心のコミュニケーションであり、記述③と先にあげた口コミの恩恵を受けや すいのは、男性よりも女性であると考えられる。つまり、口コミによる情報の方が、適切に疑 問に答えてもらうことができ、不安を取り除くことができる。また、マスメディアのような無 機質な情報よりも、口コミの情報の方が、リアリティのある情報が提供される。そのため、情 報収集の次のステップに移行しやすく、「興味」「決定」「行動」の過程がスムーズに進む。
よって、マスメディアの情報を頼りにする男性よりも、口コミの効用の恩恵を受けやすい女 性の方が、海外旅行経験率が高いと考えられる。
6、 分析③
6-1、仮説③
仮説「海外旅行のリスク回避における行動の違いが、男女で異なり、それが経験率に影響を与 えている。」
仮説③では、海外旅行プロセス(「興味」「決定」「行動」)のうち、「決定」の部分での、男女 の行動の差に着目する。
6-2、「海外」というリスクの回避行動
鈴木(1993)によると、観光旅行の中でも、特に海外旅行には購買に伴う様々なリスクが 存在すると述べている。通常の商品の購買と同様に、期待通りの観光ができない可能性、出費が かさむ、健康や安全に害を及ぼす可能性などである。海外への観光旅行を購買行動として考えた 場合、他の商品・サービスと比較して消費者が知覚するリスクは高いとしている。
海外旅行への興味関心があっても、実際には海外旅行をしたことがない、という人にヒアリン グ調査をした際、リスクの中でも、先にあげられた、「健康や安全に害を及ぼす可能性」や「外 国語を介して訪問先の人々とコミュニケーションをとること」に対する懸念が多いように受取れ た。
(表Ⅴ、直近海外旅行形態)(マクロミル調べ)
0% 20% 40% 60% 80% 100%
女性 男性
パッケージ(添乗員あり)
パッケージ(添乗員なし)
パッケージ以外の団体旅行 個人旅行
その他
上記の図で、「パッケージ旅行(添乗員あり)」→「パッケージ旅行(添乗員なし)」→「パッ ケージ以外の団体旅行」→「個人旅行」の順番で、海外旅行におけるハードルは高いと考える。
少人数の旅行であればあるほど、個人で目的地や航空会社、ホテルを選び、これらを予約する場 合には、複雑なリスク管理を個々人の判断と責任で行う必要があるからだ。そのため、パッケー ジ旅行においても、添乗員がいたほうが、個人の判断や責任による行動が減少するため、よりハ ードルが低く、「楽な」「リスクの軽減された」旅行だと思われる。
また、パッケージツアーといえども目的地の様々なアクシデントを想定した場合、身近で気の 許せる人が傍らにいることは、旅行時のリスク管理という観点から有益である。このため、旅行 参加者がグループによる参加を望むだけでなく、その参加者の家族など旅行に同行しない周囲の 人たちも、旅行参加者が友人や家族と行動をともにするように勧める場合もある。このように観 光旅行に伴う各種リスクへの対処として、家族や友人とグループを組んでパッケージツアーに参 加することも考えられる、と小口(2006)は指摘する。
(
(図、直近海外旅行同行者)
*海外旅行経験者ベース *縦軸はパーセンテージ
この図からわかるように、女性よりも男性の方が、一人旅に行く人が多いことがわかる。
先に述べたように、海外旅行のリスク回避の方法の一つに、グループでの旅行をあげたが、男 性ほどグループ旅行を避けるのが実態である。
0 5 10 15 20 25 30 35 40 45 50
家族・親族 友人・知人・恋人 自分一人 その他
男性
女性
6-3、男性の「一人旅」のステータス
男性へのヒアリング調査の中で、「一人旅に憧れるか」という問いに対し、肯定的な回答を得 た。また、国内での一般的な買い物やレジャー施設へ行くのと同様、男性同士複数人で海外旅行 に参加するのには、抵抗があるとのことだった。
次のような記述を見つけた。
「女の子は関係と協力を、男の子は力と地位を欲しがる」
これは男女の役割の差で、進化の過程においてどの必要があったから。男は狩りをして、女は 木の実や果実を採った。男は守り、女は育てた。それを続けた結果、両者の身体と脳は、全く別 物になった。男女の身体は、それぞれの役割に合わせて発達していった、とある。
また、小口(2007)は、海外旅行のPull要因として、「他者との関係」を挙げている。知 人の誰もがうらやむような新鮮な、あるいはステータスの高いデスティネーション、あるいは秘 境の訪問などは旅行者本人の満足を高めるとともに、他者との関係における本人の地位を高め、
他者にも影響を与える場合がある、としている。
海外旅行には興味があり、一人旅には憧れのある男性に調査をしていて、男性の地位や名誉に 対する価値観と、この他者との関係が、男性の「一人旅」への憧れを生む要因ではないかと考え た。
6-4、考察
海外旅行におけるリスク回避法の一つとして、グループで旅行に参加する、という方法があげ られる。しかし、男性は他者との関係の中で、本人の地位を高めたいという欲求があり、そのた めには、男性複数で群れるのではなく、一人で行動する必要がある。他人の世話になることなく、
