商学論集 第羅巻第3号 鎗総年3月
【論 文}
「内的な整合性」からみた
日本版『概念フレームワーク』の特徴と問題点
美 馬 武千代
はじめに
日本の会計基準委員会が発表した討議資料ぎ財務会計の機念フレームワーク違(以下,羅本版蓼概 念フレームワーク選と略称する)において,会計情報が有胴であるための質的特性の一つとして「内 的な整合性」という機念が取り上げられだ1。この概念は国際会計基準委員会(以下,iASCと略称 する戸やアメリカの財務会計審議会以下,FAS君と略称する〉3〉の概念フレームワークにはないも のである嚇。しかし,遜本版窪概念フレームワーク癖こおいては,この「内的な整合性」特性が重要 な役割を果たすことが,委員会メンバーによる「観念フレームワーク」の解説において何度も強調 されている5》。①何故「内的な整合性盛概念が導入されたのか,②その内容や役割は何か,を明ら かにし,この検討を通じて田本版窪概念フレームワーク遜の特徴と問題点を明らかにすることが本 稿の目的である。
「内的な整合性」特灌及びβ本飯野概念フレームワーク選の特質や問題点を明確にするためには,
これが設定された背景と意図した役割を明らかにすることが重要と考える。そして,これらを踏ま えて,(i)「内的な整合性」概念の内容と役割を明らかにし,(2〉「内的な整合性」特性の視点及び 設定の背景から日本版匿概念フレームワーク雌の特徴や問題点を明らかにしていきたい。
i〉 日本版ゼ討議資料蓋には2種類のものがある。一つは,企業会計基準委員会の基本概念ワーキング・グルー プが2§艇庫7月に発表したものである(以下,これを「W・Gの討議資料」と酪称する/。纏の一つは,「W・
Gの討議資料達を改訂して企業会計基準委員会の討議資料として発表されたものである(以下,これをヂAS瞬 の討議資料4と略称する/。この二つを含む場合を「購本飯ζ討議資料蝦と呼ぶ.
2〉2瞭1年以羨の国際会計基準の設定主体であ聾,正式名称は, 至飛3鑓&t沁醸Ac£倉糠t擬墓St鍛ぬ羅s C(澱鞍沁 tεゼである。2㈱年以降は,緩織改編が行われ,雛S9({ 撫tα盤tl磯al Accむ囎tl欝墓St鍛盤r融鞠3綴 †)
が基準設定主体となった。
3/ 正解3年以降のアメサカの会計基準設定主体であり,正式名称は, Fl無韻cl撮AccO翻tl確St皺曲羅s8餓r縫警 である。
嚇 iASCの概念フレームワークとは, 麹黴ew(》噛蓄(}r t魏Pre欝欝議tl醗雛尋Prεsε蟹股tlo簸。ずF至賂簸£謡 St3te盤綴もs妙,猛SC,董盤§ を指す.FAS8の概念フレームワークとは, St摸tε搬磁t o{Fl撒離農重Acc綴盛 論慕Co簸ce雛s}輪.i〜餐。.§鱒,FAS鷺,欝7魯〜鯵85を指す。
5/ ζ討議資料 財務会計の擾念フレームワーク遜,齋藤静樹編著,中央経済社,平成麓年,第i部第2章,第2 部第2章1こおいて,讐本版『概念フレームワーク』における納的な整合性」の重要性が強調されている。
検討の順序としては,第一章で至ASC及びFASBの概念フレームワークが設定された背景を簡単 に紹介し,それとの比較で田本版謬概念フレームワーク遺が設定された背景と意図した役割を明ら かにし,第二章で,「内的な整合性」概念の内容の吟味,第三章で,前2章の検討を踏まえて,「内 的な整合性雌を含む田本版ζ概念フレームワーク豊の特徴と問題点を明確にしていく。
第一章 日本版匿概念フレームワーク退が設定された背景と役割
ここでは沼本飯野概念フレームワーク墨が設定された背景と意図した役割を明らかにすることに 翼的があるが,睡本版の特徴を鮮明にするためには概念フレームワーク設定で先行したFASBと iASCのそれと比較することが有効と考え,両者についても簡単に紹介しておく。
藁。FAS8における「概念フレームワークま導入の背景と役割
FASBや亙ASBにおける「概念フレームワーク」導入の背景と役割については,揺稿で既に述べ たが,ここでは重要な部分を要約して紹介しておく嚇。
① 「概念フレームワーク」導入の背景
FASBは,「概念フレームワーク」に該当するものを「概念書(S縦¢驚雛t o{Fi簸鍛clalAcco雛t塗g Co鍵ε嚢ts,以下,SFACと略称〉]として,ig78年以降,7つのものを公表している71。SFAC3は,
SFAC6に置き代えられたので,実質的には6つが「概念フレームワーク]を構成することになって いる。アメリカにおいては,玉973年以降,FASBが会計基準の設定主体になってきたことは周知の 通りである。「概念フレームワーク」の検討が始められるαg73年〉以前の会計基準(当時は野会計 原則(Acc総援塗g Pr麺。星群les〉」と呼ばれていた〉の特徴とそれに対する批判は,ストーり一による
と次のようなものであった韓。
§/詳しい内容については,捲稿「概念フレームワークにおける会計公準の役割ま,ゼ商学論集至第73巻第媛号,
を参照のこと。
7〉 7つの概念書の建式名称と公表年次は,以下の通塗である。
概念書第i号1蓼営利企業の財務報告の目的遷(SFACL Obl¢ct茎vεs o{Fl餓簸clal設¢卿癒簸蓼樋B雛s沁ess E蹴ε撃r量sεs/(i§78年),機念書第2号1ζ会計情報の質的特徴蚕(SぎAC2:Q縫311雛豊艶C捻鍛cteギlsをlcsΦず Acco灘t塗響頚飾灘蕊総数/(欝欝年/,概念書第3号二匿営利企業の財務諸表の構成要素蟹SFAC3:議e難e就s 縫F歓雛。董3蔓翫雄e盤2雛sむy8蟹s塗εss翫tε糟r董sεs〉 (緯懸年〉,概念書第漿号:蓼非営利綴織の財務報告の 目的雲(SFACよ0耕ec重重ves o{F娠鍛。量雄R錐鍵纐馨舞y藩。め総至難ssOrg謎量za奄lo簸s/(i盤春年〉,概念書第 5号」営利企業の財務諸表における認識と灘走還(SFAC51RecO嚢醗lo簸叢露M鍛s鍵εr醗鍍絵鑑簸餓cl盆 St鍍ε騰e援s om麟総ssE醗α騨lsεs〉(欝綴年),観念書第6号:ζ財務諸表の構成要素蟹SぎAC6二E艶態ε鑑s {鍾F譲撮。捻蔓St雄磯総簸ts/(欝繕年〉,概念書第7号1ぎ会計灘定におけるキャッシュフロー椿報と現在懸値 の会計叢(S繋AC7:群s塗箸C3曲欝Ow董藪or搬&tlo舞歌認費res綴t V&1総塗Acco慧鍵辮墓醗e総獣ε驚e盤ts/(2{1{舞 隼〉
なお,SFAC6までの原文は,FASB S籔te盤磯ts O重F童撒簸d31Acco懸t譲墓C礎ce雛//Acc㊤難t擁墓St&籍 δ&羅s ,iRW灘,欝欝,を参照にした。これの訳として,平松一夫/広瀬義州訳『FASB 財務会計の諸概念垂,
中央経済社,2§経年増補版を参照した。
8〉 R.K・ストー1ナー&S・ストーり一著,企業財務制痩醗究会訳,罫財務会計の機念および基準のフレームワ〜
ク蓮,中央経済社.平成鴛年,2§〜綴頁,53〜67頁を参照。
美馬:日本版ζ概念フレームワーク遍の特徴と問題点
第一に,実務において広く使欝されているものを会計基準として公表してきたため(帰納法によ る経験の蒸留〉,多数の代替案が認められた。その結果,代替案溺減への強い要望があるにもかかわ らず,それへの対応力の限界が露呈されたことである。第二に,ピースミール方式で対処してきた ため,基本的な考え方が確立されず,基本指針欠如による新しく生じた問題にまったく対応できな いこと。第三に,包括的な基礎的理論や明確な目的が示されない.ことによる,体系性の欠如,基準 問の矛盾が明らかになり,基準全体への信頼性が薄れ,時代の変化に即した規範的機能を果たし得 ないことになったことである。このような一般的な批判に加えて,FASBのメンバー自身がその必 要性を痛感していた.それは,新しい事態に対応する基準設定に当たっては,基礎概念である資産,
負債などの運絹可能な定義が不可欠であることが認識されていたことである。さらに,FASBのメ ンバー自身の指針となるような一連の根本的な会計諸概念が必要であるという認識を持っていたの である。
このような問題を克服し,新たに意識された課題に対応するため,FASBは設立当初から概念フ レームワークの作成に取り組み,それが,i蟹8年以降に結実してきた。
(2〉 ゼ概念フレームワーク葺の内容と役割
「概念フレームワーク」の内容・役割は,当然,上述の「概念フレームワーク」導入の背景となっ た批判・ニーズに対応したものになっている。「概念フレームワーク」の内容・役割について,各概 念書の冒頭に説明されているが,概ね以下の通りである勢。
①概念フレームワークの目的は,財務会計基準および財務報告基準を形成するための基礎とな る基本臼的及び根本原理を開らかにすることにある。
②概念フレームワークは,首尾一貫した会計基準を導き出し,かつ財務会計および財務報告の 本質,機能および限界を規定する役割をもつ。そのような役割を果たすため,観念フレーム ワークの内容は,相互に関連する基本目的ならびに根本原理の整合的な体系となっている。
③ここにいう基本目的とは,財務報告の目標および目的を明らかにするものである。根本原理 とは,財務会計の基礎的諸概念であり,具体的には,会計処理の対象とされるべき取引,事 象および環境要因の選択の指針,それらの認識および灘定,ならびに利害関係者集団に対し てそれらを要約および伝達する手段の指針となる概念である。
④観念フレームワークは,財務報告の構造および方向性を示すことによって,資本市場が経済 における希少資源の配分を効率的に機能させることを促進するうえで有用で公平な財務情報 の提供を容易にし,もって一般大衆の利益を擁護する社会的役割を果たすと考えられる。
⑤基本目的の確立,根本的諸概念の明確化は,財務会計や財務報告上の諸問題を直接解決する ものではない。むしろ,基本目的は,諸問題を解決するための方向づけを与え,諸概念はそ のための手がかりを与えるという役割をもつ。
勢 茎ASC:F盤搬εwo癒勧r痘εP総登鍵翫婚資3茎療Presε藍撚沁簸。{F擁罎。量誠St謙e灘騰捻,騰8§,き膿懸畦。なお・
iASCの公表した譲告書や至ASの訳は,日本公認会計士協会屡藻委員会訳ぎ国際会計基準書2§蟹磨,請文舘,
平成欝年を参難した。ゼ財務諸表の作成及び表示に関するフレームワーク」,パラグラフi以降,パラ畦,と 略する1。
5
2.猛SCにおける「概念フレームワーク涯導入の背景と役割 ① 「概念フレームワーク」導入の背景
亙ASCはig73に設立され,欝75年以来,国際会計基準(亙鑑e鑓3t量礎3璽Acc鎌撹撫墓Sね鍵鍵δ,以 下,至ASと略称〉を願次公表してきた。しかし,当初のiASは,各国・各界から評懸されなかった。
その最大の理由は,選択肢が多すぎて真の基準たりえないことであった鱒。しかし,藁9総年,各国 の証券市場を規翻する政府機関の国際団体である証券監督者国際機構(墨継er懸t量膿雄Org膿lz&t量穰
。{Sec蟹爆es C醗撚lsslo総,以下,工OSCOと略称)が設立され,これが,会計の国際的調和化に 向けての玉ASCの活動を支持し,諮問グループの一員としてコミットすること決めたことで状況は 一変した。除SCOは,従来のiASの課題である「比較可能性の欠如盗の改善を求め,これを受けて,
嬉SCは委員会を組織し,選択肢を狭める改訂作業を行った。そして,選択肢削減のために,基本的 な目的や理念を明確にした概念フレームワークの重要性が認識され,同時叢行的にその作成作業を 行った。
至ASCは,上記の改革に先行して,i§麗年1こは「概念フレームワーク」の検討も開始していたが,
これは,当時の会計基準作成の雛形になっていたFASBが「概念フレームワーク」を次々に発表し,
カナダやイギリスもこの検討の必要性を指摘していたことが少なからず影響したものと思われる。
すなわち,当時のiASCの活動及び{ASが必ずしも各国や各界で高い評懸を得られず,その状況を 打開する一つの手段として,理論的体系の整備を意図したことが推灘される。このような状況を踏 まえて,概念フレームワークの作成や比較可能性の確保のための趣意書 鯵を基礎にし,蔑存の膿S の改訂作業を行い,ig93年,一応の完成をみた。その後も,燈SCOから提起されたコア・スタンダー ドの完成に向けて精力的に取り組み,ig99年に一応完成し,2§巷○年i月に至OSCOがそれを承認す ることとなったのは周知の通りである。
(2〉 「概念フレームワーク」の内容と役割
iASCは,ゼ本フレームワークは,外部の利馬者のための財務諸表の作成及び表示の基礎をなす諸 概念を述べたものである」とその性格付けを行った上で,フレ〜ムワークの目的として,7項目をあ げているが重要なものは,次の4項目である職。
(留 iASC理事会が,将来の国際会計基準の作成と現行の国際会計基準の見直しを行うのに役立 てること1
(扮 醒際会計基準によって認められている代替的な会計麺理の数を灘減するための基礎を提供 することによって,{ASC理事会が財務諸表の表示に関する規則,会計基準及び手続きの調 和を促進するのに役立てること;
(c〉 国内基準を作成する各麟の会計基準設定主体の助けとなること;
(d/ 財務諸表の作成者が,国際会計基準を適用し,また,国際会計基準の主題になっていない テーマを処理する際に役立てること1
勘
ii/
i2〉
村田徳五郎賂国際会計基準遷の其様相擁,ぎ聾C鎗Aジャーナル選,欝欝隼違目,蓬頁。
亙ASC, {St畿e醗ε魏。{htε獲:C{}難照rぬlll鞍G乏照照簸cl段董S籔総灘盤ts磐,欝勢 至ASC凝念フレームワーク,パラ遭。
美馬:馨本版『概念フレームワーク遅の特徴と問題点
以上のように,至ASCの「概念フレームワーク」の内容・役割は,基本的にFASBのそれと変わ りはない。会計基準設定の基礎であり,会計基準の解釈・運矯の指針や会計基準全体の基礎概念を 明確にすることが期待されている。若干特徴的な点は,既存基準の代替的処理離減の基礎を提供す ることが強調されている。しかし,これも,会計基準設定の基礎という点で同じ範疇のものと考え
られる。
3.β本における「概念フレームワーク」導入の背景と役割
沼本版藩概念フレームワーク遜が設定された背景としては,二つの要因をあげることができる獅。
一つは,国内事情として,諸々の会計基準の基礎となる包括的な概念体系が必要になってきたこと である(以下,国内要因と呼ぶ)。飽の一つは,国際事情として,EUによる「欝本の会計基準が国 際会計基準と同等のものである」という認知を得るためには国際会計基準の体系に合わせた概念フ レームワークを作る必要があったことである(以下,コンバージェンス要因と呼ぶ/。以下,二つ要 因をそれぞれ説明する。
(茎)国内要因