自分一人で何かを達成することも、男性の中ではある種のステータスとなるようである。そのた め、男性は海外旅行における、「健康や安全に害を及ぼす可能性」や「外国語を介して訪問先の 人々とコミュニケーションをとること」というリスクに、一人で立ち向かう羽目となる。つまり 海外旅行へのリスクへの回避行動のうち、グループでそれを回避することができない男性は、海 外旅行へのハードルは高く、海外旅行へ踏み切る機会を失う可能性がある。
逆に女性の場合は、このグループで旅行に参加するというリスク回避がスムーズに行われるた め、海外旅行に対するハードルは軽減されることになる。
よって男性よりも、女性の方が、海外旅行経験率が高いという結果に影響を与えていると考え られる。
7、 全体を通して・補足
3つの仮説に加えて、今回の論文では取り上げることができなかったが、男女の海外旅行経 験率に影響を与えている可能性がある要因として、海外旅行の流行性もあげられる。直近では、
HIS が大々的に年始キャンペーンを行ったり、学生旅行のパンフレットが、大学前でさかん に配られたりしている。こういった宣伝やプロモーションも、受け手の性別によって受ける影 響もあるのではないだろうか。一般商品の宣伝やプロモーションにより、男女で消費行動が異 なるということは、一般的に言われていることである。宣伝やプロモーション活動が、海外旅 行をしようという心理にどのような影響を与えているのか、またそこに男女間の差があるのか、
というのはとても興味深い。
本論文は、若者の海外旅行離れに始まり、このような論文になったが、最後に一つ、興味深 い資料をあげておきたい。レジャーの位置づけと役割が、年代や世代によって異なる、という ものである。
世代名 生年(昭和) 年齢(2008年時) 特徴形成期の時代背景 特徴的な志向性
戦前前期 4~9 74~79 高度成長期の主役
男尊女卑思考が残存
趣味志向 旅行志向 健康志向 戦前後期 10~15 68~73 高度成長期の働き手
大家族主義が残存
ノスタルジア志向 孫ダシ志向 自己顕示志向
戦中 16~21 62~67 モーレツ社員と良妻賢母
三種の神器
第二の青春志向 夫婦独立独歩志向 肉体維持志向
団塊 22~27 56~61 第一次ベビーブーム
競争と抵抗の世代
うんちく志向 家族志向 シンプル志向
個性化 28~33 50~55 高度経済成長
個性の主張を表現
オフタイム志向 マニュアル志向 個人優先志向
新人類 34~39 44~49 感性重視の社会
イベントとトレンド
おしゃれ志向 子供ダシ志向 ハイクオリティ志向
横並び 40~45 38~43 個性の主張よりも合理性
豊かな社会
パラサイト志向 リラクゼーション志向
こだわり志向 団塊ジュニア 46~51 32~37 第二次ベビーブーム
生活環境豊か
マイペース志向 コト消費志向 カスタマイズ志向
携帯 52~57 26~31 バブル景気
成熟化社会
気まぐれ志向 メリット志向 受け身志向 バーチャル 58~63 20~25 少子化社会
TVゲームとプリクラ
見た目志向 思い出志向 リセット志向 (表 世代別余暇価値堂の志向性)(大八木、2003)
世代名 生活での 位置づけ
レジャーの 目的
重視する 要素
レジャー の価値
レジャーの 主体性 戦前前期
戦前後期 戦中 団塊 個性化 新人類 横並び 団塊ジュニア 携帯
バーチャル
(図、レジャーの位置づけと役割)(大八木、2003)
生 き がい
メ リ ハ リ
味 付 け
自 己確 認
自 己 実 現
コ ミ ュ ニ ケー シ ョ ン
思 い出
非 日常 性
旬
心 の 栄 養
精 神 の 栄 養
交 流 の 栄 養
受 動的
能 動 的
主 体 的
受動 的
8、 おわりに
もともとこの論文のきっかけは、若者海外旅行離れに関することだった。若者が本当に海外旅 行に行かなくなっているのか否かは、本論文で調べることはできなかったが、上記の2つの図や 表から、若者と、それ以前の世代とで、海外旅行に求めるものや意識が違うことは明らかである。
一般的に、海外旅行離れの要因として、インターネットの普及、金銭問題等が言われているが、
価値観や意識が変わってきている今、やはり、海外旅行にいくらお金をかけて構わない、という 人や、積極的に海外に何かを求める動きが減っているのは当たり前のことだと思う。数字で、そ の変化を明らかにできなかったのは残念だが、私の好きな旅行の分野で、卒業論文を進めること ができてとても楽しかった。
最後の表「レジャーの位置づけと役割」で、私の世代「バーチャル世代」のレジャーの位置づ けには納得させられる。しかし、私は受動的ではなく、つねに主体的で能動的なレジャーを心が けていきたいと思う。
9、 参考文献
竹村和久『消費者行動の社会心理学』北大路書房、2000
小口孝司『観光の社会心理学 ひと、こと、もの―3つの視点から』北大路書房、2006
川上善郎『セレクション社会心理学 うわさが走る 情報伝播の社会心理』サイエンス社、
1997
佐々木土師二『旅行者行動の心理学』関西大学出版部、2000
アラン・ピーズ+バーバラ・ピーズ『話を聞かない男、地図が読めない女』主婦の友社、
2000