国内要因は,El本においても経済環境の変化に伴って購来の企業会計原則を中心にした会計舗度 の見直しや新しい課題に対応できる会計基準の整備が必要になってきた状況を指している。現行の 多数の会計基準を根底で支える基礎概念を整理要約し,将来の会計基準設定に指針を与える基礎擾 念の体系が必要になってきた。ASBJは,この背景を「企業会計基準委員会では,わが国の会計基準 を開発・設定していくにあたり,いわゆる概念フレームワークを明文化する必要性が各方面から指 摘されたのを受け,…一瞥と,概念フレームワークの検討を始めた経緯として説明している。
経済活動が複雑かつ多岐にわたる現状において,会計も新しい課題に対応するためには,課題毎 に精緻で実践可能な会計基準を必要とするため,従来の一般論を中心にした企業会計原則の部分的 改正や追加では対越できなくなってきた。すなわち,個別テーマ毎の新会計基準の設定が必要になっ てきたのである。ところが,新会計基準設定にあたっては,当初(概ねig97年以前〉は新事態に対 応しうる処理基準の整備に重点が置かれ,近年(概ね欝盛年以降〉は,新事態に対応しうる越理基 準の整備に加えて,先進諸外国との整合性が重規されたため,従来の企業会計原則の基本的考え方 や基準全体内の整合性には十分な配慮がなされてこなかった冷。いわゆる「ピースミール方式]のそ の場しのぎ的対応で処理してきたと言える。結果として,多くの個別会計基準が作成されたが,そ れらを包括する基本的考え方が不明確になってしまった。特に,これらの考え方と従来の企業会計
ま3) 鋒本版揮概念フレームワーク遺が必要になった背景や役割については,以下のように,討議資料の本文や解 説書等σ)随所で説明されている。ここでは,主として,④の文献を参照1こした。①W略の討議資料,討議 資料翻務会計の概念フレームワーク遇の公表1こあたって,②ASBJの討議資料,前文,繋議資料財務会 計の機念フレームワーク垂,③齋藤静樹編著,中央経済社,平成鷲年.④豊譲俊一「討議資料,蔚文,「討 議資料 財務会計び)概念フレームワーク」について」,ゼ企業会計轟,2蟹17年5月号,認〜5§頁。
舞/ W・Gの討議資料,「財務会計の概念フレームワーク」の公表の経緯。
麟 徳賀氏は,藻本の会計基準を,鯵留年を境にして斬殺と分けている。徳賀芳弘・騨討議資料達の特徴と論点玉 『討議資料 財務会計の緩念フレームワーク遇,齋藤欝欝編著,中央経済社,平成葺年,所叡論文」弱質。
7
原則の基本的考え方との背離が明確になり,どちらが日本の会計基準の基本的考え方なのかを覗確 にする必要性が生じた。同時に,新しい会計基準を作成するに当たっても,実務に先行して会計基 準を設定することが求められ,実務で一般に認められた会計基準を帰納的に導き議すという旧来の アプローチの採罵が困難となった。求められるアプ冒一チは,新事態に適切に対応可能でかつ他の 会計基準と整合性を保てる演繹的アプローチであり,演繹の根幹をなす概念フレームワークが求め
られるようになってきた。
これらの要因を踏まえて,ASBJは,概念フレームワークに期待する役割について次のように述べ ている。「この討議資料では,現行の企業会計(とくに財務会計〉の基礎にある前提や概念が要約・
整理されており,その内容は,将来の会計基準設定の指針になると期待されている。その指針によっ て,会計基準の体系的安定性が得られれば,会計基準の変化についての予見可能性が高まるであろ う。そのことを通じて不確実な将来への対応をより的確なものとし,企業や利害関係者に無罵なコ ストが生じる事態を避けることも,この討議資料に期待される重要な役割である。」職。これらの要霞 が概念フレームワークの設定を促したといえる。この要因は馨内事情を反映したもので,これを重 視すれば,濤本独自の概念フレームワークが設定されることも十分ありうる。
② コンバージェンス要因
世界経済の国際化に伴い.会計基準の国際化も急速に浸透してきた。すなわち,国際会計基準が 鴉終年からEUに導入されることが決まり,発展途上国の多くも国際会計基準導入の方向を目指し ている。FASBもiASBと会計基準のコンバージェンスに向けて精力的に取り緩んでいる。世界の 流れは,国際会計基準の導入,国際会計基準へのコンバージェンスに向けて急速に進展しつつある。
これに対し,日本の対応は世界の動向に比べて著しく遅れていると言わざるを得ない。日本は,個々 の基準では蟹際会計基準の内容に沿ったものを導入してきたが,基準の体系や基本理念の見直しは なおざりにされてきた。また,国際会計基準への対応についての姿勢を明確にしていない。その申 で,20絡年問題がク澄一ズアップされてきた。その内容は,EUの閣僚理事会が2縦年6月に「EU 内の上場企業は,2倉縣年以降,国際会計基準の適用を要求し,EU以外の国の企業にもEU市場に 上場するにあたっては国際会計基準と同等と認められる会計基準の通馬を求めた」籍ことに始ま
り,〈饗本の会計基準が国際会計基準と同等か否か>という問題がクローズアップされたことを指し ている。その後,紆余曲折はあったが,鎗総年4月,療」の証券規制委員会が国際会計基準の同等 性評憾で日本に対し,26項目の追加情報を要求する中間報告を発表した。ここで明らかになったこ
とは,田本の会計基準と国際会計基準の違いが大きいという判断であり,β本の会計基準設定主体 は早急な対応が求められた。これを契機に日本の会計基準を国際会計基準に近づけることが必須の 課題として認識され,その課題への対応策の一環として響本版謬概念フレームワーク遇を作成し,そ の内容も至ASCやFASBとそれと同じような構成にする必要があったのである。この要霞が概念フ レームワークを設定する背景になったことについては,次の文章からもうかがえる。ゼ概念フレーム ワークを記述する体系には,本来,多様な選択肢がありうるが,この討議資料の構成は,大枠で海
麟 W・G討議資料,討議資料の役割の項 i7〉 2む競年6月7蒙,£Uの閣僚理事会決定
8
美馬:日本版獺i念フレームワー夕曇の特徴と問題点
外の先例に従っている。…(一部省略〉…。さらに,海外と同一の構成を採弔することによって,会 計基準の国際的調和化をめぐるコミュニケーシ遷ンも,より円滑になるであろう。」織「基本となる 前提や概念を要約・整理しておくことには,海外の基準設定主体との円滑なコミュニケーシ3ンに 資する役割も期待されている。会計基準の国際的な調和(または収斂)が求められるなかで,会計 基準の相違が何に起因しているのかについて説明が求められる機会は少なくない。この討議資料に は,こうした説明のための有効な基盤となることも期待されている。」 %
要するに,日本会計基準を国際会計基準と同等と認知してもらうためには,個々の日本会計基準 を国際会計基準に合わせるだけではなく,概念フレームワークを含む会計基準の全体系を合わせる ことが必要になったと言える。従来の企業会計原則をベーースにした会計基準の体系は,現在の経済 環境やそれを麺愛するための会計基準の国際動向と大きく乖離しており,日本版猛概念フレームワー ク避を発表することにより,過去との決甥を内外に表明すると同時に,譲本の会計基準の基本的考 え方を明らかにする必要があった。この要因を重視すれば,日本独自の機念フレームワークの設定 はあり得ず,基本は国際基準のそれと合わせることが求められる。しかし,ASBJは,「会計基準の 国際的な調和(または収斂)が求められるなかで,会計基準の相違が何に起因しているかについて 説萌を求められる機会は少なくない。この討議資料には,そうした説明のための有効な基盤となる
ことも期待されている。」聯と述べ,国際基準等に全面的に合わせることには批判的である。
霞本版磯念フレームワーク豊が設定された背景としてはこれら二つの要因を指摘できるが,今 回の討議資料ではどちらの要露が強く意識されたのであろうか。これが,日本版ζ概念フレームワー
ク避を特徴に大きな影響を与えていると考える。これについては,第三章で詳述する。
(3/ 「概念フレームワーク」の内容と役割
ASBJの討議資料でみる限り,全体の構成は,上述したように意識的にFASBや王ASCの構成・
体系と合わしている。しかし,基本的スタンスや内容においては,各所で大きく異なっている。本 稿のテーマである会計情報のもつべき質的特性の内容や体系も異なるし,会計情報の構成要素の扱 いも異なる。これらの相違の多くは,概念フレームワーク設定の背景に起因するものと考えるが,こ の相違を明らかにし,その原因を探ることが第二,三章の目的である。ただし,本稿においては,会 計情報のもつべき質的特性の内容や体系の相違に焦点を絞り,これらの検討から段本版謹概念フレー ムワーク遜の特徴と問題点を明らかにする。
概念フレームワークの役割については,概ね,次の3点が指摘されている2%
① 将来の会計基準設定の指針になること
②会計基準の体系的安定性を得ることによって,会計基準の変化についての予見可能性を高め ること
③海外の基準設定主体との円滑なコミュニケーシ望ンに資すること
i8〉 W・G憂)討議資料ζ財務会計の概念フレームワーク遜の公表にあって,麟〜蝿
i§/ 同.上, 夢.1〜llo 2(擁 講.Lッ 欝、琵。
2il 同、L,落〉.1〜量1。
9
日本版1概念フレームワーク嚢(討議資料)の役割の特徴として,海外の基準設定主体との意志疎 通を図る手段を提供し,日本基準の国際的認知を得たいという意向が強く感じられる。また,現行 の会計基準の基礎,前提を体系的に明らかにし,内的整合性を強調することによって,日本基準の 論理性や日本の独自牲を正当化しようとする意図も垣間見える。性格としては,規範的というより は記述的であるが,将来の会計基準設定の指針となることも想定されている。
第二章 「内的な整合性」特性の内容と問題
茎.「内的な整合性」特性の内容
最初に「内的な整合性盛特性の内容について明らかにしておく必要がある。「内的な整合性ま特性 の内容は,全体での位置づけを除いて,W・Gの討議資料とASBJの討議資料で基本的1こ変わらな い。W・Gの討議資料では,「内的な整合性とは,個尉の会計基準が,会計基準全体を支える基本的 な考え方と矛盾しないことを指す。会計基準は少数の基礎概念に支えられた一つの体系をなしてい る。その体系と矛盾しない基準に依擁した会計情報は矛盾を抱えた基準に依拠した会計情報よりも 有爵であるものとみなしうる」鋤と述べられている。ASBJの討議資料でも,若干,文章表現は異な るが,基本的な内容は変わらない鱗。その内容のエッセンスは,(イ〉会計情報の有用性を支える重 要な特性であること,(誓〉個々の会計基準が会計基準全体を支える基本的考え方と矛盾しないこ
と,これによって会計基準全体の論理的な整合性が保証されること,である。
(イ)の有用性を支える特性としての「内的な整合性涯が,〈矛盾している基準よりは矛盾していな い基準で作られた会計情報が有用である>程度であれば,当たり前であり,特段この特性を導入す る意義はない。飽の数多くの特性もこのような論拠を判漸規準とするなら有用性を支える特性に含 まれることになる。真の意義は,(ロ〉にあると考える。新基準に依拠した会計情報の有用性が,デー タ不足のため実証的に確認できない場合に限り,従来の考え方と矛盾しない会計基準の採用により 有用性の確保を求める特性といえる。重要なことは,新基準の遍羅による椿報の有用性が不明な事 態でのみ機能を発揮できることである。しかも,この特性は会計情報の有馬性を直接保証するもの ではなく,従来の基本的考え方に基づいた会計情報の有用性が否定されなかったので,この考え方 と矛盾しない新基準から作られる会計情報もおそらく有濡であろうと間接的に類推したに過ぎな い。その役割は,他の有効な手段がない場合に,仕方なくこの特性を利用せざるを得ないというこ とである。このような理解は,W・Gの討議資料のゼ意志決定との関連性涯を採り上げた項目で説 明されている2駕そこでは,最初に,「意志決定との関連性」特性の内容を明確にした上で,次に,「内 的な整合性」の役割を述べているが,説明されている要旨は次の二つのパラグラフのようなもので
ある。
まず,「意志決定との関連性」とは,投資家の意志決定に積極的な影響を与えて貢献することを指
22/W・Gの討議資料蓼会計欝鞍の質的特性遜,第§項。
23/委員会の討議資料,第嚢,緯,葺項を参照。
2戯 W準Gの討議資料罫会計傭鞍の質的特性遜,第3〜6項の
一欝一
美馬:響本版匡概念フレームワーク遜の特徴と問題点
す。会計精報が投資家の意志決定に貢献するか否かは,第一に,それが情報癒値を有しているか否 かに関わっている。会計基準の設定の局面において,新たな基準に基づく会計情報の情報緬値は不 確かな場合も多い。そのケースでは,投資家による情報ニーズの存在が情報癒値を期待させる。し かし,情報ニーズのある会計情報のすべてが投資家の意志決定と関連しているとは限らない。この 点で,「意志決定との関連性盛が基準設定での役割髪こは一定の限界がある。しかし,情報癒値の存在
と情報ニーズの充足が,「意志決定との関連性」を支える二つの特性と位置づけられる。
次に,「内的な整合性]特性は,会計基準設定の前に,精穀価値の存在と情報ニーズの両方が不明 な場合に適用されることになる。そういう意味で,「内的な整合性」特性は,「意志決定との関連性」
特性の代替的・補完的役割を果たしている。しかし,整合性に裏づけられた会計情報の有濡性は,意 志決定との関連性にいう椿報価値の有無とは異なる意昧でいわれることもあるので,この討議資料 では整合性に独立した地位を与えた,と説明されている25)。〈異なる意味でいわれる〉とは,討議資 料では明確でないが,後述の二つの特性の適罵対象が異なることを指すものと推瀕している。
以上のように,「内的な整合性」特性の役割は,会計基準設定の前に,精報懸値の存在と情報ニー ズの内容が不明な場合に,「意志決定との関連性」の代馬として遠矯され,新会計基準の基本的考え 方の選択基準ということになる。
2.「内的な整合性」特性の対象
次に,「内的な整合性」特性の対象であるく会計基準全体を支える基本的考え方〉とは何かを明確 にする必要がある。「内的な整合性蓬の内容は〈個甥の会計基準が,会計基準全体を支える基本的な 考え方と矛盾しないことを〉を指し,「内的な整合性の参照対象は,会計基準,会計実務,会計研究 などについての歴史的経験と集積された知識の総体である。押と述べ,知識の総体の重要な部分は この概念フレームワークの討議資料に記述されているが,その全貌を示すものではないと説明され ている。W・Gのメンバーである大饗方氏は.「このように,内的な整合性は,討議資料の外側に会 計基準の説明体系が存在することを想定している」と述べ,討議資料の外総に環境変化に対応した 理論体系の構築を会計学界に期待していると説明している餓。このことからは,「内的な整合性」の 対象は,①概念フレームワーク,②会計基準の説明体系,の二つを想定しているものと解釈でき
る。塞た,討議資料では,「内的な整合性」は既存の法秩序(成文法の体系〉やルールとの整合性も 尊重すべきことを求めている28》。徳賀氏は,購究会での津守氏のコメントを参考にして,前者を「理 論的整合性(論理的整合性M,後考を「調度的整合性」と呼び,討議資料の「内的な整合性」をこ の2つの意味で用いられているが,これらは独立した問題であり,歪つの用語で表現されるべきでは ないと批判している蹴。
25/羅、上,第捻項。
26〉同上.第欝積。
27) 大饗方隆,「会計情報の質的特性雄,『討議資料 財務会計の概念フレームワーク島齋藤薄樹編著,中央経済 社,平成茸年,所収論文,磐頁.
2$/ W・Gの討議資料,ゼ会計構報の質的特性調,第欝積。
2§〉 徳賀芳弘,汀討議資料擁の特徴と論点豊,穿討議資料 財務会計の概念フレームワークL齋藤静樹編,中央経 済祉.平成賀年,所収論文,鐸2頁。
亙玉一
討議資料の説聞からは,「内的な整合性」の参照すべき基礎概念の具体的内容は必ずしも明確でな いが,「理論的整合性」の対象となる①概念フレームワーク,②会計基準の説明体系と「鱗度的整 合性」の対象となる,③法秩序やルールが予定されている。これらが同時に溝たされるべきか否か は不明である。ただし,大藏方氏は,「この討議資料に書かれていないものの,基礎概念としてコン センサスが得られている例としては,名目資本維持や,対応の原則,費用配分の原則などがある轡}
と例示している。もし,これらが討議資料の含意とするならば,「内的な整合性」特性の尊重は,瞬 来の企業会計原則をベースにした基本的考え方を想定していることになる。これは,現在の国際会 計基準の動向,霞本の会計ビッグバンのへの対応の方向と矛盾するもので,このような討議資料が 今後の会計基準の指針になるとは思えない。さらに,現行の法秩序である商法の「債権者保護」や
「利害調整」も「調度的な整合性」の対象にするならば,鷺本の会計基準は改革の道が閉ざされるこ とになる。
齋藤氏は,既存の会計基準を説明する局面で,「財産法か損益法か」「静態論か動態論か達「資産・
負債アプ冒一チか収益・費罵アプ欝一チか」「時衝主義か原懸主義か」という二項対立の構図を批判 し,これは理解する道具であって,癖地的な教義やイデオロギーの類ではなかったはずである,と 述べている鵠。齋藤氏の主旨はわかるが,会計の基本的考え方を説明するためには,このような二項 的関係をベースにして,それを解説するという方法以外にあり得ないのではないだろうか。全体の 整合性を確保するための基本的考え方は,帽当の上位概念でなければならず,それはここにいう二 項対立概念に匹敵するもの以外にあり得るのか疑問である。会計の基本的考え方は何か,具体的に 明らかにする必要がある。
また,石摺氏は,現在の田本の会計基準の基本的考え方を従来の企業会計原則のベースにしたも のと,ビッグバン以降のものの二つの種類からなるハイブリッド構造であると指摘している鋤。そう した視点は,徳賀氏の分類にも当てはまるものであり33},筆者も二つのグループの会計基準には考え 方に大きな違いが存在すると考えている。この場合,醗存の会計の基本的考え方は,どちらを指す のであろうか。両者の考えが異なるハイブリッド購造では,中間などはあ滲得ないはずであり,二 者択一を追られることになる。このように,「内的な整合性」の参照すべき基礎概念が何なのかは必 ずしも明確でない。少なくとも,この概念フレームワークに基づいて新しい会計基準を設定しよう とする場合,重要なキーワードの操作性に疑問があるようでは,その概念フレームワークは指針と しての役割を十分に果たし得ない恐れがある。
3.「内的な整合性」特性と他の特性との関連
「内的な整合性]が有馬性を支える飽の二つの特性である「意志決定との関連性」や「信頼性建と 同じレベルのものであるかどうかを吟昧する必要がある。W・Gの討議資料では,3特性は同列に置
3劔 大類方隆,麟掲書,磐葺。
3i〉 齋藤静樹,「討議資料の意義と特質涯.齋藤静樹編著,蔚掲書勝叡論文,護〜5頁、
32〉石辮純治,「企業会計の今段的変容と全体整合性問題嵯,匿会計毒第膿7巻第董号
33) 徳賀芳弘,齋藤静樹編著,萌掲書所収論文,欝5頁。徳賀氏は,翼本の会計基準を,i鱒7年を境にして新籍 と分けている、
一圭2一
美馬1日本版野概念フレームワーク選の特徴と問題点
かれ,それらは,「有馬性」と一体となって会計基準設定の指針となる役割が期待されている。会計 基準設定の指針となる役割に関しては同じだが,ASBJの討議資料では,3特性は異なるレベルに置 かれることになった。二つの討議資料で何故位置づけが変わったかについては後に検討するとして,
ここでは,3特性が会計基準設定のどのプ獲セスに関わるかを検討しておきたい。今後,概念フレー ムワークが会計基準設定の指針としての役割を果たそうとするならば,意志決定有用性を頂点とす る会計情報のもつべき特性が,基準設定のどのステップでどのような役割を果たすかを明らかにす ることは重要である。
「内的な整合性豊特性は,会計基準の選択にかかわるものであり,個々の会計基準の基本的考え方 の妥当性を評慰する役割を果たす。個雛の会計基準を設定するにあたって,複数の基本的考え方が ある場合,既存の基準体系と整合する基本的考え方の選択を求めるものといえる。これは,会計基 準設定の入日の選択基準であり,第iステップと呼ぶことにする。それに対し,「意志決定との関連 性」,「信頼性豊の特性は,あるテーマについての個購の会計基準の具体的内容を決めるにあたって,
その内容を直接規制し.指導する指針となる。「意志決定との関連性』特性は,個劉の会計基準にお いて,ある項目・属性を会計情報に含めるべきか否かを判断するにあたって野意志決定との関連性」
の視点から行うことを求めるものである。もちろん,その後の麺理や分類・表示においてもこの視 点が貫かれることが求められるが,基本はく項目・属性の選択基準>であり,第2ステップと呼ぶ
ことにする。「信頼性」特性は,第2ステップで選択された項目・属性を会計越題するにあたって「利 用者の信頼を得る」という視点から〈処理方法の選択〉を求めるものであり,第3ステップと呼ぶ
ことにする。具体的には,「中立性」.「検証可能性重,ゼ表現の忠実性」を満たす会計処理法の選択を 求めている。もちろん,会計越理にあたっては,第2ステップから始まり第3ステップヘと進んで いくが,第3ステップ段階で「信頼性」特性を満たさないため,第2ステップが修正されることも 十分あり得る。しかし,第iステップが修正されることはない。一般に,特性問にはトレード・オ
フの関係がみられることもあるという指摘は,第2ステップと第3ステップの閥の関係を説萌した ものである鋤。これら二つの特性は,あるテーマについての個別の会計基準の内容を直接規制し,指 導する指針であるが,「内的な整合性」特性は,基準の基本的考え方の選択指針であり,役割や作署 するステップが他の二つの特性と異なるため,トレード・オフの関係にもない。
以上のように,「内的な整合性」特性は,勉の二つの特性と会計基準設定プロセスで果たす役割や 作用するレベルの違いを指摘できる。この点について,W・Gの討議資料では記述されていなかっ たがASBJの討議資料で萌確になった。ASBJの討議資料は,「このように,内的整合性は一義的に は会計基準にかかわるものであるが,複数の会計基準に基づいて集約される会計情報は,整合性の とれた会計諸基準により生み出されることによってはじめて意味づけを行うことができる。そこで,
この概念フレームワークでは,内的整合性を会計情報の質的特性に位置づけることにした。轡と述 べている。たしかに,会計情報の有馬性が最終結果で評懸されるとしても,このASBJの見解(会 計基準の基本的考え方の選択基準と会計基準の内容を導く指針を同列におくことを指す)は,有馬
3磨 W・Gの討議資料,ζ会計精報の質的特性垂,第玉璽。
35〉 AS3」の討議資料,第謄項。
一茎3一
な精報のもつべき特性として会計処理の選択基準として役割を期待している概念フレームワ〜クの 理解に混乱をもたらす。会計基準の基本的考え方の選択基準は,有用な情報作成基準の直接的指針 足り得ないのは当然である。レベルの違いは明白であり,これらを一つの範疇に入れて並列するこ
とは大いに問題があると考える。
嘆.AS欝の討議資料での「内的な整合性」特性の位置づけ変更
W・Gの討議資料の改訂版として発表されたASBJの討議資料では,「内的な整合性」特性の位置 づけが変わった。すなわち,有用性を直接支える特性から離脱させ(「意志決定との関連性涯,「信頼 性」については従来通り),新たに付け加えられたゼ比較可能性盛と同列の一般的制約となる特性と して位置づけた。基本的な内容や役割は変えずに位置づけだけを変えたのである。何故に位置づけ を変更したのか,その理由は明確ではないが,その手がかりは,新しい範躊となった一般的制約と なる特性の内容の吟昧である。ASBJの討議資料では,次のように述べられている。
「意志決定との関連性と信頼性は,会計情報が利弔者の意志決定にとって有爵であるか否かを直接 判定する規準として機能する。それに対して,内的整合性と比較可能性の2つの特性は,会計情報 が有羅であるために必要とされる最低限の基礎的な条件である。これらの特性によって意志決定有 馬性が直接的に判懸されるわけではないが,しばしば,これらは,意志決定との関連性や信頼性が 満たされているか否かを間接的に推定する際に利用される。それゆえに,それらを意志決定との関 連性や信頼性の階層関係の中ではなく,階層全体を支える一般的制約となる特性として位置づけ
た。轡}
これらの文章から一般的鰯約の特徴は,①会計情報が有馬であるための最低限の基礎的な条件,
②意志決定との関連性や信頼性が満たされているか否かを間接的に推定する役割.ととらえられ る。①会計情報が有用であるための最低限の基礎的な条件という点では,飽の特性である「意志決 定との関連性」や「信頼性謹と基本的に異なることはない。両者の相違は必要条件と必要十分条件 の櫨違であろうか。ここでの必要条件の意味は,〈会計構報が有用であるために必ずこの特性を満た さなければならないが,この条件を満たしたからといって,会計情報が有絹であるとは限らない〉と 解釈できる。また,必要十分条件の意味は,<会計情報が有馬であるために必ずこの特性を満たさな ければならないが,この条件を満たしたならば会計情報は有馬である〉と解釈できる。「内的な整合 性」特性は,「意志決定との関連性」が不明な場合の代替的特性として利欝されることを想定してお り,その役割は「意志決定との関連性」特性と同じであるはずであり,必要十分条件となるはずで
ある。
また「意志決定との関連性」の「信頼性」の二つの特性を合わせて必要十分条件なのか。もしそ うであるならば,他の特性である「内的な整合幽や「比較可能性聾ま必要ないのではないか,等々 の疑問が残る。結論として,①有馬であるための最低限の基礎的な条件,という意昧では,飽の二 つの特性と同列であ拳,新しく設定した「一般的制約」レベルに置くことの意味は不明である。
さすれば,②の間接的役割がポイントになる。②の意味では,「内的な整合性」の特性が満たさ
3嚇 同、と,第嬉項。
一意一
美、馬:日本版蓼概念フレームワーク磨の特徴と問題点
れれば,意志決定との関連性や信頼性が満たされていることが間接的に推灘できる,ということに なる、ここにいう間接の意味は二つの解釈可能である。玉つは,〈新会計基準に基づく会計情報が「意 志決定との関連性」と「信頼性」の特性を満たしているか否か不明の場合,既存の会計基準の体系 が有用な会計情報を生み出しているという前提で,既存の会計基準の体系と整合的であれば有馬な 情報が作成でき,この有用性を通じて意志決定との関連性や信頼性が満たされていることが間接的 に推定できる〉との解釈である鱗。これは,直接判断を回避して,傍証による間接判断で良とする姿 勢である。飽の一つは,〈ゼ内的な整合性」とゼ意志決定との関連性卦「信頼性」の二つの階層の特 性が互いに媒介項を通して関連している場合.一方の充足が地方の充足を媒介項を手がかりに間接 的に証明できる>という解釈である。具体的には,情報価値を媒介項にして「内的な整合性」と「意 志決定との関連性」を関連づけている3麟、W・Gの討議資料では,椿報極値という点(投資家の予灘 や行動が当該情報の入手によって改善されるという意昧〉では「内的な整合性」と「意志決定との 関連性涯が相互補完的な関係があるが,提供される情報癒値の内容や役割は異なるので独立させた,
と解説していることを思い出して欲しい鋤。しかし,結果的には否定した(両者を劉のもとして独立 させた)ものを何の解説もなく関係づけることには疑義がある。また,ゼ内的な整合性」と「信頼性蓬 との関係は不明なままである。最上屡の青縞性を含む第一層全体が第二層全体で支えられる構造に なっているが,その相互関係は不明のままである。これでは,とても「内的な整合性」が「意志決 定との関連慰や「信頼性」が満たされているか否かを間接的に推定する役割を担っているとは言
えない。この解釈が成り立つためには,少なくとも二つの階屡の相互関係が明確になっていなけれ ば,間接的な関係も成り立たない。二つの階層の相互関係を明確にするためには,それぞれの概念 規定において,相互関係を説明する必要がある。結論としては,一般制約を(イ)直接判断を回避 して,傍証による間接判臨で良とする姿勢である,とするならば,それなりの意味がると判断する。
しかし,(ロ)二つの階層の特性が互いに媒介項を還して関連しているという意味ならば,説明不足 と考える。当然のことであるが,一般翻約という同レベルの「比較可能性」の特性に,このような 論理が成り立つのか検証する必要がある,
以上のように,「内的な整合性」特性を新しい制約条件という籠躊に入れて,位置づけを変更した が,内容や役割をそのままにして新しい範躊に入れることに必ずしも成功しているとは思われない。
ASBJのメンバーである,豊田氏の新討議資料の解説においても,この位置づけの変更の理露やその 結果の妥当性については鮭れられていない鋤。
5.新内的な整合性」特性の役割
上述したように,ASBJやW・Gにおけるr内的な整合性」特性の役割は,必ずしも明確ではな い上,特性全体での位置づけも適切なものとはと考えられない。ASBJやW・Gも「内的な整合性」
37)
38/
3§)
鋤
野上,第欝項参、照.
W・Gの討議資料,ぎ会計精報の質的特性遜,第7項参、照。
講堂,第欝積.
豊鑓俊一,前項論文。
r3 工
特性の役割や位置づけが海外のそれらと異なることを十分に理解しており,この概念を導入した根 擁について次のように説明している。〈整合的な基準から生み出された会計情報は有用であるとみる のが,広く合意された考え方である。新たな会計基準による情報の極値が事前にわからない場合,整 合性は精報極値を推定する補完的役割を果たす。〉鱗このことが成り立つためには,会計を取り巻く 環境が大きく変わらない中で,新しく生じたテーマの処理のための会計基準を設定する場合に限定
される。
この点1こついては,W・Gも認識している。「内的な整合性は,環境条件が大きく変化していない かぎり,新たな経済事象や新たな形態の取引に関して会計基準を設定する際の判断規準として,と
りわけ重要である。前提となる環境条件が一定であれば,既存の会計基準の体系と整合的な会計基 準は有馬な情報を生み出すという推定が働く。」婚「地方,財務報告を取り巻く環境が変化した場合
には,旧来の環境条件に適合した会計基準との整合性を問うことの意昧が失われる。」磯
現段階で,W・Gが「内的な整合性」概念を導入したのは,環境条件が変化していないという判 断をしたということであろうか7 しかし,段本の会計を取り巻く環境は大きく変化しており,その 変化に対応しうる概念フレームワークを作成しなければならないという状況におかれている。さら
に,EUから求められている国際会計基準へのコンバージェンスは,従来の日本の会計基準の発想の 転換を求められたものともいえる.旧来の企業会計原則に代わる欝本版簸念フレームワーク書の 設定は,そのような背景の重視の結果ではなかったのか?W・Gの基本的スタンスが問われると言 わざるを得ない。
さらに,「会計基準の現在の体系が実際に利罵されて定着している事実は,その体系のもとで有弔 な情報が提供されてきたことの証拠とみなせるからである」翰,という文章から判懸されるように,
この特性を導入することによって,新しい基準が既存の基準の枠内におし込められるという危険性
も伴う。
前章で述べたように,ヨ本版の概念フレームワークは,二つの背景があるが,W・Gの見解は,醗 存の籔本の会計基準の基礎概念を整理し体系化するという要素を強く意識したものと考えざるを得 ない。しかし,今求められているのは,もう一つの背景である,国際会計基準とのコンバージェン スヘンスの要因である。この要因を重視すれば,当然のことながら,時代の変化に対応しうる新し い会計基準の設定こそ喫緊の課題になる。ここにおいては,慶存の基準や基礎概念との整合性は重 要事項ではない。すなわち,「内的な整合性涯特性は,新しい時代の変化に適合した有馬性を支える 特性の一つにはなりえないと考える。
6.「内的な整合性」特性の重要度
「内的な整合性雌概念の内容を勉の二つの特性と同等の重要性をもつのかという観点から検討す る。この検討は,1ASCやFASBの概念フレームワークで「内的な整合性」概念が採り上げられて
嵯葺 W・Gの討議資料,野会計情報の質的特性垂,第捻項参照。
嵯2)講上,第7項。
婆3〉講、と,第8項。
翼/ 瞬上,第§項。
一16一
美馬1日本版獺念フレームワーク董の特徴と問題点 いないことの妥当性を明らかにするという意味をももつ。
W・Gの討議資料においては,有用性を支える3つの重要な特性の一つとして位置づけられた。そ の論挺として,会計基準がその基礎概念の体系と矛盾しないことが望ましいことを挙げたが,一般 的にそれは当然として,それが有弔性を支える三つの特性に選択されるほどの重要性を持つかどう かは鷲の問題である。重要度を判擬するに当たって手がかりとなるのは,ASBJの討議資料で,諸外 国の概念フレームワークで採り上げられているその地の特性を採り上げなかった理由として,「自明 であること」,「簡潔な体系として記述」が指摘されている点である鋤。この観点からすると,「内的 な整合性」の特性は,機念フレームワークの基本的役割から考えて,「自明であること」に該当する
ものと思われ,重要性は乏しいと結論づけられる。理由は以下の通りである。
概念フレームワークは,個々の会計基準を作成するための基盤ないしは指針としての役割が期待 されて設定されたものであり,すべての会計基準が同じ概念フレームワークをべ一スヒして作成さ れれば,当然のこととして基準闘の整合性が期待できる。「内的な整合性重の特性は,概念フレーム ワークの役割を言い換えたに過ぎないもので「自明である」といえる。このことは,次の文章から も窺える。「内的な整合性の参照対象は,会計基準,会計実務,会計研究などについての歴史的経験 と集積された知識の総体である。そのうち,会計基準の設定にとって,重要な部分はこの観念フレー ムワークの討議資料に記述されているが,その全貌を示すものではない。それゆえ,この討議資料 に準擁して会計基準を設定することは,内的な整合性の達成にとって必要条件であって,十分条件 ではない。轡もし,重要な部分はこの概念フレームワークの討議資料善こ記述されているならば「自 明であり」.概念フレームワークに含まれていないものへの準髄を求めたものであれば,それを明示
しなければ,役に立たない。
また,「簡潔な体系として記述」という点からも,「内的な整合性」の特性の重要度は低いと考え る。ASBJが「簡潔な体系として記述3を主張した意図は,〈自明のことの携除>,〈特性閥で重複す る項目の群除>,〈階屡関係もできるだけ簡潔>にあると推灘される。上述したように汀内的な整合 性」特性は自明である上,飽の二つの特性とレベルの異なる指導指針である。レベルの違うものを 同じレベルに並列することは混乱を招く恐れがあり,ゼ簡潔な体系として記述」という面から容認で きない。また,この特性は,環境条件が大きく変化していない状況でのみ有効性が認められるもの であり,現在の日本の状況には不適切であるという点でも重要度は低い。条件付きの特性を最重要 特性に置くことは,特性の一般適矯牲を懸害するもので,注釈が必要ならば「簡潔な体系として記 述」という主旨にそぐわない。
以上の検討から,ASBJの討議資料は,有馬性を支える特性を二層檎造ととらえ,「内的整合性」に 一般的制約という新位置づけを与えることには成功しているとは言い難いと判断する。同時に,「内 的な整合性涯特性は,飽の特性に比べて重要度は低いと判断し,有用性を支える重要な特性の一つ
として同列に置くことには賛成できない。
iASCとFASBの協同プ誓ジェクトが発表した概念フレームワークの協議文書においても,「内
尋5/AS8」の討議資料,第詑項 藤〉瞬、と,第i7項9
一i7一
的な整合性涯特性は有馬な情報の質的特性には取り込まれなかった。その理由として,以下の3点 が指摘されている鱗。
① 同じ概念フレームワークに準拠する基準を作成すれば自然に「内的な整合性」は確保される こと。
②現行基準で欝的適合がある情報が提供できれば,この基準体系に準擁する基準でも目的適合 性がある鋳報を提供できることは当然である。
③この特性を加えると,新しい基準の適欝で「内的な整合性雄が確保されないとの理由で勉の 特性を改善することになる財務報告基準の進化を妨げることになる。
特に,③は,環境変化が激しい下での概念フレームワークには,「内的な整合性」特性の導入は有 害であるとの認識であろう。
7.「比較可能性」特性の重要性
本稿のテーマとは直接は関係しないが,W・Gの討議資料がASBJの討議資料1こ改訂される中で
「内的な整合性涯特性と同列のレベル(一般的制約条件/のものとして「比較可能性」特性が導入さ れた。しかし,私見によれば,このF比較可能性」こそ,有用性を支える最重要の特性と考える。理 由は,世界の会計コンバージェンスの動きが「比較可能性」を中心に廻っていると考えるからであ る。近年,経済のグ冒一バル化が急速に進展し,それきこ伴って,証券市場のグ冒一バル化,投資家 及び投資先のグ冒一バル化が進み,この状況に対応するため会計の国際化,盤界的コンバージェン スの必要性が叫ばれた。会計の国際的コンバージェンスが必要な最大の理由は会計情報の国際的比 較を可能とすることにある。亙ASBの前身であるiASCがig89年,E32を発表し,贋存の国際会計 基準を比較可能性の視点から全面的に見直しをしたのは,「比較可能性」に問題があれば,会計構報 はまったく役に立たないことを認識したためであった。それ以降,至ASCは,最も重要な特性として
「比較可能性」を重視し,会計基準の統一化,会計処理選択肢の麟減に取り緩んできたことは周知の 通りである。このような世界の動向を無視し,W・Gの討議資料では,〈会計甦理の画一的な統一に 対する危惧〉,く表現の忠実性に包摂される>ことを理由に「比較可能性」は重要な特性から漏れて
いた麟。
私見によれば,〈会計処理の画一的な統一に対する危惧〉は,〈実質優先〉で十分にカバーできる し,〈表現の忠実性に包摂される〉のではなく,二つの特性は同列でトレー拠オフの関係にある場 合さえある。改訂版のASBJ討議資料では,W・Gの討議資料の理由を踏襲しつつ,かつ,世界の 動向を踏まえてiランク下の一般的制約条件に入れられた。しかし,これでも不十分と考える。EU が日本に国際会計基準と同等のものを求めたのは,もちろん高い晶質の情報を求めたこともあろう が,最大の眼目はEU市場の投資家に対して比較可能な情報を提供することにあるといえる。会計 コンバージェンスの最大のねらいは,国の文化や憾値観の多様性を無視してまで比較可能性を重視
蓬7/猛SBプレスリリース,「米露営AS8及び簸S8,協同の機念フレームワークの最初の章の草案藩,We歓
www、13由.(}r暮.2{縄、7.§.βC2.2.5逢、
塁8/ W・Gの討議資料,ゼ会計情報の質的特性雲,第2i項参照。
一i8一
美馬:嚢本版揮概念フレ〜ムワーク遜の特鍛と問題点
することにある。
このように考えると,〈有爵であるためには「比較可能樹の特性が重要である>し,〈「比較可能 性」が満たされれば有用である>といえる。したがって,「比較可能性」は,有用であるための必要 十分条件を満たしており,「意志決定との関連性」や「信頼性」と同じレベルの特性と考える。この 本質を認識しないと,田本の会計を適切にり一ドすることはできないし,世界を納得させる会計基 準を設定することも困難と考える。
第三章 「内的な整合性」の視点からみた田本版『概念フレームワーク講の特徴と問題点
第一,二章の検討を踏まえて,日本版ゼ概念フレームワーク遍の特徴と問題点を以下の3つの項 目に分けて明らかにしておく。
藁.帰納的アプ縫一チ重視
この討議資料の発想の根底にあるものは,第一章で説明した欝本版郵概念フレームワーク選の設 定された背景である国内要瞬の重視である。現在の日本の会計基準の基礎概念を要約・体系化する という視点に立てば,帰納的アプローチが重視されることになる。もちろん,理論を組み立てる際 に,帰納的アプローチだけで構成されることはなく,演繹的アプ誓一チもおりまぜられることは当 然である。しかし,重要な部分がどのアプローチで構成されているかは,その理論を特徴づける要 素である。概念フレームワークの内容が現在の段本の会計基準の基礎機念を要約・体系化すること から作られるならば,それは.帰納的アプローチ重視ということになる。
討議資料も世界の概念フレームワークの構成に合わせるために,財報告の目的から出発し,この 目的を達成するために会計情報のもつべき質的特等を規定するアプローチを採署している麟。しか し,観念フレームワーク設定の目的のiつを「会計基準の基礎概念の要約・体系化まにおいたため,
この点では帰納的アプローチが優先されることになった。この目的をiつの柱におく限り,慶存の 会計の基本的考え方から脱却することは自己矛盾に陥ることになる。それ故,新しい目的や理念か
ら演繹するといっても,既存の会計の基本的考え方を無視できない限り,討議資料の全体的特徴は 帰納的アプローチに基づいたものと性格づけられる。
帰納的アプ冒一チは,現状の実務を説明するための理論を構築するという意昧では有意義な方法 である。また,このアプ冒一チに基づく会計基準は,現状を踏まえたものであるため,実践への適 応能力も高く,関係者にも広く受け入れられる可能性が高い、しかし,会計環境が大きく変わり,そ れに対応するための会計理論や会計基準を作成するという状況の下では,このアプ資一チには限界 がある。このアプローチに基づく会計理論や会計基準は,新しい事態への対応能力が弱く,目的や 理念を前面に据えた論理的首尾一貫性という点でも劣るため,会計の大変革が必要で,それを関係 者に納得させる理論構築が必要な田本の現状には不向きと言わざるを得ない。
これに対して,FASBのアプ獲一チは,会計欝的の設定から始まり,この目的を満たすために会
屡§〉 AS欝の討議資料,序文及び第欝項参照。